今更ながら思ったけれどやってることムジュラの仮面みありますねコレ。
【火曜日(ループ3)】
『駒王町とその周辺の病院をあたってみるわ。冥界でできることはもう殆ど無いし』
という言葉と共に部長は人間界へと帰還。持ちうるコネで魔力を漂わせてる人間を探すとのこと。
そして僕らの方は僕らの方で、まさかの進展があった。登校と同時に半ば連行される形で屋上に連れていかれ、朗報を聞かされた。
「ヒットしたァ!?」
「おう、今朝確認したらコメントが複数付いてたんだ」
「これで1歩前身だな!」
元浜から突き付けられたスマホの画面には、成程確かに隣町の高校に通ってる男子高校生じゃないか? という旨のコメントが6件も付いていた。1つ2つ付いてくれたら儲けもの位に思っていたのだ、コイツは有り難い。
「でも肝心の名前の方は……」
「苗字が出てるだけだな。まあそこはどうしようもない」
「1日無断欠席してるだけっぽいから俺ら怪しまれてんだよな。行方不明って言うには短過ぎるから、仕方ねぇっちゃ仕方ねぇ」
なんならアイツが学校サボって心霊写真で遊んでるんじゃねぇかって思われてすらいるな。いやあながち間違いじゃねぇから反論し難いところ。
しかしコレはとても貴重な情報だ。高校と苗字は特定できたし、ループの起点だけじゃなくてアイツがいなくなったタイミングも月曜日かその前辺りなのが分かったのだから。
「まあでもこれを手掛かりに聞き込みをやっていけば……いけるぞ、間違いなく!」
「放課後、速攻でアイツに会いに行ってやらないとな!」
「うん! いやぁホント、思ったより早く反応があって良かったよ……」
しかし、結構くっきり写ってるとは言え、よく誰か分かるもんだな……半透明だし分かりづらくない? いやでもコメント見るに……
「尻フェチだから割り出せた、のか……」
「ああ、相当気合い入った紳士だったに違いない」
「趣味こそ合わなかったが、周知される程に自分を貫いたあの男を、俺は心の底から尊敬する」
「それはどうかと思うよ僕、切に」
死者の尊厳云々悩んでたけど、そんな必要も無かったみたいだ。気にした僕が馬鹿みたいだ。…………いやこのエロバカ共と猥談できてた時点で察するべきだったか?
「お前もムッツリなだけで同じ穴の狢だと思うけどな」
「おっぱいの暗黒面に堕ちたオッパイスキーめ……」
「やめろやなんだおっぱいの暗黒面って。ちょっと面白くて笑っちまうじゃねぇか」
あと社会適性があることをムッツリ言うのやめろ。一般人全員ムッツリってことになるじゃねぇか。…………間違ってないかもだけど。
「でもさ、これでアイツの名前が分かって、記憶も取り戻せたとしてさ。そっから先、どうやって成仏させたらいいんだ?」
「んぇ?」
そんな松田からの想定外の疑問に、思わず変な声が出た。少し困惑してると得心がいったように元浜も続けた。
「あーそうだよな。記憶はもしかしたら俺たちでも取り戻せるかもしれない。だがコレが例えば恨みを晴らすとかだったらどうしようも無いし……悪いことだと分かってても、同情して止められんかもしれん」
いやいやそもそも死んでない…………と言いかけて、口を噤んだ。そうだ、死んでない云々は悪魔の事情が絡むから言えてないんだった。
「いやいや、アイツのこと思い出してみろよ。確かにタイムリープで心は弱ってたけど、そんなことしそうなタマか? 大丈夫、なんとかなるって」
そう心にもないことを口にする。「「だよな!」」と明るく返す2人の顔を見て、ああ僕は人として腐ってきてるかもしれんと感じてしまった。人じゃなくて悪魔だけど、そこは心の持ちようとして。
せめてどうなっても自分ができる範囲でどうにかしよう、と心に決めてふと気がつく。アイツは間違いなく悪魔と契約を交わし、願いを叶えてもらおうとしている。今は多分、アイツの契約とぶつかり合うことは起こっていないけれど……
(もしその願いが、叶えてはいけない願いだったとしたら、僕はどうすればいいんだろう……)
もしかしたら、その願いを踏み躙らないといけないかもしれない。そういう状況に陥れば、僕は躊躇もせずにそうするに決まってる。…………躊躇なく他人を殺せる心構えができる様になってきた辺りで気がついてはいたけれど、本当に人としてダメになったのかもしれない。
悪魔になんてならなければ……なんて言葉が口を出そうになって、首を振った。後悔はしてないのだからそれでいいじゃないか。
2人が機嫌良く話すのに合わせて愛想笑いを浮かべ、しかし僕は心にドンドンと何かが澱んでいくのを感じた。
◆◆◆
「イッセーさん、少しお願いしたいことがあるんですけど……大丈夫ですか?」
「えーっとうーん……ちょっと待ってくれ」
放課後、それじゃあ早速報告に行くか……と2人とアイコンタクトをしたら、意を決した様子のアーシアに呼び止められた。なにやら大事な用っぽそうだけど、これどうする……? と視線を投げる。
((野郎と美少女なら圧倒的後者だろ))
(お前らアイツ泣くぞ)
この間僅かコンマ1秒である。付き合いの長さがなせる技だねぇ。ともかく、報告自体は奴らだけでもできるとのことなので例の居抜き物件の鍵を投げて寄越した。
(あんま変なことすんなよ、部長に迷惑かかっから)
(了解了解、心配すんなって)
(ぶっちゃけあとは俺らだけでどうにかなりそうだしな)
そう目でやり取りしてスタコラサッサと馬鹿2人は教室を出る。普段なら運動部の女子更衣室にかじり付きに行くところを脇目も振らず教室を後にするので周りも何故か不審そうだ。なんなら奴らに対して唯一邪険にしない女の子であるアーシアとの接触のチャンスも投げ捨ててるので余計にそう思うのだろう。『どういうこと……?』って視線が突き刺さって酷く居心地が悪い。なんて説明したもんか……。
「…………んー。詳細は言えないけど、法と倫理に触れることはしてないよ、安心して欲しい」
言葉に困ってそう言うと、渋々といった感じで皆の視線が散っていく。多分納得はしてないんだろうけど、お目付け的な僕が言うからそうなんだろうってな様子だ。まあ僕も僕が関わってなかったら欠片も信じないけどな。奴らの素行が悪いせいだから自業自得だザマァミロ。
さて、とりあえず部長にも奴らに鍵を渡したことは言うとして、だ。
「というわけで予定は空けたよ。お願いって何かな?」
「その……大したことでは無いんですけれど……」
非常に言いづらそうに口をモゴモゴさせるので、ここでは話せないのかもしれないと判断。じゃあ部室に行こうか、と口にする直前にアーシアは驚くべきことを言い放った。
「きょ、教会のお掃除を手伝って欲しいんですっ!」
「……………………What's??????」
◆◆◆
「誤解を招くような言い方でごめんなさい…………」
「いやほんとそうだよ……心臓が口から出るところだったぜ」
アーシアに限って裏切りはねぇだろ、とは思ったが。流石に教会の掃除を手伝って欲しいなんて言われたら、流石のイッセー君も度肝を抜かれるというものだ。何とか心を落ち着かせ、飛び出るように校門をくぐり抜けていつもの公園で事情を聞くと、ここ最近……という言い方は語弊があるな。昨日、『月曜日』の朝にアーシアがやってたことと言うのが堕天使達が根城にしていたらしい廃教会の清掃だったのだとか。
「本当は良くないって再三部長には言われたんですけれど、汚いまま放置されてるのがなんだか忍びなくて……」
「うーん、気持ちは分からないでもないけれど」
なお部長は『交渉材料の1つにはなるかしら?』ということでアーシアに教会の掃除……というか維持管理をOKしたのだとか。ふむ、教会勢力との交渉で使える……のか? 悪魔に神の家を綺麗にされるとか噴飯モノだと思うんですが。
「名目上、堕天使様達がなにかの企みに使った可能性がある為、その調査の一環で……ということにするらしいです」
「あぁ…………」
例の1件は僕もアーシアも無関係ではない。だからなのかアーシアの顔は若干曇ったし、僕も似たり寄ったりな顔をしてるだろう。奴さんのせいで死んだしな、僕様。
「もちろん、不埒なことは厳禁だとは思います。力こそ弱まってるとはいえ教会は神の家。常に天使様に見られている、ぐらいの認識で」
「了解了解。まあ種族単位で言うと僕達悪魔にとって天使は敵だけど、個人的にはそこまで嫌う相手でもないし、誠実に作業するとも」
しかし、そうなると僕の出番is何処? という話になる。言っちゃなんだがアーシアだって
「いえ、高さの問題でもないです。この間ようやっと背中の翼で空を飛べるようになったんですよ!」
ほら見てください!とはしゃいで飛びそうになるアーシアを必死に抑える。ほら待ちねぇアーシアさん、人払いしないうちにそんなことするんじゃありません。ほらあそこ、遊具で遊んでる小学生がなんだなんだとこっち見てるから。
「あ、ごめんなさい。イッセーさんに教えたくてつい……」
「気持ちはわかるよ、うん」
それはそれとして、僕より先に行っててビックリなんだけど。まだ僕背中の翼満足に使えないよ、ねぇ。コレが才能ってヤツ? そういや魔力関連もアーシアはテキパキ出来てたもんね……自分が凡人ってこと再認識できて嬉しいけど、ちょっとやり切れない気持ちになってくるよ。
「いやそうなってくるとマジで僕が手伝えることって……?」
「そのぅ……イッセーさんの危機察知能力をお借りしたいな、と」
「……警鐘のことか。なんかやばげなことでもあるんかい?」
瞬時に意識を第六感に集中させるが、しかしいつもの様にリンゴン鳴ってはいない。特に危険は無さそうだが……。
「名目上は調査ということなんですけれど、本当に調査しなければならない物もあるんです。本来あの廃教会では、私の神器を抜き取る儀式の準備をしてたんです」
「……あー、確かそうだったね」
聞くところによると、堕天使陣営は神器の研究がかなり進んでいるらしく、その副産物として神器をあれこれする装置も結構あるんだとか。儀式、とアーシアは言ったが、実際はそういう装置を使っての手術みたいなものだそう。
「……万が一それがあったら、確かに放置してると危ないね。抜き取ったら死ぬんだろう?」
「はい。それに抜かれた神器が悪用されないとも限りません。……私の方でも確認したのですが、特にそれらしい物はありませんでした。でもイッセーさんの警鐘なら見えない物も確認できるかも、と思って」
「よし任された。僕も無関係じゃないし、全力で手伝うよ」
まあそんな大事なもの、遺してるとは思わねぇけどな、なんて思考は口に出さず。せっかく頼られたのだから全力で付き合おう! と意気込んで廃教会に向かおうとするが…………肝心の頼ってきたアーシアが、とっても困った顔をしている。
「えっと……アーシア?」
「……ごめんなさいイッセーさん。手伝って欲しいのも嘘じゃないんですが、今日お願いしたいことは別であって」
「???」
いや本当にどうしたんだろう。なんか僕の存在がすげぇ困らせてる? どうする、消えようか? ……なーんて思考した瞬間に遠くの方から圧が飛んできた。いやもうなんでもありですねあの方。
「あうぅ……松田さんと元浜さんになんと言えば……」
「待て待て待て待て。あの馬鹿共になんか言われたんかい」
「あっ、いやその、これは内緒でっ!」
叩かずともボロがボロボロ出てくるアーシアを見て、通りでなんかアイツらがっついて来なかったな、と納得した。それがアーシアのお願いとどう繋がってるのかは謎だが。
「その……イッセーさんの元気がない、とお二人が教えてくれて」
「お、おう」
「詳しい事情は教えてくれなかったのですが、イッセーさんがお二人に対して、何か負い目に感じてるのではないか、と心配していたみたいなんです」
「…………うん」
「それで、放課後イッセーさんを連れ出して、どうにか元気付けて上げて欲しい、と頼まれたんです……」
「…………あんにゃろう」
ドエロコンビの癖に、一丁前に気ィ効かせやがって。クソ、若干涙腺緩んだじゃねぇか。
「確かに、昨日からイッセーさんの様子が少しおかしいとは思ってたんです。ずっと意識を張り詰めてるような気がして。部長に聞いても『まだ大丈夫』としか教えてくれなくて、少しモヤモヤしていたらお二人から話があって……」
「あー…………本っ当にごめん。ちょっと諸事情あって自分に対して落ち込んでてさ」
いやでもそっか、意外と隠せてるつもりだけどそうでも無いのか……イッセーくんちょっと反省。
「辛い時に周りに相談しないことを反省してくださいっ! いつイッセーさんがフラリと何処かに消えてしまうか、みんな気が気じゃないんですから!」
「そっちはごめん、次から気を付けるって言いきれないわ」
「もうっ、全くもう!」
プンスカ怒り始めたアーシアを見て、思わずクスリと笑ってしまう。誰かに心配されてるうちは、まだ行き着く果てまでは行ってない様な気がして少し楽になった。まあ気がするだけだが。
「ん! それじゃあアーシアさん、イッセーくんは元気が出たのでお礼に掃除手伝うよ。今ならなんだってできそうだよ」
「本当に元気出たんですか……? イッセーさん平気で嘘つきますし……」
「嘘じゃないヨー、普段も隠し事がメインだからそこまで嘘ついてないヨー」
「普通に嘘つくよりタチが悪くないですかソレ……」
そんなことを言い合いながら、僕らは公園を後にする。何が必要かな、こうすればいいかな、なんてちょっと未来のことを話すのは……うん、ちょっと気分が良かった。タイムループしてるだけに、余計にね。
あ、ヤバそうななブツは何もありませんでしたとさ。
あと3、4話で決着つけます……つけたい……!