兵藤一誠は『異常な普通』です   作:しにかけ/あかいひと

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その3

「……大まかな事情は分かったわ」

 

 隠す理由も無くなったので洗いざらいゲロった。元々のお隣さんがクリスチャン一家だったこと、お隣さんと撮った写真の中に推定聖剣が写ってたこと、そっから祐斗クンの様子がおかしくなったこと、警鐘が鳴ったこと。そうしたら部長も頭を抱え始めた、だよね。

 

「1個1個も中々の問題だけど、ソレとセットで貴方の警鐘が鳴ったのはまずいわね……出来うる限りの準備が必要ということでしょう?」

「おそらくは。しかも鳴り方が生命の危機的なアレです。ちょっとヤバいかもです」

 

 直ぐに起こる、という感じでは無かったのだが、逆に言うとそうでも無いのに鳴ったということだ、恐怖以外の何物でもない。

 

「というわけで教えて欲しいんです。木場祐斗と聖剣の関係。所以が分かれば何か手伝ってやれたり……暴走せずに軌道修正することだって可能でしょう?」

「止めるという考えは?」

「無いです。だって怨恨の類でしょう? 復讐はそりゃ、完遂してもらわないと」

 

 部長だって立場が許せばそうするでしょう? と追加すると、諦めたように肩を落とした。やったぜ。

 

「まあでも部長の立場を脅かす真似もしたくはないので、やはりまずは背景を知りたい。勝手に話せないというなら僕が直接じんも……聞き出しますが」

「仮にも同じ眷属相手に尋問とか言わないの、全く……」

 

 そう言って部長は一呼吸置いて語り始めた。

 

「昔、教会勢力の間で『聖剣計画』なるプロジェクトが立ち上がったの。聖剣を作る計画ではなく、聖剣を扱える人間を養成する計画よ。祐斗はその計画に参加していたの」

「…………なんかもう、色々察しましたけど続きお願いします」

 

 妄想力だけは優れてるマイブレインが答えを大まかに弾き出したことを恨みたい。気分が鬱々してくるわ。

 

「前提として、聖剣を扱える人間は数十年に1人現れるかどうか、というものよ。聖剣そのものについては、以前勉強会で少し触れたわね?」

「ええ、出自はともかく悪魔に対しての最強の兵器。神の域に到達した刀工、魔術師、錬金術師が創り上げる聖なる力のこもった武具。有名なものだと『エクスカリバー』『デュランダル』『天叢雲剣』。……そりゃ誰でも使えるものじゃないとは思ってましたが、そんな少ないんですね」

「ええ。そして教会側も聖剣をただのお飾りにするつもりは無かったみたい。それはそうよね、儀礼用でもない限り、武器なんて使って初めてそこに意味が生まれるのだから。だから使い手を沢山作ろうとしたのね」

 

 それで、その聖剣を使える人間を増やすために聖剣計画が発足した、と。

 

「聖剣計画では、主にエクスカリバーに適合できる人間を養成しようとしたらしいわ。……いえ、アレを養成と言っていいのかしら? 体のいい実験台、モルモットとなっていたと言っても過言じゃないわね」

 

 珍しく、憎々しげに顔を歪めて部長はそう吐き捨てる。祐斗クン本人から聞かされたのか、それとも部長が彼と出会った時やその後の惨状から分かったことなのか。まあ、まともな扱いはされてなかったのだろう。

 

「最終的に研究が一定の成果を得たのか、それとも全く成果を得られなかったのかは定かではないけれど、祐斗達被験者は不良品として処分されることとなったわ」

「……彼は、唯一の生き残り、と」

「ええ」

 

 確かにそれは、復讐をするに足る強烈な出自だった。……むしろ、あの程度の感情の発露で済んでるのがおかしいくらいだ。救いが無さすぎる。

 

「私があの子を生き返らせようとした時、死の淵にいながらも、死んでいった仲間達に復讐を誓っていたわ。私はそれを悲しいと感じて……せめてあの子のこれからが幸せなものであるように、そう思って接してきたわ。復讐に生きることを否定なんてできはしないけれど、それだけに生きるなんて……悲しいじゃない」

「…………全くです」

 

 そうして部長は、彼に新しい名前と新しい命、そして共に生きる仲間を与え……表面上は穏やかに生活を送れてきた、ということ。でも例の写真が切っ掛けでこのザマだ。これはちょっと申し訳なくなってくる。

 

「……すみません、もうちょっと危険予知しておけばよかったです」

「不可抗力なのでしょう? だったら謝らないでちょうだい。あんまりにも謝り癖がついてると他の悪魔に食い物にされるわよ」

「……うっす」

「それに、こちらでも全く準備をしていないというわけでもないのよ。まだ時期尚早だと思っていたけど、今こそあの子の背中を押してあげるべきなのかもしれないわね」

 

 そう言って部長は虚空から資料を取り出した。…………これは聖剣、しかもエクスカリバーについての資料!? 読み進めると、なんだこれは!? 7本!? エクスカリバーが!? 7本!?

 

「リアスせんせー! エクスカリバーが面白分裂7本分裂剣になってんですけど!?」

「ええ、先の大戦の時にエクスカリバーば粉々になったらしいのよ」

 

 先の大戦っていうと……………………ドライグ???

 

『知らん、管轄外だ。……と言ってやれれば良かったのだが。確かに余波で破壊した記憶はあるな。敢えて』

 

 あえて!? 聖剣の頂点みたいな武器を、余波で!?

 

『俺の名前と、出自から察しろ。妙なところで鈍いな貴様』

 

 えー…………と。ドライグはブリテンの……あー。成程、アーサー王以外が使ってるエクスカリバーが気に食わなかった的なアレだな? コイツ……コイツ本当……!!

 

「下手人、というか犯人は僕の相棒らしいです…………」

「……今明かされる歴史の新事実ね。聞かなかったことにしていいかしら?」

「はい、僕もそうします」

 

 顔を見合せて神妙な顔で頷く。本当に僕の相棒ろくなことしてない。ついでに些か強すぎやしないか? 生物としてのスケールが違い過ぎる……。

 

「ともかく、エクスカリバーは破壊され、その破片からコアを作り出し、それを元に7本の剣が鍛造されたわ。それがそこにある7本のエクスカリバー」

 

 えーと、どれどれ……『破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)』『擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)』『天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)』『夢幻の聖剣(エクスカリバー・ナイトメア)』『透明の聖剣(エクスカリバー・トランスペアレンシー)』『祝福の聖剣(エクスカリバー・ブレッシング)』『支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)』……効果も色々、行方も色々……色々???

 

「あの、行方不明なのが4本もあるんですけど」

「いい着眼点ね」

 

 ふふん、と勝気に笑って部長は資料から3枚の紙を抜き取る。『天閃』と『夢幻』と『透明』のエクスカリバーの資料だ。

 

「支配の聖剣だけ、どうしても行方が掴めなかったのだけど、この3本だけは行方を追えたわ。つい先日『神の子を見張る者(グリゴリ)』が教会から奪ったみたいよ」

「…………えーと、それヤバめの大事件では?」

「教会側からすれば失態どころじゃないスキャンダルよ。でも大事なのはそこじゃないわ」

「……んーと」

 

 資料によると『支配の聖剣』以外は元々教会側……正教会やらカトリックやらプロテスタントやらよく分からんが、とりあえずそっち側で確保していたと。つまり正当な所有権はヤツら様にある。んで、堕天使側が内3本を奪った、大した盗人だな。つまり正当な所有権は無いので……

 

「……教会と堕天使の問題に悪魔が介入する、という問題はあるけれど、それ以外は僕達がぶっ壊しにいっても政治的には問題無い?」

「細かく見ていけば他にも問題はあるけれど、無視できる、または相殺できる程度ね」

「相殺?」

「貴方が殺した堕天使の件よ。アレは『神の子を見張る者』側の監督不行届、つまり向こう側の落ち度よ。これを使わない手は無いわ。手放しで喜べないけれど、お手柄よイッセー」

「えへへ……」

 

 つまり、つまりだ! 彼の復讐をするタイミングは今しかない、ということだ!

 

「これが天の采配なのか、魔の采配なのか。それとも違う何かの思惑なのかは分からないけれど、またと無いチャンスよ」

 

 この情報をそのまま祐斗に伝えるわけにはいかないけどね、と少し困った表情をしつつも、部長は彼のバックアップを全力でやるつもりだ。

 

「っし! 分かりました、僕にできることはありますか!?」

「ええ。昨日のお願いを一部取り下げることになるけれど、頼みたいことがあるわ」

 

 そして部長は僕に耳打ちをし…………え、

 

「……マジっすか?」

「マジもマジ、大マジよ。流石に今から動くわけにはいかない以上、万全の状態を整える必要があるわ。しかも敵は7分割されたものとはいえ、3本のエクスカリバー。無策で向かわせないためにも、ね?」

「いやまぁ、部長がやれって言うなら僕に否はないですが…………」

 

 あまり言いたくないけど、奇策の使い方が若干僕に似てきてる。悪影響を与えてしまったか? と不安になるのだった。

 

 

◆◆◆

 

 

「というわけですまん、馬鹿共。僕はしばらく九頭龍亭に掛かりっきりになる。それと夜はしっかりと鍵を掛けて引きこもるように」

「「また何か事件かよ……」」

「言うな、自覚はある…………」

 

 翌日の昼休み、屋上にて。久しぶりの休みだうぇーい、ということで馬鹿共と遊ぶ約束をしていたのだけど、部長とのお願いでそうもいかなくなったからそれを反故することに。まあ危ないことになるかもしれないから、申し訳ないけど渡りに船感はある。

 

「日下部の野郎には?」

「今さっきメッセ飛ばした。あいつにもまたかって言われた」

「そりゃ言いたくもなる。……お前、死なないよな?」

「阿呆、まだ死ねんわ。色々やりたいこと残してるからな、死ぬに死ねん」

 

 悪魔に転生してからようやっと、ようやっと現世で未練が生まれてきたところだ、此処で死ぬのは勿体なさすぎる。

 

「ま、だから適度に楽しみに待っててくれや。面白い話があったら冗談交じりに聞かせてやる」

「あ、そういうのいいから可愛い女の子の話とか頼まぁ」

「結局ミルたんの友達もミルたんの同族ばかりだったからな。ミルキー面白いけど」

「きっちり布教されてやがる……」

 

 でもミルキーオルタナティブ面白いからね、しかたないね。

 

「じゃあ具足を身にまとった……多分武田信玄モチーフだから確か……赤糸威二枚胴具足? よく分からんけど武将スタイルでキメキメの外国人留学生スーザンの話とかになるな……」

「キワモノもキワモノじゃねぇか!! いや問題は中身だ……」

「美少女だったのか!? どうなんだ!?」

「いや、素顔見れてないし西洋甲冑を纏った堀井サンとラブラブしてるし」

「男付きかよぉぉおおおお!!!」

「西洋甲冑男ですら女の子と付き合えるのに、なんで俺たちは……っ!」

「変態だからじゃね?」

 

 僕のキビシー監視のお陰で決定的なことはしてない、具体的には覗きとか。でも普通に教室で男のバイブルおっぴろげたり猥談するから変態のレッテルは貼られてんだよな。馬鹿だなぁコイツら。

 

「そういえばイッセーも片腕に籠手つけてたよな……?」

「時代は甲冑系……?」

「嫌だよ僕は、そんな駒王戦国時代みたいな絵面」

 

 ついでに言うなら僕も全身装甲できるようになった側なので、そのことを言ったらマジでコイツら甲冑を纏ってくるかもしれん。黙っておこう。

 

「せめて見てて楽しいのにしようや。デビハンの装備みたいな」

「仮にも悪魔が悪魔とか龍とか殺すゲームを話題に出すなよ」

「ファンタジー度薄くて萎える……」

「現実なんてそんなもんよ」

 

 でも漆黒龍の忍者っぽい装備とかカッコいいし、デビハンの装備は色々好きなんだよなぁ。

 

「麒麟装備(女子)!」

「漆黒龍装備(女子)!」

「歪みねぇなお前ら」

 

 見てる分には愉快だが、まあこの分だと女の子とあれやこれやは遠そうだねぇ。

 

「ま、そんなわけで暫くは動けねえのでよろしく。では僕は部活に行ってくる」

「もっとちゃんとした女子の話を仕入れてこいよな!」

「できればタッパが小さいと尚良!」

「へいへい……」

 

 さあてと、臨時会議に出席しますかねっと。

 

 

◆◆◆

 

 

 2人と別れて旧校舎に向かう途中。ちょっとだけ警鐘が鳴った。なんというか……厄介事でも死の危機でもない初めての鳴り方で困惑。最早警鐘じゃなくてお知らせベルじゃん。

 

「なんだと思う、コレ」

『分からん。そもそも俺にはその警鐘とやらは聴こえないからな』

「感覚を共有してるというよりは、感じたものを共有してるのか。だから僕が聴いた時の反応は分かるけど、ってこと?」

『大まかにはな』

 

 どうしたもんかなぁ、参加せずに帰りたいなぁ。でも今日は参加しろって言われたしなぁ。何か鳴ったってことは何か起こるってことでしょ? 今もう別の案件抱えてるからこれ以上仕事したくないよ……。

 

『シャキッとしろ、ふにゃふにゃするな。隠蔽しているとは言え、お前は赤龍帝なのだぞ。自覚を持て自覚を』

「うぅ……相棒がスパルタ……」

 

 まあそもそも逃げる選択肢も無く、べらぼうに強い気配も無いし、多分悪魔の気配しかしないし、陰鬱な気分になりながら僕は足を進め、部室の戸を開いた。

 

「遅くなりました〜……っておお?」

 

 何かある、何かあると思っていたがオカ研部以外に、生徒会長と……お、これはこれは!

 

「匙クンじゃーん! え、超久々、というか駒王学園だったんだいがーい!」

「げっ、兵藤……」

「げっ、とはなんだ、げとは。昔共闘した仲じゃんかよ仲良くしようぜ〜」

「うるせえ近寄るなこの悪魔の赤パーカー! 共闘というかあの時はお前がひたすら悪魔だっただけじゃねぇか!!」

「悪魔ですが?」

「生物的な意味じゃなくて性根の話だこの悪魔!」

 

 やだ辛辣、聞きまして奥様? と部活の仲間に目線をやると、テンションがカス状態の祐斗クン含めて全員から視線を逸らされた。解せぬ。

 

「でも元気してたんだ、良かったよ。あの後報復とか無かったか心配だったんだ」

「報復も何も、お前がきっちりカタに嵌めたんだろ。全員他所に行っちまったよ」

「捕虜の扱いは深窓の姫の如く扱うか、ゴミカスの如く扱って根絶やしにするかの2択だぜ匙クン」

「別にお前戦争屋じゃ無いだろ……無いよな? 仮にそうだったとしたら納得もいくんだが」

 

 軽快に僕と会話を交わす彼は匙クン。下の名前は知らん。中学に成り立ての時、不良に絡まれていたのを割り込んで一緒にぶっ飛ばしたっきりの仲である、つまるところ良くは知らない相手だ。なんでだよ。

 

「というかそっちの方は覚えてくれてたみたいじゃないか、声ぐらい掛けてくれよ悲しいなぁ」

「やだよ俺があの時どれだけトラウマになったか知らねぇだろお前。赤パーカーの噂が流れてくる度、この学園でお前の名前が聞こえてくる度、ひっそりと、ひっそりと息を潜めることになった俺の気持ちが分かるか!?」

「ぶーぶー、お前には何もしてないのにぃ」

「「ごほん」」

「「あっ」」

 

 部長と生徒会長の咳払いが聞こえてきたのでとりあえずお口チャック。改めて見るが、このお方も観賞用レベルの怜悧な美人って感じよな。

 生徒会長、支取蒼那先輩。キツそうな見た目で男性人気よりも女性人気があったと記憶してる。真面目そうな見た目に違わず優等生、眼鏡の似合うバリキャリって感じでカッコいいよなぁ。

 

 …………待って欲しい。ここには悪魔の気配しかしないんだけど。

 

「部長、ねぇ部長。今ここにいる全員、悪魔の気配しかしないんですけど…………」

「あ? お前知らなかったの? ……いや、知ってたらさっきみたいにダル絡みしてくるか。今の今まで気が付かないのもどうかと思うけどよ」

「サジ、私達は表の生活以外ではお互いに干渉しないことになっているのだから仕方ないのよ。それに彼は悪魔になって日が浅いわ。気が付かなくても当然よ」

 

 そう言って彼女は僕の方を向く。なんかすごく『ジッ……』って感じで見つめられて息が詰まりそうだ。……僕なんかやったっけ? 高校に入ってからは足のつく様なやらかしはしてない、よね? 大丈夫よね?

 

「初めまして、兵藤一誠くん。噂や活躍は耳にしているわ。支取蒼那は表の名前、本名はソーナ・シトリーと言います。以後、お見知り置きを」

「ッ! これはとんだ失礼を」

 

 思わず頭を下げてしまうが、でも仕方のないことだ。だってシトリー家と言ったら、お家断絶してない悪魔の家で、かつ魔王セラフォルー・レヴィアタン様を排出した家じゃないか! つい先日魔王様とエンカウントしたから優先的に教えてもらったのもあって記憶に新し過ぎた。

 

「大丈夫、そんなに畏まらないでください。此処では一生徒会長として接してください」

「は、はぁ……」

 

 っべぇ、息が詰まるってレベルじゃねぇぞ。というかこの学園なんなの、土地は部長が治めてて生徒会長が魔王の一家? ズブズブにも程がある。というか大丈夫なの、どういう関係? と困ったので匙クンに視線を投げてみる。するとやつは困ったように顔を歪めつつも説明をしてくれた。

 

「この学校は実質グレモリー様が支配してるが、それは裏の話。表ではシトリー家が担当をしてる。つまり昼夜で役割分担してるんだ」

「ふむふむ……ああ、てことはつまり生徒会役員って全員悪魔?」

「そういうことだ。普段お前が無法やらかしてられるのも会長や俺含めたシトリー眷属が日中頑張ってるからだ。ちったぁ感謝しろ」

「いや、それは普通に感謝感激雨あられだよマジで……」

 

 ……で、だ。何故このタイミングで生徒会長、シトリー様がオカ研部に?

 

「球技大会の件で少し話をしないといけなくなったのよ。それでついでだから、新人悪魔達の紹介をということになったの」

 

 ああ成程、アーシアは先に来てたから紹介自体は済んでたのか。それで球技大会件とはなんぞや?

 

「イッセーさん、イッセーさん、朝のホームルームで先生が言ってたじゃないですか」

「朝のホームルームで? えーと……」

 

 同じクラスのアーシアに言われて今朝のことを思い出す。確か……クラス対抗、部対抗で球技大会をするとかなんとか。ああ、その球技大会のことね。

 なんとか記憶の海から目当ての物を取り出してると、生徒会長が今度は部長に向かってガンつけていた。いや単純に視線向けてるだけかも知らんけど、圧がね。

 

「先に簡単な話の内容は聞いていたけれど……どういうつもりかしら、リアス?」

「どうもこうも、先に伝えた通りよ。他の一般生徒達の為に、公平を期すため私たちオカルト研究部の球技大会、部活動対抗の部は参加を辞退するわ。その代わりと言ってはなんだけれど、球技大会の運営の手伝いをどうか? という話よ」

 

 すげぇ、もっともらしいこと言ってるけど実の所『球技大会に割く時間が無いから辞退したい』ってことだ。生徒会長はそのこと知らないだろうけど、部長の性格からしてこういうイベント事に参加しないの不自然に見えるんだろうな。というか結構距離感が親しい感じだな。幼なじみかなんかだろうかこの2人。

 

「……腹を割って話しましょう、リアス。それとも此処では話せない内容かしら?」

 

 ……あの生徒会長、なんで僕をチラッと見たんです? 僕なんにもやってない。なんにもやってないデス。

 

「まあ、らしくないことはしてる自覚はあるけれど。そんな嘘吐きを見るような目を向けることはないじゃない、ソーナ。……気になる情報があったから、夜の監視に力を入れたい。その程度よ」

 

 そう言って部長はいつもの如く虚空より資料を取り出して、それを生徒会長に手渡した。すると会長の顔がみるみると険しくなっていく……。

 

「コレの信憑性は?」

「6割ね、魔王様には既に報告済みよ」

「…本来なら学校に通うのすら時間が惜しくなるような話ね」

「でもそれを外に悟らせるわけにもいかないわ。だから可能な限り日常を送っているように誤認させる」

「……分かりました、オカルト研究部からの提案を受け入れます。此方から人員の手配は必要かしら」

「それも含めて話を詰めましょう。万全な態勢で望まないとダメだわ」

 

 い、一体何の話だろう。多分昨日の夜の話関連ではあると思うんだけど……。

 

「では、顔合わせ自体は解散ね。放課後も一旦此処に集まってちょうだい。詳細はその時話すわ。ではソーナ、朱乃、いきましょうか」

 

 そう言って部長は朱乃サンと生徒会長を連れて部室を出ていってしまった。……えーと、どうすればいいのやら。

 

「とりあえず、よろしく?」

「…よろしくしたくねぇけど、よろしく」

 

 いやはやしかし、悪魔ってのはどこにでもいるものなのだねぇ……。




頑張れ匙くん、色々と。
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