最近、別所で書こうとしていて放置していたオリジナル作品に着手し始めまして、そのせいでこちらの投稿がかなり遅れてしまいました。まあ月一投稿なので間に合ってはいるのですが(開き直り)
感想等、いつもありがとうございます。
「一日二日で収穫なんてそうそう、とは思ってたけど、こうも何もないとなァ……」
などと僕の口から愚痴が響く緊急態勢から3日後の九頭龍亭。今は自分1人しかいないから良いけど、祐斗クン辺りの前では死んでも言っちゃダメだろうね。
とはいえ箸にも棒にもかからないのは何か違うでしょうと。部長の謎情報網にも追加情報引っかかってないのがなぁ。…………敵にも手練がいるんだろうか?
『その線もあるが、それ以上に少数で行動しているか、だ』
「ああ、人員が少ない方が情報の漏れは少ないもんね」
となると、前に駒王町で活動してた堕天使グループみたいに神の子を見張る者から認知されてない活動ってこともあるのかな。その上で教会からエクスカリバーを盗める実力…………うぅむ、これは危ない香りがしてきましたね。
『くくっ、願ってもない状況なのではないか? 都合良く強い敵がまたやってくるぞ。これを乗り越えれば、お前はまた1つ強くなれる』
「阿呆抜かせクソトカゲ、平和に過ごしたいから強くなりたいのにこんな本末転倒なことがあるかよ」
『クソトカゲ言うなぶち殺すぞノータリン』
相棒との殺気のぶつけ合いも張り合いがない。なんだかんだ気心知れてきた辺りで罵倒も本音じゃないってバレてくるものだから仕方ないといえばそうなのかもね。厄介な同居
にしても本当、この『強欲』本当に便利だよ。魔力さえ潤沢ならなんでも物を2倍にできるんだから。賄い飯もこのとおり、どんぶりも含めて物理的に2倍。食べ盛りの高校生には神のような能力だ、まさに悪魔的!
『その力を小さな欲を満たすためだけにしか使わないところが、ある意味相棒らしいが』
「猫に小判、豚に真珠、兵藤一誠にチート能力。宝の持ち腐れにも程があらァな。魔力が少ないのもあって大それたことできないのもあるけど。この間の命の複製なんかはもうできないだろうしね」
『偽装を解けば自身の魔力を延々と増やしていけるが?』
「…………言われてみれば確かに」
でもそれはかなり未来の話だろうなぁと思いながら麺をすする。今日もいい出来だ、多分5秒程度背脂の炊きが甘いと脳内の平麺さんが言ってるが。
「そもそもなんでこんな能力が生まれたんだろ。概念的に合ってたのかな。籠手も力を10秒毎に2倍にしていく効果だし」
『あとは悪魔側の概念にも近い。対価を得て、物を与える。皮肉なものだな、やってることは施しを与えるどこぞの神と大差ないぞ』
「やめろお前、多方面を敵に回すぞ」
いや、回した結果がこのザマか。ざまぁwwww
『だがそれも一興かもしれん。相棒、お前神を目指してみるか? 才能あると思うぞ』
「平穏無事とは言い難い末路迎えそうでいーやーでーすーぅ。誰かが作った平和を維持して、それを享受するニートみたいな生活したいのー」
尚働くつもりはある模様。ニートとは一体。
「さしあたってはまだ解放されてない残りの大罪&虚飾を使えるようにすることだわな。とりあえず『強欲』が発現した経緯を聞くに、僕に合ったモノは解放が早そうだってことは分かったケド」
『今のところ虚飾と傲慢は早く仕上がりそうだ。逆に怠惰と嫉妬、色欲は全く進んでないな。松田と元浜辺りに指南してもらったらどうだ?』
「やだよ、そのせいで『色欲』が透視能力とスカウター能力になったらどうするんだ。使い所無いぞ」
『案外服が弾ける能力になったりしてな』
服が弾ける……なんだろう、理由は全く分からないのに使ってる図が思い浮かぶのは何故だろう? 寒気がしてきた。
「そ、それはともかくだよ。虚飾が早そうってんなら話が早い。実は考えてることがあるんだよ」
『ほう、頭の中で詳しいイメージはできるか?』
「ちょっと待ってね……」
想像する僕の考える『虚飾』の能力。僕の出した装甲板を誰かに纏わせる力。ついでに大罪の能力と倍加の能力も付与した状態で。
『大罪の力と倍加の機能は本体の装甲板を使わなければ難しそうだが……それなら意外と簡単に形にできそうだぞ。1日、といったところだ』
「わぁお。流石だね相棒」
『しかし何に使うのだ…………ああいや分かった、今イメージが届いた。聖なる力への耐性を味方につけたいのだな』
「そゆこと」
僕が心臓とそれに繋がる血管、あと骨を総とっかえしたせいで身体は徐々に人型ドラゴンのそれへと変わっていってしまっている。ちょっと力の加減ができないとか、悪魔の翼が鱗がついてきてなんだかドラゴン仕様になったりとか、結構不具合が出てきてるんだけど、完全な悪魔から外れたことでメリットも沢山あった。身体そのものが強くなっていったこともそうだが、今回の話に関係あるのは『聖なるものへの耐性』だ。
「聖水なら飲んでも舌が痺れるくらい、清めの塩も舐めると気持ち悪いだけ、十字切っても聖書を読んでも軽くデコピンされた程度。……凄いねドラゴン、耐性が素晴らしいよ」
『その分
「ああ、聖ジョージがドラゴン退治に使った聖剣……」
流石に聖剣と竜殺しのダブルパンチは耐えられそうもない……というのは置いといて。
「装甲板も多少は悪魔属性入ってるけどさ、駒のシステム使ったから。でも主成分はドラゴン、というか籠手由来のものでしょ? 実際聖水ぶっ掛けても陽の光を当ててもなんもなかったし」
『ああそうだ。お前の目論見通り、たかが聖剣の放つ気如きで装甲板が溶けることは無い。無論、それを扱う剣士が手練ならば、聖剣関係なく技量で裂かれることもあるだろうが』
「だよね。とはいえ気休め程度にはなるんじゃないかと思って」
魔力を少し込めて、『強欲』の力を使う。すると新しい強欲の板が机の上にバタリ、と現れた。
「こんな感じで量産のアテはあるからさ、それができると本当に助かるのよ」
それに、相手に無理矢理装着させてあれやこれやとゲスいことも……ケヒヒヒヒ。
『……全く、後者の方が本題な気がしてくるな。だがまあ良いだろう。自分を騙すことに定評のある我が愚かな相棒よ、その見栄に見合った虚飾を作りあげておこうではないか』
「おーう、頼まァ!」
そうしてドライグが神器の深層へと意識を落としていく。多分前と同じで『決殺の手』ベースの機能しか使えなくなるんだろうが、前と違って今なら『最善手』もあるし、あと1日だけだし、安心感は段違いファンキガイだ。
「さて、ご馳走様でした」
2杯分のラーメンを平らげ、手を合わせる。土日以外は中々開店から張り付くなんてできないけれど、これなら問題無いよねって感じの仕上がりである。僕が店長でも何とかなるもんだなぁ……。
「……おい兵藤、休憩中悪いがちょっといいか?」
「はいはい何さ匙クン」
どんぶりを食洗機のところ持ってくか、といったタイミングで店内の方から匙クンがひょこっと顔を出してきた。……なんか、凄い微妙な顔をしてるけどどうしたんだろう?
「小猫ちゃんが店に来てるんだが……これどうしたらいい?」
「あー…………事務所呼んでもらえる? あとごめん、休憩ちょっと遅くなりそうだわ」
「まあその位はいいけど……」
18時を回ろうか、というタイミングであの子が来るのは珍しい。食券を買ってたら店員サン達が席に通すだろうから、とりあえず事務所の方に通して貰うことにした。一体何があったんだろう?
◆◆◆
「……様子を見に来ました」
「ああ、そういう……」
折角来たんだしソフトクリームでもどお? と言ったら丁重に断られ、切り出された本題がコレだ。意外、と言っては失礼かもしれないが、結構見てるのな……。
「……先輩達が2人で話している時、急に祐斗先輩の様子がおかしくなって。そしたら次の日からイッセー先輩も臨戦態勢みたいな顔になっていて。極めつけは部長から警備の強化をすると言われたら、流石に誰でも怪しいと感じます。先輩達、結構顔に出るから」
「もちっと表情筋を鍛えるようにするよ」
「……しないでください。大丈夫じゃない時は、ちゃんと大丈夫じゃないって言わないとダメです」
悲しそうな顔で言われると、その……困る。無表情がデフォルトの小猫チャンがするから、ってのもそうだが、変に茶化していい類の感情じゃあないからな。前それで失敗してるし。
「んー……小猫チャンは祐斗クンの事情は知ってるということでいいのかな」
「……はい。あと、どうして様子がおかしくなったのかも、部長から話を聞きました」
てことは、だいたい全て情報の共有はされている、と。部長の右腕にあたる朱乃サンは全てを把握してるだろうし、アーシアも元関係者ってことでちょっとした聴取も兼ねて話は通っているだろう。なんかすっげぇ申し訳ねぇ、祐斗クンのことは知ってただろうけど、今回ザワザワと僕らが動き出した件に関して多分小猫チャンだけ蚊帳の外だったかもしれない。
「……それは、良くはないけどいいんです。確かに仲間が苦しんでいる時に力になれないことは悲しい、です。誰にだって言いづらいことはあります。でも、何も知らないうちに、取り返しのつかないことになったらと思うと、とても悲しいです」
……それは経験談から来る様な、重みを伴った言葉だった。この眼前の小動物を彷彿とさせる少女にも、なにかそういった過去があるんだろうと、確信するに十分な何かが、その喉から発せられていた。
「…………悪いね、暗躍はクセなんだ」
「……やめてくださいそんなクセ。普通の高校生が身に付けていいものじゃないです」
「わーってるよ、最近それでも相談する癖をつけようとしてるんだコレでも」
実際はそんなことも無いのだけど。でも運命共同体の
「でもまぁ、祐人クンだけちょっと怪しいけど、誰も死のうと思って動いてるわけじゃないから安心してよ」
「……1番心配なの、先輩なんですが。死ぬつもりが無いのは信じますけど、いざ誰かが死にそうになったら、嬉々として庇いにいくでしょう?」
「うーん反論できない!」
肉壁になれるのなら本望だ……! と思わないでもないからね。僕みたいな凡人と仲間の誰かなら、絶対仲間の誰か生かした方がいいし。
「でも多分しない方がいいんだろうなぁ……具体的には我々の上司」
「……どんなことになるかは、火を見るより明らか、です」
間違いなく同じ末路を思い描いて、揃って微妙な顔になる僕ら。やっぱ愛が深過ぎるのも考えものかもしれんね。
「…………で、本題は? まあ大凡の見当はついてるけど。ホールなら今手が足りてないから猫の手も借りたいぐらいで」
「……話が早くてとても助かります。私も、先輩達の力になってみせますから」
むん! と力こぶを作る後輩に、腕力が必要な仕事はほぼ無いんだけどな……とひっそりと思う、僕なのであった。
◆◆◆
「此処が駒王町か」
「ええ、魔王の妹であるリアス・グレモリーが根城にしてる町。……私の出身地よ」
「あー……その、なんだ。悪い場所では、ないな。うん」
「濁さなくても良いわよ、ゼノヴィア。いい思い出も辛い思い出もある、それでも私にとって大切な良いところではあるけれど。今重要なのは、此処が悪魔の根城で、堕天使コカビエルが此処で事を起こし、戦争をしようとしてることだけ」
「……そうか、助かるよ」
「でも良いところなのは本当よ? この任務が終わったら、此処に赴任とかできないかしら?」
「それは難しいだろう。何故なら我々は……」
「言ってみただけよ。願望を口にするぐらいは許されてもいいでしょう? でもなければこんな依頼、やってられないわよ。こんな、死んでこいみたいな話」
「イリナ」
「……わーってるわよ。死んでも惜しくない、信仰の為に死ねるのなら。この言葉に嘘は無いわ。もうちょっと頭使えとは思っているけれどね。全く、今になって『さんぼー』の有難みに気付くとは」
「……イッセーくん、元気にしてるかな?」
そのさんぼー、悪魔になってんだよなぁ……