兵藤一誠は『異常な普通』です   作:しにかけ/あかいひと

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ダラダラと説明を挟むのもここまで。


その12

「僕らの拠点から離れ、目立たず、それでいて根城にするにはもってこいの場所。恐らく連中はここに必ず戻ってくる。……そう言いたいんだな優男」

「うん。それでも足止めぐらいにしかならないと思うけれど……ついでに警報機みたいなものを付けておけば現場に急行できる」

 

 現状1番困っているのは敵の姿が見えないということだ。遭遇すれば戦えるけど、遭遇できなきゃどうもできん。急に暗殺されても困るし、そう考えるとこいつの提案は理解も納得もできる策だった。だが、しかし……

 

「……ブツが無いよ、悲しいことに。僕の板がそういう風に加工できればいいんだけど、現状鎧のパーツにしかできないから。やっぱそれやるにしても結構時間巻き戻さないとダメだよ」

「いいや、罠ならある。ここにね」

 

 そう言ってヤツの手の中には異様な雰囲気を放つトラバサミが急に出てきた。…………いや待て、今の出し方から察するに。

 

「『魔剣創造(ソードバース)』でやったの!? え、そんなことできたんだ!?」

「フェニックス戦で罠を扱ったのと、君の神器の使い方から着想を得て練習してみたんだ。真っ向から戦う騎士ならこんなもの必要ないけれど……僕は悪魔だからね」

「面白いことするなぁ……」

 

 しっかし板を出してあれこれし始めたの先週とかそんな話ぞ? そんな短期間で何とかなるものか? ……才能か、才能ってやつか。けっ、ツラも良くて中身も良くて才能もあるとか。暗い過去も合わさって、これもう漫画か何かの人気キャラだろ。問題はここが現実ってことだが。

 とはいえ流石に罠でも何でも作れるという訳ではないようだ。あくまで『魔剣創造』は様々な属性の魔剣を生み出す神器。その概念から飛び出たものは使えないらしい。

 

「刃を持った武器、切る機能を持ったものならば、解釈を発展させて魔剣として想像できる。今回トラバサミは例として出しただけで使わないけど…………例えば、これならば」

「…………! ワイヤーか」

 

 今度生成したのは、束になっていなければ視認することすら難しかったであろう銀色線だ。解釈が自由過ぎるが……なるほど確かに、敵を切る装備ではあるのだ。

 

「今度お前に刀○読ませてやりてぇよ……」

「名前だけは聞いたことがあるけれど、どんな物語なんだい?」

「狂った刀工の作った、刀と言っていいのか分からん物も含めた12本の刀を回収する、生きた刀剣と策士の刀狩りだよ。アレが刀扱いになるなら魔剣創造で作れるかもしれないなぁ」

 

 まあ実際は無理だろうが。というか仮にそんなことできたら困るが。言うだけ、やってみるだけならタダである。

 

「ただ罠というならこの魔剣特有の気配は宜しくないな。刃の見えない暗殺特化の属性持たせた魔剣として作れたりしないか?」

「作れはする……けれど、設置ができなければ意味が無いと思うよ」

「生成の仕方を考えろ。お前、足元から剣を生やすとかやってたろ? それと同じ要領でできるんじゃないか?」

「……!」

 

 人によって神器の熟練度の上がり方は違うけれど、僕と彼の話から考えると神器というものは結構使い手に合わせて成長してくれるものらしい。形はあったり無かったりするけれど、あくまで人の才能の延長線上にあるものなのだろう。だからそれを磨くことが……成長させることができるみたいだ。

 

「でも……かなり無茶を言うね。足元から剣を突き出せるようになったのだって、結構訓練したんだよ?」

「ンなもん分かってる。でも方向性は同じだからそん時と同じだけ時間かかるわけじゃあないだろ」

 

 それに、と言って時計をチラつかせる。それだけで祐斗クンは察したようだ、困ったような笑みを浮かべる。まあそもそも巻き戻すことを提案してきたのコイツだからな!

 

「幸い、『時間』なら沢山あらァ。出来ねぇとは言わせねぇぞ優男」

「あはは……そうだね」

 

 さァて、悪巧みの時間だ。腕がなるぞぅ!

 

 

◆◆◆

 

 

「そんなわけで、廃工場をちょっとしたトラップハウスにしてきた」

「お前って本当さぁ……」

「失礼な、提案してきたのあの優男だぞ」

 

 廃工場での作業を終えて、今度は僕自身が仕事するためにもう一度九頭龍亭へ。時間も時間なので既に小猫チャンと匙クンはシフトに入って仕事をしていた。

 

「とはいえ、そう簡単に嵌ってくれるもんなのか? 敵は手練の幹部堕天使、コカビエルだろ?」

「うん、だからワイヤー切れたら分かるようにはしてきた。メインは位置特定だからね、運良く傷付いてくれたらめっけもん程度だ」

 

 ちなみにワイヤーが切れたら分かるように……というのは、僕の悪魔用端末を複製して置いてきたってだけなんだがね。壊れて通信が途絶したら部長の方で確認できるってスンポーよ。トラップハウスにしてきたことも含めて部長には連絡済みだからな、何かあればすぐに動けるようにしないと。

 しっかし今日だけで魔力をかなり消費した、すっからかんの空っ穴だ。板の倍加を魔力の自然回復に全ツッパしてるとはいえ、僕は凡俗下級悪魔。512倍したところでたかが知れてる。

 

「……なんかお前らの話聞いてると、自分の神器をちゃんと使いこなせてる自信が無くなってくるな」

「ブツについてちゃんと知らないからなんとも言えんけど。実際どんな神器なのさ? えーっと……その……」

「『黒い龍脈(アブソープション・ライン)』な。一応、このトカゲみたいなのから黒いラインを飛ばして拘束したり、力を吸い取ることができる」

「はぇー……すっごい便利。いいな、そういうの欲しかったよ」

「……嫌味か?」

 

 本当に心の底から欲しいと思ってたのになんでこんなジト目で睨まれるんだろうか。匙クン的には僕の亜種龍の手(ということにしてる)の方が欲しかったってことか?

 

「嫌味じゃねぇよ、どっちかって言うと僕の性格的にそういうのの方が合ってんだよ。今僕の『決殺の手(トゥワイス・クリティカル・ブレイカー)』が妙なことできるのだって、僕に合わせて改造と訓練重ねてきたからで、最初はただの自分の好きな箇所を2倍にするだけのしょぼ神器だったんだ。僕の地力が高いならまだしも、搦手にも使えねぇ左腕パーツなんてあってないようなモンだっての」

 

 実際は『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』なわけだが。厄ネタの宝庫かつ普通に使えば僕なら持て余すこと間違いないトンデモジェットエンジンなわけだが。猫に小判、豚に真珠、兵藤一誠に神滅具(ロンギヌス)である。

 

「じゃあお前ならどう使うんだよコレ。羨ましがるぐらいなら使い方もパッと出てくるだろ」

 

 そう言われて少し頭を捻る。そして確かにパッと出てくるもので、

 

「まず、その神器で吸えるのは力だけなのか?」

「……あん?」

「力を吸い取るためだけのストローか、本当に? 実際の龍脈っていや、力の通るラインなのは分かるけどさ。でも色々試してみるのも手だぜ。それに吸い取る力だって種類があるだろ。大雑把な括りとしての力なのか、筋力なのか、精神力、魔力、その他諸々。ちゃんと全部試したか?」

「いや…………考えてもみなかった」

「それに、トカゲの口から出てくる『舌』なのも気になる。ソレの本質は……食べることなんじゃないか?」

「……………………」

 

 呆けた様に感心されても困るんだが。でも僕の出した疑問は、使い方を模索する材料にはなりそうだ。

 

「それにもしそういった使い方ができなかったとしても、訓練をすればできるようになるかもしれないし、そうでなくとも悪い使い方はできそうだ。龍脈っていうからには、生物相手じゃなくても……それこそ地面からだって力を吸えそうだしな。あとはそのラインとやらを切って、それをなにかに使えたりしないかとか…………まあ思いつくことは幾らでもあらァな」

「良くもまぁポンポンと出てくるな…………凡人とか言いながら、実は頭良いだろお前」

「単にオタクなだけだよ。意外に馬鹿にできないぞ、僕らもファンタジーの住人になっちまったんだからな」

 

 まあ性格も出るとは思うし……僕の場合は持ってる手札で何とかしようという思考を常にしてるから、そっち方面には適性があるのかもしれないが。足りないから頑張るんだろうな、人間ってのは。僕は悪魔だけど。

 

「……なんかこう、見せつけられた気になってくるな」

「でも必要に駆られてだからね、こんなモン必要になんかなって欲しくなかったよ僕は」

 

 しかし、アイデアだけ出してハイおしまい、というのは芸がない。朱乃サンが僕に紅茶を淹れさせる……正確には水の温度調節をする訓練をさせたように。

 僕なら吸った力を味方に送ったりしてみるとか、自分の不調を相手に押し付けるとかするが…………流石にそれを真っ直ぐな匙クンに強要するのは違うし……。

 

「そのラインって結構丈夫?」

「ん? ああ、かなり丈夫だ。少なくとも人間3人ぐらい吊って全然余裕だったからよ。俺の身体が持たねぇが」

「伸びる速度はどのぐらい?」

「測ったことねぇから分かんねぇ。けど俺の目じゃ追い切れなかったな」

「ラインは細くしたり太くしたりできる?」

「…………おい、なんか物騒なこと考えてねぇか?」

「じゃあ聞くけど僕みたいな外道戦術、やりたいと思う?」

「…………」

 

 ま、それが答えだわな。

 

「選択肢を増やすために、吸えるものを調べたり増やしたりはした方がいいと思うけど。それとは別に今からでも上手くやればラインで相手を刺突したり、ロケットパンチみたいなことができるんじゃないか? 腕の延長線みたいな感じで」

「…………ずっとラーメン食ってたらこんな発想できるようになるのか?」

「別にラーメンばっか食ってねぇわ、毎日食うもんじゃねぇよウチのラーメン。太るわ」

「仮にも店長がンなこと言うんじゃねぇよ自覚あるのか?」

 

 でも……ありがとうよ、なーんてそっぽ向いて言うもんだから、コイツ素直じゃねぇなってニヤニヤした。意外と男のツンデレも需要があるもんだな、見てて面白いし。

 

 

◆◆◆

 

 

「さーてさて、やって参りました悪魔の根城! フリードくんが戻ってきましたよー悪魔共!」

 

「うるさいぞフリード。潜入しに来ている自覚はあるのか?」

 

「自覚ゥ? そんなもん知らねーですよっと。俺っちは悪魔をたくさん殺せるっていうから乗っかっただけで、聖剣だのなんだのはそこまでキョーミねーんだよ。殺しやすくなるなら幾らでも欲しいけどな!」

 

「………………」

 

「あら? あらあらあら? ピキっちゃった? ピキっちゃったッスか? 短気は損気ですぜぇバルパーのじいさんよォ」

 

「……否、貴様の性根が終わっているのは分かっていた。私の……私達の計画を邪魔しなければそれでいい」

 

「ハッ、性根が終わってるのはお互い様だろうが。先に言っておくが……俺はテメェみたいなのも大っ嫌いだ。憎んでいると言ってもいい。老害の終わった夢に付き合わされること程面倒なことはねぇ。悪魔の根城でやるんじゃなかったら、今此処に俺はいねぇ」

 

「…………」

 

「だがま、この聖剣分程度には働いてやんよ。リベンジ……ってーのも違うが、一応前の上司をここの悪魔に殺されてるんでね。別にどーってことないタダの糞ビッチだったが、口実にはちょうどいい」

 

「ここの悪魔……リアス・グレモリーか?」

 

「いんや? 愉快なことに……『龍の手』を持っただけの下級悪魔に殺られたそーだ。それも転生したばっかりの。あっはっは、惨めったらありゃしねぇ!」

 

「笑い事ではないぞ。……本当に、やれるのだな?」

 

「やれる、じゃなくて()()んだよ。俺は悪魔を殺す。くたばって地獄に堕ちるその時まで、俺は悪魔を殺し続ける」

 

 

 

 

 

「じゃなけりゃ、俺はセンセに顔向けができねぇよ」

 

 

 

 

 




次回、開戦。
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