兵藤一誠は『異常な普通』です   作:しにかけ/あかいひと

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あけましておめでとうございます(4ヶ月遅れ)

1ヶ月1回更新とは何だったのか、母の入院とか退院とか色々あってメンタルやられてたらこのザマです、笑ってください。


その15

 

 やりやがったな、あの野郎。

 

 …………という感想が心配と共に僕を襲ったことを誰が責められようか。突如けたたましく鳴る端末、その直後に轟音と共に立ち上る赤い火柱、そして跡形もなく消えた廃教会。色々と衝撃的で、本来なら自分の復讐心を更に加速させることになっていたはずだ。そうならなかったのは主に2つの理由から。

 

 一つは、

 

『そ、そんな……イッセーさん、が……』

 

 と絶望した表情で気を失うアーシアさんの介抱でそれどころではなかったこと。

 もう一つは、

 

『……とりあえず回収はしたわ。命に別状はないけれども。全く』

 

 と、イッセー君が死の淵に自分を叩き込んだ割には()()()()()()()()()()()部長の姿を見て、もしかしたら? と思ってしまったこと。

 

 イッセー君本人は知らないだろうが……彼女はあの対ライザー・フェニックスとのレーティングゲームが終わったあと、文字通り魂の抜けたような有様だった。病室でベッドに横たわる彼に縋り付き、思い出したように淡々と涙を流す様を見て、本当に彼は酷いヤツだなぁと思ったものだ。実際、底抜けの善人であるのと同じぐらいにひとでなしではある。……数少ない友人に対して、こういうことを思うのもどうかと思うけれどね。

 

 ともかく。そういった事情から、まず間違いなくイッセー君が自爆して部長が平静でいられるわけが無い。気持ちが通じ合ったから耐えられた? そんなことはない。我が主がどれだけ我儘で欲深い方かを知ってるだけに、特に好いている相手なイッセー君に何かあって我慢するわけがないと思ってしまう。だからコレには何か裏がある。と勘繰ってしまい、一気に頭が冷えた。誰も詳しい容態を聞かない辺り、(アーシアさん以外は)察しているのだろう。

 部長と同じ程度にショックを受けそうなアーシアさんに伝えなかったのは……戦場から引っ込めるつもりだったんだろうね。自分が死に瀕すれば、彼女は必ず心を痛めて何も手がつかなくなる……そう判断したはずだ。置いていかれた側の心情をこれっぽっちも斟酌しない、心の無い心遣いが本当に彼らしい。ある種の機械的な判断をしているのかと疑う程だ。

 

 ……素直に彼の思惑に乗っかる、というのも腹立たしい話だが。コレはイッセー君が命を張って(通算3回目)作ってくれた有利な状況でもある。自惚れているわけじゃないなら、それは僕の復讐のためだ。好意を無下に……というのは違うか。好意と言うには悪辣が過ぎる。けれどその配慮を無視するような恥知らずに、僕はなれない。

 

「……分かったよ、全く。君はそういうヤツだし」

 

 

◇◇◇

 

 

「だーれがそういうヤツだって?」

「何よ急に虚空に向かって話し始めて」

「いや、なんか電波受信して……」

 

 具体的には酷いことを言ったような気がする優男からの電波である。……コレも警鐘の一環かなぁ? 能力に自覚が出ると強化されるって言うけど、マジでこの警鐘の出処は何処なのよ。

 

 まあそんな僕の占い師設定は置いとくとして、今僕らはシスターコンビに連れられて警邏に出てる最中でござい。そして2人と細かな情報交換。多分、フリード・セルゼンもコカビエルも僕ら共同で殺すことになりそうってんでね!

 

「つーかさぁ……コカビエル、バルパー・ガリレイ、フリード・セルゼンの3人だけでここ来たのかよ、いい具合に舐められてんなぁ」

「油断舐めプ大いに歓迎、でしょ? 奇襲闇討ちが上手くいくならなんだっていいわ」

「おっしゃる通りで」

「そこ、無駄口叩くな」

「「ほいほーい」」

「くっ……本当に憎たらしいほど似てるなお前たち」

 

 いやそれほどでも、と思うがそもそも無駄口、では無かったよね? いやまぁ隠密行動中に声出して話すのは確かにどうかとは思うのだけど。

 

「しっかし便利ねぇイッセー君の神器。多彩さで言えば赤龍帝とどっこいなんじゃない?」

「実物知らないからなんとも言えんのだけど、部長が言うにはそういうことらしいね。こうやって隠蔽に倍加の付与ができるのは赤龍帝の籠手ぐらいらしいし」

 

 嘘である、なんならこれが赤龍帝の籠手である。これ言ったら余計にぶっ殺されそうだから今は黙っているしかない。冥界……というか悪魔側は頭数に問題があるらしいから僕みたいなのでも抱え込まないといけないっぽいけど、天界……教会勢力は二天竜とかそれはもう不倶戴天の敵だろうしな。聞いてるのか厄介クソ強ドラゴン!?

 

『騒がなくても聞こえてる、パブリックエネミークソ人間。どちらにせよ教会的には俺達は討滅しなくてはならない世界の敵だ』

 

 しゃ、社会の敵になるほどではないだろ、多分。…………多分。

 ま、まあともかく神器の効果で認識阻害、それに敵は3人と少ないのだからそこまで気にすることは無いようにも思うのだ。……ぶっちゃけそれよりも。

 

「……ゼノヴィア女史ー。僕本当にカソック着て神父に変装してるけど大丈夫なんですかー?」

 

 そう、今の僕は影の薄い少年神父。もうちょい老けたらイリナちゃんパパに見えないことも……いや無理か。イリナちゃんパパってはイケおじでしたもの。

 

「大丈夫な要素なんて一つもない。もしバレたら間違いなく始末書ものだ」

「あ、始末書で済んじゃうんだ……」

「だがこの国には『毒を食らわば皿まで』なる格言があるのだろう? ここまで来たら徹底的にやるまでだ」

「うーん……思い切りいいなぁ」

 

 しかし、カソックで変装して何か意味があるのかね? イリナちゃん達シスターコンビもズラ被ったりメイクしたりして人相その他諸々変えてるし。

 

「単なる増援の匂わせね。あとはフリード・セルゼンは教会に対しても並々ならぬ恨みを抱えてるそうだから、嬉々として襲ってくるでしょうし」

「サラッと僕まで餌にされててウケる」

「むしろばっちこいなところあるでしょイッセー君なら」

 

 自分でやるのと他人にされるのでは心の持ちようが違うと思うのですが! いやまぁ願ったり叶ったりなのはその通りなので文句言いませんけども!

 

「でも、僕思うにフリード・セルゼン生きてたらバルパー・ガリレイの護衛に回されると思うのだけど、そこのところはどうなんだろう?」

「無いわね。あの男は結構純粋なのよ」

「純粋ィ? 純粋とは思えねぇし、文脈がどう繋がるか分からないンだけど」

「……ンー。イッセー君て、『あの人にも悲しき過去!?』みたいなのに弱いタイプだと思ってるんだケド、殺意鈍らない自信ある?」

 

 よくご存知で……と言いたいところだけど、今回ばかりはその心配は無用である。

 

「別件で、ソイツに友達の家族殺されてるんだよね。だからまァ、僕の中では一線越えてるから躊躇いも無いかな」

「あら、意外。そういうパターンもあるのね。じゃあ簡潔に説明するけれども、あの男の師匠って色んな思惑が絡まった上で悪魔に殺されてるのよね。悪魔に対して……悪魔に関わろうとする者に対して並々ならぬ殺意を抱いてるのはそれが原因」

「うっそだろおい、ここに来てアヴェンジャー追加かよ」

 

 色んな思惑絡まり過ぎてて食傷気味なんだがマジで。しかも出自的に欲しい聖剣は一つだけとも言ってたしもしかして……。

 

「ええ、言ってしまえば聖剣ガラティンはあの男の師匠の形見よ」

「湿度えっぐ」

「アンタに言われちゃ世話ねぇな」

 

 まあ、そうなると悪魔に対して並々ならぬってのは理解できる。坊主憎けりゃ袈裟まで憎いし、殺しに愉悦を感じなければやってられないってのも分かるっちゃあ分かる。筋は一応通ってるな。

 

「だからその……あの男、後暗い思惑とか嫌いなはずなのよ。どうにも師匠の聖剣使いがそういった感じで謀殺されてるみたいだから。なんでぶっちゃけコカビエルの思惑に乗っかることはあっても、バルパーに与することは無いと思っていたわ」

「だが、バルパーはヤツが食いつくに足る餌を用意していた、というわけだ。ヤツの興味はエクスカリバーにのみ向かっているため、ガラティンは研究資料の一つでしかなかったのだろう」

「うーん……というか教会さん教会さん。あんたら聖剣とかの管理がなってないのでは?」

「「悪魔に言われたくないが耳が痛い」」

 

 そうか、まあそれなら守ってやる理由もない、のか? コカビエルへの協力で義理を果たしているのだとすれば守ってやる必要まではない、か。むしろ悪魔と共倒れして死ね! って辺り。

 うーん、まあそんな話聞いても殺意は欠片も鈍らないけどね。

 

「本当に? イッセー君そういう話好きでしょう、味方する程に」

「肩入れするアヴェンジャーは決めてるし、一線越えた時点で奴ぁもう僕の思う普通の枠組みからは飛んでらぁ。同情も理解もするけど殺すしかねぇぜ」

「『理由を過去に託してる』から?」

「うん、そうそう。…………ウチの店に盗聴器でも仕掛けた?」

 

 その話、優男にしかしてないんだが。恐怖で脚がガクガクしてきた……。

 

「失礼ね、ただの敵情視察じゃない」

「めいびー諜報系の部署に所属してるヤツの敵情視察はシャレにならんのよ。まぁいいけど」

 

 もうちょっとビビりになる必要あるかもなぁ。そしたら警鐘も範囲広がってくれるだろうし。なんとかしてくれよ僕の中の占いスピリッツ!

 

「じゃっ、気合い入れて殺しますかぁ。多分バルパー・ガリレイの方はウチの優男がやってくれるでしょ」

「……思ったんだけど、私たちの行動ってグレモリー達と被らない? 一方通行でしか連絡してないんでしょ?」

 

 まあそうなんだけど、僕が適当なところで離脱するって話した時に大まかな絵図は描いているのだ。

 

「VSコカビエルは被るかもしれないけど、それはこっちも望むところ。そうなると復讐の思惑とか有利不利考慮すると貧弱……かは分からないけどインドア派と思わしきバルパー・ガリレイを殺して頭数減らすところから始めるよ。もしかしたら向こうはバルパーの護衛にフリードが付いてくると思ってるかもしれないが」

 

 フリード・セルゼンが持ってるのは聖剣ガラティン、ってのも伝えたから余計にその方向になってるだろ、多分。

 

「むしろ考慮すべきは近隣住民への被害なんだけど。この街に住んでて全く悪魔と関わりがない人ってのも少ないしね。…………ん?」

 

 フリード・セルゼンは、どんな行動を起こすだろうか? と考える。ヤツの行動基準が復讐として、師匠の死に対する報復だと考えてるならば。僕なら状況再現を行う。『自分と同じ苦しみを、お前らも味わえ』だ。師匠という枠に収めなくてもいい、そいつを育てた、そいつにとって大事な人間を殺す。

 

「…………ッ!!」

 

 冷や汗が吹き出すと共に警鐘が鳴る、そして自分を想像を裏付ける現在の状況に震えが止まらなくなる。

 

「まずい……!!」

「イッセー君!?」

 

 踵を返して僕は自宅に走って向かう。急な行動に驚かれるがそんな場合じゃない。警鐘が鳴った、即ち()()()()()()だ!! ああクソ、自分がノータリンなのが腹が立つ!!

 

「今、僕たちグレモリー眷属の中で正しく家族が近くにいるのは僕だ、僕だけだ!!」

 

 部長は御家族は冥界に、僕以外の眷属の皆は口には出さないけどどうも天涯孤独かそれに近しい連中。なら、狙えるのは……!

 

「ヤツは、僕の家族を狙っている!!」

「「!?」」

 

 僕が耐えられる限界ギリギリを脚力の強化に回し、抉れるアスファルトを気に留めず全力で駆ける。

 どうか、どうか間に合ってくれ…………!

 

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