今回こそはサクッと終わらせたい……。
その1
「ぐぇー……痛ェー……」
やぁ! 僕、兵藤一誠! どこにでもいる普通の高校2年生ェ!! しいて他の人と違う点をあげるなら、現在進行形で身体がドラゴンになっていってるコトかなっ!
『負荷を掛ける訓練をすると言ったのは貴様だろう。喚いてないで集中しろ』
そして無慈悲にも僕を追い立てるコイツは赤龍帝のドライグ。僕の左腕に眠ってるクソ強迷惑系ドラゴンだ。決して厨二病故の妄想とかではないのでそこのトコよろしくゥ。
まあそんな誰に向けてるかも分からない……強いて言うなら僕の記録帳を読んでる何某かに向けての挨拶は置いておいて。今僕は神器の訓練…………『
……勢い余って偽装解いて本来の籠手の状態で最適化したせいで一部能力が進化しちゃったみたいだからな。使い勝手が変わられると困るが……一応そんなことにはなってないみたいではある。
「えー……変わったところと更新された部分で言うと……『強欲』が僕の中のリソースじゃなくても複製の素材にできるようになった点、『虚飾』で人に装備させるだけじゃなく物を装備……というか飾り立てて強化できるようになった点、あと『傲慢』と『憤怒』が満たされたってところか。えらい強化進んだなオイ」
『それだけあの聖剣使いとコカビエルとの交戦が影響を及ぼしたということだ。精神への負荷も凄まじかったからな』
まあ満たされたからといってすぐに能力の形を作ろうとは思わないのだが、今のところ。というか持て余しそうだから一個ずつ習熟させていって使える武器に仕上げていこう。場当たり的な不意打ちであの白いヤツに勝てると思わんし。
「というか特に虚飾の強化が目覚しいよ。お前に説明された時まるでピンと来なかったんだけど…………あんな使い方できるとはねぇ」
『概念的に相性がよかったからだろうな。何でもかんでも無差別に強化できるとは思わなかったが』
物を飾り立てて強化する、と言われてもなんのこっちゃ? ってなったので試しに自転車に装甲板を何枚か吸わせて虚飾してみたら…………なんとびっくり、動力不明の自動二輪に進化しちゃったのだ。どこかの3ターン目に飛んでくる赤バイクの如き装いになったので大はしゃぎしてしまった。
それを踏まえてたくさん検証しようと、剣やら鎧やら文房具やら、本当にやって大丈夫そうな物に対して虚飾し続けたことで分かったことが幾つかあった。
1.虚飾の板(本体)を核にする必要がある(つまり同時に2つ以上の物を虚飾強化できない)
2.虚飾強化に必要な板の数は対象の質量、体積、パーツ数に比例して増える(特に複雑な物とかは100枚単位で消費する)
3.虚飾強化の制限時間はきっかり1時間
4.制限時間を過ぎれば、虚飾された物は酷く損耗もしくは破損する
5.虚飾強化に用いた装甲板は、大罪の核になってる板以外は消失する
6.大罪の核の板を虚飾強化に用いると、その能力に合わせた強化になる(要検証、今のところ能力が発現してるの強欲だけだから)
ざっと挙げるとこんな感じか。警鐘が鳴ったので念の為に複製してから検証して本当によかった。下手したら九頭龍亭の店内設備にやらかしてたかもと思うと本当に冷や汗ものだ。
『あとは俺の予測だが、お前が神器を展開している状態で触れていれば制限時間は伸びるだろう。伸ばした分物品への負担は増えそうだが』
「なんにせよ虚飾、一時だけのブーストか」
『ついでに。お前は使う予定が無いみたいだが、ガラティンなら損耗は踏み倒せるだろう。……本当に使う気は無いのか?』
「うーん……追い詰められたら使うかもだけど、やっぱ心情的に使いたくないかな、アレ」
フリード・セルゼンも、あと多分その前任者も嫌がるだろうしね……。持ってる時点で嫌がってそう? それもそう。
「ま、現状だと優男に爆発する魔剣作って貰って強欲虚飾で絨毯爆撃するのが一番無駄なく火力を出せそうだァね。秒毎に増殖するとか私聞いてない」
『サラッとリスクの踏み倒しを考えるなパブエネクソ人間。確かに魔剣創造による剣ならば壊れても問題ないだろうが、犯罪の片棒担がされる木場祐斗の身にもなれ』
「さっきガラティンで損耗踏み倒そうとしたおめーに言われたかねーよ
聖魔剣でやるって言わない点で理性が効いてるって思ってもらいたいところなんだけど! 流石に祐斗クン達の友情の結晶をこんなゲスいことに使いたくはない。
…………というかコイツ、聖書の神が亡くなった原因の一つだよな。仮に僕がパブリックエネミーだとしてもこいつはそれを越えて災害でしょ最早。
『……それはともかく』
「話逸らすな」
『それはともかく! 相棒、お前の身体の方も多少は強化された様だぞ。負荷が掛かったせいで龍化が進行したみたいだな』
「まーじで?」
人間離れしていくねぇ僕……いやまぁそのつもりで心臓も骨もやったからいいんだけどさ。
『これも俺の予測だが、9回の倍加までなら急激な強化にも耐えられるだろう。偽装状態であれば最適化も十全に使えるようになったというわけだ』
「それは結構でかいね」
9回の倍加も前までは敵に渡して破裂させる位しか使い所がなかったし、使える手札が増えるならば万々歳だ。
『だがいい事ばかりでもない。これでまた『
「うーん……それは確かに問題だねぇ」
前までなら『持て余すから要らないよ』と言えたのだが……ドライグが言うに、例の白いヤツは『禁手』してたってことで……。
『『
「つまり、逆立ちしても勝てないってことだよね……」
古傷に譲渡する戦い方もそもそも倍加分を奪われたらどうにもならんし、よしんば通っても声の若さ的に多くはなさそうで効果薄そうだもんなぁ……。
『今の状態で勝ち筋があるとするなら、ヤツらの神器に譲渡して暴走状態にすることだろう。あの神器は吸い取った力の余剰分を翼の部分から排出することで所持者の許容量を越えないように安定させている』
「つまり……排出能力を強化しまくって本体から過剰に力を抜き取るか、過剰強化で破損させて本体を破裂させるか、の2択ってわけだ」
『そういうことだ。もちろんお前も禁手化してぶつかり合うのに越したことはない為、継続して訓練はしてもらうが…………次善の策は何事にも必要だ。その場合より精密な譲渡操作が必要になる。そのために今やってもらっているのが……』
「身体の各部位に掛かる重力強化……というわけか……痛ェー…………」
そんなわけで、今やっているのが空気椅子しながら机に向かって学校の課題に取り組むというもの。その上で身体の各部位に掛かる重力を個別に倍加していくという頭の悪い訓練だ。勉強しながらなのは、余所事に気をやっていても正確な倍加譲渡をできるように、ということだ。こうやって雑談が許されてるのもそっちに意識が向かっても5分毎に倍加する箇所変えてるからなんですね……もーこのドラゴン本当に鬼。とはいえ僕の勝ち筋を模索してそのための訓練をつけてくれてるので感謝はしてるのだ。この偉大な相棒の期待に、是非とも応えたいところ。
そんなこんなで呻きながら宿題と訓練をこなし続けて現在20時。そろそろ夜の方の部活が始まるのでお開きにしないと。……というところでノックの音。
「ほーい」
「お邪魔しますイッセーさん」
入ってきたのは制服姿のアーシア。そろそろ部活だって呼びに来てくれたのかな?
「はい。そろそろ部活なので一緒に行きましょう!」
「うん、そうしようか。………………」
「どうされました?」
「いんや、アーシアも僕の心読むようになってきたなぁって……」
嘘である。いや、思ったことは本当だがじっと見つめたのはまた別の理由だ。
聖書の神の死亡の事実は、アーシアにも共有された。これはホームレスシスターズの見解を踏まえての部長の判断だ。システム関係の被害者であるアーシアは、絶対に知っておいた方がいい事実だと。
ハートが比較的強いアーシアでも、やはりずっと信仰してきた神が亡くなったというのはかなりの衝撃だったようだ。倒れそうになった彼女を抱き留めたのは記憶に新しい。
それでも彼女は強かった。亡くなった事実を受け止め、システム運営の為の槍玉に挙げられたことも受け止め。それでも前を向くと決意したのだ。…………まあ、流石に。イリナちゃんとゼノヴィア女史の励ましも大きかっただろうが。正直頭の痛い要素しかない二人だけど、この町に残ることにしてくれて本当にありがたかった。
「……まあでも、恨み言もないのはどうかと思うケド」
「? 何の話ですか?」
「こっちの話」
本当に心の底からの聖女だった彼女を悪魔堕ちさせた身としては、ちょっと心にクるものがある。もうちょっとあの元カノの殺し方考えた方がよかったと思わずにいられない。
「じゃ、僕もそろそろ準備しよっかな。……イテテ」
空気椅子を止めて、部分重力強化も解いて直立すると、関節やら筋肉やらが非常に痛い。訓練になるから回復力に倍加を振ろうか……。
「訓練お疲れ様です。私ももっと頑張らないと! というわけで、どうぞ!」
「おっ、サンキュー!」
むん、と力を込めて渡された柔らかな光。アーシアの持つ『
「……ン? 頑張るって」
「はい、木場さんやイッセーさんみたいに、私も神器の使い方を進化させていければな、と!」
私もやりますよー! と気炎万丈な彼女を見て、あの優男はともかく僕は参考にしちゃいかんぞーと思った。いや本当に、ドライグが言うに『情動の強さと悪魔の駒の性質にモノを言わせたタダの無法だ』ってことらしいし。やーん、僕ってばアウトレイジー。
「ちなみに、イッセーさんは何かアイデアがあったりしますか? 木場さんが言うには、イッセーさんのアイデア等がとても役に立ったとのことなので!」
「いや、僕何も言ってない。僕の神器の使い方見て勝手に学んでただけっていうか……」
強いて言うなら罠(魔剣)を任意の場所に出せるんじゃねぇの? 的なことは強要したケド…………。
「え、でも木場さんが鎧を作り出せるようになったのはイッセーさんのお陰だって……」
「いやいやいやいや、それ初耳なんだけど!? いつの間にそんなことやってんだよあの優男!!」
いや、大方理由は分かる。僕が『刀○』を読むの薦めたからだ! 余計なことやらかしたかもしれん…………! いつの日か銃も剣の解釈して作り出したりしかねんぞあの野郎。
「というかそもそも……僕の発想とかって悪用に寄ってるのよ。アーシアの神器見た時も『あぁ、反転とかできたら相手にダメージ与えられそう』とか『過剰回復で腐らせることとかできるのかな』とかを心の中で思ってたもん」
「それは……そのぅ……」
アーシア、ドン引きである。仕方の無いことだけど、イッセーくん泣いちゃう。
「……ごほん。まあ強化の余地があるとするなら、『回復』の解釈に入る行為で、アーシアがまだできないところにあるとは思うな」
「回復の解釈で……」
「うん。例えば……アーシアの力だと、傷を治したり、ちぎれた部分を繋ぎ合わせることとかはできるじゃない? でも、完全に欠損した部位を生やしたりとか、そういう無から有を生み出すタイプの回復はできないって言ってたよね」
「はい。何度か試してみたことはあるのですが……どうしても上手くいかなくて」
うん。なんなら今だとその手の再生治療は僕の方が上手だったりする。細胞の複製とかをちみちみやっていけば抉れた腹とかも元通りだもの。自分で実験したから間違いない! まあ流石に臓器を丸々一つ消し飛ばされたら複製する細胞無くてどうにもならんけど。
「でも解釈一つでそれをどうにかできる可能性が、神器にはあるかもしれない。祐斗クンの『
「なるほど……」
「意外と生物学とか医学とか、触りだけでも勉強すれば解釈の取っ掛りになったりするのかもね」
発想は考えるだけならタダで誰にでもできるが、その発想に輪郭を与える為には知識が必要だ。僕の場合それを補ってくれる左腕の中の相棒がいるからここまで無茶苦茶やれているのだが。ちょっとズルだよね。
「参考になりました、ありがとうございます!」
「いーえ、どういたしまして。無責任に放言しただけだから気にしないでよ。……うし、お待たせお待たせ。そろそろ行こっか」
「はい!」
さァて、久しぶりの契約業務頑張るかー!
◆◆◆
などと思っていたのだが……
「本日、部長は冥界にて先日の件の報告のため不在ですので私が指揮を取ります。祐斗くんと小猫ちゃんはいつも通りの業務をお願いしますね」
「「はい」」
「イッセーくんとアーシアちゃんは、私と一緒に『使い魔』を探しに行きましょう」
どうやら、今日は別なイベントがあるみたいだ。
どうでもいい余談ですが、実はサブ章のタイトルはデュエルマスターズの種族から取ってたりします。
感想、評価等本当にありがとうございます。励みになります。