兵藤一誠は『異常な普通』です   作:しにかけ/あかいひと

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最近観た映画は『グレムリン』です、近いうちに2も観る予定。


その2

 

「以前部長からお話があったかと思いますが、悪魔は使い魔を従えるというのが常識なのですわ」

「はい、確かに聞きました。下積み作業でやったチラシ配りなんかは使い魔にやってもらってるとか」

 

 つい先日も、装甲板不法投棄しようぜって時にその話題が出たから僕の凡人頭脳でも覚えていますことよ。

 

「ええ、そういった我々の手伝いや、情報伝達、敵などの追跡と、いてくれると本当に助かるんです」

「ということは、副部長さんも使い魔を」

「はい。私のはこの子ですわ」

 

 朱乃サンが差し出した手の中でポンっ! と煙が弾け、現れたのは手乗りサイズの可愛い鬼。

 

「わぁ〜……!」

 

 あらあら、可愛さに目をキラキラさせてますよアーシアってば。うんうん、こういうところ年相応で微笑ましいよね。…………同い年だよな、僕?

 

「他にも、部長ならば紅いコウモリの魔物。祐斗くんなら小鳥。小猫ちゃんは猫を使い魔にしていますわ」

「ふむ……話を聞いてると、やはり強い魔物とかを使い魔にするのは難しいのでしょうか? 皆さんサイズ感の小さい生物ですし」

「そんなことはありませんわ。共通して、我々悪魔は使い魔に対して何かしらの対価を渡すことで契約が成立します。中には対価などを必要としないこともあります。つまり相手の求める用件を満たしていれば、どんな相手でも可能性は0ではありません」

「ほうほう」

 

 と、言うことは……強い魔物を味方につければそいつを強化して…………ケヒヒヒヒ! 望む対価としては、使えるかどうか分からないけど、複製した片腕の一本ぐらいならいけるか? 悪魔でドラゴンとかいい感じの研究材料かつレベルアップアイテムになると思うし!

 

「先に釘を刺しておきますが、腕の一本で契約を持ちかける……などという倫理観の欠如した行動は控えてくださいね?」

 

 細められてる目がカッと開き、朱乃サンの睨みつける攻撃! こうかはばつぐんだ! いやだからなんで僕の考えてること読めるんですか皆。最近は癖とかリアクション抑えたりとか龍の気配のコントロールも頑張っているのに!

 

「まったく、日頃の行いのせいですわ。付け加えますと、あまりに強力な使い魔だとレーティングゲームなどへの参加に制限が掛けられたりもあります。なので特に強い魔物の場合は、使い魔ではなく眷属として味方にすることが多い、と補足しておきます」

「うぅーむ。まあ確かに『使い魔です!』って言って龍王とかバンバン参加させるのは、ちと面白みにかけますもんね」

「でも、イッセーさんがやってるゲームみたいに、仲間の魔物をたくさんくり出してバトルする、というのは楽しそうだな……って」

 

 おお、某携帯獣のアレね。なお、アーシアのお気に入りはラッチューくんである。ゲームの顔である以上に可愛いもんねあの電気ネズミ。

 

「もちろん、そういう使い魔を主軸にしたバトルも存在はしています。使い魔の獲得、使役、戦闘を専門とした悪魔もいるくらいなのですよ?」

「へぇ……やはり奥深いですね悪魔社会」

「今日二人の使い魔を探すにあたって協力してくれる方は、その第一人者と言っていい方です。頼もしいですわよ?」

「「おぉ〜」」

 

 なんかこう上手く表現できないけど、こういう話ってワクワクするよね。例えるなら初めての遠足とか、そんな感じの気分だ。

 朱乃サンに準備をしてもらい、僕らは待ちきれない気分で転移魔方陣の光に呑まれた。

 

 

◆◆◆

 

 

「ゲットだぜ!」

「おい、大丈夫か版権的に」

 

 飛ばされた先の森っぽいところで待っていてくれたのは、帽子の鍔を後ろ向きに被ったタンクトップの元気な中年に見える悪魔だった。おい、本当に大丈夫か。なんか確かにプロの様な気がしなくもないけど……本当に版権的に大丈夫か!?

 

「俺の名前はマダラタウンのザトゥージ! 使い魔マスター目指して修行中の悪魔だ!」

「あ、それってマサ──」

「ストップ! アーシアストップ! 口に出すとまずいって!!」

 

 ダメだろ!! この……その、色々と、ダメだろ!?

 

「まぁ、俗に言うパロディってヤツだな。出身地と名前はちゃんと本当だぜ」

「あ、あぁ…………流石にそうですよね。でも何故パロディを?」

「ここ最近の仕事の大半が、君達みたいな転生悪魔の使い魔ゲットの補助だからな。つかみとしてこれ以上はないし、内容がだいたいコレで理解してもらえるって寸法だ」

 

 有名だろ、あのゲーム。と言われて力強く頷く。僕はあのシリーズ、乾電池でゲームが動いてた時からのユーザーなのでそれはもう、心の底から理解できた。

 

「さて、余談はここまでだ。いかにも普通そうな顔のイッセーくんと、金髪美少女のアーシアちゃんだな! グレモリーさんから話は通ってるぜ!」

「ありがとうございます! よろしくお願いします!!」

「おぉ、おお!? 思ってた反応と違うんだが!!」

 

 いやもう、ちゃんと普通そうなって言ってくれるだけでこのヒトめっちゃ良いヒトだよ! ここ最近、人の心がないだの、外道だの、悪魔の中の悪魔だの、散々な言われっぷりだったからさぁ! あぁ……自尊心が満たされる……!

 

「ごめんなさいザトゥージさん。イッセーくんは普通って言われると喜ぶ変な悪魔なんですわ」

「なんと……世界は広いんだな、姫島さん」

「変な人言わないでくださいよ朱乃サン!!」

「イッセーさんは変わってるか変わってないかで言いますと…………」

「アーシアまで!?」

 

 味方だと思ってたアーシアまでそんなこと言い出してマジショック。隅に移動してイジイジする。ぶーぶー、どーせ僕は異常な普通ですよぅ……。

 

「ともあれ、二人とも転生したばかりだと聞く。だが安心しろ、俺にかかればどんな使い魔でも即日ゲットだぜ!」

 

 ……やっぱこうなんかさぁ。頼もしいのはそうなんだけど、『ゲットだぜ!』を強調されるとゾワゾワしない? 首元が特に(命の危険的サムシング)。

 

「さてさて、どんな使い魔をご所望かな? 強いの? 速いの? それとも毒持ちとか?」

「毒! いいですねぇ、謀殺にもってこいだ」

「…………姫島さん姫島さん。俺から振っといてなんだけど、この悪魔くん物騒じゃないか?」

「それはもう、イッセーくんは期待の新人ですわ。なんせ、ほぼ奸計と根性だけでフェニックスを瀕死に追い込んだ子ですからね」

「本当に転生悪魔の話なのかい? どこかの貴族悪魔の落胤とかではなく?」

「めっちゃ酷いこと言われてる……」

 

 でも確かに出自に謎はあるけど、うちの両親はちゃんと100%人間なのよね。つまり転生する前の僕も純度100%の人間。憎きクソトカゲはその結果に対して心底不思議そうに『どうしてイレギュラーは発生するんだ?』などと宣いやがった。いつか殺す。

 

「ちなみにザトゥージさんからおすすめとかはありますか?」

「お、もちろんあるぜアーシアちゃん! 俺のオススメはこれだ!」

 

 そう言ってザトゥージさんが背負ったリュックから取り出した図鑑をバン! と広げる。そこに描かれていたのは…………えらい立派なドラゴンだなぁ。警鐘も若干リンリン鳴ってらァ。

 

「龍王の一角、『天魔の業龍(カオス・カルマ・ドラゴン):ティアマット』! 伝説のドラゴンにして龍王の紅一点! そのあまりの強さから未だかつてこいつをゲットできた悪魔はいない! そりゃそうさ、なんせ魔王と同レベルと言って差し支えないからな!」

「馬鹿野郎!! 僕に対してならともかく虫も殺せそうにないアーシアにそんな物騒な伝説魔物勧めるな!!」

 

 伝説モンスター欲しがる小学生に勧める感覚で劇物勧めてんじゃあないよ!!

 

「まあまあイッセーくん、そうかっかするなよ。確かにティアマットを勧めたのはちょっとしたジョークだが、それなりに理由があってのことだ」

「ほう、じゃあ聞かせてもらおうじゃあないですか」

「使い魔の役割は大きく分けて二つある。主人の仕事を手伝うか、主人の足りないものを埋めるか。前者なら自分の性格やできることに合わせた使い魔の方がいいし、後者ならそのまま自分にできないことができる使い魔を選んだ方がいい。さっきイッセーくんはアーシアちゃんを虫を殺せそうにない、と評したな? 俺もそう思う。()()()()()()チョイスだぜ」

「………………むぅ」

 

 ふざけたこと吐かしやがったらゲンコツ落としてやろうかなって思ってたが流石はプロ。僕も思わず唸ってしまう。

 

「まあティアマットはほんの冗談としても、使い魔にドラゴンという選択はアーシアちゃんにとって悪くないと思うぜ。頼れるボディーガード、いい響きだろう?」

「たし、かに……ぐっ、僕の負けだ……っ!」

「……勝負だったんですか今の?」

「アーシアちゃん、気にしたら負けですわ。男性って時折とても馬鹿になるものですもの」

 

 と、言うわけで図鑑をペラペラと捲り、彼は次なるドラゴンを紹介してくれる。…………が。

 

「……今度も今度でトゲトゲしくて物騒だな、オイ」

「おうとも、なんせこいつも龍王とまではいかねぇが力を持った上位クラスの龍。青い雷撃を放つ、名前は文字通り蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)!」

 

 まあ成体をそのままアーシアちゃんに勧めようとは思わねぇが、と前置きしてザトゥージさんは話を進める。

 

「ちょうど、その幼体がこの森の奥深い所に飛来してきていてね。成体と較べて気性も比較的落ち着いていて、将来性もある! ゲットするにはもってこいだぜ!」

 

 どうだい、アーシアちゃん? と提案するザトゥージさんに、アーシアは何かを悩みながらうんうんと唸っている。どうしたんだろう? 僕的にはとてもいい提案じゃないかなと思うんだが。

 

「そのぅ……私にちゃんとその子の面倒が見れるでしょうか? まだ会ってもないのでこんな心配をするのもおかしな話なのですが……」

「心配はごもっとも。使い魔と付き合う上でそういう考えも大事だぜ。だがその心配は杞憂だと思うぜ。なんせ蒼雷龍は心の清い者に懐くと言われている! アーシアちゃんなら大丈夫だろう。使い魔マスターを目指す、このザトゥージの眼力がそう言っている!」

 

 結局、プロが言うならそうなのだろうということで、使い魔にするかはともかくその蒼雷龍の幼体に会ってみよう、という話になったのだった。

 

 

◆◆◆

 

 

 …………で、僕は仲間外れにされましたとさ。なんだよぅ、一人で図鑑見て待っててくれってなんだよぅ。

 

『説明されたし俺からも補足しただろう……。ドラゴンのオスは基本的に他種族の同性を嫌う。件の幼体がオスと思われる以上、お前の存在は邪魔になる』

「分かってても納得いかねぇよー……ザトゥージさんも着いてってんじゃーん。いやまああのヒトはプロ兼案内人だからいなけりゃ困るけどさァ」

 

 だからって図鑑ポイして待ってろは扱いがぞんざいじゃないかなと思うわけだよ。ドラゴンに限らず、オスはオスに厳しいってか?

 

『……で、どんなのが欲しいんだ、お前としては』

「んー……ザトゥージ理論だと、どんな使い魔でもいいってことだし」

 

 できること少ねぇし弱ぇからウマが合うならなんだっていいってことになるんだよな。

 

『先に言っておくが、ティアマットだけはやめておけ。殺されるぞ』

「お前もそんな冗談を…………え、冗談でなく?」

 

 警鐘がむっちゃリンゴン鳴ったのでドライグは大真面目に言ってるらしかった。マジかよ。

 

「え、何。生前ちょっかい掛けちゃったとか?」

『…………その、なんだ。白いのと戦うのに幾つかヤツのコレクションを融通して貰ってな。そのまま死んだもんだから』

「ド最悪なことしてやがるこのクソトカゲ」

『クソトカゲ言うな殺すぞ。…………いやすまん、反論もできん』

 

 ドラゴン相手にやっちゃいけない三ヶ条。傲慢さにケチをつける、プライドを刺激する、宝を盗む。お前が教えてくれたことだよなぁ!?

 

『……宝自体は消失するようなものではなかった故、どこかの誰かに使われているか、埋まっているかしているはずだ。まあ、気が向いたら回収してくれると助かる』

「いやまぁいいけどよォ。一蓮托生だし僕も死にたくないし怒らせたくない」

 

 となると、使い魔云々以上に接触したら死かァ。僕の人生コイツに滅茶苦茶されてんな。あ、もう人じゃなかったわ、ガハハハ!

 

「……代替案も考えなきゃな。なぁドライグ、僕の腕からものすごい魔剣作れたりしないかな?」

『やめておけ、リアス・グレモリーが凄い顔するぞ』

「だよね知ってた」

 

 とは言えいつかは試してみたいところ。ドラゴンの腕から作る魔剣とか……めっちゃ強そうじゃん? まあ複製できるからそう思えるだけかもだが。……こっそり優男に相談するか。実は魔剣創造の進化案で『素材用意して剣作れたりしない?』っての提案するつもりだったし。

 

「まあ、それはともかく今は使い魔か使い魔。流石に九頭龍亭の業務を手伝って貰うわけにもいかねぇし、それ以外だと…………今一番欲しいのは戦闘補助かそもそもシンプル強い魔物か。僕前線出るの苦手だから後衛にまわれるくらい強い魔物だといいなぁ」

『ならコレとかどうだ』

 

 そう言ってちょうど開いていたページを覗き込む。ほうほうヒュドラ…………って、

 

「馬鹿野郎、僕でも知ってるぞこのビッグネーム。九つの頭にやべぇ毒持ってるつよつよ蛇じゃねぇか」

『さっき毒に反応してただろうし、いずれお前も『九頭龍』に成り果てる。概念的に相性抜群じゃあないか』

「いやまぁそうかもだけどさぁ……」

 

 さっきのアーシアじゃないけど、面倒見きれないよめいびー。もうちょっと強くなって冥界でコイツ飼えるスペース確保してからだな。

 

『強さ、という点に重きを置くなら……ウンディーネというのも手だ。丁度近くに気配もあるしな』

「ウンディーネ? 水精霊のことよな。あんまり強いイメージがないのだけど」

『昨今のウンディーネは縄張り争いが激化して物理に特化した進化を遂げているんだ。過去の所有者の知識にあったぞ。試しに図鑑で調べてみろ』

「う、うん………………うわぁ」

 

 ペラペラとめくって該当ページ開いたら…………なにこのゴツイの。水色なだけのミルたん族じゃん。

 

『お前も水を扱うのには長けているだろう。戦力にもなるし、候補に入れるのはありなんじゃないか?』

「まあ確かに。安心感ものすごいし」

 

 じゃあちょっと足を伸ばしてみるか。えーと、悪魔側の方の端末でマップアプリ立ち上げて…………

 

 

 バチン!!!!!

 

 

「うわっ!?」

 

 端末が光を放ち爆ぜ、画面がまっ黒焦げの煙がぶしゅう。…………何、これなに?

 

『何か誤操作でもしたんじゃあないのか?』

「アホウ、そんなことするかよ」

 

 警鐘に耳を傾けてもうんともすんとも言わないし…………本当、なんなんだコレ。

 

「しかたない、あんま役に立たなかったトラップハウス作る時に複製したのがまだ余ってるしそっち使うか」

『ふむ…………』

 

 悩んでも仕方がないし、暇過ぎて仕方がないし、物理特化ウンディーネむっちゃ気になるし。一応書き置きと朱乃サンにメッセージだけ送って、僕は森の中にあるらしい泉を目指して歩き始めるのだった。

 

 

◆◆◆

 

 

『…………ウシシシシシシ!』

 

 

◆◆◆

 

 




電子ウイルスとの遭遇

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