兵藤一誠は『異常な普通』です   作:しにかけ/あかいひと

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本日2回目更新です。第4章、頑張ります!


CHAPTER4:A×A
その1


 

 神がいない世界は間違いか?

 神がいない世界は衰退する?

 

 そんなこと、どうだっていいのよ。

 

 だって…………神も悪魔も誰も彼も私を救ってはくれないもの。

 でしょう? 兵藤一誠(⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎)

 

 

◆◆◆

 

 

「はい、リアスさん足崩さない」

「…………はい」

 

 僕は今、自分の部屋の床で自分の上司を正座させている。ウケケケ、辛かろう辛かろう? 慣れてくるとそうは思わんが、痺れとの勝負は大変だよなァ?

 しかし僕とて好きでこうしているわけではない。ちょっとした嗜虐心を覗かしても本題は大真面目である。

 

「僕と貴女で勝負をしていることは忘れてはいません。僕が貴女と付き合うかどうか、それを僕の方から首を縦に振らせるという貴女の挑戦です。…………分かってます、分かってますとも。コレは貴女の温情です。その気になれば貴女は僕に命じることができますし、僕はその命令に逆らえません。告白するだけしておいて、その上で逃げようとするクソ野郎相手には非常に穏当な措置であることは重々承知しておりますとも。だから僕は今まで貴女からのアプローチを直接的に避けることはしてきませんでした」

「……………………」

「ぶっちゃけ一糸まとわぬアレで僕の寝床に潜り込んで来るのはどうなんだ、と思いましたが一応僕はソレを直接見てませんし見ないようにしてきました。婚前の女性のそーゆーのはタブーだと思っているクチなので。なのでそこはまあ…………非常に不本意ですが大目に見てました。そもそも僕が貴女に対して酷なことをしていることに端を発しているわけですからね」

「………………その、一緒にお風呂に入るのも、一緒じゃないかしら?」

「一緒じゃありません!! 何考えてんですか、うら若き乙女が不用意にそういうことをするもんじゃありません!! 見てください、貴女のせいで鼻から詰め物が外せないンですよ!!」

 

 ペシリ! と床を叩くと部長がビクリと跳ねる。怒られてビクビクしてると言うよりは床の振動で脚が痺れてるっぽいケドも!

 

「いいですか、日本の文化を都合よく解釈しちゃいかんのです! 裸の付き合いも、据え膳も、そういうこっちゃないんです! ええ、ええ、悪魔ですもの。公序良俗に反する行いをするのは正しい在り方かもしれませんが、貴女良いとこのお嬢様なんですよ!? コレが僕だからいいですけど、下手したら家名に傷、とか普通に起こりうるんですからね!?」

「イ、イッセーにしかしないもの」

「そこは疑ってもらっちゃいません。ません、が! 振る舞いと、万が一のことを考えてるんです! ……第一、この振る舞いをご家族の方に見せられるんですか?」

「…………目は、無いし?」

「この街が貴女の根城で良かったですね。そういうことですよ、全く」

 

 …………ということで、僕がのんびり風呂に入っていたところ、突入してきたリアスさんに対して鼻血を吹いて意識不明。そしてその振る舞いはどうなんだと久々に怒って注意をする、という現在である。いや、僕のせいなのは分かってるんだ。分かってるんだが……それでリアスさんが色々とダメになっていくのは違うだろ、という話。羞恥心投げ出して攻撃してくるからな、理性をもうちょっと大事にしてどうぞ。

 

「…………イッセーはこういうの、嫌だったかしら?」

「話の趣旨理解してませんねリアスさん? 以前のメイドさんここに呼びましょうか?」

「待って、それだけは勘弁してくれないかしら!?」

「全く…………僕としてはですね、そういうのは籍入れてからのお楽しみと考えてるクチなんです。先々消化されちゃたまったもんじゃないんですよ」

「…………!」

「はい立ち上がらない、あと10分正座〜! 今まで口を出してこなかった僕も悪いですけどリアスさんも反省してどうぞ」

「ひーん!」

 

 しっかしなんとまぁ。こういうのを日常と感じるようになってきた辺り…………僕も焼きが回ったのかもしれない。

 

「そんな……私もイッセーさんと一緒にお風呂に……」

「本当にやめようね、部長から悪いこと吸収するの禁止」

 

 

◆◆◆

 

 

 そして翌日の昼休み、屋上にて。

 

「…………つーわけでそろそろ理性の牙城がまずいことになってんだけど、なんか対策ない?」

「「死ね!!!」」

「純粋な殺意!?」

 

 いやそうなるのは目に見えてたけどね!? とエロバカ二人に相談してしまった己の判断を恥じる。むしろこいつらからすれば幾ら鼻血出してでも遭遇したいイベントだわな、そりゃ。

 

「というかお前……! そういうとこだぞお前……!!」

「神よ、何故このヘタレにばっかりチャンスが降り注ぐんだ!!」

「阿呆、僕は悪魔だぞ」

「じゃあこの悪魔罰してくれよ神様!!」

「神は死んだ、もう居ない」

「納得しちまったわ!!」

 

 ゼーハーゼーハーと肩で息する二人。大変そうだな、水でも飲む?

 

「お前のせいだ、お前の!」

「第一、お前も先輩のこと好きなんだろ!? くっつけよ!! 気ぶらせんな馬鹿野郎!!」

「そんでお前がもうその魔の手が他の女子に伸びることはないんだって安心させてくれよ!!」

「いつ僕がフラグ建ててきたって言うんだよ、目ん玉腐ってんのか?」

「えー、1年前の4月13日に」

「やめろ、なんか嫌な予感がするからやめろ」

 

 フラグではない、はず。はずだよね? 確かその日は野生の不良と喧嘩をした、ぐらいの記憶しかないのだけど。

 

「そもそも……俺たちはお前が女子とどうにかなることはないと安心していたから……!」

「それは僕も思う。異常な普通が聞いて呆れるよね」

「なんで好感度教える系友人が攻略されてんだよ、根性見せろよ!」

「なんでなんだろうね…………美醜的に趣味じゃないんだけど…………」

 

 事実、部長は美人が過ぎるので僕的には本当ならお相手したくない類の相手ではあるのだ。美人は3日で飽きるというが、そんな馬鹿なって話。見てるだけで十分なんだからお近付きになるとか論外オブ論外…………のはずだったんだけど。まあ、そこ抜きで惚れちゃったのだから仕方がない。

 

「…………というかそもそも。イッセーお前、なんで美人が苦手なんだ?」

「俺も、その話は聞いたことがないな」

「うぇ? ……あー、まぁ。誰にも話したことなかった、か?」

 

 いや、強いて言うならホームレスを卒業しようとしてる僕の幼なじみにはチラッと言ったことがあったかもだが……。まあ隠す必要もない、か。

 

「ちょうど、7歳頃の時分。僕は学校が終わったら直ぐに向かってた場所があった。近所の公園だ」

「あ、それもしかして」

「おっぱい紙芝居?」

「あ、知ってたの?」

 

 力強く頷く二人に、もしかしたらあの場に二人もいたのかもしれんなぁと記憶を掘り起こそうとする…………する、が思い出せん。

 

「まあ、その紙芝居の内容のせいで僕はおねショタ好きになったんだけど、それは些細なこととして」

「「いや全然些細じゃねえが!?」」

 

 ええー、スルーさせておくれよー。今回の話の本題じゃないんだよコレ。

 

「で、いつの頃からか紙芝居のおっちゃん、いなくなってたじゃん? 風の噂によると逮捕されたとからしいんだけど」

「惜しい人を亡くしたな……」

「死んでないけどな……」

「おっぱいプリン、美味しかったよな……」

「「うんうん」」

 

 あのおっちゃん、元気しているだろうか? あのリアルタッチのおっぱいに何故か魅せられたことは覚えている。おねショタの前におっぱいスキーになったのもこの辺りだったのだとは思う。

 

「というか意外だな。お前、ああいうの恥ずかしがって目を背けて、でもチラチラ見るタイプのムッツリだと思ってた」

「僕に対しての理解度おかしいなおい。そうだけども。でもあの頃は幾分か欲求に素直だったんだよ」

 

 エロスカウター:元浜の異名は伊達じゃあない。伊達であってくれと思う。

 

「で、いなくなったことなんてわからんから、学校終わったら公園でずっと探したり待ってたりしたのよ。次はいつ紙芝居やってくれるのかなって」

 

 そしたら、僕は出会ってしまったのである。

 

「出会ったって、何に?」

「タッパのデカい黒髪美女」

「なんだそれ、八尺様か?」

「…………オカルトに身を浸した今考え直すと、もしかしたらマジで八尺様だったのかもしれない」

 

 ぽぽぽぽ、とは鳴いてなかったし、ちゃんと喋ってた気がするけども。でもゴスロリに身を包んだあの長身美女を見て最初に感じたことは…………恐怖だった。

 

「いやもう、本当に怖かった。漏らしたし泣いた記憶がある。なんて言うの、生物としての格が違うっていうか」

「お、おう」

「しかもその美女、僕の頭掴んでなんかブツブツ言ってたんだよ。そりゃ逃げるくない???」

「それは、まあ……?」

「ご褒美としか……?」

「お前らどっかおかしいよ……」

 

 いや、あの圧を感じていないからこその感想かもしれん。あの圧さえなければもしかしたら夏の日のおねショタボーイミーツガールだったかもしれんしな。あの圧さえなければ。

 

「……で、その時から僕は思ったわけだ。美人は、怖い。率直にトラウマになったわけ」

「は、はぁ……」

「美人が僕みたいな普通男子に近付いて来るときは、大抵何かある。絶対腹になんか抱えてる、というかそうでなくともめちゃ怖い。もう遠くから眺めてるだけでよくね? となった」

「極端が過ぎる……過ぎるが……」

 

 しっかし、今でも鮮明に思い出せるよ。ブツブツ言ってたことも含めて。

 結局なんだったんだろうね、『尾を食む蛇の見る夢、我の夢へおまじない』って。

 

「で。それはそれとしてなんかない?」

「「食われろ」」

「まだダメなんだってば!!?」

 

 役に立たない親友共であった。

 

 

◆◆◆

 

 

 対策は建てられなくとも夜の部活の時間はやってくる。しばらくは冥界社会の常識と経営学を学べってことで座学と普通の契約業務を行ったり来たり。僕普通の高校生なんだよね? どうしてこんなことに…………。

 

「こら、余所見しない。今回、貴方が私の右腕役になる必要はないけれど、最低限の知識は無いと話についていけなくなるわよ」

「いやぁ、大まかなことが分かればいいかなって……。イリ坊に聞きゃあいいし」

「それに、あなた盛大にバラしてしまったでしょう? 自分が赤龍帝だって。そのせいで冥界も天界もてんやわんやだと聞くわ。間違いなく、今、貴方は台風の目なのよイッセー」

 

 うげぇ……嫌だなぁそんな重要ポジション。もっとモブらしいところに就けないものか? 最初、『兵士(ポーン)』に転生と聞いた時はモブだぜやった! と喜んだけど、その実情がこれじゃあなぁ。

 

「それに、悪いことばかりじゃないわ。コレは貴方の言葉を首脳陣に過不足なく伝わる良い機会よ」

「過不足なく、ですか」

「ええ。説明は必要?」

「お願いします」

 

 伊達眼鏡を掛けた女教師スタイルの部長が指示棒を使ってピシリと黒板を叩く。うーん、とっても様になってて眼福。観賞用観賞用。

 

「まずイッセー。今の貴方の発言力ってどの程度のものだと思う?」

「率直に言ってカスでしょうね。正しく辿るなら、未成年の上級悪魔の下僕の、しかも下級悪魔ですから、日本社会における一般男性よりも政治的な力は低いと考えます」

「その通り。もちろん、何かしらの方法で上乗せできなくもないけれど、そこには誰かしらの思惑も一緒に載るわ」

 

 なるほど。つまり例えば部長やお兄様が後押ししてくれたら、僕の言葉は聞いてくれるがどうしてもその裏に後押ししてくれる誰かの思惑を勘繰る。そしてその後押しが無ければそもそも聞いてくれるフェーズにすら入って貰えない、というわけだ。

 

「ええ、そういうこと。でも今回だけは違う。今回はグレモリー眷属悪魔の兵藤一誠ではなく、赤龍帝である兵藤一誠に用がある、と考えてるわ」

「それは……前大戦で二天龍が戦況を引っ掻き回したからですか」

「ええ。グリゴリ側にも白い龍がいるから、三大勢力は貴方達の動向に非常に関心があると言っていいでしょう。悪く言うなら、酷く怯えているわ」

 

 それ、あんまりいい気はしないよなぁ。お前のせいだぞクソトカゲ。

 

『お前がバラさねばこうはならなかったのだノータリン』

 

 うぐっ……いやまあ考え無しではあったかもだけど! でも必要だっただろう!?

 

『ああ、龍としてのお前…宝を守り、傲慢に振る舞う龍としてのお前ならば間違ってなかったよ。それでこそ、と喝采すら心中であげた。だが悪魔としての……体面を気にするお前としては間違っていた。だろう?』

 

 ま、まあそれはそう……なんだが。

 ともあれ話は見えた。今ならグレモリー眷属の下級悪魔という立場を吹っ飛ばして、僕の生の声が首脳陣にそのまま届くわけだ。まあ陣営とかの問題もあるから、完璧そのまま通るとは思わないけれど。でも僕の本来の立ち位置を考えると破格の待遇だ。

 

「イッセー、これは間違いなくチャンスなの。もしかしたら……貴方は白い龍と戦わずに一生を終えられるかもしれない。アレがグリゴリに所属する以上、今回の三大勢力の和平会談で決まったことには縛られる。……貴方が、戦いたくないと。平穏に一生を終えたいと宣言したら。その意思はちゃんと、皆に伝わる」

「……リアスさん」

 

 知り合った時から変わらない。このヒトは、ずっと僕の力になってくれる。……本当に、本当に嬉しい話だ。こんな僕のためなんかに……なんて思ったら怒られちゃうな。

 

 ……だが、冷静な部分の僕は思う。本当に、そんなことがありえるのだろうか? と。

 

『ああ、無いに決まっている。俺達が顔を合わせて戦わずに済んだことは一度だってない』

 

 この三大勢力会談も絶対に何かあるだろうな……なんて密かに暗い気持ちになっていたら、魔方陣を通して部長に連絡が入った。アレは確か……契約業務の追加発注かな。

 

「……残念、座学は中断ね。イッセー、申し訳ないけれど行ってもらえるかしら?」

「部長、そこは行けと命じてください。その方が僕はやる気が出るので」

 

 ああ、その方が僕は頑張れるとも。僕の心臓(いのち)は貴女のモノ。貴女のためならば……僕は世界を敵に回せるから。

 

「ふふっ、頼もしいわね。では行ってきて頂戴、イッセー。吉報、期待しているわ」

「はい、行ってきます!」

 

 そうして僕は床で光る魔方陣に飛び込んで客先に転移する。

 

 しかし何故だ、転移する瞬間に控えめだがリンゴンと警鐘が鳴っていたのは。

 




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