兵藤一誠は『異常な普通』です   作:しにかけ/あかいひと

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ここすきでニヤニヤするのが最近の楽しみです。


その8

 

 なんとか……なんとか! 貞操を守りきってからはや数日。いやなんでこう毎回僕のチェリーが危機に陥ってるのかは上司殿に問い詰めたいところ……僕なんにも悪いことしてないよねぇ!?

 ま、まあそれはさておき。一応部長の許可と祐斗クンの協力もあってガラティンを使う訓練……というよりは剣術指南か? を受けたのだが。

 

「わかっちゃいたケド驚く程才能が無いわね……」

「基礎の飲み込みは早いのだが……これでは素人に毛が生えた様なものだぞ」

「あはは……うん、これはもう根気強くやっていくしかないね」

「ぼろっくそじゃねぇか僕ちゃん」

 

 まあ、すぐに剣を扱えるようになるなら苦労はしねぇって話だよねってことでありまして。話を聞くに優男も才能がある上でとある方に稽古をつけてもらっていたと聞くし、教会の剣士勢も言わずもがなだ。そんな才能ある三人ですらコレなのだから、僕はその十倍は頑張らないとそれなりにはならないのだろうよ。悲しいねぇ……。

 

「そうなると最悪技術もクソもない技を覚えるしかないわね」

「技術もクソもない技って矛盾してない?」

「アレか……」

「アレだね……」

「なんでそこ二人は納得したように頷いてるのさ」

 

 なんかこう…本当に本当の最終手段の気配がすんなぁ! そんなんに頼らないといけないぐらいダメダメなんだね!?

 

「……で、それは?」

「最高のタイミングで全力で剣を振り抜く」

「ただの力技じゃねぇか!?」

「やァねぇ、ソレがいっちゃん大変なのよ?」

 

 あまりにも脳筋的な解決策に怒鳴るが、ちっちっちと指を振って制止してくるイリナちゃん。うぜぇ……。

 

「そもそもの話よ、イッセー君。なんで剣振るのに技術が必要だと思う?」

「効率の問題なんじゃない? 知らんけど」

「まあ、それもあるんだろうケド……ぶっちゃけると、そうしないと敵を斬れない程に人間は貧弱なのよ」

「身も蓋もない結論来たな……」

 

 いや、本当に身も蓋もないんだけど、三人とも深ァく頷いてるので一応共通見解なんだなって。

 

「流石にそこの二人程剣に磨きをかけてないから言うけど、ぶっちゃけ敵をぶっ倒す、ぶっ殺すなら剣じゃなくてもいいのよ……棍棒で叩き潰せるならそうするし。でも私にはそれに足る力が無いから剣を使ってるワケ。でもイッセー君は違うでしょ?」

「違うって……いや確かに僕は悪魔で人間よりは腕力もあるケド。でもこれから相手する様な連中ってほとんど人外……」

「アンタ、その左腕には何がいんのよ?」

 

 あっ、と思って神器を出す。赤龍帝の籠手って10秒毎に自分の力が2倍に……延々と……。

 

「…………もしかして、その、僕って究極のパワータイプ?」

「「「今更!?」」」

「全員でつっこむことないじゃん!!?」

 

 そ、そっかァ。僕、よくよく考えたら縛りプレイで今まで生きてきたと……うーん頭痛くなってきた。

 

「と、ともかく。そうなるとアンタはこれからどの体勢からでも全力で剣を振り抜く訓練と、急速倍加9回に何回でも耐える訓練、あとは絶好のタイミングを見極める訓練が必要ね。……個々はともかく、ゼノヴィアを主軸に教えていくのが無難かしら」

「だろうな。安心しろ兵藤一誠。こういうのは得意だ」

「……ああ、うん」

 

 その、確かに。ゼノヴィア女史ってパワータイプっていうか、力押し得意そうっていうか……破壊力最強のデュランダル使いだし……。

 

「よし、当面の方針は剣術について勉強しつつ、力押しで相手を切りつける術を重点的に修行って感じね。こうやって私たちも時間作るけど、自分でも常にイメージトレーニングしなさいよ」

「うい。……ありがとうね、三人とも」

 

 と、そうなるとだ。割とこの間ドライグが言ってた『ガラティンで虚飾のコスト踏み倒し作戦』も練習しておいた方がいい気がしてきたなぁ。

 

「……? いきなりなんでガラティン取り出してるのよ」

「いや、ドライグが前にガラティンなら虚飾強化を踏み倒せるって言ってたから……」

 

 えーと、廃教会には確か5枚くらい板のストックをしていたはずだから……

 

「セットNo.8」

『Frame No.8:Vanity!』

 

 隅に置いてあった装甲板と、僕の影から虚飾の板がガラティンにまとわりつき……そして表れたのが、

 

「……なにこれ」

「えらいでかい片刃の大剣ね。……リボルバー付きの」

「察するに、剣の背に付いてるこの穴から何かを噴き出して振り抜くスピードや一撃の重さの補助をするのだと思うが……」

「で、その噴き出す何かはこのリボルバー部分に装填するんだと思うんだけれど……」

 

 真っ赤な大剣……だけど装甲板で虚飾しているためか、聖剣のダメージ以外で振り回すのに支障は無い。ロマンに溢れてかっこいいとは思うんだけど……とはいえデカくない? パッと見で160センチはあるよ? 僕の身長に迫るサイズだよコレ。

 

「ドライグ、ドライグ。これ何か分かる?」

『少し待て、解析してやる。────ああ、今の話を聞いてお前の無意識がこういう風に作らねばなるまい、と判断してそうなった様だ。使い方は大方剣士共が言った通りだが、装填するのは籠手の倍加だな。最大装填数8……まあ悪くないのではないか?』

「うぅん……凄いピーキーな……?」

 

 試しに急速倍加8回を虚飾ガラティンに撃ってみると、確かにリボルバーの所に吸い込まれた感じがする。

 

「あ、ここで振り回さないでねマジで。今マジでホームレスになると困るのよ」

「前ならそんなビビんなよって言ったケド……」

 

 結果としてイリナちゃんの言ったことは大正解だったことが場所を移した後に判明する。そして……そのせいで剣士三人組が建てる訓練計画が恐ろしくハードなものになることを、この時の僕は知る由もなかったのだった……。

 

 

◆◆◆

 

 

 そして翌日…………の早朝。今日は授業参観(正確には公開授業、オープンスクールみたいなモン)なので早めに学校に、というワケではなく。どうやら僕だけ部長に呼び出しされているみたいだった。旧校舎の部室にいたのが僕と部長だけだったし。

 

「えぇと……部長。なんで僕はこんな早朝に呼び出されているのでしょうか。今5時ですよ5時」

「いつもフラフラとしてるからそのお仕置き……冗談よ、そんな嫌な顔しないで頂戴」

「いやぁ、自覚あるので余計に……」

「全くもう」

 

 可愛く僕のデコをつんと突くが、これその気になったら頭消し飛ばされるんじゃないかと思うと笑えない。そしてそんな不埒なことを考えてることがバレたみたいで部長の顔から可愛さ成分が抜けていく。あの上司殿、美人の冷たい感じの笑顔って本当に怖いんでやめてくれると助かるんですが。

 

「じゃあ失礼なことは考えないようにしなさい。……今日呼んだのは他でもない、あなたに会わせたい人物がいるわ」

「会わせたい人物……もしかして、G.Vサン?」

「ええ。都合が着いたというか……許可が出たのよ」

 

 許可が出たとはなんぞや? と思っていると部長から少し長い説明が入る。……曰く、G.Vさんとは部長の僧侶(ビショップ)。あまりにも強大な力を持っているが故に封印されていたという。

 

「はぁ……だからライザー氏とのゲームやこの間のコカビエル襲来ン時にはいなかったと」

「ええ。けれど先日、その制限を解除してもいいという許可が出たの。まあ殆ど貴方のお陰なのだけど」

「僕の?」

 

 と、言うのも。僕が今代の赤龍帝とバラしたせいで、部長は危ない部下を扱えるだけの力量があるのでは? ということになったそうで。フェニックス戦での勝利やコカビエル襲来の対処でも株を上げたみたい。うん、自分の上司が評価されるのは嬉しいンだけど、当の本人がソレを僕のお陰って言うのはなぁ…。

 

「しかし、メールでやり取りする限りそんな危険人物って感じもしませんでしたけどね、あのヒト。まあ僕みたいに劇物装備してるとかなら話も分かるというか…………もしかして、そういうことですか?」

「ええ、そうなのよ。とは言えここからの話は直接本人に聞いた方がいいかもしれないわ。なにせ今日イッセーだけしか呼んでいないのは、彼の方からイッセーを呼んでくれるなら、封印解除も前向きに受け止めるって連絡があったからなの」

「は、はァ……」

 

 なんだろう、少し嫌な予感がする。警鐘も控え目にリンリン鳴ってるから余計にそう思う。なんというか……アレだ。引きこもりをこれから相手にするような予感がとてもする。

 

「では場所を移しましょう。イッセーも噂で聞いたことがあるんじゃないかしら? この学校の旧校舎には開かずの間があるって」

「ええ、確かウチの学園の七不思議の一つとかで。なんでも夜な夜な吸血鬼が這い出てくるとかなんとか……」

「そう、その開かずの間。そこに私のもう一人の僧侶は封印されているの」

 

 そうして案内された先は、旧校舎一階の閉じられた教室のドア。確かにこの部屋だけ窓からも中が見えないし、扉も『Keep Out!!』ってトラテープ張ってあるしで異様な雰囲気あったんだよな。今なら分かるが、確かに何かしらの封印があるんだろうなってことが感じ取れる。

 

「大方の封印は解いてあるから、あとはこのテープを剥がすだけね。手伝って貰えるかしら?」

「喜んで」

 

 そんなこんなでトラテープを剥がしていき、それを部長が滅びの魔力で処理したところでノック。するとまるで女子の様な声で返答が返ってきた。

 

『……はい』

「私よ、ギャスパー。貴方の望み通り、彼を連れてきたわよ」

『あ、ありがとうございますぅ……』

 

 え、えーと……中にいるのはG.Vサンでいいんだよな? ギャスパー、の綴りが分からないけど多分イニシャルはGだろうし。

 しかしなんだ、この……さっきの予感を裏切らない構図は。まるで部長が引きこもりの息子に接してるお母さんか何かに見えてくる。

 

「じゃあ入るわね。いらっしゃい、イッセー」

「は、はい」

 

 そうして開かれた扉の先にあったのは。女の子の部屋のように可愛らしく装飾された内装と、幾つかのぬいぐるみ……そして場違い感の半端ない棺桶。そして、

 

「は……はじめましてイッセーさん。ぼ、僕はギャスパー・ヴラディと言いますぅ……」

 

 まるで人形の様な、という表現がピッタリと来てしまう赤目の金髪美少女にしか見えないナニカだった。

 

 

◆◆◆

 

 

 彼の名前はギャスパー・ヴラディ。部長の僧侶、僕がラーメン屋を悪魔家業にするまではグレモリー眷属の稼ぎ頭だったらしい男。……うん、男なんだよね? えらく出来のいい美少女人形か何かみたいな見た目してるけど、どうやら女装趣味らしい。

 

「……ちょっと待ってください。頭の中のG.Vサンと目の前の彼女……いや彼と中々結びつかないんですケド。えと、何故に女装?」

「だって、その……女の子の服の方が可愛いので……えへへ」

「そっかァ……」

 

 考えたら負けなのかもしれん。推定引きこもりなのに女装趣味とは如何に、と思ったがお口チャック。服の趣味がカワイイ系ということかもしれんしね。

 

「では改めて、僕は兵藤一誠。よろしく……えー、なんて呼べばいいんですかね」

「ギャ、ギャスパー、で大丈夫です……。あ、あと丁寧に話さなくても、大丈夫、です。僕、年下なので……」

「そ、そうか……」

 

 何話していいのか分からない……。部長も見守る姿勢で傍観してるし……うーん、うーん???

 よし、先日の仮面騎士アセンブリの話振るか!(思考停止)

 

「……先週のアセンブリどうだった?」

「さ、最高でしたよねアレ! まさか日曜日の朝にあんなのを放送するなんて攻めてるなぁって思いましたよぉ、もちろんいい意味で! 今までのカラフルなイメージがあったアセンから一転して真っ黒なブレイクトリガーを使っての変身と、機械の様な挙動から繰り出される殺戮シーン……! そして敵を手にかけてしまってボロボロになっていくアセンと、戦争だと割り切りお前のせいじゃないと言いつつも怒りと悲しみが漏れ出すヒドラ……! 戦争に対しての覚悟の差が顕著に出た、最高の回でしたね!」

「分かる、その後のブラックスニークのどの面下げてなセリフも合わせて最高に面白かった」

「あのシーン、流石にネタになったようですよぉ……もう構文として記事になってますし」

「マジか、まあそうなるよな」

 

 割と脚本家は人の心が無いし、あんな話を全力で演じる俳優の皆様方凄いなあと思ったもんよ。殺人をしてしまったとメンタルをやられ、ボロボロになっていくアセンの演技、マジで本気でメンタルやられてんじゃないのって思ったもん。すげぇ窶れてたもんね。

 そんな感じで共通の話題があると、やはり中のヒトは同じなのだという確信と共に話は弾み、気がつけば一時間ぐらいぶっ通しで話し続けていた。あ、やっべと思って部長を見たら、何故かしたり顔で頷いていた。何故…?

 

「やはり私の目に狂いは無かったようね。今のところ、ギャスパーの神器も効いていないみたいだし」

「で、ですね。正直なところ止めてしまうかも、って思ってたんですが……」

 

 止めてしまうかも、とはどういうことなのだろう? 確かにちょいちょい時計の針がカチカチと鳴るような感じはあったものの、話すのに夢中で環境音位にしか思っていなかったんだが。

 

「……イッセー、お願いがあるの」

「は、はい。なんなりと」

「この子……ギャスパーの社会復帰の手伝いをして欲しいの。おそらく、貴方が一番適任だわ」

 

 予想通りの話とはいえ、流石に驚きが勝ってギャスパーの方を見る。カチカチと、時計の音がいやにうるさく聴こえた。

 

 




虚飾ガラティンは、赤いスティールハーツと言えば伝わる人には伝わるはず。

感想等ありがとうございます、とても励みになります。
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