設定資料らしきものを見たんですけど、あれ180cmぐらいらしいですね、なっが!?
ギャスパー・ヴラディという少年はハーフヴァンパイアであるそうな。父親が吸血鬼で、母親が人間。そして、運悪く神器を持って生まれてきてしまったと。
「吸血鬼……それも名門の一族は、混ざり物を忌み嫌います。妾腹の僕は、ハーフであることも相俟って酷く差別を受けました」
「…………」
「それだけならば、僕はまだあの家にいたかもしれません。ですが僕の中の神器……僕の目がそれを許しませんでした。名を『
なるほど、それは酷く恐ろしい力だ。相対する者を問答無用で止めるような神器があれば、どれほどのことができるか。ざっと考えただけでも両手の指じゃ足りなくなる程アイデアが出てくる。
「……なるほど。負い目がある、いや復讐される謂れがあると……キミに怯えたから、放逐されたってことか」
「はい。いえ、それだけではありません。…………僕には才能があったんです。けれど才能に身体が追いついていないせいで、僕はこの目を制御することができません」
同情と同時に、『だろうな』という酷く冷めた感想が脳裏に浮かぶ。息するだけで成長する神器、無差別に何かを止めるタチの悪い爆弾。殺さずに放逐したのは慈悲か、それともこれ以上一分一秒たりとも構いたくなかったのか。多分後者だろうが。
「…………停めたくないのに、僕が力を制御できないせいで誰も彼も停めてしまうんです。傷を舐めあった友達や、僕を助けてくれた部長達も、全員停めてしまうんです。僕はこんなモノ、欲しくはありませんでした」
「分かる」
『オイ』
脳内で抗議が入るが聴こえないフリ。実際お前いない方が穏当な生き方できてたしな!! ……んー、部長と接点できてトントンか? でもなぁ。
「……しかし、そうなると不思議なのが。今のところ僕は停められた感覚がないワケよ。しかし部長やキミは暴発してるように言うし、僕が停められないことを部長もキミも知っていた。こりゃ一体どういうカラクリで?」
「それはねイッセー。貴方が例の悪魔に託された神器が原因よ」
「……あっ、『
そういえばそうだったよ。というかコレ聞いたところによるとなんかずっと禁手状態らしいんだよね、何処ぞの総督曰く。
…………時計の針が進む様なカチカチとした音コレかァ!!! 思わず時計を取り出すが、特にうんともすんとも言わない。くそう、脳裏に例の紳士悪魔がピースしてる姿がチラつくなァ!!!
「…………だいたい話が見えました。ギャスパーはそういった諸々の事情で傷心中、おそらく引きこもり。このままではまずいけれど無理をさせるわけにもいかない。となると、時停めの影響を受けず話の趣味がある程度合う僕が、彼のカウンセラーとして適任、と」
「ええ、まあイッセーが時停めに耐性が無かったとしても貴方に任せることになったと思うわ。そもそも貴方を指名したのはギャスパー自身だもの」
「えっ、あっ」
「…………こ、こっち見ないでくださぁい」
いや照れるなよ男相手に。というかアレか、メールのやり取りで時間停止能力についてどう思うってあったのそれか!? 思わずDI〇みたいでかっこいいと思うって送ったけど、こいつ吸血鬼で時間停止能力者じゃん!?
「……そうか、お前リアルDI〇だったのか」
「あんな悪のカリスマにはなれませんよぉ……アレあまり可愛くないですしぃ……」
「お前の価値基準ソコ!?」
「ひうぅ……!」
ともあれ分かった。ということならば僕に否は無い。無い、のだが…………。
「具体的にどういうことをすれば良いので?」
「特別何かをするということはないわ。ただこうやって時間を作ってこの子に会いに来て欲しいの。……事情が事情だけになるべく無理強いはしたくないけれど、世界が狭いままというのもそれはそれで問題だもの。それに、」
と言って口を噤んだ彼女を見て、続く言葉を察する。……プールサイドで話した件だ。近い先の未来、僕らがどうなるかは全くもって霧の中だ。できるうちに、できる手を打っておきたいということだろう。
「よっしゃ、不肖兵藤一誠引き受けましたとも! まぁ? 友人がわざわざ指名してくれたというなら? 満更でもありませんしねぇ?」
「うぅ……イッセーさんがいじめる……」
で、それはそれとして。
「なんかやっちゃまずいこととかってある? ほら、吸血鬼って色々あるじゃん。やっちゃダメなこととか、苦手な人ものとか。僕の場合、契約業務的にニンニクとか扱うからさ」
「あ、ニンニクなら嫌いなだけなので問題ありませんよぉ、ハーフなので」
「趣味嗜好の問題で無理なのかよ。……消臭だけはちゃんとしとくな」
他にも、デイウォーカーという特性を持った吸血鬼のハーフなので日光を浴びても灰にならない(苦手ではある)、ハーフだから血にそこまで飢えてない(そもそも血が苦手で十日に一度無理矢理飲んでるらしい)、他にもハーフであることで吸血鬼の禁則事項に関してはある程度ゆるゆるなんだとか。ある意味便利だなぁおい、雑種強勢ってか?
「じゃあまあこれからよろしく。部長、この部屋にゲームとか持ち込みたいんですがかまいませんね!!」
「いいけれど……程々にね?」
「っし!」
趣味の話はさんざっぱらしてきたし、大体の趣味は分かるぞ。さぁて、どんなの持ってこようかな〜…………。
「ボクノコト ワスレラレテル?」
「あっ」
そうだったね、お前もいたか電子妖精。
◆◆◆
「…………というわけで、しばらくしたらなんかあるから可能なら避難しといた方がいいぞ」
「「またかよ!!?」」
二人のげんなりとした叫びに僕も深く頷きたかった。気持ちはよぉく分かる。
現在7:45、学校の屋上。浮き足立ってるバカ二人を捕まえて屋上に連行して一応何があるのか報告したところ。
「この街やべぇんじゃねぇのか……? いや、悪魔が根城にしてるからそもそもやべぇのか……?」
「しかし俺たちはこの学校以外で生きられない。目の保養が…………!」
「……大概お前らもブレないよね」
まあこのくらいアホの方が生きやすいかもしれんね、と一応ポジティブに受け止める。でも年がら年中アハ〜ンな冊子持ち寄って交換会するのはよそうね?
「なにおう、お前だって乗り気な時は乗り気だろうが、このムッツリ乳魔人!」
「俺は知ってるんだからな、結局『巨乳学園2』も回収して何処かに隠してるってこと!」
「…………き、記憶にございませんねそんなこと」
いやだってさぁ、胸って素晴らしいじゃん? 神が創りたもうたそれはもう完璧な造形美じゃない? 大きくても、小さくても。張りがあっても、垂れてても。あれほど視線と意識を吸い寄せる部位もないっていうか…………。いや落ち着け兵藤一誠、だからムッツリって言われるんだぞ。
「と、ともかく! その期間どっかに避難したいってんなら部長の方で融通効かせられるから、早目に言っといてね。まあ被害があるにしても学校内に留める努力はするって言ってたし、そう酷いことにはならないと思うけど」
「いや、それは困る。コレクションを幾つか隠してんだよ」
「なんでわざわざ学校で隠すかなァ!?」
「……意外と同好の士や協力者は多いんだぞ? 『図書館』使ってるの男子だけじゃないしな」
「それ明らかに何らかの隠語だろ!? というか女子も使ってるってどういうこと!?」
「それはアレだ、美しい人生的なアレだ。お前は知らない方がいい」
「ああ。俺もナマモノはどうかと思う」
『B』eautiful 『L』ifeってことね……あとナマモノ云々は聞かなかったことにしよう。深淵覗くのが怖過ぎる。
「まあ正直俺達のことより、お前の方が心配だぜダチ公」
「日に日に窶れてるのが分かるからな。お前、目の下のクマ凄いことなってんぞ」
え、うっそマジで? とスマホ取り出して内カメ起動させるが……なんもないじゃん。
「なるほど、もしかしてって思う程度には自覚がある……と」
「はめやがなったなコノヤロウ」
「コノヤロウはこっちのセリフだボケ。あんま隠すの上手くなるなよ、いざと言うとき背中ぶっ叩けないだろうが」
「うぐ」
……相当見てられなかったんだろうか、ここ最近の僕。うーんダメだな、ネガティブになり過ぎてるのかもしれん。なんもかんもあの白い宿敵のせいだ、許せねぇ……!(所以はあるけどまだ冤罪)
「……もうちょっと素直になれというお告げかねぇ」
松田と元浜が揃って頷くのに合わせて警鐘も優しくチリンと鳴る。色々と自分がダメダメで目を当てられねぇ。
仕方ない、もうちょっと自分の欲望に素直になった方がいいのかもしれない。さしあたっては……
「諸事情あってエロに対する造詣を深めないといけないんだけど、なんかいい方法ない?」
「やべぇぞ元浜、イッセーがとうとう壊れた!?」
「正気を失ってるか、錯乱してるか……! くっ、ここまで追い詰められてたのか!」
「気持ちは分かるけど酷いこと言うねお前ら」
『色欲』の器を埋めるためになんか参考になること聞いとこ、なんて思ったら正気を疑われた件。解せぬ……。
「なーに、天変地異の前触れ?」
ガチャリ、と階段へ続くドアの音同時にやってきたのは桐生。というかコイツもコイツでひでぇこと言ってんな。
「なぁ、なぁ? 終いにゃ泣くぞ僕。テッペキハートじゃねぇのよ僕ちゃん」
「「そんなの百も承知だ」」
「え、そうなの?」
「そうだよ!?」
あーそっか、コイツは知らないから……まあいいや。情報汚染は少ない方がいい。
「……んで、何の用や桐生チャン。アーシアはここにはおらへんけど?」
「私、そんな堂島的なドラゴンになった覚えはないのよね。いや、最近三馬鹿がよく屋上に行ってるから、兵藤が押し流されてポカやらかす前に釘刺してきてって」
「僕もバカで括られるの納得できないんだけど!!?」
むしろコイツらの犯罪を予防してる側なのですが!? …………18歳以上限定の雑誌類? 知らない子ですね。
「うん、それは皆も周知の事実だけど。でも兵藤って時折とんでもないことやらかすじゃない? ほら、化学の齋藤先生のヅラフィッシング事件とか」
「いや、アレはほら。同級生の仲川エミリさんが地毛の金髪を染めろ染めろって詰められてたからちょっと痛い目見てもらおうかなって。ウチの部長とかも立派な紅髪なのにあっちにはつっこんで無かったでしょ? 権力の差なのかしらねぇ…………でもダメだよ、分かりやすいダブルスタンダードは」
それにほら、今の齋藤先生角が取れて優しくなったでしょう? とニッコリ笑うと三人とも目を逸らしやがった。なんだよぅ、ちょっとイタズラじゃん。あの後名誉毀損で訴えるって言われたし、じゃあ仲川さんのこと教育委員会に報告して大事にするが??? ってな感じで返しただけだよ?
「あんた達、ちゃんと兵藤を監視するのよ? あの時みたいに一緒になってヅラ取ってはしゃいじゃダメだからね?」
「面目ねぇ……」
「次は冷静に対処する……」
「ねぇ、ちょっと!!?」
なにさ、人を寄ってたかって劇物みたいに! 悪魔だけども!!
「それはともかくそろそろ時間だから早く教室に戻りなさい馬鹿共」
「「「うぃーす」」」
羊飼いに追い立てられる羊の如く、ゾロゾロと追い立てられて屋上を後にする。…………うん、なんだか気分も上向いたので良い感じ。持つべきものは友だねェと再確認した。
よし、じゃあ今日の公開授業も元気よく熟すとしますかァ! まあどうせウチの両親アーシアの記録を残すことに精一杯だろうけどな!!
◆◆◆
「いいですか? いま渡した紙粘土で好きなものを作ってみてください。動物でもいい。人でもいい。家でもいい。自分が今、脳に思い描いたありのままの表現を形作ってください」
『『『正気ですか!?』』』
一限目の英語の授業から既にハプニングが起きた。いや起こしたの先生なんだが。ドウシテ……???
何故か配られた小学生が扱うような袋に入った紙粘土とそれを扱うための台。続く先程のセリフに、クラス全員と後ろで参観してる方々の声が一つになった。嫌な共鳴ですなァ!
「待ってください、話を聞いてください。確かにここで終われば小学生の図画工作ですが、ちゃんと英語の授業にします。できた作品に英語で題名と、解説文を付けてください。最後にそれを発表してもらいます」
『『『う、うーん?』』』
それはそれで中学生の英語の課題学習っぽくね? と思ったが、一応英語には絡めてるので振り上げた拳も下りるというもの。皆、仕方なく紙粘土を弄る作業に入っていく。
うーん……困ったなぁ。僕芸術系はトンと向いてないっていうか、画伯ではないんだけどそもそも好んで絵を描かないっていうか
「どうしたんですか兵藤くん。珍しく頭を悩ませてますね」
「いやそりゃ頭も悩ませますが!?」
ウンウン唸ってる僕を見かねて先生がやってきたが……でもコレどうかと思いますよ公開授業でやる内容として!?
「……えー、全ての疑問をブッチした上で、そもそも何をモチーフにしたものか、と。特に今頭に浮かぶイメージも無いので」
頭を抑えつつ、とりあえず何で詰まってるかを口にする。勿論嘘だが。ずっと脳裏にあのろくでもないライバルの姿がチラついて仕方がないが、それを出力するわけにもいかない。
「ふむ。では、自分に無いものや自分と正反対なものを想像してみるのはどうでしょう? 意外と面白い方向に膨らむかもしれませんよ」
「正反対、ですか」
僕を反対にすると…………なんだろう、悪魔だから天使になるのか? そして女性。するとどうだろう、みるみるうちに脳裏であの僕を殺してくれやがった堕天使の姿が形作られていくではありませんか! …………紙粘土って乾くとヒビが入るよね、よしアイツモチーフにすっか!
いざモチーフが決まると、僕はぺたぺたと紙粘土を真剣に捏ね始めていた。台無しにするためには台がきっちりしていないといけない。丁寧に丁寧に作ってやるとも堕天使レイナーレ……!!(殺意)
骨組みが欲しいな……予備用割り箸割いて代用するか。ククク……今でも鮮明に思い出せるぜあんの怨敵の姿。
一心不乱に、簡易の骨組みに肉付けしては削り、形を整えていく。心臓が早鐘を打ち、集中力と指先の精度が研ぎ澄まされていく。
殺してやりたい、憎い、許さない、僕をこんな地獄に堕としたあの女を────
「イッセーさん!」
「……うぇっ?」
声と同時に、力強く腕を握られる。
見上げると、アーシアが心配げにこちらを見下ろしていて…………周りを見渡すと何か異様なものでも見るように、全員が引いていた。
「え、えっと……?」
「……兵藤くん。君はモチーフが決まるや否や、一心不乱にそれを作っていました」
先生に示された先、自分の手元を見れば…………それはもう立派な、ゴスロリ服に身を包んだレイナーレが出来上がっていたのだ。それはもう細部に至るまで……はーすっげ、羽もちゃんと一枚一枚作ってら。……いや待て、これ作ったのって。
「えと、コレを、僕が?」
「ええ。あまりにも鬼気迫る様だったので、止め時を見失ってしまって……」
「す、すみません! 授業の進行を邪魔してしまいました!」
「いえ、いいんですよ。異様な雰囲気ではありましたが、兵藤くんの新たな一面を見れて先生感激です。よくできていますね、その天使像」
よくできてるって……あんまりいい気分はしないなぁ。言わばコレ、僕が負の感情をこれでもかとぶつけて出来上がったブツってわけだろ? ほれみろ、バカ二人にアーシア、あと後ろでビデオカメラ構えてる父さんと母さんもなんだか心配げな表情だぞ?
「それで、題名は決めてありますか? もし決めていないようでしたら、時間も押してますし僭越ながら私が」
「…………いえ、名前は決まっている、と思います」
名付けるならば…………おそらく、
「『
本当に許さない相手は誰なのか……
感想等、本当にありがとうございます。励みになっております。