兵藤一誠は『異常な普通』です   作:しにかけ/あかいひと

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書くつもりのなかった部分が増えちまったよ……()


その10

 

「で、出来たブツがこれです」

「……意外な才能ね」

「ものすごい執念を感じますわ……」

 

 あの後、『この絵でなんか作ってくれないか!?』とか『兵藤くん、リアスお姉様のフィギュア作れないかしら!?』とか依頼がどしどし押し寄せて来たので逃げる形で部室に引っ込んだお昼休み。悪いなぁ優男、デコイをかって出てくれて助かったよ。

 んで、ちょうど部長と朱乃サンも部室にいたんで逃げてきた理由を回収してきたレイナーレフィギュアを見せつつ説明。二人とも凄い困った顔してるけど……まあそりゃそーだ。だって悪魔が天使像作ってどーすんだって話だ。

 

「まあ僕にそういう目立った才能とかある訳ないので、多分警鐘……占い師的何かの出力の結果だとは思いますが」

「仮にそうだったとして、これは何占いに該当するのかしら……?」

「か、紙粘土占い……???」

 

 甲羅に熱を入れてそのヒビの形で占う『亀卜(きぼく)』なる占いもあるのだからそういうのだってある……のかなぁ? 自分で言っててコレは無いと思った。

 

「それでイッセーくん、その紙粘土人形はどうするつもりなのですか?」

「壊します。その為に作ったので」

「ビックリするほど倒錯的ね。まあ家だろうと部室だろうと天使の人形を飾られても困るからそうするしかないのだけど……」

 

 ですよね、なんだから申し訳なくなってくらぁ。

 

「…………むぅ」

「で、なんで不機嫌そうなんですか上司殿。僕はいやですよ、粘土細工だろうと貴女の妙な姿を衆目に晒すの」

「今のところもう一回」

「ボイスレコーダー出して言うセリフじゃねぇんですよパート2」

「二人とも、お熱いのは結構なことですけれど、夫婦漫才は他所でやって貰えませんか?」

「夫婦じゃねぇですが!?」

 

 あとアンタはアンタで照れてるんじゃねーですよ上司殿。まだ早いわ、じゃねぇんだよ。

 

「ではおふざけはここまでにして……実際、それがあなたの警鐘に連なる何かの結果だと思った決め手は?」

「疑問を頭の中で浮かべたら鳴りました、本人……本人? のお墨付きです」

「でもそうなりますと……これは一体、どのような暗示なのでしょうか?」

 

 揃って三人で首を傾げる。今更死んだ堕天使が出る幕は無いのだ、二重の意味で。悪魔も天使も、死にゃあ次は無い。人間みたいに魂が残ることはなく、消失するんだとか。ある意味で人間の方が長寿かもしれんね。魂の寿命がどんなもんかは分からんけど。

 

「ああでも……これは該当するのかしら?」

「部長、なにか心当たりが……あ」

 

 とここでウチのツートップが揃って何かに思い当たった様だ。表情からして悪いことではないっぽいけれど、僕絡みでなんかあるらしい。

 

「近いうちに、熾天使ミカエルがあなたに会いに来るそうよ」

「…………なんて???」

 

 熾天使ったら、神亡き天界側のトップもトップ!! しかも実質的な熾天使のリーダーじゃねぇかミカエルっていったら!! なんで木っ端悪魔の僕に会いに来るンだよ!? お前か、お前のせいなのかドライグ!?

 

『……………』

 

 無視すんなよ、おい!?

 

「というか、そんな大事なことを何故僕に伝えてくれないんですか!? 関係無いならともかく渦中ど真ん中じゃないですか!!」

「決定事項でもないのに徒にあなたの心労増やすのもどうかと思ったのよ。確かに決まったのに伝えてなかったら私達の落ち度でしょうけれど」

「ただでさえ、白龍皇のことで悩みは尽きないのに、熾天使と遭遇ともなれば……ということです。推測するに、イッセーくんは天使に対して良い印象は無いでしょうし」

「それは……確かに、そうですね」

 

 ぶっちゃけ、言いたいことの一つや二つは余裕であるというか……。アーシアの件やイリナちゃん達の件、あとフリード・セルゼンがはぐれになった件とか根掘り葉掘り聞きたいというか……杜撰な対応に文句の一つや二つを拳を交えながら問いたいところではある。

 そんな中で、向こうに僕……下級悪魔の赤龍帝のことがどんな風に伝わってるかは分からないけれど(多分イリナちゃんが要らんことまで伝えてそうな気はする)、どんな思惑で来るのかは非常に興味がある。どの面下げて案件だ。いやまぁ向こうからしたら赤龍帝が三大勢力の味方してることの方がどの面案件かもしれないけれど。

 

「一応、向こうに貴方を害するつもりは無いから安心して大丈夫。ちょっとした政治的取引……三勢力の間で、物品、技術のやり取りをするだけよ」

「は、はぁ。それと僕になんの関係が」

「天界側から悪魔側に……と言うよりもあなたに、聖剣を一本贈る予定らしいの」

「…………」

 

 なんだろう、心当たりがあり過ぎるというか……コレ、ガラティンと引き換えに聖剣を寄越すとかいうパターンじゃなかろうか? 流石にイリナちゃんやゼノヴィア女史が僕がガラティン抱えてることをチクったとは思えないんだけど……。

 仮にバレてたとして……ガラティンをフリードとヤツの師匠の墓標にしてくれる確約が取れるなら返還しても……って

 

「ぅわっちィ!!?」

 

 突如左腕から煙がブシュウと噴き出し、明らかに肉の焼けた音と臭いが部屋に広がった。見れば手の甲に十字の紋様が浮かび上がってる……どう考えても御立腹ってヤツだ。

 

「わーッた、わーッたから!! 責任もって僕が墓標として管理するから焼くな、焦がすな!!」

 

 こうなると聖剣だろうがなんだろうが、呪いの装備と変わらんな、と手を振って熱を逃がしながら思う。くっそう、何となく愛憎入り交じった感覚ってのも分かってきたぞ畜生。

 

「あらあら……随分と嫉妬深いのですね聖剣ガラティンは」

「あ、すんません……」

 

 僕の手を取り、魔力で治療してくれる朱乃サン。ありがてぇ……痛みが和らいでいく……。

 

「ふふっ、(イッセー)くんのためならなんとやら、ですわ」

「ツッコミませんからね僕は」

 

 最近本当に距離感がちけぇというか、本当に(ソリッドブック的な)弟みたいに頭撫でたりしてくるから困るというか肝が冷える。そして僕がそんな風に内心ワタワタしてるのを愉悦してるンだからタチが悪い。やっぱドSだよこのヒト!!

 

「……ともあれ、そういう事情ならばコイツはもう占いの出力的にも必要ないということですよね。潰します」

「潰しますってあなた……あっ」

 

 手に取り、首の部分を指で摘んで……ゆっくりと、ゆっくりと力を掛けて潰す。乾いた紙粘土がひび割れ、切断ではなく圧壊によって頭と胴体が分かれ、床に落ちる。

 落下の衝撃に耐えられなかったのだろう、翼も、フリフリの装飾がされた服も割れ、飛び散り無惨にもフィギュアはその形を失った。唯一残ったのは……あの女の姿を色濃く遺した頭部だけだ。

 

「…………ふん」

 

 その頭を拾い、掌に収めてもう一度力を込めて、握り潰す。今度は時間をかけずに、一瞬で。今更紙粘土の固まった部分に負けるような皮膚でもないので痛みも傷も無いままに、パラパラとまるで砂のような粒子となって床を汚していく。

 

「……すみません、床は自分で綺麗に掃除をしま…………リアスさん?」

「……えっ、あ」

 

 詫びを入れた時に目に入った、まるで見てはいけないものを見たかのような彼女の顔がとても印象的だった。

 

 

◆◆◆

 

 

 なんだか妙に気まずくなったので掃除した後、適当言って部室を後にした。いい感じにほとぼりも冷めてるだろうとは思うけれど……昼休み、どこで時間潰したもんかな。そう思いながら旧校舎を離れて体育館の方へ足を進める。こうなるんだったらギャスパーん所に顔出しても良かったかもしれないなぁ。

 ともあれ行く宛が無いのでその辺に座って時間潰そうかと手頃なベンチに腰掛けた時、遠くの方から何やら女性の声が聴こえてきた。

 

『ソー……どこぉ……!?』

 

 なんか悲痛そうな声だなぁ、と思いながらぼーっと空を見上げる。若干ドップラー効果というか、声が近づいてきてる気がしないでもないが無視無視。

 

『恐らく無理があるぞ。声の方から魔王級の気配がする』

 

 うそでしょオイ。でもそんなドライグのセリフを肯定するように頭の奥でガンガン鳴ってるのも事実だ。……気配、薄くするか。魔力を使うと僕の練度の問題でそっから辿られるかもだから、シンプル神器の力だけで。

 

「………………」

 

 石のように、じっと息を潜めて固まる。9回分の倍加を全て僕の気配の薄さに譲渡することで、今の僕は凄腕の暗殺者よりもその辺に溶け込んでいることだろう。だが…………

 

「ソーナちゃぁぁぁあああん! どこ行ったのぉぉぉおおお!!? あっ、ソコの悪魔くん! 私の可愛い妹がどこ行ったか知らない!?」

「嘘だろ、秒でバレてんじゃねぇか…………ああいえ、そもそも貴女はどなた様で?」

 

 ドドドド! と土煙と共に現れた魔女っ子コスの悪魔女性、一瞬で息を潜めてた僕をロックオン。というか、確か支取会長って確かレヴィアタン様の妹のはずなので……魔王級ってか、マジモンの魔王じゃねぇか! なんでミルキーのコスプレしてるのかは分からないけれども!!

 

「ッ!! お初にお目に掛かりますレヴィアタン様! あと御無礼申し訳ありません!! わたくしはリアス・グレモリー様の兵士、兵藤一誠です!! 質問の返答といたしましては、シトリー様はこちらの方にはいらっしゃっておりません!!」

「あ、ごめんごめん☆ そんなきょーしゅくさせるつもりは無かったの☆ えーと、兵藤一誠くん…………もしかして、アジュカちゃんのお気に入りの赤龍帝くん?」

「えー……ベルゼブブ様が僕のことをどんな風に説明しているのか分からないのですが、一応個人的な親交があるのは、そう、だと思います」

 

 仲はいい、のか? 気に入られてるのはそうだと思うんだけど、如何せん繋がりが店主と客の関係だからなぁ。

 

「やっぱり☆ いつだったか、自分のゲームに参加させたい人間がいるんだ〜、なんて話してたのよアジュカちゃん。でもその前に悪魔に転生しちゃったから目に見えて面白くなさそうだったわ」

「ベルゼブブ様の……ゲーム?」

「あ、いっけない! 口止めされてたんだった☆」

「え、えぇ……?」

 

 もしかしたら参加させられていたかもしれないゲームのこととか、異様に軽いレヴィアタン様の態度に混乱状態一歩手前。そういえば言ってたなぁ部長。魔王様四人とも、プライベートの時は異様に態度が軽いって。

 

「と、ところで。物凄く慌てていらした様ですけれども、もしかして何かの緊急事態だったりするのでしょうか?」

「あ、そうなの! 私の可愛いソーナちゃんが逃げちゃったから、一刻も早く見つけないと!」

「は、はぁ……」

 

 よかった、なんかヤバめの緊急事態だったら足止めしたことが申し訳なくなってくるところだったケド、そういうこっちゃないらしい。えー…………この場合はどういう対応をすればいいのだろう、か。あ?

 

「…………(ギロリ)」

「………………」

 

 なんかいるー……。視界の端で茂みに隠れてる会長がいるー……。チクるなよ、ってガン飛ばして来てるー……。なんでこんな所に探しに来たんだレヴィアタン様? って思ったけどしっかり妹をチェイスしてここまで来たのね怖いなぁ!!

 

「……んん? どうしたの赤龍帝くん?」

「あー、いえ。すみません、僕転生して日が浅いこともあってシトリー様との接点が無いんですよ。だからどういうところに行きそうとか、そういうアドバイスもできないので。申し訳ありませんレヴィアタン様」

「うーん、それも仕方ないわね。おかしいなぁ……こっちの方に来たと思ったんだけど」

 

 自分の勘……というか妹センサーのようなものを信頼してるのか(実際当たってる)、ウロウロとその場を回っているレヴィアタン様。どうしよう、このままだと僕も隙を突いて逃げられないし…………。

 

「恐らくですが……自分、シトリー様の眷属の匙とはそこそこに交流がありまして。曰く生徒会の仕事は沢山あって忙しい、という話を聞いたことがあります。今日は公開授業日ということもあって、生徒会の仕事は多いと思われます。なのでもしかしたら生徒会室の方に向かわれているかも……」

「なるほどっ☆ ソーナちゃんは責任感の強い良い子だもの! きっとそうよね! ありがとう赤龍帝くん! 今度お礼に君のラーメン屋に顔を出すわ☆」

「あ、あはは……お役に立てたようなら…………行っちまったよ」

 

 此処に現れた時同様土煙たてながら風のように去っていったレヴィアタン様。ふぅ……危機は去った。ということで、

 

『Ignition Boost』『Transfer』

「っ!? 何を、」

「静かに。今、支取会長の気配の薄さに倍加の力を譲渡しましたので、今なら安全にこの場を離れられるかと」

「……そういうことでしたか。ありがとうございます。その、」

「バレるとレヴィアタン様に嘘ついたことになりますので、僕は何も見ていません」

 

 そう()()()を漏らして、ベンチでぼーっとする作業に戻る。あと15分位は時間潰したいなぁ。

 

「……………………」

「……………………」

「……………………えっと、何か?」

 

 茂みから出てきた会長、何やら難しい顔をして僕を見ている。なんだよゥ、そんな見つめても何も出ないぞ。

 

「……兵藤くんは、リアスのことが嫌いなのですか?」

「ングフッ!! ……急になんてことを聞いてくるんですか。噎せちゃいましたよ」

「今このタイミングでないと聞けないと思ったからです。あなた、私のことが苦手だから避けているのかと思っていまして」

「苦手とまでは思ってないですよ!? ただ……ちょっと鋭い視線向けてくるなぁ、とは思っていました、ハイ」

 

 あと単純になるべく頭のいいヒトの近くにはいたくないだけである。策とかのメッキ剥がれるしね!

 

「それで、どうなのでしょうか、兵藤くん」

「少なくとも美人なので趣味ではないですね」

「真面目に答えてください」

 

 一切のおふざけを許さない、と言わんばかりに彼女は眼光を光らせる。…………ああなるほど。会長にとっての部長は、僕にとってのイリナちゃんか。大切な友人、という言葉では片付けられない関係なのだろう。

 

「なら会長の方から助言してくださいよ。僕が部長に相応しい相手ではないって」

「質問の答えになっていません。私はリアスのことが嫌いなのか、と聞きました」

「………」

 

 さっきは苦手ではないと言ったが、訂正。僕はこのヒトが苦手だ。先回りした風を装って回答から逃げたのがきっちりバレている。

 

「……。ちなみに、何故そういう風に思ったのか聞いてみてもいいですか?」

「それを答えたら、兵藤くんは質問に答えてくれますか?」

「命令とあれば。僕は下級悪魔で、貴女は上級悪魔です。直属の上司の利益に反しない限り、僕は貴女の命令を遂行する義務があります」

「そんな義務は…………ないとは言えませんが。ですが私は命令するつもりはありません」

「なら僕は答えたくありません。責任も取れないのに、守りきると言いきれないのに、無責任なことは何度も言いたくないんです」

 

 事情は察せるだろう? と左腕に籠手を装備してヒラヒラと振る。

 

「……私は。あなたがリアスのことを酷く大切に思っているのだろうと確信しています。愛しているのだろうとすら思っています」

「僕は答えたくないと、」

「これは先程姉から私を匿ってくれたお礼です」

 

 困ったように眉をひそめて、しかしそれでも会長は僕の質問に答え始めた……のだと思う。だがこれだと僕が部長を嫌っている様に見える理由にはならないんじゃ……?

 

「ですが愛していることと、好き嫌いは重なる部分はあっても同じではありません。あなたは大切に思ってはいても、()()()()()()()()()()()()()()()()()

「…………」

「ライザー・フェニックス氏との一戦を記録映像で確認させてもらいました。素晴らしい戦術と、それを扱うあなたの度胸……いえ、覚悟と言った方がいいでしょう。なんとしてでも、リアスに勝利を捧げるのだという強い意志を感じました」

「それは、どうも」

 

 まるで僕を咎めている様な雰囲気を纏っているが……しかし今、支取会長から感じるのは敬意と感謝だ。チグハグしてきて頭がクラクラしてくる。このヒトは、僕に何が言いたいんだ?

 

「堕天使コカビエルにとどめを刺した手段も、後でリアスに共有してもらいました。歴戦の堕天使であるからこその弱点を突いた一手。兵藤くんがいなければ、もしかしたら私達は生きてはいなかったかもしれません」

「僕だけでも、もしかしたら無理だったかもしれません。アレは、教会の剣士達の助力があってこそです」

「ええ、そうでしょう。各々が死力を尽くした結果、()()()この危機を乗り越えるという意思があってこその勝利でしょうね。だから私はこう考えました。……あなた、本当なら自分の命を投げ捨てなくても、ライザー・フェニックス氏を倒せる算段があったのではないですか?」

 

 ……生き長らえてしまった以上、考えなかったワケではない。そして嘘偽りなく答えるなら、恐らくあった。あの時点での僕でも、ライザー氏をリタイアさせる手段はあったと思う。

 だけどそれは結果論というか……あの時の僕は、重荷を背負わせないことと、悪魔である自分を始末することに思考が行き過ぎて、どうやって自滅しながらライザー氏を落とせるかをずっと考えていた。

 

 隠すことでもないので、正直に口にした。ここまで来たら隠す方が逆に面倒だ。目の前の悪魔から逃げたい一心で、ちゃんと言葉にした。

 

「なるほど。ならば、私の勘違いだったかもしれませんね」

「……推測するに、僕は部長に傷付いて欲しいから、敢えて自死する形の戦術を選んだと、そう感じたわけですね? それ故に、僕が部長を大事に思ってはいても嫌っている、と」

「はい、今もそれを疑ってはいますが……兵藤くんは偽りなく答えてくれたと感じたので、気の所為にしておきます。……ごめんなさい、あまり答えたくない類の質問だったでしょう」

「いえ、気持ちは分かります。自分も同じ立場なら、相手を詰問していたでしょうから」

 

 僕だってイリナちゃんを無闇に傷付けてる様なヤツがいたら、問い詰めて……いや問い詰める前に処してるかもしれん。そう考えると支取会長は極めて穏当に対応してくれてると思う。

 まあそれは置いといて、ここまで来るとちゃんと最初の質問に答えた方がいいのかなぁ、と感じてきた。無責任なこと言いたくないけど、今このヒトから逃げるのもそれはそれで無責任な話だ。…………うーむ。

 

「……嫌ってくれないかな、とは常々思っています。こんな酷い男に引っかかってしまったあのヒトは、酷く不運だなとも。……僕はあのヒトが好きですが、だからこそ隣にいたくはありません。赤龍帝なんて、傍において良いことないですよ間違いなく」

「…………」

「多分僕と会長では視点が違います。僕はあのヒトに傷付いて欲しくなんかないです。そしてそれは、僕が隣にいたら叶わない願望だと思ってるんです。傷付けたい様に見えるとするならば、それは嫌って欲しいからです。こんな劇物を、早い段階で嫌いになって、放り出して、被害を最小限に抑えて欲しいだけなんです」

「……そういうことですか」

 

 酷く頭が痛そうに、会長は頭を抑えている。気持ちは分かるが……これ貴女が聞いてきたことだからな? 他人の恋路に口出しするもんじゃないよ、ホント。

 

「兵藤くんの考えは分かりました。あなたの視点ではある程度の筋が通っていることも。ですが、知っておいて欲しいことがあります」

「……それは?」

「以前、リアスはこのようなことを言っていました。『男なんて興味無い、全部一緒に見える』と」

「……嘘でしょう?」

 

 え、えぇ……? いや、今の部長の挙動からは全く想像がつかないというか。

 

「嘘ではありません。そんな彼女が、あなたを手に入れる為に全力を尽くしています。その意味を深く考えてあげてください。少なくとも、一時の軽い気持ちでの行動ではないのです」

「…………」

「それではこれで。匿ってくれてありがとうございました、このお礼はいつか必ず」

「え、いやさっき僕の質問に…………行っちゃったよ」

 

 …………なんかもう、また生きるのしんどくなってきたなぁ。

 




親友な幼なじみが酷い男に振り回されてるってなれば、そりゃあ会長なら一言言いたくなるよな……と思ったらこんなことに。セラフォルーさんとの遭遇でギャグ調で区切るつもりだったのだけれど……何故???

感想、評価等ありがとうございます。とても励みになります!
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