兵藤一誠は『異常な普通』です   作:しにかけ/あかいひと

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いつの間にか評価人数100人超えてました、あかいひとにとっては快挙! いえーい!
本当にありがとうございます、励みになったので頑張ります!


その12

 

 えー本日なお日柄もよくサンサンとしており、悪魔にとっては非常によろしくないお天気。ジリジリと皮膚が日焼けしていく感覚がふかいである。そんな僕は現在スマホを片手に伝えられた住所に向かっている途中…………

 

「イッセーさん、もしかしてあそこの……?」

「……だよなぁ。見間違いじゃないみたい」

 

 何故かアーシアと一緒に。

 いやなんでアーシアと一緒なんですか危ないでしょう!? と部長に吼えたが暖簾に腕押し糠に釘。アーシア本人の希望でもあるのは前提だけど、気になることがあるんだという。なんでも、イリナちゃんから気になる情報が入ったとのことで。

 

『いくらシステムの件があってもアーシアを追放することになったのは不自然に思う…………ですって』

『いやまぁ、あの女がそう言うならそうでしょうケドも。でもなんだって急に?』

『そこは濁されたのだけれど、ということはあの子の前の部署関連の情報ってことなのでしょうね。それとなく情報掴まされたから探ってみてるのだけど…………』

『釣り針に反応……アリ?』

『…………』

 

 マジかぁ……と頭を抱えて同行に納得せざるをえなかった。この件を突くor協力を取り付けたいので当事者であるアーシアを連れて行ってなし崩し的に話を纏めたいというのが魂胆である。……部長が集めた情報が全部本当だとしたらアーシアが危険、ということもあるし。

 

『その場に朱乃もいるし、あなたなら上手いこと転がせるでしょう?』

『いやあーた、僕が木っ端悪魔だってことお忘れでは……』

 

 うーん無茶振りが酷い。でもアーシアの無事に関わってくるならイッセーくん頑張っちゃう。

 

 …………ンで。目の前に広がる光景に僕らはちょっと息を飲んでいる。

 

「神社、ですね」

「神社、だなぁ」

 

 眼前には石段、それが伸びる先には見まごう事なき鳥居。つまり……神社、神域、悪魔が入れば死にかねないデンジャーゾーン!! まあ部長が無意味に死地に行けって命令するタイプじゃないのは分かってるので入っても問題ないような根回し等はしてあると思うのだけど……流石に本能的な部分で身体が後ろに引いてしまう。

 

「いらっしゃい、二人とも」

「「あ、朱乃さん!?」」

 

 現地で合流すると聞いていた朱乃サン、鳥居の奥から登場。軽やかにジャンプして石段の前で震えてた僕たちの前に華麗に着地。……てか、その服装。

 

「巫女装束……?」

「ふふふ……出自にちょっと、色々とありまして」

「ふわぁ……! 凄くお似合いです!」

「ありがとうアーシアちゃん」

 

 え、えぇ……。このヒト、ハーフ堕天使なこと以外にも神職か何かと関係のある出自ってコト? すげぇキメラな経歴してて目がチカチカしてきた。朱乃サンも意味深にウィンクしてるし……。

 

「……てェことはアレですか? ここの神社は元々朱乃サンのモノとかいう?」

「うーん、そういう訳ではありませんの。先代の神主が亡くなったところをリアスが取引をして確保してくれたのです」

「……その時から既に眷属タラシ、と」

「その通りですわ。全く、リアスはいつもそうなの」

「あははは…………」

 

 今でこそ不良シスターズのたまり場となっちゃいるが、あの廃教会もなんならアーシアにやる気満々だったからなあの上司。それを知ってるのかアーシアからも乾いた笑いが響いてら。

 

「札束じゃなくて現物で殴ってくるの卑怯だと思うんですよ。独り善がりならいいんですけど、だいたいこっちを慮ってのものなので嘘でも要らないって言えず……」

「「(こくこく)」」

 

 首がもげるほど頷かれるので、まあみんな同じ気持ちなんだろうなと確信。よくよく考えたら聖剣ン時もアレだったし…………ん? 部長の眷属、今のところ俺以外背景がめちゃ重くないか? てことはつまり、

 

「となると、実は小──」

「さて、上司に対しての愚痴も悪くはありませんが、お客様を待たせているので早速ですが案内しますわ。着いてきてくださいね」

 

 ちくしょう、話を逸らされたか。予定の集合時間よりも早く着いてるからおかしな話だもんな。…………暗になんかあるって言ってくれたってことだと思おう。本人のいない所でする話じゃあないしね。

 

 

◆◆◆

 

 

 かぽーん、と音が鳴った。いや此処にししおどしは無いのだけど、精神的に。

 案内され境内に入るが勿論体には何も無く、しかし何故か感じる居心地の悪さと共に本殿へと案内された。そこに居たのはやけに現実感のない清潔感のある金髪の青年が。……ンや、穢れのないという言葉がピッタリ似合う白ローブと頭の上に浮かぶピカピカの輪っかがその正体を如実に語っているというもの、翼は見当たらないが、僕らと同じで隠しておけるものなのだろう。実物は初めて見るが、間違いなく彼は天使。んでもって今日会う予定の天使と言やぁ…………

 

「初めまして。赤龍帝、兵藤一誠くんにアーシア・アルジェントさん」

「あ、はい。お初にお目にかかります、熾天使ミカエル殿。兵藤一誠です」

「ひゃ、ひゃう……!? あ、アーシア・アルジェントです……!」

 

 ……アーシア、何も聞かされてなかったんだろうか? 多分元信徒的サムシングで正体に気がついたらしくマナーモードに入ったように震えていてウケる。いやウケねぇか。まあともかく、僕の方は内心の緊張を抑えながら握手を交わし、用意してあった席に着く。…………胃の痛みはないけど、居心地は良くないなぁ。熾天使の権能かなんかか?

 

「さて、本日はあなたに贈り物を……と思っていたのですが、それだけでは済みそうにない、ということでよろしいでしょうか?」

 

 おっと、のっけからジャブ……なのかな? パッと見た感じ、話さないことはあるけれど裏はなさそうな手合いに見えるから、シンプルに思ったことを言ってるだけかもしれん。

 

「まあ、はい。そちらも忙しいかと思いますので、あまり時間は取らせずに済ませたいと考えております。恐らくお互いの醜聞に掛かってくる話なのでしないという訳にもいかず」

 

 僕にとっちゃあまりいい印象の無い天界並びに天使陣営だが……裏話を知ってる以上、熾天使が例のシステムであっぷあっぷしてるのは理解している。本当に忙しいんだろうさ。でもこれからお互いに手を組もうって相手が知ってか知らずかあんなことが行われてるとなると……流石に指摘せざるを得ないというもの。退けんよ、あたしゃ。

 

「そうですか……それならば仕方ありませんね。雰囲気から察するに、会談の時に話を聞くという訳にもいかなさそうだ」

 

 困ったように眉をひそめられるが、でも納得はして貰えたようだ。……えらい素直に話が通るな。神話の世界の住人だから一癖も二癖もあると身構えていたけど……そんなことは無い、ということなのだろうか? いや待て、僕にアスカロン渡す判断した連中だぞ、センスはアレだ気をつけろ。

 

「では、先に本来の要件を。話は既に聞いているかと思いますが、あなたにある聖剣を授与したいと考えております」

 

 そう言うと彼は何か棒を支えるかの如く手のひらを上に向けて腕を差し出す様に構える。一瞬、目が眩む程の光がそこから放たれたと思ったら、そこに一本の剣が表れた。間違いない、これが……

 

「聖剣アスカロン……」

「ご存知でしたか。……いえ、勘が鋭いのでしたか?」

 

 ……うっすら僕の警鐘のこともバレてんな。多分イリナちゃん経由だとは思うが。

 

「あの、今からそれを受け取る時に水を差すのもなんなんですが……僕は聖剣の因子は持っていませんよ?」

「ええ、存じてます。その上で今のあなたに必要なものを、と考えてこれを準備しました」

「は、はぁ……」

 

 必要なもの、と言われてもなぁ。どこぞの二天一流じゃああるまいし二本剣を佩いたところでそれが活かせるような技量もなく。そもそも聖剣オーラとドラゴンぶっ殺すオーラのせいで腕を伸ばそうにもチクチク痛みが飛んできてすっごい怖いんですけどやっぱり。

 

「神器を……『赤龍帝の籠手』を着けて触れてみてください。これは天使、悪魔、堕天使が共同で特殊儀礼、調整を施したものなので、あなたが神器を介して触れる分にはなんの問題もありません」

「それは初耳なのですが!?」

 

 三勢力揃って調整した龍殺しの聖剣ってどういうこと!? いやまあそうなると殺す意図はやっぱり無いって分かるから助かるケドね!?

 ともあれそういうことならと左手に籠手、右手に装甲板で作った籠手を装備して慎重にアスカロンを受け取る。うわぁ……確かにまるでダメージを受けないけどおっかねぇなぁ。存在そのものが僕に対する特攻武器だからか本能的に忌避感覚えてるよ……。

 うーんこれどうしよう、ガラティンと同じノリで神器の中に収納できるかな?

 

『(まあ……可能だろうな。この分だと収納しても神器の方が焼かれることも無いだろうし)』

 

 なるなる。とりあえず中の(ヒト)にも許可が取れたし同じ要領で力を込める。すると光と共に剣が籠手の宝玉へと吸い込まれていった。……こういうの見ると、本当に籠手便利よな。

 

「さて、ここからが本題です」

 

 僕が籠手……左腕に剣を収めるのを確認するや否や、ミカエルさんはこう切り出してきた。

 

「今私があなたに授与したアスカロンには()()()()()()()聖剣の力を扱う為の術式が刻まれています」

「…………なんですって?」

「それがあれば、あなたの左腕にある()()()()の力も十全に扱えることでしょう」

 

 バレてる…………いやそれ以上に、聖剣ガラティンを使うことを、黙認されている……!? いや、バレてもおかしくないとは思っていたけれど、な、なんで…………!?

 

「……どういう題目でアスカロンが渡されることになったのか、は理解していましたが。流石にこれはイチ下級悪魔に対する贈り物としてはレベルが違い過ぎます。何故ここまで、僕に?」

「単純に、願掛けですよ」

「願掛け」

 

 天使が願掛けとは世も末だな……とは思いつつも全く笑えない。元々縋るもの……聖書の神がいたが、それが亡くなってると考えると相当追い詰められてるとも捉えられるからだ。まあ、悪魔や堕天使と手を組む判断をしているって事自体がそうかもなんだけど。

 

「私は今度の会談……三大勢力が手を取り合う最期の機会だと考えています。ご存知の通り我らが創造主、神は先の戦争でお亡くなりになられました。敵対していた旧魔王達も戦死し、堕天使達も数を減らし沈黙。新たな魔王を擁立した悪魔や、神を無くした我々天界は勿論のこと、あのアザゼルも建前上ではこれ以上の戦争はしたくないと言っています。これは好機です、無駄な争いを無くすための、本当の平和の為のチャンスです」

 

 穏やかな笑みを浮かべ、淡々と機械的に語ってはいたが……その中身はこれ以上無い熱だった。これ以上の争いはごめんだと叫ぶかのような内容だった。まあ、それもそうか。イリナちゃんも言ってたけど、戦争で被害を被るのは戦争をしたい馬鹿共じゃなくて無辜の民だもんな。天使からすりゃ、信者を焼かれるのは身を切るよりも痛そうだ。…………うん、踏ん切りが着いた。このヒトのことは一応味方だと思って話を切り出そう。はー、やっぱ天使は天使なんだな。居心地は悪いが心は洗われる。

 

「……ん? いやですがそれとコレと話が違うくありませんか? 僕、貴方がたからしたら厄ネタというか、殺しても殺し足りないくらいの仇と言ってもいいくらいだと思うのですが」

「あなたはドライグではないですし、それにドライグもこうして死んでいるでしょう?」

『………………』

「唸るな引っ込んでろクソトカゲ」

『クソトカゲ言うな殺すぞノータリン』

「ははは。それに、『汝の敵を愛せよ』とも言うわけですし」

「貴方が言うと洒落になりませんよそれ!!?」

 

 意外とお茶目だなこの熾天使! あとアスカロンを寄越すセンスの片鱗見えてきたねぇ!

 

「確かに疑問に思われるかもしれません。ですがそれでもあなた以上に願掛けに適した相手もいないのですよ。……過去に一度、我々三大勢力は手を取り合ったことがありました。覚えていますよね、ドライグ」

『…………フン、俺達を殺す為にだろう?』

 

 ああ、話には聞いていたあの……。いやしかし、三勢力で挟み撃ちにしてようやっと殺せるレベルの二天龍ってのは……いや本当にパブリック・エネミーっていうか。……唸るな、僕はそんなんじゃねぇぞぶっ殺すぞ。

 まあでも理解はした、かな。前と同じ状況……否、今度は味方側に前回手を取り合った理由たる二天龍がいる。今度は暴れてくれるなよと釘を刺すのも頷けるという話。

 

「はい、ですがそれだけではありませんよ?」

「え?」

「あなたのことを、教会のとある諜報員に聞いたのですよ。流石に赤龍帝というだけで渡せるほど、アスカロンは安い剣ではありません」

「……紫藤イリナっすか」

 

 まあだと思ったよ。つかアイツ喋るなって言ったのにガラティンのことゲロったな? まあ多分、ガラティンを僕から引き剥がさない為の対応だとは思うから別にいいけどさ。

 

「ええ。彼女があなたについて詳しいと言うので」

「ロクなこと言ってなかったでしょう? 僕自身、自分のことをあまりできた人間……あ、いやもう人間じゃなかったか。悪魔だとは思ってないんで、余計に不思議なんですが」

「はははは。確かに、転生する前から悪魔の様な人間とは言っていましたね」

 

 だよね、それぐらいは言ってるよね畜生!!

 

「ですがそれはあなたの側面の一つに過ぎないはず。……自分が悪魔だということを理解した上で、それでもシスターと思わしき少女にも手を差し出したのも、あなたなのでしょう?」

 

 ミカエルさんの視線が横にずれ、アーシアに軽く微笑む。それに対し彼女は驚きながらも……力強く頷いた。

 

「そういうあなただから、かつてゲオルギウスが握っていたこの剣を託せると思ったのです。彼も結構な頑固者でしたから、似た者同士ですね」

「…………」

 

 なんというか、面映ゆいというか。照れ臭さが半端ない。やだなぁ、別の意味ですわりが悪いよこんなの。

 

「それに、久々に楽しい作業でした。最終調整はこの神社で、私とアザゼル、サーゼクス殿と行ったのですが、その前段階では三大勢力の事情を理解している技術者が集まって、あーでもないこうでもないと殴り合い、肩を組み合い作業していたのですよ。あれも、ある意味で和平の形なのでしょう。より希望を持てました」

 

 なんか微笑ましいものについて語ってるげだが、本当にそれは微笑ましいのか……!? いやまあある意味で平和の姿なのかもしれないけども!!

 

「というわけです。納得できましたか?」

「はい、これ以上なく。ありがたく頂戴させていただきます」

 

 なんにせよ、そういう期待で以てコレを託してくれたのだ。その期待に恥じないように頑張らないとね!

 

 

◆◆◆

 

 

「……さて、そんな明るい話をしてもらった後でこんな話をするのも気が引けるのですが」

 

 小休止を入れた後、背筋をもう一度直してミカエルさんに向かい合う。

 

「はい。いえ、あなたがアーシアさんと連れ立って表れた時から想像はしていましたが……」

「ですよね。天界側でも把握自体はされていましたか……」

 

 いやはや、由々しい問題だよな、これ。これから手を取り合うって時にこの問題発覚したのマジでまずいよ。

 

「…………単刀直入に。恐らく悪魔側の一部と教会の一部で、そちらの信者の売買が行われています」

「…………え?」

 

 …………あれ!? 想定していた話って、そういうことでは、ない!?

 




部長:多分大丈夫だろうけど下手したらミカエル相手に大暴走かまして交渉的に叩きのめしかねないからストッパーとしてアーシアを付けておかないと……朱乃だと助長させそうだし。

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