兵藤一誠は『異常な普通』です   作:しにかけ/あかいひと

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短めです。
サブタイトル:嵐の前の


その14

 

 明日の三大勢力会談を控えた僕たちのこの一週間は、変化が色々と激しかった。

 

 まず、剣士組からガラティンの扱いにお墨付きをもらった。もらった……のだけど、剣士として成長したと言うよりは、『兵器として』ガラティンを扱うに足る、という評価だったけど。相も変わらず剣士としてはへなちょこもいいところである。

 

『いや本当……私達はもしかしたらゼノヴィア以上の兵器を生み出してしまったかもしれないわ。負けちゃダメよゼノヴィア、いつか殺さないといけないんだからね?』

『大丈夫だ、デュランダルにはまだ先がある……!』

『殺す前提で話を進めないでよ二人とも。だけど……うん、イッセーくんが身につけていい技じゃ無いかもしれないねこれ』

『テメーら言いたい放題だなコノヤロウ』

『『『いやだって…………』』』

 

 そう言って僕のやらかしを見る三人の表情はなんというか……『うーんやっちゃった!』みたいなどうにでもなれ臭が半端なかった。僕もそう思う。

 

『……しかしそうなると余計に謎ね。無敵とも思えるこのガラティンの能力があって謀殺されたダヴィード氏はどうやって殺されたのかしら?』

『…………』

 

 やっぱ教会……っていうか宗教絡みはおっかねぇなって思いながら、引き続き訓練はしていくことになった。

 

 次に、ギャスパーが正式に封印解除されることとなった。本当なら神器暴発の恐れがあるので三大勢力会談が終わるまでは引きこもりを続けてもらう予定だったのだが、既に推定悪徳ビジネスグループが存在している以上、何かしらの方法で和平締結を邪魔してくる恐れがあると部長とその上……四大魔王様達は考えた様子。少しでもそのリスクを抑えたいということで、そのリスクの一つであるギャスパーも、なるべくヒトの目がある場所にいてもらった方が当人にも周りにも安全じゃなかろうかとのことでそんな判断になったそう。

 ンでもギャスパーのメンタルが安定せず駒王町全域で『うちゅうのほうそくがみだれる!』状態になるのもそれはそれで問題なので、本人にお伺いを立てたところ、

 

『い、いけます……! がんばります! みんなの顔がイッセーさんだと思えば……!』

『それ僕が言うことじゃないケドさぁ、視界があまりにも不健全な世の中過ぎねぇか???』

 

 とはいえ精神的に安定してるのはマジの話で、部活で顔を出して挨拶した時にも神器が暴発して時間を止めるみたいなことは無かった。

 

『本人の頑張りもそうだけれど、いざと言う時に止まらずに対処してくれる存在がいるというのも一助になってるのでしょうね』

『あぁ……逆に思い切りが良くなったってことっすか』

 

 ともあれ『あらためてよろしくお願いします……!』と挨拶したギャスパーは暖かくオカ研、グレモリー眷属達に向かい入れられた。……学校の方は、うん。まだもうちょっと掛かりそうだよね表社会復帰。

 

 それに付随して、神器を変な解釈で使う僕の意見を取り入れてギャスパーの神器制御に活かせないか? という話になった。なったケド…………そうポンポンアイデアが出るわけでもないので、言えることは問題の先送りでしかない対処法が一つだけだった。

 

『禁手になりゃ話は変わるんだろうけど……ギャスパーの神器って、視界に入った物しか停められないんだよね?』

『は、はい』

『ンじゃあ、目を閉じればいいのでは?』

『『『……はい?』』』

 

 どうにも邪眼は視覚がキーになっているらしく、視界に入らない物は停められない様だった。なるほどつまり目を閉じていれば暴発も起きまい、と僕は考えた。

 

『でもそれじゃあどうやって生活をすれば……』

『そりゃお前、何のための悪魔の魔力かって話だろ』

 

 割と悪魔の持つ魔力は融通の効く性質をしているのか、イメージ力がしっかりしてたら割となんでもできるところがあるらしい。もちろん相応の魔力と制御力があればの話だが。

 割と無茶言った自覚はあったけど、それでも僕は割とどうにかなんじゃないか? という妙な確信があった。それはギャスパーがハーフヴァンパイアだからだ。

 

『ほら、コウモリの要領でどうにかならない? 奴ら音で周囲を把握してるだろ? それと似た感じのイメージで魔力で波を作って跳ね返ってきたのを感じる的な、あと脳内で視覚に似た感じで補正してさ』

『イメージがあまりにもふんわりしてませんかぁ……? あ、でもできました』

『『『できるんだ……』』』

 

 魔力の便利さと才能の差を如実に感じたよね、うん。悔しいが泣いちゃいない。

 とはいえ、あくまで問題の先送りなのであまり褒められた対処法じゃないとは思うんだけどね。

 

『……それにそもそも、目を増やせば全方位どころか全世界を停止できんじゃねぇかって発想からだから後ろめたさも一入でね』

『き、聞かなかったことにしますね!』

 

 後ろで聞いていたグレモリー眷属達の『これだよこれ』っていう視線が非常に腹立たしかった。お前ら覚えてろよホント。

 

 あとは……虚飾極めたら守りたいもの強くすることで守れるんじゃね? と僕の中で話題になったので、分身できるあの畜生妖精で実験しようということになった。虚飾強化したら損耗ないし破損するからね、人間や悪魔で実験できなかったのである。

 

『ギュエ!? シボウ ゼンテイ!?』

『そんぐらいはしてもバチは当たんねーだろうがよ。あ、でも等価交換は絶対だからな、報酬はキチンとする。危険手当込で損害賠償分はこれだけ差っ引けるケド、どう?』

『グヌヌヌ……キンガクセッテイ ゼツミョウ……』

『それにギャスパーんとこに居着くにしろ、僕んトコに鞍替えするにしろ、共同戦線張ることも出てくるだろうし』

『コノママ ギャークン ノ トコロデ イイキガシテキタ。 マァ ジッケン ノルケド』

 

 ということでレッツ虚飾ということで板1000枚ぐらい……と思っていたのだが。生物に虚飾する時は勝手が違うらしく、僕自身に装備させる時と同じく合計9枚で全身鎧を形成させての強化になるらしかった。そしてその結果は色んな意味で大成功。こちら側で調整することなくピッタリの全身鎧が形成され、そのスペックは全能力最大で512倍!

 

『ギュエー……フツウニ シネルー……』

『マァ コウナルヨネ』

『だな』

 

 但し制限時間を超えると解除されて滅茶苦茶疲れる模様。まあ1時間越えたら死ぬんじゃないかと思っていたので疲労の範疇で収まってくれて良かった。

 

『デモ バイカノ チョウセイ イッセーガワ。 モンダイアリマクリ?』

『味方の強化と考えるならちょっと問題あるよなぁ』

 

 そして倍加の調整はこっち持ち。全体か局所的かも、何回分の倍加にするのかも全部僕が調整しなくてはならない。敵の拘束具としての性能は素晴らしいんだけどね……。

 

 さてさて、ヤツはどんなタイミングで仕掛けてくるんだろうね? ゲンナリしながら、僕は夢の世界へと落ちていく。明日の深夜、何もないといいのだけれど。

 

 

◆◆◆

 

 

『……というわけで、申し訳ありませんがあなた方二人にも会談に出席してもらいたいのです』

「ええ、勿論。ミカエル様に頼まれた二つ返事ですとも。実際、きな臭くはありますものね」

『ありがとうございます。では、よろしくお願いします』

 

「…………まぁ、こうなるわよねぇ。イッセーくん、相当不安感を煽ったみたいね。さっすが黒幕、いい仕事するわ」

「ん、その言い方だと彼が例のビジネスの元締めみたいに聴こえるぞ」

「言われりゃそうね。でも気にしなくていいわ、仮に疑われたらいいように自分を囮に使うでしょうし」

「まったく……君たちの友情は複雑怪奇だな。それはともかく、我々も会談に出席するということでいいのだな?」

「うん。ミカエル様も会談がタダでは終わらないと確信しているみたいだし、そン時に使える駒は幾らでも欲しいでしょうよ。今回出席してるメンツは神の不在を知ってる連中で固められてるだろうし、変に強くても威圧させちゃうしで例の猊下とかよりは都合がいいのかもね」

「……まあ、あの方は流石にまずいな。そういうのに疎い私でもそう思う」

「でしょ? とはいえ、後暗い連中に遅れをとる程ヤワでもないわ。精一杯、暴れるとしましょ?」

「ああ、任せろ」

 

 

◆◆◆

 

 

「ちょっといいかなサーゼクス」

「……アジュカ、また抗議かい? 最終的には私とセラフォルーが出ることに納得しただろう?」

「ああ、そのことには納得したとも。これ以上駄々を捏ねるつもりもない。だが一つ忠告をしておいた方がいいと思ってね」

「忠告?」

「店長…………じゃなかった。兵藤一誠くんについてだ。もしかしたら思い違いをしているかもしれないと感じたものだからな」

「思い違い、というと?」

「彼を、まだ悪魔だと思ってはいけない。種族の上では悪魔なのが厄介だがね」

「それは一体……?」

「いいか、彼はまだ17才の青年だ。物分り良く自分の境遇を受け入れているように見えるが、それは無理矢理自分の心を殺しているだけだ。一歩間違えたら決壊しかねない、それも最悪の形でだ」

「…………」

「これがただの転生悪魔ならまだ良かった、だが彼は赤龍帝だ。それを忘れないでくれ」

 

 

◆◆◆

 

 

「アザゼル、明日の会談は俺も出席していいよな?」

「……意外だな。基本的にお前は戦い以外に興味が無いと思っていたんだが」

「ああ、もちろんそうだ。これで戦争が終わってしまうと思うと憂鬱だったが…………彼がいるからな」

「ヴァーリ、分かっているとは思うが……」

「分かっているとも、不用意なことはしないさ。ただ、彼が本気で戦うような状況にならないか、と願うだけだ」

「…………釈迦に説法かもしれないが、あまりドラゴンという生き物を甘く見るなよ。アレはその中でもとびきりだ」

「……そう、なのか?」

「ああ。力こそ追いついてないが……傲慢で、力を振るうのに躊躇がなく、周りを毛程も斟酌せず、宝を守ることに腐心する。俺がよく見てきたドラゴンそのままだ。見えてる逆鱗(じらい)を踏み抜く程、俺は愚かじゃないさ」

「そうか、そうなのか。それは」

 

 尚更、楽しみだな。

 

 




──遅いわ、もう手遅れよ。

◆◆◆

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