・兵藤一誠出生の秘密
「ご……ごきげんよう皆々様……コヒュー……」
「すげーなアンタ。あんな醜態晒しておいてよくその高飛車そうな態度取れるよな」
キッ! とえれぇ扇情的な服装した痴女、もとい推定女性悪魔が睨むが……いやでも皮肉抜きにそう言ってしまうのもしょうがないよね……? アザゼル総督なんか笑い過ぎて横隔膜つってたらしいぞ。今アーシアから聖女の微笑みによる回復されてるケドまだ笑いが止まらんらしい。すげぇよ、笑いで堕天使の総督が死ぬところだったとかさ。
まあともかく、推定とは言ったものの悪魔であることは間違いなさそうだ。だって悪魔のトップ二人がすげぇ苦虫噛み潰したような顔してたからな。……若干笑ってたのは見て見ないフリをしよう。ンで、そんな女悪魔はミカエル様の術か何かで縛られて転がされてるという状況。……女性縛って多人数で囲む図って酷い絵面だよな。僕は惚れてもない美人に対して食指伸びないのでノーセンキューだが。はんっ!(鼻で笑う)
『ぬぅ……どこかで見た紋様かと思えば』
「知っているのかドライデン!?」
『誰が解説役だ、誰が。……ああ、今思えば腐る程見てきたとも。アレはレヴィアタンの魔方陣。そこにいるセラフォルー・レヴィアタンのものではない。先代魔王レヴィアタンのものだ』
「…………わぁお」
部長と一緒にドキワク冥界政争史をおさらいしてた時に出てきた『旧魔王派』というグループに属する悪魔達の内の一族じゃなかったかな? 簡潔に言うと現政府に対しての反対勢力というか。……息も絶え絶えではあるけどルシファー様と問答しとるな。旧魔王派は禍の団につくか……しかも今回の襲撃はコイツら持ち? ヤケにベラベラ喋るな……。バカなのか、それとも状況をひっくり返す何かを持っているか。時間稼ぎの感じもあるし、次の瞬間倍加の準備もしておかないとかも、だ。
「カテレアちゃん……どうして、こんな……」
レヴィアタン様……いやもうややこしいな、セラフォルー様は悲しげに呟く。ようやっと名前の判明したカテレア・レヴィアタンは噛み付くように返す。
「『どうしてこんな』……!? 私から『レヴィアタン』の座を奪っておいて、よくもぬけぬけと……! 私が、私こそが正統なレヴィアタンの血統、私こそが次代のレヴィアタンであるべきだった、それなのに……ぎゃうッ!?」
意識を飛ばされると困るから、装填2の倍加で痛みに譲渡する。そして当人に譲渡をしたコトで魔力マーキングも済んだ。いつでも『循環する苦痛』を回せる。
「すみません、セラフォルー・『レヴィアタン』様。あまりに聞くに耐えなかったので少々釘を刺しました」
「いや……いいの、ありがとう赤龍帝くん」
さて、コイツをどう料理したものか。つまりコイツの言い分は『思い通りにならない世界なんてちらない! あたちが本当の魔王なんだから!』ということである。こいつはむちゃ許せんよなァ? ムカつき度だけならコカビエル超えてトップだ。
「此処に朱乃サンいなかったのが悔やまれるな。まァイリナちゃんいるならいけるか? 手伝ってもらえる?」
「ちょっとちょっと、私の専門は拷問じゃなくて諜報の方だから。……まあ、擬態の聖剣使って脳みそコチョコチョできなくもないケド」
「なんでェ、そんなんできるならもっと早くに教えてよ」
「待て待て待て、サラッと話進めんじゃねぇよ。一応お前ら下っ端だろうが。……全くおっかねぇなぁ最近の若いのは。こういうのはガキがやるにはまだ早い」
ようやっと笑いの波から戻ってきたアザゼル総督が僕とイリナちゃんを制止する。しまった、カッとなってつい。
まあともかく、あとはトップ陣がいいように料理するだろ。今回の会談急襲に参加した人員が割れるまでは警戒を怠らず、だね。転移魔方陣に譲渡が効くのも分かったことだし、僕の責任重大ってね。
そんなことを思ってその場を離れようとすると…………コロコロと、瓶のようなものがこちらに向かって転がってきた。皆が視線でそれを追うが、一番近かったのは僕だったので僕が拾った。
「なんだコレ? 黒い……蛇?」
円を描き、渦巻き……そしてしっぽを咥える蛇。何か……コレ、知ってる、ような。何故かは分からないけれど、じわりじわりと心が恐怖に侵食されていく。
『…………!』
「ヒィ!?」
小瓶の中の蛇と、目が合った。一瞬で全身が恐怖に支配され、震え、視界が歪み立っていられなくなる。パリンと、落とした瓶が割れるのも気にならないくらいに、頭が割れるように痛む……!
「イッセー!」
「ぐっ……なんだコレ……!? 痛い、痛い……!!」
歪み、暗く染まる視界。部長が傍にいることだけは分かるが、何も分からない。何も、何も……!
『尾を食む蛇の見る夢、我の夢へおまじない』
『願い、聞き入れた』
一瞬差し込まれるイメージ、僕が美人を恐怖するに至った黒くデカい誰か。そしてその台詞……!
「おいおいおい…………アレ、
『…………!』
呪縛が解けるように視界と痛みがクリアになった瞬間。前方から幾重にも連なるようにたくさんの蛇のようなものが襲いかかってくる。
「ぐっ……凝固、譲渡:9!」
『Ignition Boost!!』『Transfer!!』
左腕を前に突き出し、魔力で氷の壁を形成し強度を上げる。理由は分からないけれどコレだけは分かる……僕は今、あれに呑み込まれたら大変なことになる!
「『最適化』、『赤龍帝の積層装甲』ッ!!」
『Upgrade:Frame Gear Booster!!』
体勢を建て直し、狙いが僕だとは一応分かってるケド部長の前に立ち、今できる最強の状態に僕を仕上げていく!! くっ……聞いてないぞ僕、こんなの!!
「そんな……! オーフィスの『蛇』が!?」
それに一番近い回答をしてくれたのがカテレア・レヴィアタンだった。ぐっ……嘘だと思いたかったけどマジで答え合わせになってんじゃねェか!!
『受け入れろ、
「うっせぇわ、
爆発的に増加した膂力にものを言わせ、氷の盾でもってぶん殴り、蛇の大群を弾き飛ばす。
「はァ、はァ……なんだってんだ、一体……!!」
残痛感で少しふらつく頭を右手で抑えながら、吹き飛ばした蛇を睨む。どうやら蛇は粘土の高い球体のように部屋の中央に浮かんでいる。今の一瞬で起きた展開に皆着いていけてなかったみたいだけど、流石に体勢は立て直されてその球体に警戒している。
「総督、コレ何!?」
「分からん! 推測でいいなら、これはオーフィスから分けた力の塊の様なものだ! だが、こんな風に暴走したなんて事例は聞いたことが無い!」
となると……どう考えても暴走の原因僕じゃねェか!!? どうも接点はあったかもしれないけど、こうまでなるようなことには身に覚えが無さすぎる!!
『我を拒むか
「ッ! させるか!!」
増大した魔力で装甲板を多数形成し、黒い球体を覆うように囲んでいく! 狙いが何故だか分かる、僕を除いた一番親和性の高い生物を乗っ取る目算だ! それが誰かは分からないけれど、どう転んだって大惨事にしかならない!
「皆さん、すみません! 結界か何かで補強をお願いします!」
「っ! 学園の結界と同じ術式を使え! それなら魔力と光力が混ざっても強度の底上げができる!」
総督の指示に、魔王様二人と熾天使二人が同時に結界を張ってくれた。…………だが、コレでも足りない気がするンだけど!? 装甲板も結界もミシミシ言ってる!! くっ…………強度の底上げに手ェいっぱいで譲渡使う余裕がない…………!
「くっ……! グレイフィア、敵の転移魔方陣の解析はどこまで進んでいる!?」
「解析は完了、妨害術式を組んでいる最中です! 完成見込み、残り5分!」
「俺も手伝う! それで少なくとも1/5は短縮できるはずだ! 今のうちに外の連中を退かせろ、その後コイツを外へぶっ飛ばす! 1分持たせろ!」
グゥゥ……!! 簡単に言ってくれんじゃねェか堕天使ィ……!! 僕もう血管ちぎれそうなぐらい気張ってんだけど……!! し、仕方ない奥の手ェ!!
「部長!!」
「何!? 大丈夫イッセー!?」
「大丈夫じゃないです! なので僕に『頑張れ』って言ってください!! それだけで無限に頑張れます!!」
「わ、分かったわ! 頑張ってイッセー! コレが終わったら何でもしてあげる!」
「ッしゃあッ!!!」
『Frame Gear Over Boost!!』
神器の力の源は、所持者の心の力ァ!! 部長に応援されりゃあァ、出来んことはないィィィイイイイ!!
装甲板を、強固に! より強固に! 死ぬよりは安いだろ兵藤一誠、死ぬ気で気張れェ!!
「終わったぞ、コレで増援は無しだ! 遠慮なく外へぶっ飛ばせ!」
「っ! オラァァァアアアッ!!!」
装甲板で包まれた蛇を、結界ごと外へぶん投げる。部屋の壁はぶっ壊れて見るも無惨だが、そんな余裕はなかったということで一つ。
そして戒めから解かれた黒い球体は存在を保てなかったのか、決壊するように爆発。まだ校庭に多数残っていた魔法使い達の群れを薙ぎ払っていった。
────かに、思えた。
「ふふふ……あはははは! やはり私は、選ばれた存在、なのよ!」
爆心地で呵々大笑するカテレア・レヴィアタンを確認するまでは。
◆◆◆
「この全身を駆け巡る力……! かつて蛇を飲んでもこうはならなかった……! 感謝します、ええ感謝しますわ赤龍帝! 私は今、魔王を超える力を手にしたのです!!」
吹き荒れる魔力の嵐、それがビリビリと空気を、空間を揺らし、圧として僕らに襲いかかる。
…………分かっていたケド、警鐘は鳴らない。理由は明白で、どうやらこの警鐘はウロボロスによるものだったからだ。かつて耳にした『おまじない』というのは、これのことを言っていたのだろう。
「……クソ、仕方ねェな」
怖い、けれど。責任は取らなきゃ。多分アレは、僕の責任だから。
「待ちなさい、イッセー」
多分、この場で僕のことを一番か二番くらいに理解してる部長が、カテレアから庇うように僕の前に立ち塞がった。
「ダメです。状況的に、アレは僕のせいです。僕がなんとかしなければなりません」
「例えそうだとしても、あなたが対処する必要はない」
「いいや、多分僕じゃないと…………恐らくウロボロスと何か関係があるらしい僕じゃないとダメです。なんでかは分からないけれど、今の僕にはそう思う」
嘘だ。確かに、どこかで繋がりはあるのかもしれないけれど。今の僕にそんな直感はない。それでも、僕は行かなくちゃいけない。
「それに何より、僕は僕のせいで誰かの
縋るように手を伸ばす部長を振り払い、背中より翼を広げて飛び立つ。……余裕をぶっこいてるのか、何の攻撃的アクションもせず。ヤツは眼前に僕が降り立つのを待っていた。
「ふふふ……赤龍帝、先程の無礼は手打ちにします。もっとも、この場にいる全員全て鏖殺しますが」
「……思うに、」
露出度の高い服。だからこそ分かる。カテレア・レヴィアタンの末端から、徐々に黒い鱗が覆っていくのが分かる。
「『レヴィアタン』とはリヴァイアサンの別名。つまり、悪魔ではあるが
酷い相乗効果だ、お手上げにも程がある。逃げたくなるけれど、それをなんとか堪えて眼前の敵を睨めつける。
「……で、借り物の力で私TUEEEEする気分ってどうなんですか?」
「きさ、貴様ァ!!」
沸点が低いのか、すぐにカッカして黒い鱗に覆われた腕が、恐るべきスピードで飛んでくる。あまりの速さに、僕は間に合わない。
ザシュッという音が響き、鮮血が舞う。
「ガッ……グ、グァッ……!!?」
が、それは僕のじゃあない。僕の左腕部から鱗のように生えた突起が、カテレアの右腕を吹き飛ばした音だ。
「悪魔で、ドラゴンなら……効くだろう?
「な、ァ!!?」
突起は徐々に剣の形を形成していき、剥がれる。訓練で身につけた技、名付けて鱗居合の術ってね。
「蛇は耳がいいと思ってさ。さっきあえて悲壮感も演じさせてもらった。部長も乗っかってくれて助かったよ、ありゃ半分本気だったとは思うが。だから僕に隠し球があるなんて、これっぽっちも思わなかったろう?」
痛みに狼狽えている間にアスカロンで心臓を一突きし、抉り、抜く。これでチェックメイトというヤツだ。
「だっせぇな、旧魔王。こんな木っ端悪魔にやられるとか、赤ちゃんからやり直した方がいいんじゃないの? ま、お前はここで死ぬんだけどね」
うめき声も無くなり、心音も消えた。うん。楽できるなら相性ゲーも悪くはない。さて、首魁も死んだことだし、あとは結界をどうにかすればいいだけだ。
ひと仕事を終えて、気分が良くなり。緊張を緩めて校舎に向かう。その瞬間、ガンガンと警鐘が鳴る。…………いやお前、敵のボスなんだろう? もう騙されんよ。そう思いながら無視した。しかし、それでも警鐘は鳴る一方だ。
「うるさいなぁ、なんだ────あっ」
振り返れば眼前に、大口を開いた黒蛇が、今まさに僕を呑み込まんと…………
「まず、死────」
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