兵藤一誠は『異常な普通』です   作:しにかけ/あかいひと

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98話目の更新……後2話で100……区切りにするならそこ、か?


その4

 

「やぁ、調子の方はどうかな我が弟くん」

「唐突にぶっ込んでくる辺りが非常に血の繋がりを感じますねサーゼクス様……」

 

 夜、適当に神器をピコピコ動かしてたら唐突に魔王とエンカウントした件について。ボクこのヒトと顔合わせづらいんだけど…………

 

「必要以上に気にすることはないさ。むしろ妹の無茶を止めるために深淵から何とか這い上がってくれたのだろう? ……私にとってはそれで十分さ」

「……サーゼクス様」

「まあそれとは別で妹の男性観をグチャグチャにしてしまった件についてはいつか問い詰めるのでそのつもりでいてくれ」

「それに関しては僕のせいですかねェ!?」

 

 ぶっちゃけ僕を生き返らせた部長の自業自得なところありませんかね?(ド外道) いやまぁそのお陰で今があると言えばそうなんだけれども。

 

「それで、今は神器のデータ取りをしていると聞いたのだが、進捗の方はもしかして芳しくないのかい? 何やら困った顔をしていたので気になったんだが」

「いえ。総督が言うには『最適化』のデータ取り自体はとても順調なようで、話は既に『どうやって負担をかけずに神器を最適化させるか』というところまで来てるみたいです。やってることはデチューンですから、禁手の補助なんかより圧倒的に技術的な壁は低いみたいです」

 

 曰く、『最適化は、異物から身体のパーツとして神器を馴染ませる機能になっている』とのこと。

 

『僕、神器って身体の延長線上にあるものだと思ってたんですが違うんですか?』

『そうとも言えるし、そうでも無いとも言える。確かに神器は所有者の魂に深く結びついているから、身体の一部と言っていい部分もある。がしかし、神器そのものに形があることも事実だ。イメージとしては、移植された臓器に近い』

『ああ、なるほど。神器症は言わば免疫反応っぽいものというワケですか』

 

 積層装甲形態の時の負担がかなり低いのも理解できた。神器が僕の一部として完全に馴染んでいるから、異物であること由来の負荷が存在しないという理屈。使って疲れる分も、運動してるのと同じってこと。

 ドライグが意識してたかどうかは分からないが(恐らくは籠手を使いやすい様にという意図はあったと思うので意識していたと僕は見ている)、図らずも悪魔の駒を使うことで、籠手が身体に馴染ませる取っ掛りを作ったのは三大勢力的にはかなりのファインプレーだったみたいだ。まあその判断をしたドライグが三大勢力に壊滅的な被害を齎した片割れであることと、悪魔の駒が今となっては最適化に於けるノイズになってるのは結構な皮肉だと思う。

 

「それでも幾つか課題はあるそうなので、そこを埋めるためにももう少し協力してくれとのことでした」

「それは良かった。神器症に関しては冥界でも問題になっているからね、解決に向かっているのならこれ程喜ばしいこともないよ」

 

 冥界でも問題? ……あーそうか、人間とのハーフから生まれる可能性と、人間からの転生悪魔の子供からでも生まれる可能性あるのか神器所有者。減ってしまった悪魔を補填するのにとった手段が図らずも冥界に神器を齎したワケだ、正負の面両方とも。意味は無いとは思ってなかったけど、明確に自陣営の問題解決に貢献できるとなれば僕も安心できるというもの。

 

「しかし、ならどうして難しい顔をしていたんだい? 籠手を操作しながらだったから、その関連の問題なのだと思うが……」

「はい、自分の能力の増設についての悩みでして。いやまあそっちはぶっちゃけ後回しにしてもいいんですよ。サーゼクス様、僕に何か用があって訪ねてらしたのでは?」

「実際その通りなのだが、後回しにしていいものではないだろう。お邪魔してすまなかったね」

「ああいえ頭下げないでください魔王が腰低くてどうすんですか、だから大王派に無法されるんですよ!」

「うぐっ……!」

 

 あ、なんかクリティカルヒット。自分でもかなり気にしていたらしい。

 

「ふふふ……転生したてのイッセー君に言われるということは、実際その通りなのだろうね……」

「はい……まあ、その。良くも悪くも甘いんだろうなと思います」

「ぐはっ……!」

 

 僕が今病院でゴロゴロできるのが現在進行形の実例というか。悪いことばかりではないんだ。少なくとも『このヒトのためなら』で頑張ってくれる味方を量産できるし。……付け上がるバカも増えるってだけで。

 

「まあ愛が深くて健全で良いと思いますよ真面目に。僕なんか『あ、和平結ばれたタイミングで天使と悪魔動員して現魔王派が大王派潰しにかかれば勝てるンでは? 第二の旧魔王派生まないためとかいう大義名分でいけるいける』とか考えてましたもん。流石にヒトの心無さすぎて受け入れられそうにないなって思ったから提言してないですけど」

「受け入れられそうなら提言したって言ってるのかい!?」

「え? はい」

 

 そりゃしますよ、うん。僕はクソガキ側なので利権にしがみつく老害とかいう連中が大の嫌いなんだ。他人を食い物にして日常を侵食してくるだろ、アレら。

 

「事実、あなた方は食い物にされた過去があるでしょうに。すげぇ失礼なことを承知で言いますけど、現四大魔王様方って言わば外敵に対する肉の壁、暴力装置として利用するつもり満々で擁立されたんじゃないかと確信してますよ。その軛から逃れて大王派の政敵になってんだからざまぁ見晒せって思ってます」

「………………君を転生させたのがリアスで本当に良かったと思うよ」

「僕もそう思います」

 

 ついでに言うとこんな爆弾に懸想するのあの上司だけだと思うんだよね。趣味は悪いと思う。

 

「なのでまぁ、とりあえず宣言だけはしておきますけど。僕はリアスさんやあなた方に尻尾を振る予定はあっても、僕の大事なものを台無しにする恐れのある連中にまでニコニコする程できたドラゴンでは無いので、できれば政治的な舵取りは慎重にお願いします。マジでお願いします」

「忠誠の宣言という括りで考えたら頼もしいはずなんだがね……」

 

 頭を抱えるサーゼクス様に、影がザワザワしている気がしてならない僕。やばいな、感情と使命感が同じ方向を向くともしかしたらガン子がまた降臨しかねん。びーくーるびーくーる。

 

「……あっ、すみません話が逸れました。サーゼクス様のご用事というのは?」

「ああ、イッセー君の提案してくれた例のアニメの件でね」

「んぇっ!?」

 

 その話、部長にしかしてないはずなんですが、サーゼクス様にまで話行っちゃったの???

 

「今リアスは本業の方で立て込んでいるのでね。なので私の方に話がまわったのだよ」

「本業……契約業務ではなく?」

「ん? 彼女から何も聞いていないのかい? ……いや、君が話に入ってくるとめんど……大変なことになるかもしれないからか」

「今面倒って言いましたよね? ねェ!?」

 

 まあそれはともかく。どういうことか端的に言うと、本来は冥界の上級悪魔の学校に通わないといけないのに人間界の学校に通ってるから、人間界の学校では習得できない分の単位を別で補う必要があるらしい。そしてそれが……

 

「日本に住む人外……魔物や妖怪などの研究、と?」

「うん、そういうことだね」

「ふむふむ……特に面倒な要素はなくないですか?」

 

 別に部長も昨日今日人間界にやってきたわけじゃあないのだ、生活する中でそういったツテもありそうなもの。というか察するにコネに関してはすごいものがあると思うんだよな。具体的にはヴァチカンとかでのゴタゴタにまで手が届くレベル。

 

「ああ、実際協力してくれていた妖怪や魔物はいたみたいなのだけれど、様々な事情でそれが叶わなくなってしまったらしい」

「ふーむ……言ってくれりゃあいくらでも協力したのに」

 

 番外編とかでドラゴンの生態とかいけるんじゃなかろうか? ドライグから聞き出せばいくらでも面白いネタが飛んできそうだし。

 

「……そういうことだよ。もしかしたら定説が覆るかもしれない情報が出てしまうと、逆に人間界に居られなくなるかもしれないということさ。裏取り等の問題でね」

「あ、そういう……」

「事実、聖剣エクスカリバーを破壊したのが赤龍帝ドライグだとは知らなかったからね我々も」

 

 あ、そういえばこれを機にその情報流したんでしたっけ。ミカエル様笑って許してくれたそうなのだが顔が引き攣ってたという情報がイリナちゃんから回ってきてたよ。

 

「そのため、駒王学園に通う魔物使いに話を伺うことになったそうだよ。なんでも明日は魔物の情報を賭けてテニス勝負をするらしい」

「待って待って、情報が渋滞してる」

 

 駒王学園に魔物使いがいるなんて知らなかったし、その情報を開示するためにテニス勝負になるというのもよく分からない。知らんところで無意味にファンキーだね駒王学園!!

 

「まあリーアたんなら恐らく勝てるだろうね。何故なら母上仕込みの魔導球百八式を身につけてるのだから」

「ちょっと久々に首筋が冷えてきましたけど本当に大丈夫です???」

 

 ザドゥージ現象が身内にも起きてんじゃないですかヤダーッ!!! もっとこう、安全な方向でいきましょうよ、ねェ!?

 

「とまあそういった事情もあって暫くはそちらにかかり切りになるから、私の方に話を振ったのだと思うよ。私としても実に面白いアイデアだと思ったから、是非協力を……と思っていたんだが、少々想定外のことが起きた。今日はその件でお邪魔したんだ」

「は、はぁ。想定外の」

 

 僕がしたことと言えば、『こういうアニメどうっすか〜?』みたいな感じで、軽いアイデアや設定を纏めたものを部長に渡しただけである。それが魔王様まで出張ってくる案件になるなんて、私聞いてない。

 

「そう身構えなくていい…………はずだ、多分」

「サーゼクス様も自信持ててないじゃないですか。一体何があったんですか? めっちゃ怖いんですケド……」

「その…………大公アガレス殿が、一枚噛ませろ、と」

「What’s?????」

 

 勉強ちょっとしてるから知ってるぞ、魔王抜きに考えると権力の格でNo.2、元七十二柱の二位……大公アガレス。上から数えた方が早い権力者が、何故僕のアニメ案……にも満たない何かに食いついたんだよ!?

 

「それが私にもさっぱりでね…………初めて見たよ、大公殿があんなに食いつく様子を」

「何もしてない、イッセー君何もしてないですからね!!?」

「ははは……私もそこは疑っていないよ。だが……その、イッセー君はドラゴンだろう?」

「はうっ!!?」

 

 無敵の返しで草ァ。いや枯れるが。その、ドラゴンだから何が起きても不思議じゃない的なの風評被害過ぎませんかね!?

 

「事実、君が悪魔に転生してから……」

「風評被害過ぎませんかね!!?(鋼の意思)」

「……一先ずはそういうことにしておこう。ともかくそういうことだから、ギャスパー君との特撮も合わせて、冥界のテレビ番組改革計画は予想だにしない方向で最高のスポンサーを得てしまった。…………失敗できないと思うと、少し胃がキリキリとしてくるね」

「僕も巻き込もうとかそんなハラですか!? なんで厨二病の如き黒歴史ノート提出しただけでこんなことになってるんです!! 逃がしてください、僕まだ何にもしてないじゃないですか!」

「はははは、私たちはもう家族みたいなものだろう? それに日本には『言い出しっぺの法則』という素晴らしい言葉があるそうじゃないか」

 

 ぐ、ぐぬぬぬ……ぐぬぬぬぬぬ……!! こ、困った誰かの頼みは、捨て置けぬゥ……!! 特にそれが将来の義兄ともなると……!!

 

「……や、やれる範囲でですからね!!? ドラゴン要素ぶん投げれば僕は普通の高校生に毛が生えた程度だとちゃんと認識してくださいね!!?」

「勿論、私達も出来うる限りの協力はするとも。すまないね、イッセー君」

 

 そこで、僕は一つ思いついた。魔王が申し訳なさそうに頭を下げている、チャンスだ。

 

「……その代わり、僕がちょっとやらかしても何回かは見て見ぬフリをしてくださいよ? 勿論、部長達に迷惑のかかることはしないつもりですが」

「ああ、いいとも。無茶を言っているのはこちらの方だからね」

 

 ……後にサーゼクス様は、この時のことを酷く後悔したらしい。具体的には若手悪魔の集いの時に。

 




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