GBF-L_ガンダムビルドファイターズ Lost   作:杉村 祐介

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GBF-L #013「願われた結末」

 つい先程までの青々とした快晴の天気はどこへやら、空には雷鳴轟く暗雲がたちこめ、今にも豪雨が溢れ出しそうな様相に早変わりしていた。その中央、ロストフリーダムの周囲には朱い粒子が渦を巻く。それは機体の血肉となり、尋常ではない能力を引き出すということは、ここにいる遊以外の誰もが知っている事実。対峙するジャスティスはその武器を握り直し、決戦を見守るギャラリーたちは試合の行方を固唾を呑んで見守る。

 

「俺はお前をぶっ倒す!」

 

 遊はそれを言葉に出すことで自分の決意を改めて認識した。眼の前にいる正義を振りかざす男を、本当か嘘かもわからない事を騙る悪漢を倒すと、自分の決意を固めた。

 だがその裏には確実に迷いが、心のゆらぎが見て取れる。迷い立ち止まりそうになるからこそ、そうやって言葉で自分を支えるのだ。自分の行いに自信がないからこそ子犬のように吠えるのだ。想定通り、魁斗は隠しきれない笑みの漏れた顔で、心の底からの自信をもって答える。

 

「できるものなら、やってみろよぉ!」

 

 カッと輝く雷光に照らされたジャスティスのツインアイがより一層輝きを増して、眼前の黒い機体を見据えた。

 

 

 

 寄り合う縁は複雑に絡まった糸のように。重ねられた思いは煩雑に積み上げられた積み木のように。終わらせるにはいっそ、全てを捨てて、全てを流してしまうほうが早いのかもしれないと思わせるほどで。

 

 

 

── ガンダムビルドファイターズ ロスト ──

 〜 第十三話 願われた結末 〜

 

 

 

「ドラグーンっ!」

 

 右手のスロットが軽快に回る。多数の武装から選ばれたのは、合計八枚からなるビット兵器ドラグーン。それらが主の命令を受けて一斉に、拘束具となるバインダーから解き放たれる。それは同時に「拘束具だったドラグーンから、ロストフリーダムが解き放たれる」ということ。

 真なる姿、内なる翼、無限の力である蒼白の輝き、ヴォアチュールリュミエールが展開される。それは無限に広がる天の翼か、全てを破壊する悪魔の翼か。

 

「やっと本気になったか、はは」

 

 魁斗の表情から笑みは消えない、だがその頬には汗が伝い、真剣な眼差しは画面を見据える。余裕はない、油断もない、そして不安もない。今まで無敗の遊を相手に、朱い粒子を纏ったロストフリーダムを前にしてもなお、早川魁斗には勝算があった。

 

「格の違いを教えてやるよ、遊」

 

 吐き出した言葉を皮切りに、ジャスティスのバーニアが轟々と唸る。爆発したような加速でロストフリーダムとの距離を詰める正義は、柄を連結させた双刃のサーベルを右手に、半壊したシールドを前に突き出して猛突する。

 ロストフリーダムが接近する敵影に対して手を伸ばせば、それに呼応してドラグーンが空を駆ける。三機のドラグーンが赤い機体の進行先を正確に予測して狙いを定め、無駄の一切を省いたビームを放つ。

 

「分かりやすい攻撃だ」

 

 だが、当たらない。ジャスティスはレーダー反応を見てから進行方向を直角に曲げ、飛び上がるような形でビームを回避する。速い、今までの敵とは段違いだ。自分を正義を執行する者だなんて豪語するだけのことはある。

 

「次は当てる」

「当たらないよ、お前の攻撃は」

 

 ドラグーンがビームの嵐を巻き起こす。その隙間を縫うように加速するジャスティス。

 

「オールレンジ攻撃は、それだけで万能の兵器じゃない。むしろ扱いを間違えば──」

 

 鋭角に曲がる赤い機体。ドラグーンの操縦にばかり気を取られ、その棒立ちになっていた黒い機体は、判断が一瞬だけ遅れた。

 

「甘い隙を晒すことになるんだよなぁ!」

 

 輝く刃、振るわれる閃光。ジャスティスは双刃のサーベルで弧を描き、重厚な装甲のわずかな隙間、胸部と右肩の間にある関節を的確に、大胆に切り落としてみせた。

 

「速いっ!?」

「まだ終わりじゃないさ!」

 

 返す刃でジャスティスは、ロストフリーダムの下半身に狙いを定める。だがその一撃は間一髪、左腕のビームトンファーを放出し受け止めるロストフリーダムが阻む。ビーム同士の激しくぶつかり合う火花が、暗雲を背にした二機を朱く彩る。

 

「どうした、僕をぶっ倒すっていうのはハッタリか!?」

「ハッタリなんかじゃ、ない」

「じゃあやってみせろよ!」

 

 ジャスティスは鍔迫り合いのさなか、蹴りを入れてロストフリーダムを突き落とす。遊の機体は空から急降下し、墜ちた先はちょうど孤島で、土煙が激しく舞い上がった。

 流石の魁斗も視界が塞がれた孤島へ突っ込むことはせず、空中で滞空する。

 

 右腕を落とされ、矢継ぎ早に猛攻を受けた遊は、魁斗の強さを理解しながらも、ずっとぐるぐると頭を支配する疑問に頭痛さえ感じていた。

 兄ちゃんがガンプラを辞めた理由が魁斗に負けたから? そしてその復讐のために僕を使ってここに連れてきた? GPベースを盗んだのも知っているけど、黙っていた? 魁斗の告げた真実は、遊には信じられないことばかりだ。

 卓がガンプラを辞めたのは六月頃で、もし僕を復讐に使うならもっと早くけしかけるはずだ。GPベースだって僕に手渡すチャンスなんていくらでもあったはずだ。ゲームセンターでアイちゃんに会わなければ、この闘技場に来ることさえ叶わなかった。惑わされるな、あいつは嘘を言っている。今ここに立ってるのは、先生に言われて勉強するのとは違う、父さんに言われて手伝いをするのとは違う。僕自身の思いでここに立っている。それは誰にも否定されない僕の考え、僕の真実だ。

 

「僕は兄ちゃんに言われてここに来たわけじゃない、アイちゃんと出会ったのだって偶然で、誰が僕に言ったわけでもない。これは僕の、僕自身の思いだ!」

 

 爆発音。土煙の中から飛び上がり、その左腕をジャスティスめがけて突き出した。とっさの判断でシールドを構えたジャスティスの左腕を握りつぶすようにアームドアーマーVNが牙を剥き、草食動物に喰らいついた獅子のように容易く、その片腕、肘から下を食い千切った。

 

「お、お前っ」

 

 ジャスティスは──魁斗は驚きと戸惑いと怒りに表情を歪ませる。

 

「この僕のジャスティスに傷をつけるだと? デタラメな改造ガンプラのくせに正義に楯突くだと? ふざけるな……ふざけるなな、ふざけるな!」

 

 目と鼻の先にある両者の機体、ジャスティスが右腕のサーベルを振るえば、それはロストフリーダムのビームトンファーで遮られる。再び鍔迫り合いとなった両者、肉薄するロストフリーダムの朱い粒子に、ジャスティスが飲まれていくような気さえする。いや、ジャスティスがロストフリーダムから粒子を吸っているようにも見える。

 朱い粒子は二機を包み込み、かき混ぜる。

 

「ガンダムという作品の上辺だけを借りて俺ガンダムだと? デザイナーも世界設定も無視した醜い合成魔獣どもが! お前達が玩具として作ってるそれはなぁ、もっと精密で丁寧であるべきなんだよ、それがわからないガキが、ガンプラは自由だなんてご名目で、ガンプラバトルだなんだと遊びやがって! お前のその機体だってそうだ、ストフリにバンシィの腕なんか装備したら、せっかくの曲線美とスタイリッシュさが台無しじゃないか! それを平然と、お前達は──」

「それが魁斗の戦う理由か」

 

 遊の言葉に、少しの沈黙。そして髪をかき上げて答える魁斗。

 

「そうだとも! 僕はね、ガンプラは自由だなんて言いながらその創作元を踏みにじるような適当な工作とでたらめな作品設定が大嫌いなのさ。特にお前のようなSeedもUCも見たこと無いような、にわかビルダーの作品がなぁ!」

 

 ジャスティスは奪われた左腕の肘でロストフリーダムの頭部を叩く。それはビームサーベルのように切り伏せるようなダメージを与えることはできなかったが、遊のモニターは衝撃で大きく揺れた。その隙にジャスティスが、残された右腕でビームサーベルを振るう。だが、当たらない。その残光が空を彩り、直後、ロストフリーダムのかかと落としが炸裂し、今度は魁斗のモニターが激しくフラッシュする。

 

「そんなくだらない理由なら、俺は負けない。負けられない!」

「二度も攻撃を」

「三度目もあるぞっ」

 

 追撃。ロストフリーダムが飛び蹴りの形でジャスティスを空中から叩き落す。朱い粒子の渦からはじき出され、海に叩き落される直前でなんとか体勢を立て直すも、先程の上下関係が一変した。

 

「遊! 兄のためじゃないっていうなら、お前はどうして戦う、なんでこんな場所に居続ける!」

「俺は──」

 

 問に、言葉が詰まる遊。ふと頭をよぎるのはアイちゃんの笑顔で。フィールドの横で試合を見ているアイちゃんに目線がふと移る。

 自分の求めているものが、自分自身ですら理解できていなかった。その答えの鱗片が脳裏でちらつく。

 

「……はは、そういうことか」

「何がおかしい!?」

 

 言葉のない答えに、ついぞ笑ってしまう魁斗。

 

「君の言っていることは真実だと、やっとわかったのさ。いやー、さすがアイの認めた奴だ」

「今更何を!」

 

 左腕を前に突き出すロストフリーダム。それに応えるように、ドラグーンがジャスティスにビームの雨を御見舞する。だが見え透いた攻撃は赤い正義にあたることはなく、躱されて虚しく海に解けて消えるばかりで。

 お返し、と言わんばかりに、飛び上がったジャスティスが肩部のビームブーメランを投擲する。悪魔の囁きと共に。

 

「いや別に。君はアイのこと、好きなんだろ?」

「なっ」

 

 遊の手が鈍った。好きとか嫌いとか、そういう人間の感情にすこぶる疎い遊にとって、直接的にそう言われたことが事実であろうとなかろうと、動揺を隠すことができなかった。迫りくるブーメランの刃を、ロストフリーダムは間一髪、一基のドラグーンを盾にすることでしか凌ぐことができず。眼の前で爆発するドラグーンに押される形で、ふらりとよろめく黒い機影。

 

「わかり易いなぁ遊くん!」

 

 戻ってくるブーメランを受け止めたジャスティスは、その予測を確信に変えて一転攻勢、前に出た。

 

「でもその様子じゃ何も聞かされてないんだろうなぁ」

 

 矢継ぎ早にライフルを持ち直して射撃するジャスティスに対し、遊はぐらついた機体をなんとか空中に保たせつつ、大振りな動作で回避行動を取る。

 何を聞かされていない? 一体僕は何を知らない? 疑問が心に引っかかって離れない。

 

「……戦いの最中に、うるさいやつだ!」

 

 ロストフリーダムは再びドラグーンを操り、飛び回るジャスティスを包囲するようにビームの網を敷く。だがジャスティスは、魁斗はその隙間を難なく潜り抜けて接近してくる。

 

「アイがなんでお前にここまで手間をかけてると思う。お前が好きだから? そんなのあるわけないじゃないか」

 

 急速接近してくる正義が振りかざすビームの刃を、失われた自由は左腕のトンファーでなんとか受け止めることしかできず。

 

「簡単さ、動画の再生回数が桁違いになるんだよ。連戦連勝、ヒーローのようなファイターが負けて愛機を奪われる様ってのは、とても盛り上がるからねぇ!」

「これから負けて動画を盛り上げるのは、魁斗……お前の方だぞ!」

 

 ロストフリーダムの渾身の蹴りがジャスティスを弾きとばす。その一瞬、朱い粒子の脈動がさらに激しさを増して──

 

「お前が、アイちゃんを語るなよ!」

 

 片腕を失ったロストフリーダムは、残されたドラグーンを従えて高く高く上ってゆく。乱雲立ち込めるその限界まで上昇した黒い機体がツインアイを光らせて、その身に宿した複数の、単体でさえも孤島一つ焼き払うに易いような武装を展開する、その姿はまさに。

 

「まだそんな力が、悪魔め──」

 

 腰部のレールガン二門、腹部の複相ビーム砲、頭部のハイメガキャノン、そしてドラグーンからなるハイマットフルバーストが、ちっぽけな正義を断罪する光として天空から降り注ぐ。ロストフリーダムに残されたプラフスキー粒子のありったけをその一撃にかけて解き放つ。

 無数の光線がジャスティスを包んで、その機影が飲まれて消えた。

 

「僕はアイちゃんのために戦うんだ、アイちゃんが連れてきてくれたここで戦い続けるのが、僕の目的だ……!」

 

 

 

「ならその目的のために、ここで死ねよぉ!!」

 

 試合はすでに終わったと思っていた、その隙が致命的だった。海中から飛び上がったジャスティスが、天に漂う機体めがけて駆け抜ける。

 

「まだ生きて──」

「そうさ! お前がハイマットフルバーストを撃つのをずっと待ってたんだ。激昂して、周りが見えなくなって、全力でエネルギーを使い切るこの時をずっと!」

 

 遊は迎撃しようとレバーを動かす。だが機体がガクンと傾き、激しい重力を感じる。エネルギーのほとんどを使い果たした上に、ドラグーンさえもその役目を終えてバックパックに強制撤退し、ヴォアチュールリュミエールも失われたロストフリーダムは、もはや黒い棺桶に等しかった。

 

「お前の戦いを何度も何度も動画で見た。意味不明な強さをした機体と、それに見合わない操縦技術、かと思えば世界大会クラスの反応速度を見せたり、あの黒田との戦いじゃオロオロとのたうち回る……ほんと、わけわかんないよお前は!」

 

 正義の名を冠した機体はロストフリーダムにしがみつくと、そのまま我が身どうように急降下した。気づけばジャスティスの背面にはあるはずのファトゥムは失われ、その全身もビームの奔流に晒されて、ただれたような傷跡を残している。それでもジャスティスは、ロストフリーダムを離さずに海へと墜ちるために、まだ戦い続けるためにしがみつく。

 

「お前の強さの源は、最初はNT-Dか、EXAMか、ナイトロシステムのような強化型かと思っていたよ。だが違う、どちらかといえばSeedだ。お前の精神が高ぶれば高ぶるほど、このフリーダムは強くなってた」

「何が、言いたい!?」

「わかんないかなぁ、お前が怒れば怒るほど強くなるなら、絶望させちまえばそれで終わり、ってことだよ、遊!」

 

 海面に叩きつけられた二機のガンプラは、その衝撃でバラバラになりかねなかった。だがそれでも形を保っていられたのは、まだ戦う気力が残されていたからなのか、それとも誰かに戦うことを求められていたからなのか。

 

「最後に一つ教えてやるよ。遊、ここで君が勝っても、いずれ新たなファイターをアイが連れてきて、そいつに君が負けるまで戦わされるのさ。勝ちが続けば続くほど、高くなった積み木のように、崩れる様が派手になるからね!」

「何でそんなことがわかる!」

「根拠ならあるさ。ここのルール『勝ったら負けたガンプラを奪える』、あれを決めたのはアイ自身なんだから!」

「アイちゃんが、ルールを──!?」

 

 魁斗の言葉が真実であるかどうかなんて、遊は考えもしなかった。ただ頭を巡ったのは、アイちゃんの言っていたことが嘘なのか、騙されていたのか、自分は掌の上で踊らされていただけなのか。疑問が不安になり、不安が雑念になる。戦いの真っ最中だというのに、観客としてこの試合を見ているアイのことが気になってしかたない。

 

「アイちゃんは僕が負けるのを見たい、だって? そんなこと有るはず無いじゃないか! だってアイちゃんは僕のために色々としてくれるし、お前を倒して欲しいって、ねぇ!」

 

 遊がアイに視線を移しても、彼女はフィールドをじっと見つめているだけで、自分の方を向いてくれることはなく。

 自分を肯定してくれない。それはつまり、自分の言っていることが間違っているということなのか。

 

「……嘘だ」

「嘘じゃないさ。アンティルールは彼女が作ったものだ。アイはガンプラを奪い合って潰し合う、そんな戦いが見たくてここを運営してるんだ」

「嘘だ!」

「彼女が否定しないことこそ、何よりの証拠だろう!?」

 

 魁斗の叫びに重ねられて、ジャスティスは最後の一閃を放つ。

 

「アイの作ったルールで死ねよ、長谷川ぁ!」

 

 せまるビームサーベル。遊はがむしゃらに武装スロットを回した。エラー:オーバーヒート、エラー:残弾ゼロ、エラー:武装ロスト、エラー:水中使用不能、エラー、エラー、エラー──

 

 深く暗い海の底で、ロストフリーダムだったガンプラは静かに壊れて堕ちた。

 

 

 

 Battle ended.

 

 濃い朱に染まっていた粒子達もその役目を終え、主人であるガンプラから消失してゆく。白熱した戦いを繰り広げた両者の結末はあまりにも無残で、全身の装甲を傷つけられたジャスティスも、粒子の支えを失って前のめりに倒れた。勝利した魁斗は肩で呼吸しながらも笑みをうかべ、敗北した遊は呼吸もできないほどに追い詰められ。

 

「じゃあ、君の好きなアイちゃんが決めたルールだからね」

 

 魁斗はそう言って、カバンからガンプラが一つ入りそうなほどの空箱をとりだした。愛機であるジャスティスのそれではない、奪ったガンプラを入れるためだけの箱に、ロストフリーダムを丁寧に梱包していく。

 

 自分が作ったガンプラが奪われる。

 たった一つしか持っていない自分のガンプラが奪われる。

 母さんからもらった大事なストライクフリーダムが奪われる。

 

「ああ……!」

 

 今までこうして無数のガンプラを奪ってきた報いだろうか。兄のGPベースを盗んで使っていることへの罰だろうか。はじめて奪われる側になって気づく苦しみ、辛さに、喉を力強く締め付けられる感覚におちる。周りの視線が全て軽蔑に見えてくる。今まで自分が奪い続けてきたことが、これほどまでに他人を傷つけてしまっていたのかと我に返る。自分のしてきたことが間違っていたのだと思い知らされて、この闘技場という空間全てが敵に思えてきて、遊はたまらず、その空間から逃げ出した。

 

 

 

 重たい鉄扉をぬけて外へ飛び出したら、出かける前は曇り空だった天気模様が、今はもう土砂降りの大雨だ。遊はそれもかまわず飛び出して、その雨を全身で受ける。

 

「……あああ! なんで、どうして! 僕は、僕は! うあああああっ!!」

 

 少年の叫びは叩きつけられる雨音でかき消され、誰の耳にも届くことはなかった。


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