GBF-L_ガンダムビルドファイターズ Lost   作:杉村 祐介

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GBF-L #015「狭められた視界」

 ああ、自分が憧れたのはこの世界だった、自分が求めていたのはこの輝きだった! 皆が楽しく全力で競い合う世界。愛するガンプラと共に戦う楽しさ、強敵に立ち向かう興奮、勝利を勝ち取った時の喜び。そのどれもが自分が心から求めていたもので、そのどれもが自分の手から零れ落ちるように失っていたもので。勝ちたい。戦いたい。ガンプラバトルがやりたい。自分も同じフィールドに立って競い合いたい。

 叶わぬ願いほど儚いものはない。少年は今、ガンプラバトルに恋をしたのだ。

 

 

 

── ガンダムビルドファイターズ ロスト ──

 〜 第十五話 狭められた視界 〜

 

 

 

「せっかくだからチーム戦ってのはどうだ!?」

 

 颯爽と、風のように割り込んできた少年に、一同は唖然とするばかりで。誰もが良いとも悪いともとれる反応すらみせず、ただ立ち尽くすばかりだった。

 

「……なんだよぉ! ここは乗り気でバトルするお決まりの展開じゃねーのかよ」

 

 しびれを切らした飛び入りの少年、黒田涼介は叫ぶ。

 

「な、中学生の兄ちゃん達は闘技場行きてえんだろ。ここにいる遊と俺はそのメンバーだし、山田はそこのリーダーだし。俺達とチーム戦すりゃ、否が応でも注目してもらえるってもんだ」

 

 悪い話じゃないと思うぜ! だなんて啖呵を切った小学生に、気圧されていた中学生の三人組もやっと頭が回ってきたのか、各々で頷いたり、目配せしたりしている。

 それに焦ったのは誰でもないアイだ。

 

「ちょっと黒田、あんた自分が言ってることが分かってるの」

「え、何か悪いこと言ったか」

「悪いことだらけよ。確かにあいつらぶっ飛ばしてやりたい気持ちはあるけど、あたし今日は戦うモチベじゃないし。それどころか遊はモチベも、戦うためのガンプラすら持ってないのよ? そんな状態で闘技場メンバーを賭けたチーム戦なんて、絶対認めない!」

「黒田くん」

 

 ヒステリックぎみに言い寄るアイにたじろぐ涼介、その間に遊が割って入る。

 

「チーム戦ってことは、僕のガンプラも用意できてるってこと?」

「ちょっと遊、何を」

「アイちゃんは黙ってて!」

 

 遊は燃えていた。もし遊の手元にロストフリーダムがあったなら、涼介の介入がなくてもバトルを受けていただろう。戦う術(すべ)があるならば、チャンスがあるならば、それを手にしたいと思う気持ちは誰にも止められない。

 涼介もまた、遊の気持ちを察していたかのように。

 

「ほらよ。弟たちのヤツなんだけどさ、お前に貸してやるから」

 

 そう言って彼が取り出したのは、白と黒──細かく言えば深い紺色──の双子のようなガンプラ。ティターンズとエゥーゴのガンダムMk-Ⅱ。

 

「黒いのは俺が使う。俺は黒が大好きだからな!」

「わかった、じゃあこれ借りるよ」

 

 手渡された白いガンダムは、見慣れていたストライクフリーダムよりもゴツゴツして、それでいてシンプルな機体。

 

「……もう、男子ってなんでこうバカばっかなのよ」

 

 アイはそんなことを言いながらも、愛用の白いファルシアを手に真っ先にバトルシステムへと歩み寄るのだった。

 

 

 

 『Please set your GP-base. Please set your Gun-Pla.』

 

 青白いプラフスキー粒子につつまれて、六角形のバトルシステムの一面に一人ずつ立ち並んだ。初めて扱う機体ということもあり、奇襲を受けないようにと右にアイ、左に涼介が立ち並ぶ位置につく。誰もが手慣れた様子で試合前の最終チェックを済ませて、愛用のガンプラをバトルシステムに読み込ませる。

 遊は目の前にセットしたガンプラの背中を眺めた。よくよく考えればGPベースもガンダムMk-Ⅱも、全てを借り物で戦うことになるのだ。半ば勢いで受けてしまった試合だけれど、ほんとうに良かったのだろうか。今更後悔と反省が押し寄せてきて、そんな自分に引け目を感じてつい、視線が下を向いてしまう。

 ポンと軽快な音が鳴る。顔を上げると、出撃前のモニターに涼介の顔が映し出されていて。

 

「頼んだぜ遊、お前の強さは前の試合でさんざん味わってるからよ!」

 

 相変わらずこの状況を楽しんでいそうな様子で、早く戦いたくてウズウズしているというのが表情だけで伝わってくるほどだ。

 

「黒田ぁ、あんたのせいでこんな無意味な戦いに巻き込まれたんだから。あとで埋め合わせしなさいよ!?」

 

 矢継ぎ早にアイからの通信が届く。涼介の顔を覆い隠すように映されたのは、彼とは反対に不貞腐れているような表情でいる。

 

「遊は無理して戦わなくてもいいから。こんな奴ら、黒田とあたしだけで十分よ」

「へぇ、山田がそんなに俺のこと信頼してくれてるなんてな!」

「その名字で呼ばないで! もう、何度言ったらわかんのよ」

「へぇ〜、なら遊みたいに『アイちゃん』って呼んだほうが良いか!?」

「あんたにだけはその名前で呼ばれたくないわ……!」

 

 頭を抱えるアイと笑ってのける涼介の、コントみたいなやり取りに緊張がほぐされながらも、試合の前にあんまりほぐれすぎるのも良くないなぁと思いつつ。

 

「ありがとう、二人とも」

「何言ってんだよ、試合はこれからだぜ」

「そうよ。黒田を盾にしてでもこの試合、勝つんだから!」

 

 どういう意味だ、という涼介の声が途切れるような形で通信は途絶えたが、三人の気合は十分に高まった。これほど心強いものはない。

 

「黒田涼介、ガンダムMk-Ⅱ。行くぜぇ!」

「長谷川遊、ガンダムMk-Ⅱ。出ます」

「桃井アイ、ファルシア・トリフォリウム。いっくよー!」

 

 黒と白のガンダム、そしてファルシアベースの無いファルシアが一斉に踏み出した。土煙が粉っぽい黄土色の、多数の渓谷が亀裂となって走る荒野がそれらを歓迎する。

 

 

 

 しかし、がくんと遊の操るMk-Ⅱが突如としてペースを落とした。

 

「おい遊、大丈夫か!?」

「……平気。機体には何も問題ないよ!」

 

 涼介の心配を気丈に返してみせた遊だが、内心、遊はとてつもなく焦っていた。

 機体が重たい。想像している何倍もの燃料を移動だけに奪われている気がする。ストライクフリーダムのそれとは大きく違う性能に困惑した。武装もまるで違っていて、どれだけ武器スロットを回してもライフルとサーベル、左腕の物理シールドしかない。頭部バルカンすら搭載されていない始末だ。ガンダムシリーズという数多の作品を深く知らない遊にとって、こんな貧相なモビルスーツがガンダムネームを持っている事実に驚きを隠せないでいた。

 自分のものと色が違うだけのはずなのに、出撃時の速度を殺すことなく遥か上を飛び続けている涼介の機体を見上げると、もしかしてスペックの悪い機体をわざと渡されたのではないのかと疑ってしまう気持ちも湧いて出る。そんな思いが荷となっているのか、ずるずると重力に引っ張られて高度を落としていく遊のMk-Ⅱ。改めて何か異常があるのかとモニターの情報を探っても何も見つからない。

 ハッと顔を上げれば、熱源接近の赤いアラートが目の前に。

 

「……くそっ!」

 

 白いMk-Ⅱはその機体を重力に任せて墜落するように降下して、朱い大地に装甲を擦り付けて不時着した。その上を飲み込まれていればひとたまりもないだろう極太のビームが通過しジリジリと空気を焦がす。

 射線の先をズームモニターでよく見れば、ティターンズカラーのセラヴィーガンダムが砲口を冷却している様子が映し出されて。

 

「外したか」

「お前の実力じゃその程度ってことよ、倒れた奴は俺が貰ったぁ!」

 

 矢継ぎ早に、今度は渓谷を縫って飛び込んできた赤い装甲のブルーディスティニーが、ビームサーベルを片手に飛び上がる。

 

「早い!?」

「まず一人!」

 

 意気揚々と振り下ろされたサーベルを、時同じくして急降下してきた黒いMk-Ⅱがサーベルで受け止める。

 

「近接戦闘なら負けねぇっての!」

「んだと?調子に乗りやがって……」

 

 激しい閃光が重なり合って火花が散る。遊は涼介の援護をしようと、倒れていた機体をなんとか起こし、その手に握られたライフルを構えて、放った。だがサーベルも当たるかと思われるような距離の狙撃も、敵機にやすやすと回避されてしまう。

 重たい。何もかもが遅い。身体を起こすのも銃を構えるのも、照準を定めてトリガーを放つことさえ遅いと感じてしまう。今動かしているのがストライクフリーダムだったら、こんなあっさりと回避されることもなかったはずなのに。

 

「くそっ!」

 

 焦りと苛立ちで思わず自分の太ももを叩く。

 

「どうした、やっぱり雑魚そうなお前から潰してやろうか!」

 

 言うが早いか、ブルーディスティニーのバイザーが、その装甲のように赤く輝いていく。それは戦闘をシステムが肩代わりする代物。戦いの意思を殺す兵器。止まるまで暴れ続ける武神の招来。

 

「EXAM起動……いくぜレッドディスティニー!」

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

「さーて、今日の対戦カードは!?」

 

 二人を置き去りにしたアイのファルシアは荒野の上をさらに加速し、幾多の渓谷を飛び越え、すでに敵の一角である射撃型モビルスーツに狙いを定めていた。

 素のセラヴィーガンダムですら重火器系統を複数搭載した砲戦系ガンダムだというのに、ティターンズ特有の紺色に染まったそれはさらに複数のビーム火器を背負い、もはや動く砲台のような形相だ。今はまだそれを構えておらず、正面から見ればハリネズミのように天を睨む多数の銃口。先程の超遠距離砲撃は、その十もある砲門のたった二つが火を吹いたに過ぎない。全砲門が開かれれば、自分の背に置き去りにしてきた遊と涼介にどれほどの被害が出るかは想像に易い。

 

「今日はあたし、桃井アイと! 謎のファイター、セラヴィーガンダム使いの対戦だー!」

 

 普段の声のトーンとは違う可愛さを惜しみなく出しましたというようなそれは、ご丁寧にバトルシステムのスピーカーから流され、ゲームセンターにいたファイターの多くを釘付けにする。

 

「おい、桃井アイだってよ?」

「なんか最近有名な動画配信者だっけ」

「あの黒いガンプラの!?見に行こうぜ!!」

 

 瞬く間にギャラリーたちが周囲を囲う。注目を集めてテンションとポテンシャルを上げていくのは、アイ本来の戦い方だ。

 

「みんな、最後まで楽しんで見ていってねー!」

 

 桃井アイの掛け声に「うおおー!!」と子どもたちの歓声が上がる。

 

「へぇ、ネットアイドルは自称じゃないってこと?」

「そういうことっ」

 

 望遠レンズでファルシアの動きを観察しているセラヴィーに対して、牽制の意味を込めての通信回線。ああ、つまりはこの戦い、そういう舞台でやるのだと、否応無しに通じる一言。

 だからこそ、セラヴィーを手繰るファイターは難色の表情を浮かべて。

 

「やりにくい相手は嫌いだな。拓海、頼んだ」

「おう」

 

 仲間内の短く単純なやり取りからは、その付き合いの長さが伺える。

 了解の返事が来たことでセラヴィーはさらなる砲撃を、桃井アイからの邪魔が入らない位置で続けようと、白いファルシアを避けるように大回りなルートを進む。そして代わりにファルシアの前へと立ちはだかったのは、大きな翼を背負ったゴッドガンダム。

 

「お前の相手は俺だ!」

 

 空中を駆け抜けるファルシアに対して狙い澄まされた踵落とし。ビームでもバズーカでもない質量そのものの一撃は、当たれば一発KOもあり得た一撃。それをアイは巧みな操縦技術で回避する。

 

「ちょっと、女の子に不意打ちなんて卑怯じゃない!」

「そう言いながらしっかり回避するあたり、さすがだと言っておく」

 

 並の同学年ファイターじゃ反応できない死角からの一撃だった。普段の相手なら当たっていた一撃をこうも簡単に回避されるなんて、とゴッドガンダムのファイターは歯がゆい思いもしたが、それと同時に高揚感もあった。久々に強い相手と戦えるというファイターの闘争本能をくすぐられる高揚感。

 アイも同じく期待が高くなった。さっきゲームセンターを見て回った時には居なかった高水準のファイターがここに居た。別の形で会えていたなら、きっと勧誘しただろう。

 だがそこで「はいそうですか」とバトルに応じないのが、アイらしいというべきか。

 

「でもいいの? あなたの仲間があたしの仲間を倒しちゃったら、それで枠は埋まっちゃうかもしれないわよ。あそこはあたしの闘技場、誰がなんと言おうとあたしが抜けることはないもの」

「それを言うなら、あそこは桃井アイの闘技場だ。お前に勝って文句を言わさずにこじ開けてもらう」

「へぇ、言うじゃない──」

 

 ゴッドガンダムの乗り手、拓海の言葉で彼女は吹っ切れた。

 出力全開。目の前のゴッドガンダムに猛進、そして先ほどのお返しと言わんばかりの高機動で、同じように身体を縦に一回転させてからの踵落とし。通信回線で油断していたのか、ゴッドガンダムはものの見事に肩口へと打撃をもらい、滞空していたその場から一直線、隕石のごとく地面へと落下する。

 赤茶色の土煙が舞った。機体重量の差なのか、それともとっさの受け身が功を奏したのか、ゴッドガンダムへのダメージは少ない。だがその一撃が決まったこと、それが実力の差を決定づける最初の一撃。

 

「いいわ、最初にあんたと遊んであげる!」

 

 見下すファルシアに対して、ゴッドガンダムは、拓海はさらに闘志を燃やす。

 

「やっと被ってた化け猫が取れたな」

「うるさい」

 

 身軽なファルシアは彗星のような軌道でゴッドガンダムに迫る。当初の目的であるセラヴィーはもうすでに手の届かない位置へと動いていた。アイは最初こそ遊と涼介が心配ではあったが、今はもうそんなことはすっかり忘れて、ただ目の前のゴッドガンダムと戦うことを望んでいた。ああ、彼女もまた生粋のファイターなのだ。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

「おらぁ!」

 

 EXAMの光輝くバイザーが迫る。黒のMk-Ⅱは白い僚機を背に置いて、その猛攻を受け止めるに精一杯だ。

 

「どうした、そんなもんか!」

「くそったれ……」

 

 涼介もアイに呼ばれたファイターの一人、決して弱いわけではない。だがMk-Ⅱという純粋にスペックが平均的な機体と格闘偏重のファイターである彼とのミスマッチ、そして相手がEXAMシステムという大幅なスペック増加システム搭載であるということ。そして何より遊を守りながら戦っている現状が、この劣勢を作り上げている。それが理解できた時、遊の歯がゆい気持ちは輪をかけて大きくなって。

 

「ああ、この!」

 

 ビームライフルを乱雑に振り回してトリガーを引く。そんな攻撃が当たるはずもなくやすやすと回避される。それは涼介の行動をも阻害するような横暴さで、

 

「遊、お前──」

「こんな下手くそが闘技場のメンバーだって、笑わせるぜ!」

 

 白いMk-Ⅱのモニターにレッドディスティニーが大地を蹴って迫った。振り上げられたビームサーベルを間一髪、シールドで受け止める。それもつかの間、矢継ぎ早にショルダー・タックルを決められ、画面が大きく揺れて、ノイズが響く。

 

「僕はこんな、こんなことで」

「──うるせぇーっ!!」

 

 黒いMk-Ⅱがその推力を一直線にして、せめぎ合う機体へ向けて飛び込む。レッドディスティニーはそれを察知してバックステップ、なんの問題もなしに回避した。だが混乱と興奮のさなかにあった遊とその機体は避けるどころか受け身すらとれず、チーム機体同士がぶつかりあい、もみくちゃになりながら勢いを殺すことなくすっ飛んだ。

 そして二機は荒野を縫うように走る渓谷の隙間へと、吸い込まれるように落ちる。

 

「黒田くん、なんで!」

「うるせーって言ってんだよ、聞こえねーのかこのポンコツ!」

「ポン……!?」

 

 渓谷の下を流れる川へと真っ逆さまに墜落するMk-Ⅱはそのまま水を頭から被り、日光と無茶苦茶な駆動で熱された焼け石のような装甲で蒸発した。フラフラと、それでも立ち上がる頑丈なモビルスーツ。

 

「ポンコツなのは僕じゃない、この機体だよ! 重たくて遅くて、ストフリとは全然違う。黒田くんの黒い方はそんなに機敏に動いてるのに!」

「バカヤロウ!」

 

 黒いMk-Ⅱが、白いMk-Ⅱを拳で殴った。よろめいた白い機体は再び水しぶきを上げて倒れる。揺れるMk-Ⅱのモニター、揺れる遊の心。

 

「お前なら……お前ならそれを使いこなせると思って貸してんだよ。自分の動きに合わせるんじゃねぇ、機体の動きに自分を合わせんだよ。こいつだって前の機体より出力も装甲もぜんぜん弱えけど、それでも俺はまだ100%の力でこいつを動かしきれてねぇ……100%出せばあの赤い敵にも負けねぇ強さがあるって俺は思ってる、だから!」

 

 接触回線、モニターが開く。映し出されたのは揺るぎのないとても真っ直ぐな瞳だ。

 

「だから遊、お前もその白いヤツに合わせろよ。お前ならぜってー強くなれるから!」

「……黒田くん」

「あとその、黒田くんって呼び方さ。なんか照れくさいからよ。涼介でいいぜ」

 

 そういうときだけ目を逸らして、すぐにモニターは閉じられた。

 

 冷静に考えてみれば、涼介に言われたとおりだ。自分の勝ちたいという思いばかりを押し付けて戦っていた。機体の事を何も知らないまま戦っていた。ただ動きが遅くて重たいだけのガンダムじゃないんだと、言われるまで気が付かなかった。

 倒れていた機体をゆっくりと起こす。その重みや動きを確認しながら、落としていたライフルとシールドを拾い上げる。ガンダムMk-Ⅱの一挙一投足が、手にしているプラフスキー粒子でできた球状のコンソールから伝わってくるかのようだ。ストライクフリーダムより遅く重いがそれでも、それでもこいつはガンダムだ。ストライクフリーダムのように空を飛び回りライフルとドラグーンで攻めるような派手な戦い方ができなくても、こいつの戦い方があるんだ。

 狭まっていた視界が広がる、黒いモヤが晴れていく気がする。

 

「ごめん……ありがとう、涼介」

「っしゃ! じゃあ気を取り直して、勝ちに行くぜぇ!」

 

 ガンプラバトルは性能差で勝負が決まるものではない。それと同時に操縦技術で決まるものでもない。だからこそ、ここから何が起こるかは誰にも予測はできようもない。

 熱された機体と心は適度に冷やされ、だが闘志の炎はなお燃え上がる。番狂わせはいつだって逆境から、そして折れない心から生み出されるものだ。

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