GBF-L_ガンダムビルドファイターズ Lost   作:杉村 祐介

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GBF-L #018「選ばれた自由」

 重たく大きな鉄扉の向こう、バーカウンターのさらに奥にある閉鎖的な空間。薄暗い照明とセルリアンブルーの粒子が立ち込める一室に今日もまた、うら若きファイター達が集う。

 部屋の奥、入り口から一番遠い角で壁に持たれながら、ここで行われるバトルすべてをまるで監督しているかのように佇む少年。そして彼と再び相まみえるべく、新たな剣を手にした少年。先日の勝者は余裕を見せつつも、二度と見たくなかった顔が現れている苛立ちが表情ににじみ出ている。

 

「長谷川、お前また来たのか」

「魁斗……お、俺のロストフリーダムを返してほしい!」

 

 学年が一つ上の魁斗に対して、遊は素直に怖いと思った。思ったが、それで尻込みしていては目的も果たせない。勇気を振り絞って立ち向かう。

 

「へえ、それで。返したらどうすんの」

「返してくれたら、俺はもうここには来ない」

 

 遊の一言に、対峙する魁斗はぷっと笑いだした。

 

「はいそうですか、なんて言うわけ無いだろ? だいたい、ここを何だと思ってるんだよ。相手のガンプラは勝って奪え、それがここのルールだろう!」

 

 それに、と魁斗が付け加える。

 

「それにお前、ここに来たってことは作ってきたんだろ。新しいガンプラ」

 

 隠すつもりも無かったし、魁斗が素直に渡してくれるとも思ってなかった。最初からこうなることは分かっていた。だから遊はためらいもなく、新たなロストフリーダムを──両腕をバンシィの腕に差し替えた"フリーダム"を──箱から取り出す。

 

「勝負だ魁斗、次は負けない!」

 

 兄に手伝って貰ったこのガンプラで、自分のガンプラを取り戻す。その決意を胸に、魁斗への宣戦布告の声を高らかに。

 

 

 

──ガンダム ビルドファイターズ ロスト──

 ~ 第十八話 選ばれた自由 ~

 

 

 

 祖母の車に揺られて、卓と遊は最寄りのショッピングモールに到着した。住宅街を抜けてしまえばすぐなのだが、小学校の校区外でもあるし、大人の付き添い無しでこういったところに出入りするのは校則違反だと言われてきた。それを言い出したらバトルシステムを置いている主要のゲームセンターはアウトだし、ましてや自分が今日戦ったゲームセンターは校区外なので、ぶっちゃけた話気にするほどのことではないのだけれど。それでもここへ来るのは久々で、その上おもちゃを買ってもらえるということも久々で、ワクワクせずには居られない。

 

「賑わってるわねえ。夏休みだからかしら、やっぱり子供が多いわ」

 

 ここからはおばあちゃんが後ろから付いてくる形で、家電量販店のおもちゃコーナーへ一直線。普段は落ち着いている兄も心なしかスキップでも始めそうなはや歩き加減で並ぶ。

 

「買ってあげると言っても、一つだけよ。お父さんが帰ってくるまでそんなに時間がないから、早めに決めてくれたら嬉しいわ」

「はあい」

 

 おもちゃコーナーの入り口には、これみよがしと言わんばかりにバトルシステムが置いてあり、数人の少年が固まってプレイしていた。家電量販店の一画にもバトルシステムが置かれるほどにガンプラバトルは世界的に賑わっていた。こうしてバトルの情景を見せることでプラモデルがよく売れるらしいし、実際に遊もこうして他人のバトルを見たら、自分の身体もウズウズしてくる。

 その横を抜ければ、子供では手が届かない高さまである商品棚に、派手で格好いいパッケージを見せびらかすように所狭しと並べられた模型の数々。一つ一つの情報量に圧倒されて、思わず口をあけたまま棒立ちしてしまった。

 しかしいざ、この中から一つだけ選べと言われると、正直なところとても迷う。ガンダムというアニメに対しての知識もないし、思い入れもそんなに無くて。ただガンプラバトルをやりたいという思いからこのコーナーに来ても、どうしてよいやら。

 

「卓兄ちゃん──」

 

 助け舟を出してもらおうと声をかけたが、そんな卓はかごを引っ掴んですっ飛ぶように歩き出す。慌てて追いかけたら、そこは塗料やニッパー、やすりが置いてある道具コーナーで。

 

「兄ちゃんそれ買ってもらうの?」

「これは自分の小遣いで買う。お婆ちゃんには別のをお願いしようと思ってるけど──」

 

 そう言いながらも、カラフルなガラスの瓶を手にとっては棚に仕舞うことを繰り返す兄。

 

「緑色?」

「そう。基本のグリーンに調色しようか、でも不安定になるからルマングリーンかデイトナ、メタリックもあるし迷う。銀下地にクリアグリーンでも良いんだけど、上からパール塗っても印象かわってくるだろうし──」

「へ、へぇー」

 

 遊にはどれも同じ色に見えたが、兄にとってみれば「全然違う」らしい。そのこだわりはよく分からない領域だ。

 そうこうしてる内に決まったのか、いくつかの瓶を買い物かごに入れた兄。ふと隣りにいた遊と目があって、そこで初めて彼がどうしていいか困っていたことにやっと気づいたようだ。

 

「そうだな……遊はストフリ好きだったよな。前に買ってもらって喜んでただろ」

 

 兄がそう言って、数ある商品棚の中からガンダムSeedのコーナーへと連れてきてくれた。

 そのコーナーも他の商品棚と同じようにガンプラが並べられていたが、ひときわ目立つところに置かれた箱に目が行った。青い翼を広げる白い機体のパッケージは、自分が親しんでいるそれだったので、ちょっとだけ安心感が湧く。

 

「フリーダムに続いてHGのストフリもリバイブされたのか」

「へ、へぇー。そうなんだ」

 

 よく分からない兄の独り言に、とりあえず相槌を打っておく。よくよく見れば、たしかに飾られたストライクフリーダムの箱イラストは、自分の知っているそれとは違っていた。

 

「せっかくだし新しいストフリ買ったらどうだ? 昔の物より可動域も広がって、よりガンプラバトル向けでもあると思うけど」

「うん……」

 

 そうだ。今日買ってもらうガンプラで再びバトルを挑まなければならないのだ。ストライクフリーダムを使って、あの魁斗に。けれど先日の試合を思い返してみれば、ドラグーンも上手く操作した記憶が無く、エネルギー切れを起こして敗北するという結果に終わって。本当に自分がストライクフリーダムを使って良いのかという疑問が湧いてしまう。

 

「けど、これじゃないのが良いな。兄ちゃん、もうちょっと使いやすいガンプラって無い?」

「使いやすいって?」

「えっと、うーん……」

 

 兄の質問に、少し考える。今までの戦いを振り返ってみれば、ドラグーンとスピードでゴリ押して「やられる前にやる」というような猪突猛進なプレイスタイルだったなぁ、と一人で反省しつつ。今日使ったガンダムMk-2は素直だったけれど、動きが重たくて何か違う感じだったし、涼介のように近接格闘は得意ではない。近づかれないようなスピードと、立ち止まらずに使えるビームと、ちょっと威力の高い装備を持ってる。そんな機体──

 

「なんて言うんだろう、こう……ビューンって動いてバーン! みたいな?」

 

 なんというか、もっと国語を勉強したほうが良いと、自分でも思った。

 

「ビューンって動いてバーン、か」

 

 とても下手くそな伝え方だったけれど、それでも遊のイメージは卓にある程度伝わったようで、彼が商品棚を見渡して、時には二つ三つ先の列まで行って、素早く箱をいくつか手に取った。

 卓が遊の元に戻ってきたときには、ガンプラの箱を四つも重ねて両腕が塞がっていた。

 

「おまたせ。上から順に説明するけど」

 

 そう言うと、卓は積み上げた箱を上から手渡してくる。

 

「一つ目はユニコーンガンダム。俺が使ってるから知ってると思うけど、防御力、機動力、攻撃力どれをとっても高水準だ。ビームマグナムの残弾が少なすぎることは欠点だけど、NT-Dさえ使いこなせばストフリを超えるスペックを発揮できる」

 

 どちらかと言えばガンダムMk-2に近いシルエットのそれはとても格好よかったが、これを選ぶとなれば兄と被ってしまう。それは何だか嫌だな、という思いが決断を渋らせた。

 

「二つ目はダブルオーライザーだ。近接格闘機ではあるものの機動力はピカイチだし、GNソードⅡの射撃とオーライザーのミサイルもあって遠距離がこなせないでもない。NT-Dと同じく時限強化式のトランザムもあるし、近距離戦闘ができれば爆発力は随一ってやつだな」

「見たことある……友達が使ってたやつだ」

 

 友達というのは嘘で、本当はゲームセンターで戦った誰とも知らない中学生だったけど。

 

「次はGセルフ・パーフェクトパック。ユニコーンガンダムの攻撃性能をちょっと防御寄りにしたようなもんで、いくつかのモードを使い分けて戦うんだ。モード切り替えのクセが強いが対応力はユニコーンとダブルオーを遥かに凌ぐ」

 

 ガンダム、にしてみてはちょっと丸みを帯びた姿が可愛いとさえ思ってしまう。これがどうモードを変えて戦うのか、全然想像もつかないけれど。

 

「最後は、まぁ代わり映えしないが」

 

 そう兄が言って手渡してきたのは、どこか懐かしく、それでいて新鮮さもあるガンプラ。

 

「HGCEフリーダム。クセがなくて、それでいて強い。ストライクより汎用性と拡張性に劣るし、さっき見せた三つやストフリより尖ったところはないけど、その分スタンダードに纏まってて使いやすい。見た目もストフリと似てるしな」

 

 手渡された四つのガンプラはどれも魅力的ではあった。けれどやはり引き寄せられるように目が行ってしまうそれを手にとって──

 

「僕、フリーダムにするよ」

「そうか。じゃあ残りは棚にもどしてくる」

 

 選ばなかった三つのガンプラを有るべき位置に戻す兄。遊は受け取ったフリーダムのパッケージを眺める。底面はわら半紙のようなざらざらした灰色一色だったけれど、表面の色鮮やかなハイマットフルバーストを放つフリーダムのパッケージ絵と、側面でポージングをするプラモデルの写真とが想像力を掻き立てる。このキットならあの魁斗にも勝てるのではないか、そんな妄想が掻き立てられて。

 ストフリよりも速く飛び、武装もシンプルになった分あの時のように弾切れで焦るようなこともなく、かつMk-2のように重たくて動けないようなこともなく──

 

「だめだ」

 

 足りない。どう思考を巡らせても魁斗はその上を行く。あの装甲に剣は届かない、あの胴体を銃じゃ貫けない。捉えられず、掻い潜られ、こちらの胸を一突きで終わってしまう。あのジャスティスは驚くほどに高性能だ。本当に同じガンプラなのかと思うくらい出力の桁が違う。どうしても届かなくて伸びた左手は空を斬り裂いて──

 ああ、忘れていた。あのロストフリーダムの左手にはすべてを破壊する剛爪が、右手にはすべてを焼き去る火砲が。きっとその手を伸ばせば届く。その武装を持ったガンプラの名前は、

 

「──バンシィ!」

 

 ん、と兄が首をかしげる。

 兄がちょうど見ていたコーナーの一画にそれはいた。黒いボディに裂けた装甲から覗く黄金のサイコフレーム、黄金の角とたてがみを模した造形。涼介と最初に出会って戦って、自分が奪った機体。

 

「これって」

「ああ、これはRX-0バンシィノルン。ユニコーンの兄弟機で、色々あって敵対していたけど最後は和解して共闘した──」

 

 長い話はもう耳に入ってこない。それよりも、知ってる姿と少し違う差に疑問が湧く。

 

「これ……腕が普通じゃん」

「ああ、腕が違うのはこっち」

 

 兄が手に取ったのは二つとも同じバンシィ、のはずだが、若干パッケージのイラストも違う。よくよく見れば、陳列棚にはユニコーンガンダムも5種類ほど並んでいた。なんでこんなに同じガンプラばかり作られてるんだろうか。なんて疑問が浮かびながらも、目的のそれを手に取る。確かに間違いない、これが涼介の使っていた、両腕が異形のバンシィだ。

 じっと見つめる姿に、卓が話しかける。

 

「ほしいのか?」

「うん……その、腕だけで良いんだけど」

 

 そういったら、兄はそのバンシィと、遊が選んだフリーダムを取り上げて美代子お婆ちゃんの元へ急ぎ足で向かった。

 お婆ちゃんは入り口に置いてあったバトルシステムを遠巻きに眺めていて、というより、バトルシステムに集まっている子どもたちの賑わっている姿を見ていたというのが正しいのだろう。幸せそうに見つめる祖母は、戻ってきた孫の姿に気づいてこちらに手を振った。

 

「決まった?」

「うん。これとこれ、お願いします」

「今はこういうのが流行ってるのねぇ。お婆ちゃんにはわからないけど、あなた達が楽しんでるなら良いと思うわ」

 

 男の子はこういうのが好きなのって、いつの時代も変わらないのかしら。と言って、それをレジへと持っていく祖母。

 

「兄ちゃん、それ」

「気にするな。本音を言えば、素体はもう家に全部あるんだ。今買ったら積みプラになっちゃうだけだし、組んで使われる方がガンプラも幸せだろ」

「でもどうして、そこまでしてくれるの」

 

 少しの沈黙があって。

 

「ガンプラの改造は、楽しいからな!」

 

 そんな兄の笑顔は、久々に見る少年のそれだった。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 フリーダムを組み立てることは、遊にはとてもむずかしくて疲れることだった。だからバンシィに手が回ることもなく、それは兄の卓にも見抜かれていたようで「これは俺が作るから」と自室へと持ち帰ってしまった。

 ストライクフリーダムを買ってもらった時はとうてい一人では組み立てられず、半分を兄の手で作ってもらった記憶が蘇る。まだ一人前にはならないのかなあとぼんやり考えながら、それでもなんとか、フリーダムはその五体満足になるまで組み上げることができたのだ。

 完結させたということは自信にも繋がる。

 

「遊、できたか」

「卓兄ちゃん」

 

 示し合わせたかのように扉をノックしてきた卓が麦茶を持って部屋に入ってきた。自慢気に完成したものを見せると、彼もうんうんと頷いてみせる。

 

「こっちもできたぞ。バンシィの腕」

「ありがとう!」

 

 早速はめ込もうとする……だが、フリーダムの胴体とバンシィの腕はハマらない、ハマるはずもない。腕の方は丸い棒がささる穴になっているのに、胴体側は球体が入るようなくぼみになっている。前のストライクフリーダムは胸から棒が飛び出ていたのに、今回は凹み同士になっている。これではどうやってもくっつかない。

 

「おかしいな」

「どうした? 見せてみろ」

 

 それを兄に見せれば、ピンと何かに気づいたのか、そうなることを半分予想していたのか。すぐに部屋を往復してくる兄。

 取り出したのはグレーのプラスチックパーツ。それは見た目をカッコよくするものでもなければ、火力を強化する武装ですらない。バンシィの腕に組み込まれたポリキャップにフィットする棒軸と、フリーダムの胸部にある凹みにピッタリ収まる球体のジョイント部で出来た小さなものだった。

 本来そこにあるべきだったかのように、あてがわれたそれは最後のパズルピースのように綺麗に収まった。

 

「捨てずに残しておいて良かった」

 

 さらにバンシィの右腕は、形状が遊の知っているそれとは少し違っていた。並行板は腕に固定されていた本来の形ではなく、折りたたまれて手が露出するように改造されている。

 

「ああ、それは俺が使おうと思ってたんだけど、遊がバンシィを使うんなら、便利だろうと思って」

「すごい……!」

 

 ガンプラの改造の奥深さを魅せつけられた気がする。

 

 前回のストライクフリーダムよりも等身が上がってスマートになった、新たな装いのロストフリーダム。相変わらず似つかわしくない異形の両腕を備え、勉強机の上でその翼を大きく広げる。

 まだ、腕と身体の色はちぐはぐだったが、それでもこれが戦うイメージを連想させるには十分だった。

 

「塗装はどうする?」

「ガンダムマーカーだけ貸してくれたら、あとは自分でやるよ」

「そうか」

 

 兄は「頑張れよ」と背中を押して、遊の部屋から出た。

 

 

 

 そこからは黙々とただひたすらに塗り続けた。組み立てたばかりのガンプラをバラバラにした上で丁寧に、ミスしないように、細かいところまで塗り残しのないように。フリーダムの白い装甲を黒で塗りつぶし、バンシィの装甲も同じ色で整え、金色と赤のマーカーで要所要所のパーツごとに塗り分けていく。

 地味で細かい作業だった。他人から見れば、アリが砂糖を運ぶような小さいスケールの話だった。それでも遊はそこに可能性を、手塩にかけて塗ったこのガンプラがバトルフィールドを飛び回る様を夢に描いて、勝利を勝ち取る未来を想像していた。

 

「終わった……」

 

 気づけば日も陰り、オレンジに染められた世界で夕蝉が鳴き、人々は家に帰る時間だ。

 ふぅ、とため息が出る。並べられたパーツはバラバラなまま塗料が乾くのを待っていた。完成は明日になるだろう。今できる作業はすべてやった。

 完成形を想像して、もう一度、今度は大きくため息をついた。疲れはしたが、不思議と笑みが溢れるほど充実していた。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 新たなガンプラを手に、遊は再び闘技場へと戻ってきた。宿敵、魁斗を倒すため。そして自分の愛機を取り戻すために。

 

「勝負だ魁斗、次は負けない!」

「おうおう吠えるなよ、僕に負けたことがそんなに悔しかったかな?」

 

 魁斗もガンプラの入った箱を取り出して。もう一触即発だ。さらにそこへ

 

「よー、俺も混ぜてくれね?」

「……涼介」

 

 戦いの匂いに煽られて、居ても立ってもいられなくなったファイターが名乗り出て。

 

『Please set your GP-base.』

 

「涼介、邪魔しないで。これは俺の問題なんだ」

「悪ぃけどもう止めらんねぇよ。魁斗にも負けたくねーし、遊にだって負けらんねぇ。俺は!」

「黒田さぁ、もうちょっと強くなってからにしないか? ハッキリ言って雑魚なんだよお前」

 

 睨み合う三人の獣たち。お互いはお互いが譲らないことを悟って、六角形のバトルシステムを一面づつ均等になるように挟んで立ち並ぶ。

 

『Please set your Gun-Pla.』

 

 他のファイターが入り込む余地なんて無い。遊んでいたファイターたちもその手を止めるほど、小中学生とは思えないほどのビリビリと緊迫した空気が闘技場を支配する。それぞれの思いは理解されることは無く、和解される道もなく、ただぶつかり合うことでしか解決の方法は無く。

 

『Battle start!』

「長谷川、黒田……後悔させてやるよ、この試合を受けたことをさぁ!」

「てめぇの御託は聞き飽きたぜ!」

 

「俺の機体を返してもらうぞ、魁斗!」

 

 黒き機体に再び宿った命が燃える。強い意思はもはや止められず、熱意の炎は瞬く間に延焼しすべてのファイターを焼き尽くす。その先にある焦土に何も残りやしないことは、幼い子たちには知る由もないことだった。

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