転生したらツアレだったんだが………   作:シーボーギウム

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大体とはいえ週一投稿出来ていることに驚いている花弁です。

約9000文字。文字数最多です。
リーニャが関わると壊れるとはこういう事です。

※今回の話の投稿と同時にタグ「クロスオーバー(技のみ)」を「ワンピース(技のみ)」に変更。タグ「ガバガバ設定」を追加しました。




鏖殺開始

 さて、ガガーランさんに私の決意を伝えた結果だいぶ引かれた日から8年、13歳になった。かなり時間が飛ぶがそこは勘弁して頂きたい。原作でもそこそこだったはずがそれ以上に育ってきているような気がしないでもない胸部装甲を鬱陶しく思い始めた今日この頃。皆様どうお過ごしだろうか。

 私?私は―――

 

「らぁっ!!」

 

 ―――熊を、狩っております。

 魔狼を殺した日、案の定私の戦闘能力はおかしな上昇倍率を見せ、あの日殴っていた木ぐらいならワンパン出来るようになってしまった。生憎と環境破壊を気持ちよく感じる精神は持ち合わせていなかった私は木を殴るのをやめ、代わりに岩を殴ってみたのだが、これまた容易く粉砕してしまった。

 最早村の人間全員相手にしても多分勝てる領域に達した私は、隠れて家を出ては夜な夜な魔狼を狩るという生活を始めた。すると鍛錬を始めたばかりの時の如くどんどん強くなり、魔狼なら容易くワンパンでミンチに出来るようになってしまった。

 

「死ねェ!!」

 

 目の前の熊の心臓であろう場所に掌底を叩き込む。パァンと、普通生き物から出ないような破裂音が響き、熊が倒れる。私がやったのは、掌底の衝撃で心臓を破裂させる技だ。武技にもカウントされないようなものだが、この森の魔獣相手なら十分な威力を持っている。

 

「うーん、熊でも相手にならなくなってきたなぁ………」

 

 言いつつ、ハンドスナップをパチンッと鳴らす。すると周りの茂みから無数の魔狼が現れた。魔狼達は行儀良く一列に並び、おすわりをしながら私の方を見てくる。

 

「村にはまだ残ってるから、好きにしていいよ」

 

 言った瞬間、魔狼達が熊の死骸に飛びかかった。

 私が魔狼をワンパンミンチに出来るようになったあたりで、段々魔狼達は私を恐れてか勝手に従うようになった。今では完全に私のペット状態である。野性はどうしたと言いたくなるが、森に入る度に魔狼に襲われ、そして皆殺しにせずに済むようになったのは僥倖だった。ある一匹に関しては今では家でリーニャに懐いていたりする。

 

「さて、帰るか」

 

 私の言葉に反応して魔狼達がこちらを見てくるが、好きに食べ続けろと指示を出して村へと向かう。木に付けた傷を辿って村へと向かう。

 最近は、村に帰るのが憂鬱で仕方がない。嫌われているわけではないし、この世界だとそろそろ考え始めないといけない結婚云々でとやかく言われている訳でもない。

 では何故かと言うと、

 

 ツアレ様(・・・・)が帰って来たぞ!!」

 

 村での扱いが、この8年でおかしくなったからだ。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

「ツアレ様!お疲れ様です!」

「う、うん………」

 

 私よりも明らかに年上の人間が頭を下げてくる。少し離れた所では向かいに住んでいるおじいさんが私の方を見て拝んでいる。やめろ。小さい子はまだ無邪気に懐いてきているだけ(呼び名はツアレ様)なのでまだ良いが、いい大人が前世で言うところの中学生の子供に頭を下げてくる光景は異常としか言い様がない。

 家に着き、自室へ一直線で向かう。グレイルがなんか言っていたような気もするが無視してベッドにダイブした。

 

「鍛錬より村にいる方が疲れるってなんだよ!!」

 

 もちろん肉体的な話ではなく精神的な話だ。

 まぁある意味自業自得な上私がやった事に対して有難がるのも分かるのだが限度というものがある。

 

「部屋の外でドギマギしてないで入ってこい。キモイぞ」

「相変わらず俺に対してだけ当たり強ぇな………」

 

 そんなことを言いながらグレイルが部屋へ入ってくる。なお、この対応に関しては妥当なものだ。何故ならこの野郎ことある事にこっちをメス落ちさせようとしてきやがる。これはこの野郎のイケメン対応に少しだけ、少ぅしだけドキッとしてしまった事への仕返しの意味も込められているのだ。

 

「まぁ、あんだけ色々やってんだからもう諦めろ」

「おい、さりげなくベッドに座ってんじゃねぇよ」

「チッ………」

 

 舌打ちしやがった。

 それはともかく、いい加減色々ってなんのこっちゃとなっているであろう私がこの村へもたらした恩恵について説明しよう。

 

 まず初めは徴兵の肩代わりだ。

 私は7歳の時点でこの村にいる徴兵対象の男衆を全員同時に相手取っても容易く捩じ伏せられる程度には強くなっていた。

 そして10歳の時、徴兵官の目の前で全員を叩きのめすデモンストレーションを行い、晴れて男衆の代わりに私を徴兵させる事を可能にした。

 これによるメリットは、農作物の刈り入れが予定通りに行えるという点だ。他の村では徴兵のせいで村の大切な労働力が持っていかれ、刈り入れが大幅に遅れるというのはザラにある事だ。

 この村の経済事情に関して言えば、ダンジョンやエ・ランテルへの中継地点として丁度いい場所にある為、冒険者や商人が定期的にお金を落としていってくれていることもあって、戦時中でもこの村は安定した生活が可能になっているのだ。

 

 そして二つ目に、食糧の調達だ。

 食糧と言っても、勿論村で取れる農作物の生産を助けていたりする訳ではない。刈り入れが遅れないぐらいで、その他は他の村と同じ水準だ。

 ここで言う私が調達する食糧とは、"肉"の事だ。初めは狩った魔狼の肉を、今では熊の肉を定期的にこの村の食糧庫へ放り込んでいる。処理だとか血抜きだとかは狩人のおじいさんがサクサクっとしてくれているし、私が木を殴り倒しせば村大工のおじさんが木炭を作ってくれるので、栄養満点、かつこの世界では口にする事事態難しい肉を定期的に食べる事が出来るのだ。

 

 そして三つ目、と言っていいのか分からないが、魔獣を狩りまくっているおかげで、村へ魔獣が来ることがなくなったのだ。

 魔獣は人を襲うだけでなく、農作物も荒らしていく。魔獣の撃退はほとんどの村で悩みの種なのだ。

 

「だとしてもあんな神みたいな扱いやめてほしいんだけど!!」

「まぁ、無理だろ」

「クソッタレ!!」

 

 結局、この村を出るまでこの待遇が変わらなかったのは後の話だ。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 運命とされるものは、その大体が思いの外身近にあったり、突然現れるものだと私は思っている。一昔前のメロドラマみたいな例えだが、子供の頃によく遊んだ幼馴染が将来のパートナーになるとか、ある日走っていてぶつかった女性と恋に落ちるとかそんな感じだ。

 何故私がこんな話をしているのかと言うと、ついにと言うべきかやっとと言うべきかは分からないが、

 

「村にいる女を全員出せ!」

 

 今日、クソッタレの領主がやってきたからだ。

 本当に突然、豪奢な馬車と車輪付きの檻、そこそこの鎧に身を包んだ兵士の集団がこの村にやってきたのだ。村の人間が困惑する中で言われたのが先程の兵士の言葉だ。言葉と同時に馬車から降りてきた領主と思わしき人間は、この村では一生見ることが出来ないであろうほど高価な服に身を包み、でっぷりと太っていた。額からギトギトとした気持ちの悪い汗を流すその顔には、下卑た笑みが張り付いている。

 その時点で、村の人間はこの集団が何故この村に来たのかを理解した。とはいえ逆らえば何をされるか分かったものではないため、村の女達は全員家から出ていく。

 

「グレイル!」

「どうしたツアレ?」

「急いでリーニャにアンタのお下がり着させる!あの子ならまだ男の子で通せる!」

 

 私の言葉にグレイルは頷くと、急いでリーニャと小さな男物の服を持って私の部屋へ戻ってきた。リーニャは不安気な表情をしている。慰めてあげたいが、今は時間が無い。

 しばらくして、男物の服を着終わったリーニャの髪の毛を、男と言っても通る程度に切りそろえた。

 

「お姉ちゃん………」

「ごめんね………」

 

 リーニャに声を出さないように言いつけ、村長に預ける。私は玄関に向かいながら、後ろについてくるグレイルに指示を飛ばした。

 

「私に何かあったら、リーニャの口を抑えて。タチの悪い貴族なら、リーニャも連れていかれかねない」

「………分かった」

 

 玄関から出ると、私以外の村の女全員がそこにいた。不安そうな目を向けてくる年下の子の頭を撫でていると、並べ、と無機質な声が飛んだ。

 言葉に従っておずおずと一列に並んだ私達を、領主はニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべ、何人かの胸を乱暴に触れる。その度に怒りがふつふつと湧いてくるが、どうにか耐えていると、領主は私の目の前へと立った。胸へ伸びてくる腕を打ち払いたい衝動にどうにか耐える。そして、触れられた瞬間凄まじい不快感が混み上がってきた。

 

「この娘を連れていけ」

 

 村の人間の、グレイルの、そしてリーニャの顔が絶望に染まったのを、獲得した武技の副次的な効果で感じ取る。リーニャが声を上げようとするが、グレイルが口を塞いだようだ。良かった、約束は守ってくれている。

 両手に枷を付けられ、檻の中に入れられる。

 ふと、リーニャが泣いているのが目に入った。頭の中が怒りに支配される。今すぐ暴れ出してしまいたい衝動に駆られる。だがダメだまだ早い(・・・・)。こいつらの汚い血肉をリーニャに見せる訳にはいかない。

 

(ただでは殺さんぞ糞共………)

 

 馬車が走り始める。たったの数分で、村は見えなくなってしまった。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 数日後、王都へ向かう道中で集団は野営をしていた。この領主、いくつかの村を回って最終的に私を含めて4人の娘を攫いやがった。売られたり、見捨てられた娘は初めは泣いていたが、今では一言も発することはなくなっていた。

 今日も1人追加されたが、それで満足したらしく王都へ帰ることになったのだ。

 そこで、私は四つめの村へ兵士達が行っている間に馬車の車輪に細工を施した。その結果、私の狙い通り道中で車輪が壊れたことによって、どうにか強引に野営させることに成功したのだ。

 あのクソデブは最後まで渋っていたが、死ぬよりはマシとでも思ったのか最後には了承した。

 

「あ、あの………」

「何?」

「何で、あんなことをしたんですか………?」

 

 私達に用意された天幕の中で、私と同じく攫われた女性が聞いてくる。"あんなこと"というのは車輪への細工のことだろう。

 天幕の中にいるのは3人、1人は、今あのクソ豚の相手をさせられている。初めは泣き声が聞こえたが、今では少しも女性の声は聞こえなくなっている。

 

「逃げる為ですが?」

「逃げるって……そんなの………」

 

 伏し目がちに、消え入りそうな声で言う女性を無視して、私は武技を発動させる。

 名を《見聞色の覇気》。前世で読んだ某海賊漫画のそれをトレースした武技だ。

 

(そろそろか………)

 

 神経を研ぎ澄ませ、辺りの気配を探れば、この天幕の見張り1人、駄肉の天幕の警備2人、寝ているのが3人、焚き火の周りに3人、少し離れて見張り番1人という状況だった。

 見張りの兵士に尿意を催したと伝えると、枷に鎖を繋がれ、森の方へと連れていかれた。

 

「さっさとしろ」

 

 そう言って、兵士は私から視線を逸らした。

 ふと、目の前のこいつを利用する手はあるか考えるが、直ぐに思考を断ち切る。こいつも、リーニャを泣かせた人間の1人だ。慈悲などかける必要はない。

 

「すいません」

「なn」

 

 2語目を語らせる前に、枷を破壊しつつ素手で喉を抉る(・・・・)。喉仏と思わしき球形の肉塊を軽く右手で転がしながら倒れた兵士を見る。喉を抑え、激痛にのたうつ様に軽い愉悦を覚えた。

 より苦しめるには私自身が手を下すのが最適だが、生憎と時間がない。何せあの汚物の集団を全滅(・・)させなければならないのだ。

 

「来い」

 

 端的に呟くと、無数の魔獣達が現れる。未だ悶え続けている兵士の片足の骨を踏み砕きつつ、ゆっくりと(・・・・・)喰らうように命令を下した。

 

「さて」

 

 背後から聞こえてくる僅かな悲鳴をBGMに、魔獣達へこの野営地を囲むように広がれと指示を飛ばす。何匹かには私に着いてくるように命じた。逃げられる訳にはいかない。全員余すことなく苦しんで(・・・・)死んでもらわ(・・・・・・)なければ(・・・・)

 暴れる兵士の腰に下げられた鞘から剣を抜き取る。覇気を利用して、見張り番や焚き火にいる3人の死角に入りながら移動する。

 

「死ね」

 

 首を左手で掴み声を出せないようにし、右手の剣で肺に穴を開ける。離れざまに喉を潰しつつ地面に放り、両手両足の健を断ち切って放置する。

 再び覇気を利用しつつ焚き火の3人に近づいていき、ある程度近づいた所で剣を投擲する。プロペラの如く回転する剣は私に最も近かった兵士の両足を切りとばし、勢いそのまま奥にいたもう1人の右足も切り裂いた。私は投擲と同時に武技『(ソル)』を発動させ、悲鳴が上がる前に武技『指銃(シガン)』で喉を潰す。困惑するもう3人目の兵士に武技『嵐脚(ランキャク)』をお見舞いする。最後の1人は時間的にサクッと殺してしまったが、まぁ1人くらいなら良いだろう。

 

「森の方へ連れて行ってから殺せ」

 

 今無力化した3人の兵士達と1つの死体が森へ引きずられていくのを流し目に見ながら、寝ている3人の元へ向かった。ぐっすりと眠っている。では、少しだけ起きてもらって、後に永遠の眠りに着いてもらおう。

 両手両足の健と喉にかなり弱めの『嵐脚』を飛ばす。魔獣達はもういないので一先ず放置し、置いてあった槍を右手に、剣を左手に持つ。『剃』を使用し、高速移動状態のまま左手の剣で1人を切り殺しつつもう1人の足に槍を突き刺し、そのまま地面に縫い付ける。剣を捨て、これまた喉に『指銃』を放った。

 

 これで、残るはクズのみとなった。

 

 天幕を開くと、その穢らわしいその体を、虚ろな目で涙を流し続ける少女に打ちつけ続けるゴミがいた。

 

「うん?どう、ヒッ!?」

 

 非常に不快なそれは、私を見た瞬間短い悲鳴を上げた。理由を考えて、直ぐに思い立った。そういえば私はいま返り血塗れだった。そのせいか何やら喚いているが、無視して顔面を殴り飛ばした。虚ろな瞳のまま、困惑した表情を私に向ける少女に、傍らに放置された服を投げ渡す。

 

「ぎ、ぎざま!!ごのわだじをだべだとおぼっている!!」

「権力と金にしがみつき、私欲を満たす事しか考えていない愚か者だろう?ろくすっぽ領民どころか、国にすら貢献するつもりのない国の癌というのもいいか」

 

 まるで訳が分からないといった顔をする癌細胞に無性に苛立つ。なんとなく(・・・・・)先程とは逆の頬を殴ると、まるで饅頭のように頬がはれ上がった。

 

「あ、あの………」

「ん?あぁ、貴女はさっき居た天幕に戻ってて」

 

 困惑している様子の少女はコクリと頷いてこの天幕を出ていく。外の死体と兵士に戸惑ったようだが、直ぐに走り去っていった。

 

「い、いいがげんに゛じろ!!わだじがどうい゛うだぢばかわがっでいるのが!」

「はぁ?」

「ヒッ!わ、わだじは!あ゛の八本指どもづながっでいるのだ!!ごれがじられれば!ぎざまなどいぎでいられ゛んぞ!!」

 

 八本指。確か王国を裏から牛耳る犯罪組織だったか?なるほど、脅しとしては悪くないだろう。

 だが、

 

「それで?私を殺すというその八本指様方はどこにいるんだ?」

「へ?」

 

 その言葉で、ゴミの顔がどんどん青ざめていく。ここは平原のド真ん中であって、王都じゃない。王都であれば先程の脅しは多大な効果を生んだだろうが、生憎とこの場所ではなんの意味もない物に成り下がる。

 何せこの場にいる兵士は、皆死ぬ事が確定しているのだから。

 

「ま、待で!!が、金を払っでやる!!ずぎなだげだ!!だがら、」

「今ある分全部出せ」

「わ、わがっだ!」

 

 豚は慌てて天幕の中にある豪奢な箱を漁る。しばらくして、いっぱいに金貨の入った革製の袋を取り出し、渡してきた。

 

「ふーん……ありがとう。それじゃあ拷問を始めようか」

「へ?な、何故だ!?金は払っだだろうが!!」

「助けるなんて、一言も発していないが?」

 

 嘲るように言うと、再び顔が青ざめていく。もはや真っ白なぐらいだ。

 後ずさる肉塊に、ゆっくりと迫る。情けなく悲鳴を上げる姿は実にこちらを愉悦させる。

 

「や、やめ゛!」

「精々苦しめ」

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 どれだけ時間が立っただろう。

 なんか、こう、その………

 

「飽きてきた………」

 

 目の前の肉塊に目を向ける。肉塊と言ったが原型は留めているし、死んでもいない。単なる蔑称だ。

 十指はぐにゃぐにゃに折れ、爪は全て剥がした。傍には強引に引き抜いた歯が散乱している。皮を剥いだ所からは、プルプルとした黄色い脂肪の塊が見え隠れしていた。

 

 倫理観はどうした、とでも言われそうだが、何度も徴兵され、無数の帝国兵士を殴り殺しているうちにそんなものは彼方に消えた。

 戦場の武器は剣や槍、メイス等だが、それによって綺麗に死ねる訳では無い。刀の如く切れ味の良いものであれば分からないが、基本的に西洋の剣はそこまで切れ味の良いものではないのだ。それ故に切り口は荒く、大きくなる。槍も同じようなものだし、メイスに至っては殴った場所の骨が折れ、皮膚を突き破ることで内臓やら脳漿をぶちまけるのはザラにある。

 自分でそういう死体を作り出した事があるくらいなのだ。この程度のことならば容易く行える。

 

た……け……

 

 何かを呻くが、無視して天幕の外に出る。そこには死体があったであろう血痕と、周りに魔狼がいるせいで逃げる事ができない兵士がいた。何やら懇願してくるのを無視して顔面を蹴り抜く。どうやらこの兵士共を殺した為かレベルが上がったらしく、自分でも予想だにしない威力が出た。

 原型留めずに弾けたそれを喰うよう魔獣に命令しつつ、そいつの足に突き刺さったままの槍を引き抜く。

 寝ていた3人の元へ向かうと、全員が怯えた視線を送ってきた。が、生憎とこいつらに与える慈悲など持ち合わせてはいないので、さくさくと脳幹があるであろう位置に向かって槍を突き刺していく。

 見張り番の兵士は時間的にもう窒息死しているだろうし、焚き火にいた2人も傷口からして出血多量で死んでいるはずだ。

 

「ゴミ以外死んだか」

 

 森へ向かい、魔獣達へここら一帯にある死体を(・・・)喰うよう指示し、幾匹かに着いてくるよう言う。再び駄肉の天幕を開く。怯えた目を向けてくるがなんの感慨も浮かばないあたり、私の精神はいくらか壊れているのかもしれない。

 

「………一つ、謎掛けをしようか」

 

 さしずめ興が乗ったといったところか。疑問の視線を向けてくるのが酷く鬱陶しい。

 

 さて、この世界において最も苦痛な事は暇、幸せな事は人によるが私の場合は母の愛だと結論を出した。また似たような問いになるが、では、

 

「この世で最も忌避すべき事は、何だと思う?」

 

 忌み、避ける。この行為は人間である以上一度は行う事になるだろう。完璧な人間はいない、故に嫌いな物というのは必ずあるはずだ。

 

死………こ……

「死ぬ事、か。なるほど確かにそれも忌避すべき事ではあるかもな。だが」

 

 ハンドスナップを鳴らし、魔獣達に目の前の肉を喰らわせる。

 

 「あ゛があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?!?!!?!?」

「死は、あくまで恐れるべき事であって、忌避すべき事じゃあない。忌むことは出来ても、避ける事など不可能だ」

 

 最も忌避すべき事とは、停滞だ。停滞というのは、一見居心地の良い物に見える。だがそれは一時的なものでしかない。

 停滞のみを望めば、それは変化を望む者の不満を弾圧する事に他ならない。押し込められた不満は、蓄積し収束し、ある日を境に爆発する。それは歴史上、反乱や革命運動といった形になっているものが大体だ。

 

 王国は今、この停滞というのがピッタリ当てはまる。

 

 街道の警備の強化、治安の維持、風俗の取り締まりにその他諸々。一向に改善されず、しようともせず、"停滞"している。

 実を言うと、村に来る冒険者や商人から聞いた又聞きの話だけで(・・・)この国はダメだということが分かった時点で、この国に私は既に見切りをつけている。まぁ、滅びること自体は原作を読んでいた以上知ってはいたが。

 現状この国に望むのは、せめてあのオーバーロードが来るまで存続していてくれ、という程度でしかない。

 

「はぁ………」

 

 行く末が詰んでいるこの国に思わずため息をつく。

 どうやら完食したらしくこちらを見てくる魔獣達へ森へ帰るよう言って天幕を出る。魔獣達がいなくなった事を確認してから、天幕やら焚き火やらを破壊し、所々地面にカカト落としを放っておいた。

 これで、まるで強力なモンスターに荒らされた(・・・・・・・・・・・・・・・・・)ように見えるだろう。

 

 私がいた天幕へ向かい、扉代わりの布を捲る。血塗れの私を見て女性2人が悲鳴を上げた。まぁ、スプラッター映画の猟奇殺人鬼みたいなことしてきた私への反応としては妥当だろう。

 

「ねぇ」

「ごめんなさい!!お願い!殺さないで!!」

「いや貴女達を殺す予定は無いけど………」

 

 私は元より、あの領主の集団の事は皆殺しにする予定だった。皆殺しにした上でその理由をモンスターのせいであるとなるように偽装し、そして村へ戻るのが私の計画だ。

 彼女達には計画に巻き込んでしまった借りがある。故に元いた村へ帰れるように手伝うのもやぶさかではない。その事を伝えると、しかし全員が首を振った。

 正直予想通りだ。売られたなり見棄てられたなり、信じていた者達にそんな事をされれば帰る気など起こらないだろう。

 

「じゃあうちの村に来る?」

 

 3人は良いのか、といった表情をするが、気にするなと伝えると遠慮がちながらも頷いた。

 枷を破壊し、馬車へ乗り込むよう指示し、全員いなくなったところで天幕とその周辺を破壊した。馬車で待っていた3人にすこし離れるように伝えてから、馬を離して馬車を破壊する。

 

「好きな馬に乗って」

「え……?あの……乗り方分からないんですが………」

「大丈夫。振り落とされないようにしてくれれば私が手網を握れる」

 

 魔獣使い(ビーストテイマー)。今日私が散々使った力だ。いつの間にか獲得していた職業(クラス)で、これのおかげで私は魔獣、そしてただの動物でも自由に操れる。

 要するにこの能力を使って全ての馬を従えつつ村へ向かうという事だ。

 

「もう一度言うけどしっかり掴まって」

 

 3人が頷くのを確認してから馬を走らせる。

 

(帰るの遅くなっちゃったなぁ………)

 

 リーニャを長い間悲しませてしまった事に罪悪感を抱きながら、馬の足を早くさせる。

 東の空が、僅かに白んでいた。

 

 

 

 




この世界線のツアレの中では

ナザリックでアインズに無礼を働く=リーニャを泣かせる。

となっております。

今回の原作との変更点。

・ツアレが攫われるも兵士達を全滅させる。
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