という訳で花弁です。
難産だったゾ
次も遅れる可能性ガガガ………………
青天の霹靂。正にその言葉が当てはまった。
日に当たった為か僅かに色が落ちたプラチナブロンドの髪に、その奥に力強い光の篭もった蒼い瞳。引き締まりつつも、女性的な丸みのある肢体。
愛した男に見捨てられ、領主に犯された私の目には、彼女が女神のように映った。
私にとって、彼女は運命そのものだった。
◇
あの後途中で見つけた川で血を洗い流したり、犯されていた
泣きじゃくるリーニャをあやしたり、雰囲気に流されてグレイルに抱かれてしまったりとこれまた村でも色々あったが、2日程経って村の様子は以前のものを取り戻してきていた。私が連れ帰ってきた3人も上手く馴染んでいるようだ。驚きだったのが、シルキーは私の2つ上という若さで第二位階魔法を扱えるということで、今では様々な所で村の役に立ってくれている。
そしてこの2日間で問題なのが………
「えと、リーニャ?離してくれないとお姉ちゃん仕事出来ないんだけど………」
「……………」
リーニャが私を抱き締めて離してくれない事だ。ちなみに離してくれ、という旨を伝えると頬を膨らませながら涙目かつ上目遣いでこちらを見てくるという
かわいい。
一応仕事云々はシルキーが変わってくれているが、だからといって仕事を一切していない状況は罪悪感というものが大きい。現状前述の抵抗をされている最中な為死ぬ程抱き締めてなでなでしたい欲求をどうにか押さえ込みながら離してくれないかとリーニャに言う。すると、
「姉さん、村に帰ってきた日に兄さんの部屋で寝てましたよね………?」
「うぐぅ!?」
そ、それはダメだリーニャ。こう、色々思い出してしまう。せっかくサラッと流したのにあの身体を征服されるような多幸感とか色iうわぁぁぁぁぁあ!!!!!
「私もね、この歳になれば流石に
リーニャに引かれるという心折案件が発動しているがそれすら気にならない程の羞恥に襲われる。ていうか好きなんかじゃねぇ!!
「すいません大丈夫ですか?何かツアレさんの悲鳴が聞こえた気がするんですが………」
「シルキーさん、気にしなくて大丈夫ですよ。姉さんがただ苦しんでいるだけなので」
「それだめでは………?」
シルキーの優しさが身に染みる。ああ、神はここにいた。リーニャ?リーニャは天使だ。
「余裕戻ってきてますね、姉さん。話続けますね」
「え、ちょ待っ」
「姉さんが兄さんの事を好きなのは別に良いんですよ」
「違っ」
「……………………え?」
うん?何やら否定する気すら起きない程ドス黒い気配がシルキーから出てるんだが?
「好きあっている以上そういう事をする事も別に良いんですよ」
「はい?」
待てリーニャ。ここではまずい。シルキーがなんか凄い殺気を纏ってる。具体的に言うとグレイルの命がマッハだ。
「シルキーさんを理由に逃がすとでも?」
いやそうじゃない!リアルガチに私の幼馴染の命がヤバイ!!こう、後ろから刺しそうな気配をシルキーが放ってる!!
「はぁ、反省していないみたいだから、まだ終わりませんからね」
「そうですね。反省は大事ですよツアレさん。私も
この時私は心の中で拝んだ。
すまんグレイル、お前の命、守れなかったよ。
◇
その夜。
あの後、リーニャにせめて私が泣いていた日に別の部屋に行かないでほしいと
ちなみに、グレイルは昼間に背後から股間を思い切り蹴り上げられていた。誰によるものかは言うまでもないだろう。前世の本能が刺激されたのか、思わず股間を抑えてしまった。
「あ、来たか」
俯きがちなので顔の見えないシルキーは何故か幽鬼のようにフラフラとしている。
「シルキー?大丈夫?何か具合でもぉ!?」
シルキーに両手を押さえ付けられ、ベッドの上に組み伏せられる。身動きが取れない、こともない。しかし彼女の顔を見て、私はあらゆる思考が頭の中から消し飛んだ。
「はぁ………はぁ………ずるいじゃ………ないですかぁ………♥」
「ヒェッ」
短い悲鳴を上げる。かなりヤバイ雰囲気を纏っている。何より目がヤバイ。奥の方にピンク色のはーとを幻視する程度にはヤバイ。
「私ぃ、ツアレさんはガードが硬いって聞いたからぁ、ずっと我慢してたんですよぉ?なのにぃ、グレイルさんには抱かれたなんてぇ………」
あぁ、これは、
「納得、出来ません♥」
ダメだわ()
◇
翌朝。
「どうしたお前………」
「腰が………痛いです…………」
シルキーさん、底なしすぎません?何だかんだ途中からノリノリだった私も私だが一晩中"可愛がられる"とは思わなかった。そして何より色々の上手いのだ。同性経験初めてのテクじゃなかったぞあれ。
「昨日の夜なんかしてたのか?」
「一晩中シルキーに抱かれてた」
「あぁ…………………………はぁ!?」
因みに2〜3程レベルが上がった。恐らく、第二位階魔法の使い手というそこそここの世界では強い方の存在である彼女との、一晩中とかいう頭おかしいとしか言えないロングプレイが鍛錬判定くらったのだろう。
私、こんなことでレベル上げとうなかった。
「ちょ待っ、意味がわからん!!流れはどうした!?」
「うるさいぞ童貞」
「もう童貞じゃねぇよ!!お前も知ってんだろうが!!」
「何だ?思い出させて羞恥プレイか?レベル高いな」
勿論変態とし「おい、お前大分失礼な事考えてんだろ」…………何故バレたし。
「何年一緒にいると思ってんだ。そんくらい分かるわ」
ちくしょうちょっとドキッとしちまった。
悟られないように睨み付けると、何やらニヤニヤしていやがる。むかつく。
「危ねっ!?」
「避けんなし」
割と全力で拳を放つが、どういう訳かスルスルと避けられる。遂に加減無しの完全な全力のラッシュを放つが、グレイルは死角から放った拳すら避けてみせた。
明らかにおかしい。村で木剣を振るっていたのを見る限り才能があるのは知っていた。しかもそれが彼が持ついくつもの才能の中でも突出していた事も知っている。
だとしても、今の彼の避けようは明らかにただの人間に出来るものでは無い。それこそ攻撃に転じた彼へカウンターでも放たなければまず拳が当たらないであろう程には。
それは、つまり―――
「武技……だと………!?」
「あー流石にお前なら分かるか」
「ど、どうやって!?」
「お前が前徴兵された時にオーガが数匹村に攻めて来たのは知ってるよな?」
「う、うん」
「その時そいつらと戦ってる最中に感覚が異常に研ぎ澄まされてな、その感覚を反復し続けてたらこうなった」
オーガをグレイルが1人で撃退した話は随分前に聞いた。1人で、しかも数体のオーガ相手に勝利したと聞いた時には驚いたものだ。普通に戦闘能力がえぐい。結構余裕を持って撃退したと言っていたが、そうか、こいつは余裕を持てる程度の戦いで私が数年かけて身に付けた『見聞色の覇気』を習得したのか、そうか…………
「ふ、ふふふふ…………!!」
「ど、どうした?急に笑い
グレイルの着ている服の襟を掴み前後に振る。首が!首がっ!!とか言ってるが無視だ。
「わ!た!し!が!!その武技を!!どれだけ!!苦労して!!身に付けたと!!思ってんだぁ!!!?」
「あががががが!?」
「3年!!だぞ!!おらぁ!!それを!!んなちょろい戦いで!!身に付けただぁ!!?大概にしろオラァン!!!?」
振る速度を上げる。首痛めろ!!
「理不尽!!すぎないかぁ!!?」
「知!る!か!!」
こちらに引き寄せると同時に脳天へ頭突きをかまし、その勢いを利用しつつ前方へ思い切り投げ飛ばす。しかし驚異的な反応をしたグレイルはサクッと受け身を取りやがった。
むかつく。
「なんかその………すまん…………」
「うるせぇバーカ!!」
中指を立てるのを忘れずに罵倒を飛ばす。何だか今は顔を合わせるだけでイライラしてくるので、『剃』を利用しつつ高速でその場での仕事を終える。
私の『剃』を見て唖然とするグレイルに、僅かな優越感を抱きながら踵を返しその場を離れようとしたところで、
「なぁツアレ」
「あぁん!?」
「柄悪ぃなおい……それはともかく、鍛えてくれないか?」
「……………………………………は?」
は?
「言っちまえば見栄なんだけどさ、好きな女よりも弱いのは嫌なんだよ………だかr「この流れで了承するわけねぇだろうがぁぁぉぁぁあ!!!!」ごふぅっ!?」
多分、この時放った私の拳は、今までの人生で最も威力が高かった。
◇
かなり鈍い打撃音が聞こえて外に出ると、お腹を抱えて蹲るグレイルさんがいた。
「ど、どうしたんですか!?」
昨日股間を蹴り上げた時よりも重傷だ。一体どんな威力の攻撃を叩き込まれればこうなるのだろう。背中をさすっていると、グレイルさんは涙目になりながら身体を起こした。
「悪い…………」
「それはいいんですけど、一体何が………」
困惑する私に、グレイルさんは事のあらましを教えてくれた。
「どっちもどっちですね」
「まぁ、そうだな………あいつがそこまで努力したとは思ってなかった………」
しかし、ツアレさんにも存外子供っぽい所がある事には驚いた。いつもは歳不相応なぐらいに落ち着いた様子の彼女があそこまで怒る事があるというのは、素直に想定外だ。
その事をグレイルさんに伝えると、彼は苦笑する。
「確かにあいつは落ち着いてるけど、ごく稀にあんな感じで癇癪起こすんだよ。リーニャの為に、良き姉たれって常に気を張ってるからな」
「気を……張ってる…………??」
リーニャちゃんの前で緩みきったツアレさんの笑顔を思い出す。
あれで気、張ってるんですか…………
「多分考えてる事と俺が言った事違うぞ」
「と言いますと?」
「あいつはさ、一切弱音を吐かないんだよ。少なくとも、誰かが近くにいる時はな」
「そう、なんですか?」
にわかには信じ難い事だ。弱音というのは意識せずとも思わず口にする事があるものだ。それを意識的に一切口にしていないというなら、それはどれほどの精神力を要するものなのだろう。
「あいつが村に帰ってきた日さ、あいつ部屋で泣いてたんだよ」
「ツアレさんが…………?」
「想像出来ないだろ?」
多少、自分の中で彼女を美化している部分があるのは否めないが、それでも凛々しく、快活な笑みを浮かべる彼女が泣く姿は全く想像出来なかった。
考えが顔に出ていたのか、グレイルさんは再び苦笑する。しかしすぐに真面目な顔なって話を続けた。
「俺は今まで2回だけ、あいつが泣いてるのを見た事がある」
「2回、ですか……?」
「あいつの母さんが亡くなった時と、あいつが村に帰ってきた日の晩だ」
「前者の理由は分かりますけど………」
何故、という言葉が頭をよぎる。あの日村へ到着したツアレさんは泣きじゃくるリーニャちゃんをまるで母の様な態度で抱きしめていた。あの後泣き疲れて眠ってしまったリーニャちゃんと一緒に眠りについていたはずだ。弱音を吐かないというなら、例え寝ていたとしてもリーニャちゃんの前で泣く事はないだろう。
「部屋から抜け出して屋根の上で泣いてたんだよ」
「ナチュラルに心読まないでください。キモい通り越して恐いです」
「す、すまん………と、ともかく、まぁなんで泣いてんのか聞いた」
途端にグレイルさんは伏し目がちになる。眉間には皺が寄り、拳を握りしめている。
「理由は、自分が恐いからだって言ってたよ」
「自分が恐い………?」
「なんの感慨もなく、人を嬲り殺しに出来る自分が恐ろしい、物語の英雄達が、命への価値観が狂っていく自分を恐れているのが、他人事じゃあなくなって行くのが恐くて仕方がない。そう言ってたよ」
何も言えなかった。その感覚は、文字通り物語の英雄でもなければ分からないものだ。誰の目から見ても、彼女は着々と英雄の領域へと足を踏み入れていっている。
「あいつは、ツアレは、一見精神性含めて英雄らしく見えるかもしれないけど、本当は歳相応の普通の女の子なんだよ。なのにツアレは、思い切り親に甘えるのが当たり前の歳で両親をなくして、まだ小さくて、親が死んだ事もよく分かっていなかったリーニャを守る為に力を求めた………!なのに!この村はツアレ一人にこの村兵役を全て押し付けた!!俺はその場にいなかったがあいつが村の男衆全員叩きのめしたのは聞いたさ!!だとしても食い下がるべきだろうが!!たった10歳だった女の子に押し付けていいもんじゃねぇだろうがっ!!!!」
グレイルさんの慟哭に、私は静かに驚愕していた。顔立ちに鋭さはあるものの、常に物腰の柔らかな態度の彼がここまで怒るというのはそれだけ以外だった。
「だから俺は、ツアレを守れるように強くなりたい。初めはプライドの為に自分で鍛えてたが、そんな
なるほど、と一人誰にも知られず納得する。これならツアレさんが彼に惚れる理由がよく分かるというものだ。女として、これ程一途に想ってくれるというのは相当嬉しいだろう。
「それ、私にも手伝わせてください」
「は?」
「私は、彼女に助けられなければ今頃地獄を見ていました。それどころか居場所までくれました。恩返しがしたいんです」
虚を突かれたような顔のグレイルさんに手を差し出す。彼は少し考えてから、勢いよく私の手を取った。
「分かった。手伝ってくれ」
「ええ、ツアレさんの為なら喜んで」
この日、私とグレイルさんの間に、一人の少女を守る為だけの、奇妙な協力関係が生まれた。
◇
「流石に悪かったなぁ………」
悪かった、というのは勿論全力パンチのことだ。殴るにしても全力で殴るのはやりすぎた。
「………………」
私の部屋はとても簡素で、洋服棚とベッド以外に何も置いていない。娯楽の少ないこの世界では当たり前の事とも言える。そんな私の唯一の楽しみは、ベッドの傍にある窓から星空を眺めるというものだ。
私の前世の世界は、鈴木悟がいた世界のように環境汚染が進んでいたわけではないが、星なんてものは殆ど見ることができなかった。この世界の星空は素晴らしいもので、転生の結果感性が変わっている事もあるのか、いつまでも見ていられる美しさがある。私はこの空を眺めながらボーッとしたり、考え事をするのが好きだ。
「………………」
何も考えずに星を眺めていると、ふとグレイルがいつの間にあそこまで強くなったのかという疑問を持った。あいつも、順調に行けば英雄の領域に踏み込む類の人間だというのは、今日彼の身のこなしを見て察した。何をして、どうやってあそこまで強くなったのか、あの優しい少年の様々な事を考えるのは、存外に楽しい気分だった。
(これで楽しいと思えるあたり、やっぱり好きなんだなぁ…………)
若干、頬が熱くなるのを感じる。本人含め誰かがそばにいる時は妙に気恥しくて全力で否定してしまうが、一度抱かれてからは、実は結構素直に彼への好意を認めていたりする。
(鍛えるって話、明日ちゃんと聞いてみるか)
そんな事を思いながら、フワフワと不可思議な幸福感に包まれながら布団に潜る。話を了承されて喜ぶ彼を想像して頬が緩むのを感じながら目を瞑る。
彼をどう鍛えるか、彼がどう強くなっていくのかを考えながら意識が闇へ沈んでいくのを感じ―――
―――大きな引っかかりが、私の意識を覚醒させた。
「あ………れ……………?」
あいつは何故、
私が強くする為の一切の介入をしていないのにあそこまで強くなっているのに、本来であれば連れ去られていたであろう
「あいつは、本来原作に存在しなかった…………?」
描写されず登場していないではなく、存在自体がまず無い。仮に何かしらの理由で
「は……はは………」
一つの仮説が、
「は、ははははは…………!」
世迷言に過ぎないが、現実味を帯びた仮説が立つ。
もし、この仮説が合っていたのなら、あのグレイルという男は、
「あははははははは!!」
最高の
サクッとメス落ちしたツアレちゃん。
尚普通の戦闘はともかく夜の戦闘はクソ雑魚の模様。