一話完結をうぷするところ 作:カカオ
家庭科室の横にある元準備室。普通の教室の約半分程度の面積が、私たち文芸同好会に充てがわれた一室だ。四人しかメンバーがいないため部にもなれないこの半端な同好会は参加率も悪く、今日も私と先輩だけしかいない。
普段の私たちは本を読むばかりで、会話もなく静かそのものだ。私は小説専攻だが、先輩は図書館の本を片っ端から読むような、まさに読書の虫だ。突飛なところでは通販カタログなども読んでいた。
ただ、今日の先輩は珍しく何かをノートに書き連ねている。資料なども見ずに淀みなく書き続け、部室内に筆記音が途切れず、まるで機械のようだ。
しばらくその様子を、彼女の細くて白い手の動きを追いかけていたけれど、彼女がここまで熱心に執筆しているのはなにか大きな理由があるのではないか、と不安になった。例えば、 同好会は特に成果物を出す必要もない、と聞いていたが、実は必要だった、というような。
「あの、何を書いているんですか?」
シャープペンシルの芯を入れ直すタイミングで、私はたまらず尋ねてしまった。彼女は芯の入りを確認して蓋を閉じると、小学時代の病院ぐらしで培ったらしい白い顔を私に向け、言った。
「シャープペンシルがレア扱いというのはどうかしら」
答えになっていないその内容に、はあ、と、私は生返事をした。
質問の意味を吟味してみる。レア? 対するノーマルが分からないが、とりあえず、シャープペンシルが珍しいと思えるような時期があったかと記憶を探った。
「小学生の頃はレアでしたね。私の学校では鉛筆は禁止だったので、こっそり持ってきていた子は注目されていました」
「小学生なら、シャープペンシルはレアなものと思える?」
「そう、かもしれませんが」
「鉛筆は持っている?」
「え? ……いえ、持ってないです。今は禁止されてませんし」
「この前男子が鉛筆を転がし合って遊んでいたのよ。今どき鉛筆なのかと首を傾げたのだけれど」
私への質問は実はどうでもいいのか、手の動きは止めないままに続ける。
「鉛筆の六面に数字を書いて転がして、出た目を競って遊んでいたわ。良いと思ったの」
幼稚だと私は思ったものの、黙って話の続きを待った。
「その後、テストの時間でカンニングを疑われて没収されていたけれど、やっぱり良いと思わない?」
「カンニング扱いは悪くないんですか……?」
「それは良くないわね」
そのまま、先輩はしばらくノートに向かっていたものの、しばらくして何かに気づいたように顔を上げ、私の顔をじっと見た。先輩の表情はいつも変わらず、黒い瞳は一層に無機質だ。少なくとも、私には彼女の思考が読み取れない。
「ごめんなさい、見てもらえないかしら」
ノートを差し出された。
見事な楷書。ただ、小説にはあまり似つかわしくない図や表、数字などが書かれており。
それはまさしく、設定書だった。
「自宅で小説を書いていたのだけど、応募したところ内容が薄いと言われたの。発想力を鍛えようと、試しに仕様を書いているのだけれど」
「ゲームのですよね?」
ゲームの経験はトランプくらいだけれど、こうして新しいものを考えていくのは楽しいものね。珍しくはにかみ呟く先輩にノートを返した後、私はやおらスマホで検索をし、適当な画像を見せた。
鉛筆にキャラクター性などを持たせつつ、サイコロのランダム性による遊びができるというアイデア。
「かつて、バトエンというものが流行っていまして」
かくして先輩のノートは鞄に仕舞われ、部室に平和が訪れた。
この辺にぃ、文字数をバイト数で計算してた奴がいるらしいっすよぉ
文字数減らした部分は先輩と後輩の微百合描写の模様