平凡少年が進む道   作:スリー

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第二話 逃げるだけの腰抜け

何故こんな事になってるのだろうか。

 

「はあ……はあ……」

 

俺はいつも通り授業を受けて、放課後にチラホラ教室に残って話しているクラスメイトを眺めながら帰る準備をしていたはずだ。

 

「はあ……はあ……はあ………」

 

そんな日常の一幕にいたはずの俺はいま現在見知らぬ場所を一心不乱に走っている。体育の時間でもこんなに必死に走ったことはないだろう。

 

「はあ……はあ……ッ!……はあ……」

 

走りすぎて横っ腹が痛い。しかし走るのを止めるわけにはいかない。胃液が込み上げてくるのを堪えながら腕を振り足を動かす。後ろから迫ってくる奴ら(・・)から逃げるために

 

「はあ……はあ……うおッ!」

 

何時もなら何もない場所で転ぶなんてドジはかまさないのだが、知らない場所に対しての混乱と日頃の運動不足が相まって、足が縺れて転倒してしまう。それはもう勢いのある良い転びっぷりである。

 

「ああ、クソッ……」

 

すぐさま立とう試みるが足は産まれたての子鹿のようにガタガタ震えていて上手く立てない。恐る恐る振り返れば奴ら(・・)は先程と変わらないスピードで追いかけてきている。むしろ自分が立ち止まってしまったため、距離が縮まってしまっている。

 

「もう、無理……」

 

足は恐怖と筋肉の痙攣で動かない。這いつくばって逃げたとしても追いつかれるだろう。声を張り上げて助けを呼ぶことも考えたが、息切れしているため上手く声が出せないうえに走っている最中に人っ子一人見かけなかった。助けは絶望的だろう。

 

「…死ぬ、のか……?」

 

思わず口から零れ出た言葉に答えるものはいない。奴ら(・・)が歯を鳴らしながら近づいてくるにつれ、自分の死が明確なものになっていく。よもやこんな見知らぬ場所で死の恐怖を味わうことになるとは思わなんだ。

 

「…く、喰われる……なら……丸飲みが、いいなあ……」

 

噛まれたら痛いし、と、こんな時にまで無駄口を叩いている自分に飽きれながら目を強く閉じる。

   次に目を開けた時はいつも通りの日常に戻っていると願って。

 

「……届けえええぇぇぇぇえええッッッ!!!

 

     そんな声が聞こえた

 

それと同時に爆風が巻き起こり体が吹っ飛ばされる。自分がさっきまでいた場所は砂煙で何も見えない。何が起こったのか?さっきの声の正体は?そんな疑問が頭の中を駆け巡るが全くわからない。せめて何が起こったかを目に焼き付けようと砂煙の方を見ると、人型のシルエットが見える。一瞬安堵仕掛けたが、正体が分からないため気を引き締めなおす。逃げる準備も忘れない。

 

「ご、ごめんなさい!大丈夫ですか!」

 

砂煙から慌てたような声が聞こえてきた。その声の主は走ってこちらに近づいてくるようで、砂煙で分からなかった声の主のシルエットが明らかになる。

 

「本ッ当にごめんなさい!勢い着けすぎちゃって……ケガはない、ですか?」

 

目の前には自分と同い年くらいの変わった格好をした女の子が心配そうにこちらの顔を覗き込んでくる。女の子の恰好は全体的に桜色を基調とした服、両腕に無骨な籠手、下はスパッツを履いていて目のやり場に困る。正直こんな場所でこんな格好をしている彼女は怪しさ満点だが、彼女が目に涙を溜め始めたので即急に返事を返そう。うん、そうしよう。

 

「う、うん大丈夫、です………」

 

「ホント!良かった~せっかくバーテックスから助けられたのにケガしたらどうしようかと思った……」

 

今彼女が言ったことが本当なら俺に襲い掛かってきた奴ら(・・)はバーテックスと言い、そのバーテックスから自分を救ってくれたのが彼女ということになるのだが……まさかその籠手を使って倒したというのか?嘘だろ、その細腕にどんな怪力秘めてるんだよ。

 

「友奈ちゃーん!」

 

「友ー奈ー!」

 

「友奈さーん!」

 

声のした方へ向くと、彼女の仲間?がこちらに手を振ってやってくる。それも全員が全員同じく変わった格好をしていて、一人一人が武器を持っている。あれかな彼女たちもバーテックスとやらを倒せるのだろうか。というか全員多色多様過ぎませんかね。目がチカチカするんだが。

 

「みんなー!こっちこっち!」

 

「友奈ちゃん、あんまり先行しちゃだめよ。友奈ちゃんに何かあったら私……」

 

「東郷さんの結城さん過保護は相変わらずですね」

 

「まあ、仲が良いことに越したことはないだろ」

 

やばい。何がやばいってこの和気藹々とした雰囲気で俺が空気になり始めている。どうするのが正解だろうか。話しかけるか?いやでもこの人たちが安全な人たちかわからんし、ここは一端距離をおいて様子を見るのが得策か?でも桜色の子は俺の命の恩人かもしれない人だし、逃げるのは失礼か?いやでも……

 

「ところでそこでシットしているボーイは?」

 

ひと昔前に流行っていた芸人を彷彿とさせる口調で話す女の子の発言により、視線が一気にこちらに向く。ヤベえよ視線で蜂の巣にされそう。取り合えず立って話を……ん?

 

「えーと、あなたはいったい……」

 

「……あのですね、お話をする前に一つだけお願いがあるんですけど、聞いてもらえますか……」

 

「え?うん良いよ。何でも言って!」

 

友奈ちゃんとやらと瓜二つの女の子が元気よく返事を返してくれる。それではお言葉に甘えて……

 

「あの、ですね……」

 

「うん」

 

「腰が、抜けてしまったので……その、立たせてもらえませんか……」

 

生暖かい視線をこちらに向けながら無言で手を差し伸べてくれた彼女たちに対して心の中で涙を流したことは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

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