投稿遅れてすいません…
そして一言、キャラの口調が分からない…ッ!(切実)
雨の日は好きではない。むしろ嫌いだ。外に出るときは傘を差すため片手が塞がる、湿気で部屋の中は蒸す、夜になるとカエルがうるさいなど挙げればきりがない。そんな嫌いな雨の日が何日も続けば憂鬱になるのは仕方ない話だ。いっその事休んでしまいたいが、当然親が許してくれるわけもない。百歩譲って休めたとしても、勇者部連中にバレたらそれこそ面倒なことになる。最悪ひなたさんにつるされた挙句に、東郷や須美ちゃん辺りに説教されかねない。そんな訳で今日も泣く泣く通学路を歩き学校に向かう。
アラ、アレスズキジャナイ
エ、ドコオネエチャン
雨の日ってだけで憂鬱なのに、その上この時期は期末試験もある。赤点取らないようにしないとな。そういえば勇者部のメンバーはテスト大丈夫なのだろうか?主に結城とか高嶋とか球子とか、あと
ヤッホースズキー
オ、オネエチャンコエガオオキイヨ
テストを越えれば次は夏休み。去年は家でゴロゴロしていることが多かったが、今年はどうだろうか。勇者部は夏休み中も活動するだろうし、バーテックスの件もあるから必然的に忙しくなるだろう。勇者部もバーテックスも夏休みくらい休めよ。バーテックスに夏休みがあるかは知らんが。
アラ、キコエテナイミタイ、オーイスズキー
ア、マッテヨーオネエチャーン
というか夏にあんな狭い部屋に大人数集まったら熱中症になるのでは?なんなら部屋にたどり着けずに途中でぶっ倒れるまである。もしも夏休みまで部活をやるとなれば、断固抗議することもやぶさかではない!……負ける未来しか見えない。
「いや、諦めるな俺!夏休み入る前に何とか、」
「何を諦めないのよ。」
「うあっしょいッ!」
「うわッ!ちょっと、いきなり大きい声出さないでよ。ビックリするじゃない。」
驚いて後ろを向けば、我らが勇者部の部長にして、自称女子力マイスターの
「ハア…ハア…ふう、おはようございます。鈴木先輩…」
「お、おう…おはよう樹ちゃん。」
「は、はい…」
「………」
「………」
沈黙ッ!圧倒的沈黙ッ!気まずい空気が流れる。勇者部は基本フレンドリーなのだが、集団にいる以上無論そうではない人だっているのは当たり前だ。その中でも樹ちゃんは人一倍引っ込み思案の人見知りで尚且つ男子と話すことにあまり態勢がないとのこと。対して俺も後輩の女の子という未知の存在にどう接すればいいか分からず、戸惑うばかりである。その結果今の状態である。俺の方が先輩なのに情けない。そんな俺達を見かねてか犬部長が俺たちの間に入ってくる。
「ちょっと部長であるアタシに挨拶がないわよ。」
「あ、犬部長。おはようございます。」
「うむ、おはよう…って、誰が犬部長よ!」
「あ、すいません。ついうっかり…」
「うっかりってあんたねえ…」
「あはは、やっぱり朝は駄目すっね。頭が回りませぬ。」
「…ませぬ?」
俺の語尾に対して首を傾げる樹ちゃん。その仕草は小動物のようで、こう……庇護欲をそそられる。口には決して出さんがな。そんなことしたらこの
「それよりも、早く学校行かないと、遅刻しちゃいますよ。」
「…そうね、時間に余裕があるとはいえ、雨の中で立ち話ってのも可笑しいわよね。それじゃあ行くわよ樹、鈴木。」
「え、俺も?」
「当たり前じゃない。それとも他に待ち合わせしている人でもいるの?」
「いや、いませんけどね…」
「ならいいじゃない。」
「いや、でも……」
たしかに俺としては美少女姉妹と登校なんてシチュエーション、最高にテンション上がる展開だが、ギャルゲーしかやったことない恋愛マスター(失笑)ではどう足掻いても太刀打ちできない。女の子だらけの部活に入ってるくせに何言ってんだこの童貞とか思ってるやつがいるのなら考えを改めろ。
それに一緒に登校している姿を誰かに見られた場合、少々めんどくさいことになるかもしれない。この前だって棗先輩達と毎朝走っていることを何処からか聴き付けた奴らに追い回されたのだ。「私たちのお姉様に近づく悪い虫!」と言いながら追いかっけて来たのは記憶に新しい。なんなら最近夢に出てくるまである。
今回も同じようなことが起こらないか気が気ではないのだ。やはりここは丁重にお断りをして、ん?
「あ、あの……」
…可愛い生き物が俺の袖の端を遠慮がちに引っ張ってきているのだが、俺は一体どうすればいいんだ?
「…一緒に、登校しましょう。」
「え?」
「ダメ、ですか?」
「あ、いや、そういう訳じゃ…ッ!」
「ど、どうかしましたか?」
「……な、何でもないよ。あと全然駄目じゃない。一緒に行こう。」
「え?いいんですか?」
「うん、それじゃあ行こっか。」
「は、はい!行こうお姉ちゃん。」
「はいはい、分かったわよ。」
そう言って歩き出す樹ちゃんと犬部長の後ろを付いていく俺。まあ、あれだ。樹ちゃんが勇気を振り絞って声を掛けてくれたのだ。そんな誘いを断るのは先輩が廃るというものだ。決して「アタシの妹の誘いを断ろうっての?お?」と
「あッ!」
「ピャッ!どうしたのお姉ちゃん!」
他愛のない会話しながら三人で歩いていると、もう少しで学校に着くといったところで急に大声を上げた犬部長。そのせいで声を上げて驚く樹ちゃん。そして樹ちゃんの驚いた声が可愛すぎて心臓が止まりかける俺。大惨事である。
「アタシ今日日直だったのすっかり忘れてた!ゴメン樹、アタシ先に行くわね。鈴木アンタは樹をキチンと送り届けるのよ。これは部長命令だから!」
「え、ちょ、待っ…」
「お、お姉ちゃん!」
口早で捲し立て走り去って行く犬部長。そして再び訪れる沈黙。当たり前だ、さっきまでの他愛のない会話は犬部長がいたからこそ成り立っていたのだ。こうなるのは必然である。やべぇ…どうしよ、先輩として声かけたほうがいいのか?さすがにこのまま立ちっぱなしってわけにもいかんでしょ。よし、話しかけるぞ…話しかけるゾッ!せ、せーの!
「な、なあ…」「あ、あのッ!」
「「………」」
「…俺からで良い?」
「は、はい何でしょう。」
「いや、大したことじゃないよ。ただ先に進もうって言おうとしただけ。ここで立ち止まってるのも変だしさ。」
「そ、そうなんですか?実は私も同じことを言おうと思ってて…」
「あ、そうなんだ。同じこと考えてたなんて俺たち気が合うね。」
「え?」
「……あ」
何言ってんだよ俺はああぁぁぁぁああッ!!そんなこと言ったら引かれるだろうがあああアァァァァッ!…終わった、もう終わりだ。これから俺は樹ちゃんに白い目で見られ、勇者部メンバーにも陰口叩かれるんだ。そして最後には犬部長権限で退部させられて、樹海で路頭に迷い、バーテックスに踊り食いされるんだッ!お義母さん、今まだ育ててくれてありがとう…さようなら俺の人生…
「…フフッ」
「……え?」
「あ、いえ、すいません。鈴木先輩を見てたら緊張が解けちゃって。」
「え?それは一体…」
「だって鈴木先輩、私よりもアタフタしてるじゃないですか。それが可笑しくて…フフッ」
どうやら引かれてはいないらしい。それどころか俺の慌てふためく姿を見て笑っていらっしゃるようだ。成程…樹ちゃんってもしやS…?
「それじゃあ行きましょうか鈴木先輩。」
「あ、うん。」
一頻り笑い終えた樹ちゃんの言葉に生返事を返して歩き出す。お互いの間に会話はないがさっきまでの気まずい雰囲気は流れていない。何というかこの沈黙は心地いい。
「あの鈴木先輩。」
「ん?何?」
「何で一緒に登校することオーケーしてくれたんですか。」
「魔王が怖かったから。」
「え?それってどういう…」
「あ、いや、その……そ、そんなことより樹ちゃんはどうして俺を誘ったの?」
「え?どうしてですか?」
「うん。樹ちゃんってさ、その…あんまり僕と話すの得意じゃないでしょ?」
「………」
その問いに黙り込んでしまう樹ちゃん。さすが切り込みすぎたか。出来る限り言葉は選んだけど、やっぱり女子との会話は難しい。ここはやはり聞き役に徹するのが一番だろう。
「……私のお姉ちゃんはすごいんです。」
「うん……うん?」
「しっかり者で行動力があって、家事全般何でもできて、勇者部の皆も引っ張れる、私の自慢のお姉ちゃんなんです。」
「あ、うん…そうなんだ。」
駄目だ聞き役に徹しても難しい。何故いきなりお姉ちゃん自慢し始めたのこの子。俺の質問無視されたってことか?おめぇの質問になんて答えねえよってことですかね。…うん、まあいいや。心折れそうだけど、ここはグッとこらえて会話を続けよう。
「樹ちゃんはホントに部長のこと好きなんだね。」
「はい!自慢のお姉ちゃんなんです。」
「お、おう(何で二回言ったんだ?)」
「……私はそんなお姉ちゃんの隣を歩いていけるようになりたいんです。」
…つまり樹ちゃんは部長のようになりたいという事だろうか?樹ちゃんが部長みたいに…そのままでいいと思うんだけどなぁ。でもここは彼女の事を否定せず、尚且つユーモアを取り入れて会話を繋げよう。
「…さっきまで隣同士で歩いてなかったっけ?」
「あ、いや、そういうことじゃなくて、えーと…えーと……」
頭を左右に振りながらうんうん唸っている樹ちゃんは可愛いのだが頭を左右に振るのにつられて揺れる傘が正直危ない。ボケにも真面目に答えようとする樹ちゃん可愛いのう…
「ごめんごめん、言いたいことは大体わかるから。だから落ち着いて。」
「は、はいすいません……待ってください、分かってたってことは揶揄ったんですか?」
「………」
「鈴木先輩、こっち向いてください。」
「…はい。」
「揶揄ったんですか?」
「……すいませんでした。」
「………」
どうやら俺のユーモアは届かなかったらしい…そんな俺を頬膨らませてジト目でこちらを睨んでくる樹ちゃん。正直全く怖くない、むしろ可愛い。頼んだら膨らませている頬を突かせてもらえないだろうか。
「…反省していますか?」
「あ、はい(適当)。」
「本当ですか?」
「もちろんです(真顔)。」
「…分かりました許します。」
どうやら許してもらえたようだ。樹ちゃんの表情はいつも通りに戻る。ああ、プニプニの頬っぺたプニプニしたかった……そんなことしたら女子力魔人の手で〇されるだろうなぁ…
「でも良かったです。」
「え、何が?」
「私ちゃんと鈴木先輩と話せました。」
「…それってどういう事?」
「…私男の人と話すのが苦手で、だから鈴木先輩と話す時いつもぎこちなくなってしまって、それで鈴木先輩にも迷惑かけてしまって…」
「……」
「でも今日こうして勇気を振り絞って、ちゃんと一人でもお話出来ました。だから、その…ありがとうございました。」
…本当にいい子だな樹ちゃんは、お礼を言わなきゃいけないのはこっちなのに。
「…俺は樹ちゃんに言っておきたいことがある。」
「ふぇ、何ですか?」
「まず一つ俺も女子と話すのがあまり得意じゃないこと。日々四苦八苦してるし、家では毎日反省会だよ。変な事言ってなかったかなとか、あの時の言葉で相手はどう思ったのかなとかさ。」
「…鈴木先輩もだったんですね。」
「うんそうなんだ。二つ目は俺もお礼が言いたいってこと。」
「え、お礼って何のことですか?」
「樹ちゃんが振り絞ってくれた勇気のおかげで俺も勇気を持てたからね。だからありがとう。」
「そ、そんな…私大した事してないですよ。」
そう言って照れながら笑う樹ちゃん。ああ"あ"あ"あ"可愛いんじゃあ~(錯乱)。おっといけない、少しばかり気が触れてしまったようだ。煩悩退散煩悩退散ッ!
「んんッ!最後に樹ちゃんさっき言ってたよね。部長はすごいって、そんな部長の隣を歩いていきたいって。」
「は、はい言いました。」
「でも樹ちゃんもすごいと思うよ。」
「え?」
「確かに部長はすごいと思うよ。なんてったってあのクセのある人達を束ねて勇者部の部長やってるわけだしね。でも樹ちゃんだって小学生組を引っ張ってるじゃないか。」
「そ、そんなこと…」
「それに部長が言ってたよ。樹ちゃんはここぞという時に頼りになるんだって。」
「え!?お姉ちゃんそんなことを…」
勇者や大赦、新樹、この世界の成り立ちを犬部長が話してくれた時に嬉しそうに言っていたのをよく憶えている。何でも「私も一緒に行く!ついて行くよ、何があっても…」と言ったとか。何でも犬部長は最初、お役目のことを勇者部の皆に黙っていたみたいなのだ。その時の犬部長の心境は俺には分からないが少なくとも樹ちゃんの言葉が犬部長を救ったのだろう。じゃなきゃあんなに嬉しそうには語らないだろう。
「まあ何が言いたいかって言うと、部長にも樹ちゃんにも自慢し合えるものがキチンとあるってこと。だから自信もっていいと思うよ。まあ俺なんかに言われなくてもわかってると思うけど…」
「……」
「ああごめん、偉そうなこと言って…」
「い、いえ!そんなことないです。むしろ、その…嬉しいです。」
「お、おうそうか。」
「は、はい…」
「………」
「………」
「よ、よし!この話はここで終わり!違う話をしよう!」
「そ、そうですね!そうしましょう!」
お互い顔を赤くしながら話を逸らす。最後はグダってしまったが、少しは先輩らしくできただろうか?俺の言葉が少しでも樹ちゃんの自信に繋がれば良いなと思う。それにしても勢いでまた小っ恥ずかしいことを言ってしまった。これは家に帰ったら反省会だな。
その後しばらく二人だけの他愛のない会話が続くのであった。
【おまけ】
『え、勇者部って部長が作ったんですか?』
『そうよ、つまり私は初代勇者部部長ってわけよ!どう?かっこいいでしょ!』
『初代勇者がいるのにその肩書はいいんですか?』
『うっ、それを言われると痛いわね…若葉たちに許可取ったほうがいいのかしら?』
『そんなことより話を戻しましょうよ。』
『そんなことって何よ!重要なことでしょ!』
『はいはいその話は後で聞きますから、続きをお願いします。』
『ぶー、分かったわよ。それでどこまで話したっけ?』
『あれですよ、勇者部誕生秘話までですよ。』
『ああそうそう、そうだったわね。まあと言っても表向きはボランティアに勤しんで、裏ではお役目でバーテックスを倒すってだけなんだけどね。』
『ざっくりしてますね。』
『細かく言うならもっとあるけど、今は大まかに知ってればいいわ。』
『はあ、分かりました。』
『よし、じゃあここまでで質問はある?』
『…一ついいですか?』
『何かしら?』
『結城や東郷、樹ちゃんって最初どんな反応だったんですか?』
『……』
『あ、いや、すいません。ちょっと気になっただけです。言いたくないなら大丈夫です…』
『…あの子たちは最初混乱してたわ。東郷には何で言ってくれないんだって怒られちゃってね…』
『……』
『友奈はあの性格だから、怖かったとは思うけどそれを表には出さなかったわ。それどころか私が励まされちゃったわよ。まったく、部長のメンツ丸つぶれよ。』
『…樹ちゃんはどうだったんですか。』
『…樹はあの時真っ先に私と一緒に戦ってくれたわ。』
『樹ちゃんが、ですか?』
『信じられない?』
『あ、いえ、そんなことは…』
『樹は確かに憶病で引っ込み思案な性格だけど、いざって時は私なんかよりよっぽど頼りになるのよ。』
『そうなんですか…』
『あの時の樹はホントにカッコよかったのよ。「私も一緒に行く!ついて行くよ、何があっても…」って言ってくれてね……』
『………はは。』
『…何よ、なんで笑ってるのよ?』
『あ、いや、部長って樹ちゃんの事大好きなんだなあと思って。』
『当ったり前じゃない!なんたって樹は私の自慢の妹なんだから!』
『…羨ましいっすね。俺も欲しいっす可愛い妹。』
『欲しいって言うだけならいいけど、うちの妹に手出したらぶっ飛ばすわよ。』
『出しません、出しませんからスマホ取り出さないでください、お願いします。』
『うむよろしい!じゃあ続き話すわよ。』
『へーい。』
鈴木が勇者部に入部してすぐの出来事である。