呼んでいただいた方たちは今もこのサイト利用してるのかな…
まさか続きを投稿できる日が来るなんて思わなんだ…
それではどうぞ!
「はい、みんなお疲れ様。今日の活動はこれで終しまいよ。」
「よっしゃー!じゃあさ、みんなでうどん食いに行こうぜ!」
「おおッ!いいスッね、お供します球子さん。」
「私も行きたい!ぐんちゃんも一緒に行こう!」
「ええ、高嶋さんが行くなら私も行くわ。」
「私たちはもちろん蕎麦よ!なんたって蕎麦私たちのソウルフードッですもの!」
「そうだねうたのん。」
「ねぇねぇ、アッキーはどうする?」
「うーん、せっかくだし私も参加しようかなぁ。」
部活も終わり各々会話を始める中、俺はそそくさ帰る準備を行う。俺の状態はというと、今日もセコセコと馬車馬のように働きヘトヘトである。因みに今回俺に課された依頼は依頼主のペットの猫が行方不明になったためその捜索であり、今日は残念ながら成果なし。
多分だが普段勇者部が受けてる依頼の中で1、2を争う難易度だと思う。聞き込みで情報を収集し、目撃証言があった場所を手あたり次第捜索の繰り返し。捜査は足で稼げとはよく言ったものである。
「ねえ、鈴木くんも行こうよ!」
「え、行くって何処に?」
「何アンタ聞いてなかったの?みんなでご飯食べに行くのよ。」
「あぁ…」
正直このまま家に帰りたいが、今までの経験から断っても理詰めされて結局行く羽目になるのだから今日は大人しくついて行こう…帰りたいけどな(切実)
「分かりました、それじゃあお供させていただきm…何ですか?その珍しいもの見るような目は?」
俺が返事をした途端部室内いた全員の視線がこちらに向けられる。俺なんかおかしなこと言ったかな?
「いや、アンタならもっと駄々こねると思ってたから…」
「すずむーはいつも否定から入るもんね~」
「少し残念ですね、今日はどうやって言い包めようか考えてたのですが…」
「まぁいざとなれば部長命令で強制連行だけどね!」
「お姉ちゃん、それはちょっと…」
事実なので何も言えない…というか上里さんはやっぱり楽しんでたのね。道理で生き生きと外堀を埋めてくるわけだ。それと犬部長は相変わらず犬部長だなぁ…
「よーし!それじゃあ皆でレッツゴー!」
『おおッ!』
ホント元気だな勇者部は…
「…銀、そのっち。早くしないと置いてかれちゃうわ。」
「分かってるって。鈴木さんも!早く行きましょうよ!」
「すずむーセンパーイ!置いてかれちゃいますよ~」
バカ騒ぎしながら部室を後にする彼女達の背中を眺めていると、小学生三人組に声を掛けられる。思えばこの三人にも最初は警戒されていたが、年少組のリーダー的存在である樹ちゃんが間に入ってくれたおかげで今では
俺もなんだかんだで新しい場所で上手くやれてるという事なのだろうか…
…まぁ
そんなことを思いながら彼女達の背中を追いかけるのであった。
「前言撤回、来るんじゃなかった…」
「鈴木!何故うどんを食べないんだ!」
「これを期に蕎麦党に入りなさい鈴木!私たちはいつでもウェルカムよ!」
「雪花さん的にはラーメンをオススメだにゃあ~」
「…沖縄そばはいいぞ」
私、鷲尾須美の視線の先には鈴木さんを中心に麺類論争を繰り広げている勇者部上級生の皆さん。いえ、鈴木さんはどちらかと言うと巻き込まれている感じではあるが…
コトの発端は勇者部一同が今いるお食事処での出来事。このお食事処は値段もお手頃で学生である私たちの財布にも優しく、料理の種類も豊富であるため、勇者部でもよく利用している。
今日も学校帰りに立ち寄ることになり、皆さんが思い思いの
最初に声を上げたのはもちろん初代勇者にして勇者部最大派閥うどん派筆頭の若葉さん。ここに来店してうどん以外はありえない!と豪語し、鈴木さんにうどんの素晴らしさについて語りだした。
そこに待ったを掛けたのが諏訪の勇者にして所属二名の蕎麦党筆頭の歌野さん。このお食事処では蕎麦がナンバーワンよ!と若葉さんの力説を遮り、鈴木さんに対して蕎麦の歴史に語りだした。
それに割り込んできたのは北海道の勇者にして所属一人で派閥という矛盾を抱えたラーメン党筆頭の雪花さん。なんの!このお店はラーメンも負けてませんよ!とラーメンの味について解説し始めた。
そこにさり気無く入り込んできたのは沖縄の勇者にして麺類派閥論争には消極的な沖縄そば党筆頭の棗さん。先程から沖縄そばはいいぞと繰り返し呟いている。
「鈴木さん人気者だな!」
「わあ~、すずむーセンパイモテモテだぁ~」
そんな光景を近くで見ている銀とそのっちは呑気に眺めるだけ。助けなくていいのでしょうか…
「大丈夫だよ須美ちゃん」
「あ、樹さん!」
困っていた私を見かねてか、近くの席にいた樹さんが声を掛けてくれました。
「鈴木先輩なら大丈夫だよ。自分で何とか出来ると思うから。」
「え、でも…」
私が反論しようとしたその時、事態は動き出した。
「お待たせしました、きつねうどんとざる蕎麦のお客様~」
店員さんが若葉さんと歌野さんの注文した料理を運んできてたのを合図に鈴木さんは熱論している二人の話に被せるように口を開く
「ほら若葉に歌野!おまえらの注文したのが届いたぞ!俺の事は気にしなくていいからさっさと食べちまえ!」
「むっ、まだ話したりないが仕方ないか…」
「あとで鈴木には蕎麦のヒステリーについてじっくりティーチングしましょう!」
「私もそろそろ席に戻ろっと、頼んだ料理もうすぐ来ると思うし。」
「…また、あとでな。」
鈴木さんの一言で周りに集まってた先輩方が離れていき、それを確認した鈴木さんは安堵の表情を浮かべています。樹さんが言ってたのはこういう事だったのですね。
「ほらね?大丈夫だったでしょ。」
「はい、でもどうして分かったのですか?」
「鈴木先輩が言ってたの。追い詰められた時にこそ冷静に物事に対処してチャンスをものにするんだって。」
「鈴木さんがそんなことを…」
「でもあれ、鈴木先輩が読んでる漫画に出てきた悪役のセリフなんだって。」
「盗用したんですね…」
勇者部の黒一点であり、讃州中学の二年生鈴木さん。ある日何の前触れもなく樹海に現れ、私たちと共に勇者部に入部し活動していて、『神樹様の結界内に入ることが出来る』、『勇者に変身することが出来ない』等、多くの謎に包まれている人物。
現在は勇者部で私たちと一緒に奉仕活動に勤しんでいて、部活中は文句を言いながらもキッチリ行っています。それに加えて若葉さんや夏凜さん、棗さんと毎日欠かさず朝練を行ったり、歌野さんの畑を手伝ったりと様々な先輩方と交流を深めているらしく、最近では千景さんと一緒にゲームをしていたようで、そのことを高嶋さんが嬉しそうに話していたのは記憶に新しく、私も失礼ながら少し驚いてしまった。
そんな鈴木さんに
実を言うと鈴木さんが樹海に現れた日に勇者部では緊急会議が行われた。議題は主に鈴木さんが何者なのか、そして鈴木さんの処遇についてだ。
会議中には様々な意見が上がり、味方か敵か、味方であれば新たな勇者や巫女、敵であれば造反神が寄越した新種のバーテックスの可能性。あらゆる可能性が挙がった。
その結果、現状鈴木さんが何者かは分かっておらず、処遇についても勇者部に入部してもらい、私たちの目の届く範囲居てもらう、何人かの察しのいい先輩は暗に口には出さなかったが所謂監視という形になった。もちろん鈴木さんはこの事を知らない。隠し事をしているようで気が引けてしまうが、万が一ということもある。
「樹さん!さっきのセリフ、あの人気漫画のセリフですよね!アタシも読んでるんですよ!」
「ミノさんは鈴木先輩に勧められたんですよ~私もハマっちゃって~」
「へぇそうなんだ、私も気になるかも…」
鈴木さんはいつの間にか銀とそのっちとも仲が良くなっており、2人の口から鈴木さんの名前が出てくる頻度も増えた気がする。
…なんだか私だけ仲間外れにされているような…帰ったら銀とそのっちが話している漫画について調べる必要があるわね。べ、別に私だけ仲間外れになっているのが寂しいのでは断じてありません!こ、これは鈴木さんの情報を少しでも集めるために必要なことであって…その…
「………美?…須美!」
「…ッ!あ、銀…」
「わっしー大丈夫ぅ?もしかして具合悪いのぉ~?」
「そうなの須美ちゃん?」
「い、いえ大丈夫です。そのっち、銀も大丈夫よ。少し考え事をしてただけだから。」
「…わっしーの考え事ってすずむー先輩の事?」
…ッ!流石そのっちね、こういう時は鋭いんだから。
「…なぁ須美、まだ鈴木さんの事警戒してるのか?」
銀の問いかけに私は押し黙ることしかできず、肯定も否定もしない。
「…須美がアタシ達や勇者部のために色々考えてくれてるのは分かるし、それはアタシも嬉しいよ。でもさ、鈴木さんは須美が思うような人じゃないと思うんだよ。」
「右に同じくなんよ~」
…私だって鈴木さんが悪い人だとは思っていない。むしろ友奈さんや高嶋さんのように誰とでもすぐに打ち解けることができる鈴木さんに好印象を持っているまである。
けれど不確定な要素が多いのもまた事実。何か予期せぬ事態に陥ってしまうかもしれない。そうなった時に即座に動けるように警戒をしておくに越したことはない。
だから私は…
「…うん分かってるわ。ありがとう銀、それにそのっちも。」
和やかな空気の中、注文したざるうどんが運ばれてきたのはそのすぐ後であった。
「えぇと、今日はこの周辺を探索します!」
『はーい!』
勇者部での夕飯の一件から一夜明けた今日。昨日の依頼の続きということで猫の飼い主さんが住んでいる家からほど近い公園にやって来た。
今回飼い猫捜索を任されたのは樹さんを筆頭に、私、銀、そのっち、棗さん、そして鈴木さんの計6名である。
「この公園は少し広いので、二人一組で手分けして捜索してください。」
樹さんの説明を聞きながら、私は同じく説明を聞いている鈴木さんを横目で見る。いつもと変わらず覇気の無い雰囲気を纏った彼は視線を真っ直ぐと樹さんの方に向けて説明を聞いている様子。
今回は樹さんの説明通り二人一組での捜索。であれば鈴木さんはこの中で一番仲の良い棗さんと一緒になるでしょう。さて自分は誰と組もうかと辺りを見回すと、樹さんはそのっちと、銀は棗さんと話している。
あれ?これは一体…
「あの…鷲尾さん?」
「わひゃっ!?」
突然後ろから声を掛けられたため振り返ると、私と視線を合わせるために中腰になっている鈴木さんが少々困った顔をしながらそこにいた。
この状況は一体どういう事であろうか?何故棗さんと組むはずの鈴木さんが私の傍にいるのだろうか?
訳が分からずアタフタしていると視線を感じたため、視線の先を追ってみればそのっちと銀が私に向けてそれぞれ目配せをしてきた。
そこで私は全てを理解した。この状況は親友二人が作り出したものだと。そして今回の依頼は鈴木さんと二人で行動することになったのだと。おそらくは鈴木さんとの関係の良好のために根回ししてくれたのだろうが、それならそれで先に相談してほしかった…
「それでは見つかったら連絡してください!見つからなくても指定した時間までには戻ってきてくださいね!」
『はーい!』
樹さんの号令と共に私と鈴木さん以外が返事をして、各自割り振られた場所へ歩みを進める。そんな中足り残される私と鈴木さん。どどどうしよう…いきなりこんな…心の準備が…
「ねぇ、鷲尾さん」
「ッ!は、はい!何でしょうか?」
「俺達も移動しないか?」
「…あ、はい!すいません…」
「謝る必要ないよ、さぁ行こう」
そう言って私の前を歩き出す鈴木さんの背中を追いかける。彼が私に歩幅を合わせているためか、簡単に追いつけた。こういったさり気無い気遣いができるのも彼の長所であるのだろう。
「…ごめんね鷲尾さん」
「…え?どうしたんですか鈴木さん」
私の方に振り返ってきた鈴木さんは口を開いたかと思えば謝ってきた。急なことであったため返事が少し遅れてしまった。
思わず身構えてしまう私を見て、鈴木さんは先程私に話しかけてくれた時のように困ったような顔をしていた。
「…鷲尾さんってさ、俺の事良く思ってないでしょ?」
「 」
その言葉を聞いた瞬間、頭が真っ白になった。
いつからだ…いつから鈴木さんは私が疑念を抱いていることに気づいたの?いや、それよりもだ…自分の置かれた状況はあまり良くないのではないだろうか?今この場にいるのは監視していた私と監視されていた鈴木さん。彼が悪い人であればこの時点で一巻の終わり。彼が悪い人ではなかったとしても、監視されていた事実は相手に不快な思いしかさせていないはずだから、どの道弁明の余地はない。
…ごめんなさい、銀、そのっち…せっかく貴方達が作ってくれた場なのに…
「…やっぱり嫌だよね、男と二人きりなんて…」
「………えっ?」
鈴木さんの口からこぼれた言葉に私の口からは間抜けな声が漏れる。鈴木さんは一体何を言っているのだろう?
「鷲尾さんが男の俺を苦手だってことは知ってた。だから今回は棗先輩と組もうと思ったんだけど…やっぱり今から銀ちゃんに頼んで…」
「えっ、あの…その…」
どうやら、鈴木さんは私が男性に対して苦手意識を持っていると勘違いしているようだ。ひとまず監視の件については気づいていないようで良かった。
でもこの状況はどうしよう…とりあえず自分は大丈夫であることを伝えないと。
「あの!私は大丈夫ですので…」
「…本当に大丈夫?さっき俺が話しかけたら一瞬だけど顔色悪くなったし、無理しなくていいんだよ?」
…この人は何故そんなに心配そうにこちらを見ているのだろうか?
私が彼に対していい感情を向けていないことは理解しているはず。それなのに何故この人は…
「…なんで、ですか」
「ん?どうしたの鷲尾さ…」
「どうして、私に優しくするんですかッ!」
口が勝手に動いた。鈴木さんが向けてくる優しさに耐えきれなかった。
「私は別に男性が苦手なのではありません!私は貴方を監視していたんです!」
「ちょ、鷲尾さん?一体何を…」
「貴方はッ!突然樹海に現れた!大赦は貴方が何故樹海に存在できるのか解析出来ませんでした…ひなたさんや水都さんにも貴方に関する神託が下りてきていない…どう考えても怪しすぎます…」
こんなことを言いたいわけじゃない、でも口からこぼれてしまった言葉は止まらない…
「だから貴方の動向を観察していました…貴方が皆さんに危害を与えるかもしれないと考えたからです…」
だが彼を…鈴木さんを観察するたびに自分の疑念が正しいものなのかと迷いが生じる。彼が男性だから、不明な点が多いから、それだけの理由で根拠もなしに疑ってしまっている状況に罪悪感を感じずにはいられない。
心の何処かで分かっている。銀とそのっちが言っていることは正しい。鈴木さんは悪い人ではないと
「鈴木さん、貴方は…敵なんですか、それとも味方なんですか…」
言葉を紡ぐたびに涙が地面を打つ。頭の中がぐちゃぐちゃになりながら、ぼやけた視界で彼を見る。
「貴方は…何者なんですか?」
言ってしまった、もう後戻りはできない
鈴木さんは黙って私の話を聞いていた。私の問いに下を向き、目を閉じ、熟考する。
どれくらい時間が経っただろうか。
十秒か、一分か、もしかしたら一時間かもしれない
そう錯覚してしまうほどに長い時間が流れる中、沈黙は突然破られた
「分からない」
たった五文字、たった五文字のその言葉で私の中の感情がひどく揺さぶられるのを感じた。
「…分からないって、貴方はッ!」
「俺は、君が求めてる答えを提示できない」
ぐちゃぐちゃになった感情をそのままぶつけようと口を開き、糾弾しようとして吐き出された言葉は、静かな声で遮られる。
「君の言った通り、俺は突然君たちの前に現れた。原因も目的も不明のまま。怪しまれて当然だと思う。」
私は口を紡ぎ、彼の目を見ながら、彼の言葉を聞く。一言一句聞き逃さないために
「樹海に存在できる理由も大赦が俺について何も分からなかった意味も何もかも分からない…でも一つだけ確かなことがあるんだ」
彼は一度言葉を区切り、一呼吸置いて口を開く
「俺が…とても弱い人間なんだ」
「…どういうこと、ですか?」
「そのまんまの意味だよ。知っての通り、俺はバーテックスと闘うすべを持たない。君たちに守ってもらわないと生きていけない人間ってことだ。」
「…ッ!」
言われてみればその通りだった。怪しい点はあれど、彼が樹海で自身を守るすべがないではないか。現に初めて出会った時は友奈さんが助けなければ間に合わない状態であったのだ。その後だって幾度となく鈴木さんは命の危機に直面していた。
私は失念していた。鈴木さんの素上は特異でも彼本人は勇者の力を持たない一般人であることを。
私は見てしまった。困ったように笑いながら私を見る彼の手が小刻みに震えているのを。
「勇者の力があれば、また違うんだろうけどね…」
俯きながらも口の端から言葉を零す姿はとても痛々しい。
「鷲尾さんもごめんね、俺のせいで変に警戒させちゃって。でも…」
一度言葉を切ったかと思うと、膝を曲げて私の目を見ながら口を開く
「俺には、これしか選択肢がないから」
「……ッ!」
彼との視線が交わった先に見たものは、”執念“だった
彼の目の奥に、私は足掻き苦しみ這いつくばってでも生きようとする意志を見た
「…さて、じゃあそろそろ猫ちゃん探さないとね!」
そう言って立ち上がり私に背中を向ける鈴木さん。この話はここで終わりという事であろう。
…私はどうすればいいのか?このことを皆さんに報告したほうがいいのであろうか?いや、それよりも彼をこのまま行かせて良いのだろうか…
…いや、行かせてはいけない
なぜならまだ鈴木さんの口から重要なことを聞けていない!
「鈴木さんッ!待ってください!」
私の呼びかけに鈴木さんは歩みを止め、こちらに振り返る。彼は私たちと接する時と同じように微笑んでいるが、心成しかいつもより無理をしているような微笑みだった
「どうしたの鷲尾さん、早く行かないと、」
「鈴木さん、私はまだ貴方に聞いていないことがあります」
「………」
鈴木さんの言葉を遮り、彼の目を見据える。
「正直に答えてください。鈴木さんは、勇者部に入ってからの生活はどうでしたか?」
「……どういう意味かな?」
鈴木さんは私の質問の意図が分からないようで、困ったような顔をしながらこちらの意図を汲み取るために口を開く。そんな彼に私はより言葉をぶつける。
「そのままの意味です。勇者部に入部してから皆さんと接してこられてどう思っていたのか、勇者部で過ごしてきた日々をどう感じていたのか、聞かせてください」
私の言葉に鈴木さんは目を見開き下を向く。
鈴木さんは私たち勇者に守ってもらうために勇者部に入部した。彼が積極的に私たちに接していたのはそう言った部分が関係しているのだろうとは想像できる。
であれば彼は無理に私たちと接していたのだろうか?
私はずっと彼を観察していた。勇者部の皆さんと会話をする鈴木さんはとても無理をしているようには見えなかった。少なくとも最近の彼は…
あれは全て演技なのかもしれない、勇者部の皆さんのご機嫌を取るために仮面を被っているかもしれない、銀やそのっちが語った彼は嘘なのかもしれない
もしもこれらが事実であるならば、
「答えてください、鈴木さん」
あまりにも悲しいと思ってしまった
「………」
長い沈黙が続く。下を向いてしまった彼を一時も見逃すまいと視界に収める。やがて彼は一度深呼吸をして顔を上げ、私と視線を真っ直ぐ合わせる。
「…俺は君たちに守ってもらうために近づいた。」
「………」
「より確実に守ってもらえるように、勇者部の皆と仲良くなろうした。」
鈴木さんの口からこぼれる言葉を聞き逃さないように彼を次の言葉をじっと待つ。
「……
「最初は、ですか?」
「…信じられないかもしれないけど、皆と接していくうちに時々目的を忘れちゃう時があるんだ。只々皆と接する時間がとても、楽しいんだ。」
………。
「勇者部で過ごす日々はとても充実してると思うし、この日々がずっと続けばいいなって思うこともある…それでも俺が皆を利用しようとしたのは確かな事実なんだ…だからっ」
「もういいです」
「…え?」
「貴方が勇者部の皆さんに悪意を持って近づいたのではない事は分かりました。だからもう大丈夫です。」
「え、いやでも…」
「それと一つ言っておくことがあります!」
そう言って私は困惑している鈴木さんに歩み寄り、自分より背の高い彼を見上げながら口を開く。
「知っての通り勇者部の皆さんは優しい人たちばかりです。だから皆さんはきっとあなたを守ってくれます。そして、」
そこでいったん言葉を区切る。
「私も貴方を守ります、だから安心してください!」
「ッ!」
今日何度目か分からない彼の表情の変わりように思わず頬が緩む。聞きたいことも聞けた、伝えたいことも伝えた。そのおかげで彼の、鈴木さんは悪い人じゃないと分かった。すべて私の思い過ごしだった。
「…鷲尾さん、」
「はい、何ですか?」
「俺はみんなと一緒に、居ていいのかな?」
「…ふふっ、それは皆さんに聞いてみればいいんじゃないですか?」
「それはちょっと、いやかなり恥ずかしいな…」
頭を掻きながらそっぽを向いてしまう鈴木さん。今の彼を見れば私でも分かる。きっと
「さぁ、そろそろ割り当てられた場所に行きましょう。樹さんに怒られてしまいます。」
「…そうだね、じゃあ行こうか鷲尾さん。」
「須美」
「え?」
「須美でいいですよ。銀やそのっちは名前なのに私だけ名字だと、その…仲間外れみたいじゃないですか。」
「…うん分かった、これからよろしくね須美ちゃん。」
「ッ!…はい!よろしくお願いします鈴木さん!」
鈴木さんの隣に並び、目的地を目指す。お互いの間に先程までの重苦しい雰囲気はない。
「ねえ須美ちゃん。」
「何ですか鈴木さん。」
「君に言ったこと、皆にもしっかり言うよ。」
「…いいんですか?」
「うん、須美ちゃんと話してみて分かったんだ。このままじゃダメだって…だからしっかり自分の言葉で伝えるよ。」
「…鈴木さんが決めたのなら止めません、それにきっと大丈夫だと思いますので。」
「…怒られたら骨は拾ってね」
「ふふっ、頑張ってくださいね♪」
銀、そのっち…ありがとう。
おかげで鈴木さんに一歩歩み寄れたよ。
自分でも分かるくらいの上機嫌で歩を進める。
これからの彼と勇者部との時間に想いを馳せながら。
【おまけ】
「…ねぇ須美ちゃん、」
「何ですか鈴木さん」
「皆めっちゃあっさりしてたね」
「思った通りでしたね」
「あそこまであっさり受け止められると、あの時の決意がちょっと恥ずかしい…」
「友奈さんと高嶋さんなんて、『気づいてあげられなくてごめんね』って逆に謝ってましたもんね。あれは予想外でした…」
「何だろ…納得いかない…」
「あはは…いいじゃないですか、これで心着なく皆さんと関われるんですから。」
「…改めてありがとね須美ちゃん。」
「そんな、私は何もしてないですよ!」
「須美ちゃんがくれたきっかけで一歩前進できたんだから。何度でも言うよ、ありがとう。」
「…では素直に受け取っておきます、どういたしましてです。」
「ふふっ」「あははっ」
「…どう思います奥さん、なんかお二人いい雰囲気でなくて?」
「そうですわね奥様!おかげでメモが進みますわ!ビュォォォォオオオ!」
「うわッ!園子!あんまり大声出すと見つかるって…ッ!」
「聞こえてるわよ銀、そのっち!」
「やべっ!見つかった!逃げるぞ園子!」
「わぁ~逃げるんだよ~」
「あっ!待ちなさい銀!そのっち!」
「…ホントに仲良いな」
この後なし崩し的に勇者部のメンツと鬼ごっこをすることになり、立てなくなるまで走り続けたのであった。