【悲報】この世界には魔法がない   作:すもも子

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単行本4巻末に飛びます。
ウィスタルでの騒動がとりあえず終結し、ゼンと白雪が告白し合った後の日常編のところ。
タンバルンでラジ王子たちとあれこれする前。


ちょっと深夜テンションで書いたところがありますがご容赦ください。




第3話

 なんかこうピンと来たね。

 

「……ハッ!白雪姫の気配!」

 

 巳早に聞かれたらキモいと言われそうなセリフを吐いたのは、舞台や闘技が盛んなユリカナとかいう街で人形劇を披露していたときである。

 

 当然普通の人形劇ではない。街の人形屋さんとがんばって交渉して色んな人形を借り、魔法で操っているのだ。

 誰も触っていないのに人形が動く様はやはり受ける。手品と言い張れば大体楽しんでくれるから楽だよね。世が世なら即刻魔女狩り対象にされそう。

 その辺のちびっ子たちが持ってる人形をお借りして即興で動かせばさらに反応が大きくなった。本物の魔法ゆえ、がんばって有りもしない種を探すことだな(謎の上から目線)。

 ストーリーは適当な童話だ。なるべくハッピーエンドなやつ。正直うろ覚えなので捏造入りまくってると思う。まあ元の世界の童話を知ってる奴は居ないだろうし、居たら居たで同郷一本釣りってことでもーまんたい。

 

 

 

〜〜〜

 

 

「昔々あるところにかつて世紀末ヒャッハーとして名を馳せたおじいさんとおばあさんがいました」

 

▼金髪モヒカン肩パッドギャングのおじいさんとおばあさんが登場!

 

「おじいさんは山へ長年のライバルである熊のポッピッポーとの決着をつけに、おばあさんは川へ洗濯ネット(玉鋼製)の点検にいきました」

 

▼おじいさんの何倍もの大きさの、片目に傷がついている巨大熊が登場!

 

「おばあさんがヒャッハーしていると、川上からドップラー効果を備えた尻のような桃のような未確認飛行物体が流れてきました」

 

▼高速回転する桃(?)!対峙するおばあさん!

 

「戦闘機もかくやという素早さの物体Xにおばあさんは怯みません。冷静に流水制空圏を発動しゴッドフィンガーを展開…そのときその空間はまさに宇宙空間のごときヘヴンだったのです」

 

▼おばあさんはプロフェッショナルな優しい手付きで桃(?)を救う!

 

「捕獲した物体Xを片手におばあさんが家に戻るとおじいさんは熊鍋を作っているところでした。

『ちょうどいい、この物体Xもかっさばいてもらおう』

おばあさんがそう思いおじいさんがふるう狂刃の元に物体Xを投げようとすると、物体Xからつんざくような声が上がります

『ヒャッハアァァァ!!!!ヒャッハアァァァ!!!!ヒャッハアァァァ!!!!ヒャッハアァァァ!!!!』」

 

▼桃(?)が極大バイブレーション!

 

「慌てておじいさんのエンジェル・オブ・ヘルにより物体Xを解体すると、中には元気な産声をあげるモヒカンの赤ん坊が入っていました」

 

▼おじいさんの必殺技が炸裂!桃(?)から赤ん坊が没シュートだドン!

 

 

「『ヒャッハアァァァ!!!!ヒャッハアァァァ!!!!ヒャッハアァァァ!!!!ヒャッハアァァァ!!!!』

その産声(?)を聞いて、おじいさんとおばあさんは直感します。

――――この赤ん坊は、ヒャッハーの中のヒャッハー…『聖☆ヒャッハァー』となる力を秘めている!」

 

▼そのときおじいさんとおばあさんの脳裏に電流が走る!(雷魔法)

 

「おじいさんとおばあさんには子供が居ません。運命に翻弄され続けたヒャッハーは自分達の代で終わりにしようと決めていたからです。

しかしなんの因果か、二人の目の前にはヒャッハーの神に愛されていると一目で分かる赤ん坊がいます」

 

▼おじいさんとおばあさんは慈愛に溢れた表情(魔法でキラキラエフェクトを演出)で赤ん坊を抱き上げる!

 

「カップラーメンができるほどの長考の末、おじいさんとおばあさんは赤ん坊を育てることにしました」

 

▼カップラーメンをすするおじいさんとおばあさん!

 

「これが、のちの伝説のヒャッハーであり、ヒャッハー連邦の創始者となる、K=S・桃太郎(フルネーム:ケツ=尻ンダー・桃太郎)の始まりの物語です」

 

 

(※桃太郎列伝第ニ章より抜粋)

 

 

 

 

〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 ネタが早すぎて人形が勝手に動いてるところにしか注目されなかったょ。。。

 まあ自分でも無理あるかなとは思ってたけど。

 

 

 

「すっげー浮いてるー!それどうやんのー?!」

「コツはイノセントな心です」

 

 手で運ぶのが面倒なので、人形を詰め込んだ木箱を電車ごっこのように紐で引っ張りながら歩く。

 寄ってくるちびっ子たちに手を振らせ、ファンサービスさせるのを忘れないように進んでいると、見覚えのある後ろ姿があった。

 

 赤い髪は隠しているらしい。

 

 あまりジッと見ていると、特に黒猫っぽい未来の騎士に気づかれそうなので、どうしようかな。

 と、悩んでいるうちに側近らしき3人がどっか行ってしまった。

 残るは白雪姫と、王子様。

 

 ……やっべ話しかけられん。

 なんて声かけたらいいの?白雪姫気づいてくんないかな。

 ふぇぇ柱の影で何話してんだろ。邪魔しづらい。

 いや、魔法使いさんともあろうものがコミュ障発揮して白雪姫に話しかけられないなんて!そんなことはあってはならん!冗談は見た目だけにしろよ!

 ……自分で言ってて傷ついた!

 白雪姫慰めて!

 

 

 もうどうにでもなーれのAAを思い浮かべながら、神出鬼没大胆不敵な魔法使いさんの皮を被って鈴を鳴らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 白雪は頼っていると言う。

 ここに来られてよかったという言葉を聞いて、胸が暖かくなった。

 一人で突っ走りがちな白雪が、俺…俺たちの影響を受けて変わってきたというなら、良い方向であればいいと思う。

 

「あ、あと祖父母だけじゃなくて、お節介な魔法使いさんが居たんだ」

 

 白雪が思い出したように口にした名前を以前にも聞いたことがあった。

 

「魔法使い?……あー、前にちらっと言ってた手品師だったか。そんなに付き合い長いのか?」

「知り合って十年にはなるかな」

「十年」

 

 十年…?

 俺とミツヒデの付き合いより長い…だと…?

 十年前なら当然白雪は今よりずっと子どもで……つまり魔法使いさんとやらは白雪の幼少期を知っているのか……?

 白雪にはもう身内が居ないらしいが、付き合いの長さで言えば魔法使い野郎が一番……?

 いや待てまだ男と決まったわけじゃ……。

 

「……ソイツとは仲が良いのか?」

「気に入られてるとは思うよ。ただ不思議な人…人?だからなんとも言えないなあ」

「白雪がハッキリ言わないのは珍しいな」

「うちに住み込みで働いてもらってたときも出てっちゃったときも、ずっとこう、壁?があったというか……悪い人じゃないんだよ?」

 

 住み込み。

 えっそれはつまり白雪と一つ屋根の下で……?

 えっ???

 

 

 

 思考がグルグルし始めたとき、不意に鈴の音がした。

 

 

 

 チリン。

 

 

 

「なんだ?……鈴?」

「えっゼン今の聞こえたの?」

「あ、ああ」

 

 何故か食いついてくる白雪にどうかしたのかと問おうとして、何もなかったはずの目の前、白雪の背後に突然現れた人影に臨戦態勢をとった。

 

 

「や。久しぶり…ってうおおおおお?!」

 

 

 全身を紺のローブで覆いフードで顔を隠した不審者が片手を上げて呑気にそんなことを言うので、腕を掴み取り押さえる。

 

「いたたたたたギブギブギブギブ待って!曲がっちゃいけない方向に腕が!ごめんて!すみません!ピギーボク魔法使イサンジャナイヨ!」

「魔法使いだと?」

「そだよ!白雪姫助けて!君の王子様つよいね!貧弱魔法使いを助けて白雪姫!」

 

 知り合いか、という意味を込めた視線を白雪に向けると、本当に珍しく頭痛を抑えるように額に手を当て、ため息を吐いていた。

 少しギョッとした。

 

「ごめん、ゼン。離してあげて。その人さっき言ってた魔法使いさんなんだ。……噂をすればってやつなのかなぁ……」

 

 押さえつける力を弱めて、とりあえず頭に残った事実だけを確認する。

 

「白雪お前、姫呼びされてるのか」

「そこ?!」

「白雪姫ーぼすけてー」

 

 

 

 

「ゼン!白雪!すまんオビを……って、何があった?!」

「誰、そいつ」

 

 帰ってきたミツヒデと木々に気を取られた瞬間、助けてーと喚いていた下の自称魔法使いが消えた。

 体制を崩していると、いつの間にか白雪の背後を陣取る不審なローブ野郎が見える。

 何が起こった。確かに押さえていたはずだ。しっかり腕を掴んでいた。だが、まるで雲を掴むかのようにすり抜け、消えた。そして瞬きの間に、白雪の後ろに居る。どういうことだ。

 混乱しながら半分冷静な頭でローブの不審者からの敵意がないことを察する。白雪の言うとおりならば、不審なだけであって危険人物ではないはずだ。

 

 

「……何者だ?」

「……」

 

 俺はさっき白雪の知り合いの魔法使い()だと聞いていたが、知らない二人は腰の剣に手を添えている。

 全く頼れる側近である。

 

「ふぇぇ。。。なんでこんな殺気立ってるの……コワヒ……」

「すみません、怪しいだけで悪い人じゃないので許してあげてくれませんか。前に言ってた手品師の人です」

 

 情けない声で白雪を盾にするように怯える不審者。

 絵面の意味が分からん。

 

「ああ!魔法がどうのと言っていた人か!すごい偶然だな!」

「……想像以上に不審者だね」

 

「フグゥ」

 

 言った!言ったぞ木々!さすがだな!

 そしてダメージを受けているローブ野郎。そうだな、絶対零度の目って、くるよな。

 若干のシンパシーを感じた。

 

「不審者だなんてそんな……ちょっと怪しい格好をした胡散臭い魔法使いさんってだけですよ」

「グハァッ」

 

 白雪の 天然ボケ こうげき!

 魔法使いは 膝をついた!

 

 こないだから精神攻撃受けすぎじゃね、とかなんとか言いながら起き上がるローブ野郎。

 なんなんだ打たれ強いのか弱いのか。

 どういう仕組みか周りを浮遊している箱からさらに人形が飛び出してきて、人間臭い仕草で魔法使いを慰めている。

 これが手品の一環なのか。どうなっているんだ本当に。

 そして魔法使いは叫ぶ。

 

「善良な魔法使いさんになんたる仕打ち!もう君らのツレの所在なんて教えてあげないんだからな!」

 

 は?

 何を言ってるんだコイツ。

 

「あっそうだオビを見失ったから探そうと言いに来たんだ、が……」

 

 ミツヒデの言葉が終わるかどうかのところで、魔法使いに視線が集まる。

 

「……なんだよー!教えてやんないからなー!君たちのツレがここから歩いて3分の武闘大会で偽名使って優勝狙ってるとか教えてやんないんだからなー!」

 

「教えてるよ?」

「教えてるな」

 

 何故だろう、真偽は定かでないはずなのに本当のことを言っているのだろうと確信してしまう。

 俺と白雪の言葉を聞いた魔法使いは、ハッとして一歩後ずさった。

 

「ぐぬぬ……覚えてろー!」

「あっ魔法使いさん!またね!元気でね!」

「白雪姫こそ王子様と仲良くね!」

 

 子どもじみた捨て台詞とともに魔法使いの体が浮き上がり、律儀に挨拶を交わしてから人形とともに遠く屋根の向こうへ飛んでいってしまった。

 色々と聞きたいことがあったのに、勢いに飲まれてしまった。

 さらに言えばアレは橋の上を、人混みの上を越え飛んで行ったというのに、アレに注目する人間は居なかった。

 

 

 

 

 

 

 現実を理解するのに時間がかかり、二番目に起動したミツヒデがポツリとこぼす。

 

「白雪、姫呼びされてるのか」

「なんで皆そこなの」

 

 ああ恥ずかしいと手で顔を隠す白雪が可愛かった。

 

 ちなみに最初に起動したのは木々だ。

 

 

 

 

 

 

 





魔法使いさん
:新たに人形使いの称号を得た手品師(適当)。
イメージは人形を糸で操るタイプの劇、そして糸無し。ストーリーよりどうやって人形が動いているのか、という方に注目されそれなりに盛況だった。
知り合いがいたら突如安心する安定のコミュ障。知り合いが居なけりゃ居ないでそれなりには取り繕えるけど、居たら気が緩む。
転移魔法で白雪姫の後ろに現れて、魔法で霧状になって白雪姫の後ろで再合成、それから認識阻害の魔法をかけつつ空へ逃げた。
白雪姫と王子の青春シーンを間近で見てテンションが上がった結果がこれだよ。
あとで穴掘って埋まった。


白雪姫
:魔法使いさんはマジで魔法使いなんだとがんばって説明した。
さすがの主人公でも完全に信じさせることはできなかったので、早くまた会ってみてほしいけど神出鬼没だから無理かなと思っている。



第二王子
:めっちゃ目を擦ってミツヒデに怒られた。
魔法使いには色々問いただしたいことができた。性別とか。
狐につままれたような気分。


側近(でかい方)
:ゼンや白雪に何もないならよかった。
あれが噂の手品師か……思った以上に訳が分からないな???
狐につままれたような気分。


側近(麗人)
:白雪……慣れきってるな、と思った。
よく職務質問されないね(純然たる感心)。
狐につままれたような気分(表には出ない)。


側近(身軽な方)
:順調に優勝してた。
ずるいですよ!4人は会ったのに俺だけハブですか!……え?自業自得?そりゃそうだ。
手品師やってる魔法使いは知らないが、情報屋やってる魔法使いなら知ってる。



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