001
どこまでも広がる森林、そして木々の間から漏れている暖かな光がその森林の中でただずんでいる銀髪の少女を照らしている。
「鬼を狩りつくしたし…次のイベ待ちかなぁ」
そう呟きながら右手に持ったナイフを右斜めに投げた。そのナイフはそのまま木を貫通しその先の大きな角を持った鬼に刺さる。その鬼は痛みからか片膝をつき一瞬少女から目を離した。それが命とりだった。次の瞬間には鬼の首から上が刈り取られ少女の細い腕で抱え込まれていた。
「素材は今ので揃ったしそろそろ装備を作らないとな」
そう言い彼女は何事もなかったかのように消えた。
『VRゲーム』
どこのだれが考えたかは忘れたがそれが広まってからゲーム会社はとてつもない進化を遂げた。まるで現実をそのまま持ってきたかのような風景そして現実と同じ五感(痛覚は制限されている)そのゲームの新作。我らが東方Projectよりオンライン対応のものが発売された。
その名も『東方 幻想夢遊伝』これは瞬く間に売れ。今では一般人もを巻き込み圧倒的な人気を誇っている。原作キャラのスキルそしてその他にも様々なスキルの付け替えができそしてなによりも自分のアバターをいじれるのだ。自分のPCにとりこみ公式サイトにて配布されている専用のソフトにて自由な容姿を自分の作ることができる。もちろんパーツの中から選びキャラを創ることもできる。その結果緑髪や赤髪や白髪と自己主張の激しいものばかりになってしまったが美少女ばかりなのでかなり癒されること間違いなしだろう(中の人がおっさんだと思わなければ)。
「今日はこれくらいでいいか」
俺は今あらたに手に入れた素材を元にイベント限定の装備を作り終えログアウトしようとしていたところだった。だがそんな俺を止めるように目の前の空間が割れその中から美しく年をとったとしか言いようのないお爺さんが出てきた。
「久しいのぅ紅月。今夜のイベェの装備は揃えたかの?」
その言葉に俺は少しまゆをひそめながら答える。
「まぁ一応全部揃えたぜ…というか錬磨さんロール機能ONにしてるのか」
「いかにも…このほうがこの体にあっていると思っての」
あっているにはあっているが…色々と恥ずかしくないのか。
実はこの幻想夢遊伝。うまくロールできない人ようにロール機能なるものがあるのだがこれがなかなか厄介者で自分の創ったキャラにもよるが大抵のキャラは動かしているプレイヤーでもわからない言葉などを使うことからなかなか意思の疎通が取りづらいのである。そのためほとんどの人がこのロール機能をOFFにしている。
「で爺さんはなんで俺に声をかけたんだよ」
それに対して思い出したかのように手をポンと叩くとこちらに笑顔向けながら近寄ってきた。
「実はの……出たんじゃよ」
その言葉に俺は少し肩を震わした。
「まさか奴か?」
「まさしく、この眼で見たのだから間違いはない」
その言葉に俺の手は震える。思い出す。奴と初めて合いそして侮ったがゆえに手に入れ損じたレアアイテム…それを落とすのが奴だと気づいたあとには手遅れだった。
「……もう1時間大丈夫だよな」
そう思い爺さんから場所を教えてもらいそこへと向かった。
「ここか」
竹の生えた真っ暗な空間。通称『迷いの竹林』そこに今俺はいた。そこに奴はいた。やつはだれかというと。
「…久しぶりだなァ」
垂れたウサ耳を持ち、落とし穴を仕掛け、幾人のルーキーの屍を塔のごとく建てた
「因幡てゐ」
別名ルーキー殺しの逆幸運。ルーキー殺しとあるが別にルーキーだけが警戒すべきものではなくあるていどのレベル帯のものでも警戒は必要なのだ。その理由がこのエネミーのLUK980つまり幸運値がほぼカンストしているからである。そこからくるクリティカルヒットとクリティカルヒットをくらったさいに起こる怯みから動けなくなりあとは無限ループだ。挑んだ人数は数知れずだが生存したものは数えられるほどしかいない。そして倒したものは総じてランク100以内にランクインしていることからこいつがまさに大きな壁だろう。
「てめぇの人参…もらいにきたぜ」
そして俺は動いた。地を蹴り相手との距離を縮める。それと同時にナイフを相手に投げる。投げられたナイフはまっすぐ、てゐの眉間目掛けて飛んでいき次の瞬間見事にヒットした。
「ヴェッッ!?」
それには俺も驚いた。てゐはよく幸運値が注目されがちだが素早さや器用さが高く攻撃は壁に追い込むか囲い込むかしないと当たらないはずなのだ。だが目の前のてゐはなんの抵抗もなく見事に純銀の強化されたナイフを頭に刺して倒れている。そしてエネミーが倒されたことによりガラスのようにてゐの体は砕けなかよりアイテムがドロップする。
「まぁ…いいか」
いやよくはないのだが、幸運の人参が手に入ったのだから問題はないと自分に言い聞かせ早速装備しようとモニターより選び首輪装備を付け替えた。すると人参をかたどったキーホルダーのついたネックレスのようなものが首にあらわれる。
「噂には聞いていたがなんかショボイな」
だが聞いておどろくことなかれ、実はこのアクセサリー、なんと幸運値を底上げ+100パーセントしてくれるのだ。底上げのため999のカンストの人が装備すると1898というどうにかされた数字になるのだが…まぁそこまであげるやつもいないが。
「さてなんか燃焼不足気味だがそろそろログアウトしないと明日の講義がまずいな」
そう思い俺はログアウトすべく一旦安全地帯に向かおうとするが町へと続く道にそれは現れた。
真っ黒なナニカそうとしかいいようのないもの。
「…新しいエネミー?それともレアエネミーか?」
そう思いナイフを構えるとそれを察知したのかこちらに真っ直ぐとソレは近づいてくる。避けらない速度ではないはずだったのだがなぜか体はいうことを聞かずそれを受け入れるがごとく固まる。そして黒いナニカは目の前まで近づき彼女を飲み込んだ。そしてまるで満足したのかソレは段々と小さくなっていきやがて完全になくなった。そして次の日、ベットにて死亡している大学生が発見されVRゲームの影響かと騒がれたが自然とそれも収まり誰もがそのニュースを忘れ去った。そう誰もがだ。そうして彼は現世から忘却された。
えー…見た人の大抵は思っているかもしれませんが別にVRゲームで幻想入りさせたり主人公の容姿を咲夜にする必要はありません。ただ単に私の趣味です。