VR瀟洒で幻想入り   作:komika

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ちょっとSF小説ハマりだして血なまぐさいものを読んでたら私のSAN値が下がって深夜に小説を書いていたんだ。そこまではいい…でも何を書いたのかさっぱり記憶にないのに何故か出来上がっている。これはちょっとした恐怖です(ガクブル


鬼、煌びやかに 表

空は閉じられ大きな空洞の中に灼熱の溶岩が熱気を上げてブクブクと音をたてる。

ここは【旧地獄】

かつて地獄が存在した空間であり今もなお、そこには無数の悪霊がひしめいていた。そしてその灼熱の地獄から少し離れたところには数々の民家が建てられており、そこには幾多もの魑魅魍魎が住み着いている。彼らは皆等しく楽園を追放された忌わしきモノらであり、その姿は日本の最強種である鬼からはたまた河童や鴉まで見受けられる。

 

その一角、旧地獄の鬼を仕切る最強種の中でも一際目立った鬼。胸の谷間があらわとなるまで着崩したきなびやかな着物と額を彩る星形の印がついた角、そしておおよそ日本人には見受けられないオレンジ色の髪の毛を持った美女。彼女の名前は星熊勇儀

 

――――――鬼の四天王の一角にして、鬼母神といわれた最強の鬼の娘の一人である。

 

彼女は腰につけた酒入りのひょうたんの蓋を開けゴクゴクと喉を鳴らしながらそれを飲み干す。一瞬でひょうたんの中身は空になるが彼女が一、二回振るとまたひょうたんの中身が酒で満たされていく。その中身は酒蟲と言われる蟲が入っており個体差はあるが良質な酒を無限に生み出すまさに酒を愛してやまない鬼にとっての相棒とも言うべき存在である。勇儀は満タンとなった酒に満足した様子で酒屋や商店のならぶ賑やかな街道から離れていき薄ら暗い路地裏に歩いていった。

 

 

 

 

――――――――――――少女交代中

 

 

 

 

「―――おかしなこともあったもんだね…」

 

私、星熊勇儀は人間のはなつ妖気(・・)に畏れを抱いていた。身体は逃げろと叫び、先ほどのきもちのいいほろ酔い状態も今は緊張に変わっている。

 

人間が妖気を放つ

 

これが何を意味するかわからない彼女ではない。人間が本来持つのは霊力である。神を模してつくられた人は神力を模した霊力を大にしろ小にしろその身に宿す。しかし妖力は妖怪のみが宿し、人間に宿らないはずものだ。もし人間が妖力をもっていたならそいつは少なくとも妖怪の血が混じっているだろう。しかし目の前の銀髪の人間からは妖怪の気配がまったくしない。

 

額に汗が浮かぶ、今はその汗を拭う時間すら惜しい。彼女は畏れを忘れるように目の前のニンゲンにむかっていった。

 

しかし一瞬にて決直はつく。空を見上げる勇儀それが今の状態でありその結果だ。そして首元に突きつけられた鈍い光を放つナイフ。その光には幾多にも及ぶ呪いが込められているのか触れている首を通して私の意識を乗っ取ろうとしている。

 

嗚咽が出る、のどがカラカラと乾き熱を持つ。目頭に僅かに涙が浮かぶ。早計だった、逃げればよかった、嫌だ死にたくない後悔が後より出ては消え出ては消える。最強の鬼は目の前のニンゲンに完全に屈していた。だが近づいてきた死は遠ざかっていく。気が付けばニンゲンの持っていたナイフは完全に首元より離れていき覗き込むように勇儀を見つめている。

 

「すまないわね、少し強くしすぎたわ」

 

―――強くしすぎた

馬鹿にされた、最強種である鬼の中でも上位に入る実力を持つこの私が馬鹿にされた。たかが人間に、そんなことがあっても良いのだろうか。

 

―――否である

 

次の瞬間勇儀の角が妖力を纏い星形の模様は消え去り、今の心理状態を示すかのように紅く、ただ紅くなっていく。その妖力の昂ぶりに勇儀の上に乗っていた人間は距離をとり、いつでも防御できるようにナイフを顔の前に構えた。

 

そして勇儀はどす黒い赤色の妖力を纏い、仰向けの状態から仁王立ちになっている。その顔は怒りに染まり目の白は黒へと反転し、瞳の水晶体は細長くまるで虎のような鋭さを持っている。

 

「よくもまぁ…よくもねぇ、ふ、ははは……」

 

言葉は支離滅裂、会話など成立しない。感情は怒りに染まり尽くし理性などとうに消し飛んでいる。その姿はまさに悪鬼…かつて京を襲い屍の山を築いた厄災その全てがそこに蘇った。

 

「とおく忘れていたよこの感覚…ワタシはオニなんだ」

 

裂けたように嗤う口から伺える歯はまるで肉食動物のような牙となり、手の爪は伸び今もなお鋭さをまし金剛ですら切り裂くであろう。

 

「死ね、喰われろ人間」

 

先ほどの拳などハエのような速度で勇儀は人間に向かって跳んだ。その衝撃で勇儀の後ろにあった建物は跡形もなく砕け散り、地は抉れ、周辺の地形を変えている。その勢いのまま人間に当たり、腕からはゴキという音ともに骨が皮から突き出る。それでも構わず勇儀は殴り続ける。肉がちぎれようが、腕がなくなろうが、足で、膝で、頭で身体の全てを使い彼女を殺そうとしていた。気づけば当たり一面は土煙があがり視界を遮っている。

 

「死んだ、死ね…クソォがぁ、終われよお前なんだ…なんだよ!!!」

 

煙が晴れる、服は土煙のせいで汚れているが人間はいまだ健在。それどころか怪我の一つすら負っていない。人間は勇儀を見ると少し眉を歪め、まるで見下した目つきで口を開いた。

 

「あなたが攻撃したのにあなたが怪我するなんて…治療が必要みたいね?」

 

畏れではなく恐れ、怖れ…攻撃が通じるだの強いだのという話しではない、次元が違う。これは人間に見せかけた化生の類だ。信じてはならないこれは幻だ、間違いだ、現実ではない。

 

「違う、違うんだ…お前は違うんだ……そう私はオニなんだからお前は死んでるんだ」

 

心を保とうとした言葉が漏れるがこの強者はなにもなかったかのように勇儀を見つめている。

 

「だってそうじゃないか…私は強いんだから」

 

いつも自分よりも強い者と戦いたいと願っていた彼女はどこかで自分より強い者などいないと思っていたのだろう。その矛盾が表にでて彼女は少し触れば今にも砕けてしまいそうだ。

そしてふと友達がある日呟いた言葉を思い出した。あのことはなんとも思わなかったが今考えればそれはとても不思議で、どこか諦めが入っていたのかもしれない。

 

――――――勇儀さぁ、アタシ達っていつまでこうしてればいいんだろうねぇ

 

その時はなにも思わず死ぬまでだろと軽口を叩いたが今に思えば彼女はわかっていたのかもしれない。いつか自分達を淘汰する化物が現れて全てを終わらせてくれることを、この腐りきった感情と惰性を全て止めてくれることを。

 

「ちくしょう…そういうことかよ」

 

まいった、本当にまいった。あぁその通りだ。地獄でも煉獄でも妖怪のアタシが逝けるとこならどこにでも連れて行ってくれ。その言葉とともに私の回路に灯っていた火が鎮まりかえる。紅みを帯びた角も反転した目も全てが元通りになる。

 

「好きにしな、首でもなんでももって行きやがれ」

 

やけっぱちだが覚悟だがとにかくいろんなものを込めたつもりだ。遠く忘れていた、それこそ遠く昔に忘れ去っていた鬼を討ち取る人間に憧れていたアタイの見ていた夢の通りだ。

静かに目を瞑った。真っ暗、死、これから死ぬ。怖くはないと言えば嘘になるがそこは鬼としてのプライドで無理やり押し付ける。待つこと数分…いまだ来ない衝撃と痛み。もう死んだ?目を開ければ地獄か?頭の中の疑問符が現実に出てきたような錯覚。そして私は恐る恐る目を開けると

 

「こりぁ……あぁ、本当にちくしょうだ」

 

人間がいなくなっていた。

 

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