そのうち外伝で書こうと思います。
生きた伝説はこうやって生まれた。
そこには新たなる伝説を刻んだ黒い少年が堂々たる王者の風格を現しゆっくりと歩いている。
その後ろには敗北を期した白い少女が黒い少年について行きながら悔しそうにつぶやいた。
「ずるい……」
「僕は君の方がずるいと思うが。後半の方のゲームは相当やり混んでいただろう?」
「だからずるいんだよ!クロノ君、絶対どのゲームも初めてだったよね!?」
駄目だ。どんなにカッコつけてもカッコ良くない。
こいつら、完全に普通の子供モードだ。
「さて、君は僕に勝ったら話を聞かせて欲しいと言っていたな」
「うう……うん。ゲームなら勝てるかな…と思ったのですが…」
うん。普通、ガチで戦ってる相手がゲームで負かしたくらいで話すはずないだろ。
ここら辺はやはり子供ゆえの考えか?
「なら、僕が勝ったのだから君への質問する権利があるはずだな?」
「えっと……うん」
……え?
いきなり何を言い出すんだクロノ少年。
悪魔っこの事なら俺の記憶で大体のことは把握してるじゃないか?
なのに何でそんな意味のない事を……。
「君の戦う理由を教えて欲しい。何故、普通であるはずの君が……魔法を欲したんだ」
「それは……リンディさんが困ってたから…。それにね、皆を助けらるのは私だけだったから。だから…」
「つまり君は……状況に流されていただけだと言うことか」
あれ?猫騒動があったのならサッカー少年のジュエルシードの暴走で悪魔っこは戦う理由を見つけている筈だ。
なのに、何で悪魔っこの戦う理由が曖昧なんだろう?
「違うよ!私は!!」
「……魔法は安全なものでは無いんだ」
瞬時にクロノ少年はS2Uを起動させて悪魔っこに突き付けた。
魔法陣が足元を照らし、2人は青い光を纏う。
「君のポテンシャルには確かに驚かされる。でも、君は……ただの女の子だ。後は僕たちに任せて君は…元の平和な日常に戻るんだ」
「……私は」
次の瞬間、振動が場を支配した。
バランスを崩した悪魔っこを抱えたクロノ少年は……神社だろうか?
その方角を睨み付けて呟く。
「……ジュエルシード!」
「えっ……!!」
クロノ少年は悪魔っこをその場に置いて飛び出した。
まあ、確かに悪魔っこよりもアレの方が優先だろう。
「どういう事だシロノ!僕は……神社で暴走するのは一度だけだと聞いたはずだぞ!!」
ああ、そうだ。
犬がジュエルシードに寄生されて飼い主を襲うエピソード。
神社の回は……それしかなかった筈なのだ!
クロノ少年は犬にそれが渡る前にソレを封印したはず。
なのに、存在するジュエルシード。
そして、本来、悪魔っこが持っているはずだった戦う理由の無い世界。
「成る程。つまり、この世界は既に君の知る世界ではない……。僕たちの人間関係も……ジュエルシードでさえ!」
そう言うこと。
人間関係は今更だけど、まさかジュエルシードまでも何かしらの影響を受けているとは思わなかった。
「それは僕もだ。くっ、君に僕たちは違う存在だと言いながら……いつの間にか、僕は…何処かで同じものとして見ていた所があったらしい」
「クロノ君。手伝うよ!!」.
いつの間にか、クロノ少年の隣に悪魔っこが並行する様に並んでいた。
クロノ少年はそれに苦虫を噛み締めた様な表情を浮かべる。
拒絶するのは簡単だ。ただ、突き放す言葉を告げればいい。
「……君の協力者は?」
「リンディさんはこっちに向かってるけど……多分、私達の方が先に着くよ」
クロノ少年は無言となった。
確か、ユーノ少年とフェイト嬢は今日から明日にかけて温泉にあるジュエルシードの回収に向かっているし、狼娘とは何故か連絡が繋がらない。
民間人を巻き込みたくは無いと思う気持ちもありながら、どうしても不慮の事態。一人ではどうしようもない状態を予想してしまう。
「ならば、けして勝手な行動をしないでくれ。僕の指示には確実に従うんだ。これが、僕の出せる最大限の譲歩だ」
「分かったよ。有難う、クロノくん」
また、複雑な思いが伝わってきた。
「一を斬り……多数を救う…か…くそっ!」
その呟きは多分、俺以外の耳には入らないほど小さなものだった。