憑依出来なかった憑依主人公   作:GIZEN

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お久しぶりです。
いや、なんか違う感が強くて今の今まで投稿出来なかったであります。
ちょっと今回はシロノくんには気狂いになって貰いました。
そして、久遠を無理矢理出したの巻。
ここが、何か違うと思った原因。
近い内にみんなの事情でこの話も補完しないと。


子供二人③

神社は酷く荒らされていた。

至る所に落雷が落ちた事を示すように砕けた破片が飛び散っている。

落雷の中心には狐の様な耳と六本の尻尾を持つ女性……おそらくこの災害の原因がいる。

いや、そんな物はどうでもいい。

ああ、どうでもいいんだ……目の前のあの人物に比べれば……シロノという存在にとってこんなものはどうでもいい!

 

「烈火の将……シグナムっ!」

 

クロノ少年がギシリと奥歯を噛み締める。

最悪だ……本当に…何で……あの女がここにいる!

頼むから落ち着いてくれよクロノ少年。

あの騎士様はバリアジャケットを纏っちゃいない。ついでに一般人らしき子供を二人も抱えて雷から逃げ惑ってやがる。

過去は間違いなく悪人で、未来は分からないが……今は間違いなく敵ではないんだぞ。

 

「そんなのは分かっている!」

 

いつものクロノ少年ではない事は明白だ。

仕方ないと言えば仕方ない。クロノ少年は今だに闇の書に対しての心の整理が出来ちゃいない。

当然だろう?

自分にとっての親の仇。例えば、ある男が仕方なく、理由も分からず……ただ、命令だから麻薬を売り続けていたとしよう。

その人は根は善人だ。自分がどんな事をしているのかも分かりやしない。

しかし、そのバイヤーはある日突然……心の優しい少女に諭された。

それはやってはいけない事なのだ。そんな事はしてはいけないのだと。

その日以来、バイヤーは薬を売ることを止めて優しい人達と幸せに暮らしました。

それで、めでたしめでたしと言えるのだろうか?

俺にはそんな事を思うことは出来ない。

無理矢理、麻薬を飲まされた家族がいたとしたら?

その麻薬で死んだ家族がいたとしたら?

そのバイヤーは騙されていただけの可哀想な人です……赦しましょう。

そんな、残酷な綺麗事がつうじるのだろうか?

 

「……なのは、君はあの女性と子供たちを連れて安全な所へ!!」

 

だから、クロノ少年はアニメのクロノ・ハラオウンのこの強すぎる覚悟に今だに答えを見出せない。

いや、あらかじめ……彼は彼女達を赦してしまうのだと答えを与えられたからこそ余計に強い嫌悪感を持ってしまった。

貴方は将来、この人間をこういう風に赦します。だから赦しましょう。

そんなの納得いくものか。

 

「クロノ君は?」

 

「僕は彼女をどうにかする。なのは、指示に従うんだ……デュランダル!」

 

それ故か、クロノ少年はいつも以上に荒くなのはに命令して狐娘に特攻をかけた。

選択した杖はデュランダル。

復讐のために生み出された冷たい氷結の杖。

クロノ少年の周りには五つのスティンガーが追従し、その何れもが狐娘へと疾走する。

 

「来るな……人間…私に……近づくなぁァァァ!!」

 

「ちぃ!行け、スティンガー!!」

 

クロノ少年は彼女の放つ雷に急停止し、プロテクションを纏って防御する。

五つのスティンガーは命じられた様に狐娘へと特攻したが、その悉くは稲妻に撃ち落とされた。

 

「ジュエルシードの力で知恵を得たのか?……厄介な」

 

「人間……許さない!!」

 

クロノ少年の張る障壁を雷の矛が貫こうと輝く。

その矛は無差別に撒き散らす様に方向性など皆無だと撃たれているが……恐るべきはその威力。

クロノ少年の守りは掠っただけの雷に根刮ぎ砕かれた。

最早、盾は無意味だと悟ったクロノ少年は距離を取る。

長期戦、及び近接戦は不利だと悟ったのだろう。

雷の範囲外に出て長い詠唱を開始した。

今より放つのは、おそらくこの世界において個人の魔力のみを扱うならば最強の砲撃。

魔力の収束を苦手とするクロノ・ハラオウンが放てる現時点を持っての最強の一撃。

 

「ディバイン……」

 

クロノ少年にしては荒々しく魔力が杖の先端に集まる。

両手を確りと握り、その反動に堪えるために足下に出来た魔法陣に確りと足を着け……。

 

「バスター・ブレイズ!!」

 

ほんの少し。熱量という付加効果を付けた砲撃が狐娘へと放たれた。

その灼熱は空気を焼いて狐娘を焼き払う様に包み込む。

この一撃の威力は強大。クロノ少年自身、本来ならこんな魔力を喰う魔法は本来好まない。

ただ、高町なのはという主人公が舞台に上がらないようにその役割の代用として無理矢理作られた劣化魔法。

 

「これなら…」

 

だけど、俺は見た。

クロノ少年のそれを……多少の傷を負いながらも立つ狐娘を。

 

「………!」

 

驚愕の声を出したのは誰か?

俺なのか、クロノ少年なのか……?

迫る雷に避ける術などない。

クロノ少年は次の瞬間、その矛に穿たれた。

 

「……っ!」

 

ああ、このままでは死ぬ。

クロノ少年も俺も死ぬ。

死ぬのは嫌だ……殺されるのは嫌だ。

狐娘を見る……彼女言っているではないか。

人間が怖い……殺されたくない…と。

ならば……

 

「“俺”も死にたくない。殺されたくない。なら、お前みたいに……殺してしまっていいだろ?」

 

デュランダルの非殺傷設定を解除した。

殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す。

死にたくないから殺す。気にすることはない目の前のアレは人の形をした獣畜生だ。

ならば、殺してしまっても仕方ない。

大丈夫。これは単純な食物連鎖だ。だから殺す。

 

「……嫌」

 

今更何を怯えるのか狐娘?

ああ、単純だ。

いつの間にか表に出てるのは俺【狂人】になっている。

先程までのクロノ少年【正義の味方】じゃない。

偶々、目についた水面に写る姿を目にした。

ああ、同じ顔だと言うのにシロノという男の顔はクロノに比べて何とも醜いものか?

 

「救いのヒーローはもういない。お前は俺に殺されろ」

 

「……や…だ」

 

目の前の獣は自分より強い癖にへたり込んで動きはしない。

当然。狂人とは普通の一般人の前に立てばそれだけで驚異の存在と化す。

狂った人間は普通の存在から見れば理解出来ない。

理解出来ないそれはなまじ知恵があるから恐怖の対象となる。

 

「来るなぁ!」

 

放たれたその矛も最早脅威ではない。

目をつむったまま放たれるそれが、脅威などになり得ない。

だから、堂々と歩く。獣を殺すのに無駄な体力と魔力を消費する言われはない。

コツンと杖を獣の頭に乗せた。

選択すべき魔法を頭に浮かべ、ただ一言を呟けば終わり……。

 

(……るん……し……)

 

誰かの声が頭に響く。

知るものか。俺は死にたくない。

俺はオリ主とは違う。怖いもんは怖くて、大切な仲間の信念を命懸けで守るなんて無理だ。

 

(やめる……しろ……)

 

先程よりハッキリと声がした。

知るか馬鹿。俺は死にたくない。殺されるくらいなら殺してしまえばいい。

クロノ・ハラオウンが弱ってるせいか、今の身体の主導権は俺にある。

なら、生きるための選択を俺はする。

これは殺す。生きるために殺す。

俺は……どんなに言い訳しようと俺が一番大切なんだ……!!

 

「ブレイク……っ!」

 

「やめてぇぇぇぇぇぇ!!」

 

(やめろって言ってるだろう!この……馬鹿っ!!)

 

目の前に悪魔っこが降り立つと同時に誰かに思いっきり殴られた感覚がした。

慌てて魔法を放とうとしても身体は言う事をきかない。

それどころかデュランダルを待機モードにして懐に仕舞い始めた。

ああ、間違いなく身体の主導権が元に戻っている。

 

「君は……少し気絶している間に何をやってくれるんだ」

 

あ……やばい。

怒ってる。かつて無い程に怒っておられる!!

し……仕方ないじゃないかクロノ少年!

俺は死ぬのは怖いんだから!死んでも果たしたい願いとかも別に……。

 

「で?」

 

I'm Sorry Boss!!

もう勝手なことしません、ハイ!

だから殺さないで死ぬのは嫌ぁぁぁぁぁぁ!!

 

「クロノ君。お願い……この子の事は任せて。この子は……悪い子じゃないんだよ」

 

悪魔っこはそれに対してそんな事を宣った。

こんな奴が悪い奴じゃない?

俺みたいに恐怖心から人を簡単に殺そうとするこいつが?

 

「……何故そう言い切れるんだ?」

 

「この子ね。さっきの子たちに苛められてたんだって。あの女の人が止めた時にはこの子はもうボロボロで…」

 

「そこにジュエルシードがあって。死にたくない……いや、あの攻撃的な変化は……殺されたくないという願いを叶えてしまったのか?」

 

……ああ、そうか。

自然界に於いて相手を殺して、或いは逃げて生き延びるのは当たり前。

この狐は弱かった。あの子供達を倒す術は勿論、逃げる術すらなかった。

 

「それに……この子のお母さんは…」

 

狐娘の後ろにはボロボロの……おそらくこの子の親狐。

ピクリと動かない所を見ると、きっとあの子供達に殺されたのだろう。

人間は時に残虐だ。特に子供は人間以外の生き物を殺す事に躊躇いも罪悪感もない。

蟻を踏み潰す遊びをする。カエルに爆竹を詰め込む。ザリガニを地面に叩きつける。

今回は……それが狐だった…それだけのことなのだ。

 

「……なら、どうするんだ君は?ジュエルシードは危険な物だ。僕にはそれを回収する責任がある。が、さっきの話が本当ならこの子はジュエルシードと契約する前。死にかけの状態になるだろう」

 

だけど、クロノ少年は冷酷を装う。

同情をしている。助けたいとも思っている。

しかし……

 

「ジュエルシードは見逃せない。それを見逃せば……多くの人達が傷付く可能性がある」

 

クロノ少年は管理局の執務管だ。

警察がそうであるように、クロノ少年は目の前の狐より周りの人間を優先しなければならない。

 

「分かってるよ。……でも、助けたいんだ。……だから」

 

ゆっくりと杖を悪魔っこは構える。

そこにあるのは不屈の心。理屈じゃなく、ただ……泣いてる子を助けたいという意志の持ち主。

 

「……まったく。本当に彼は彼女と友人になれたのか?

僕と彼女じゃ……決定的に相性が悪いじゃないか」

 

クロノ少年はそれだけ呟き……。

 

「勘違いしないでくれ。助けることは出来るさ。正し……君の協力が必要だが」

 

 

 

 

 

 

結論から言えばあの狐娘は助かった。

ジュエルシードを抜き取った後、クロノのサポートの下……悪魔っこはその狐娘…久遠を使い魔にしたからだ。

というか、アニメより強化されてませんなのは陣営!

雷使うサポートとおそらく最強ランクの妖精さんに抜群の才覚を持つ悪魔っこ。

うわぁ……組織のバックアップを無くしたクロノ陣営勝ち目ねぇ……。

 

「黙れシロノ。そもそも、お前があの子をあそこ迄怖がらせて無ければ、僕が使い魔にすることも出来たんだぞ」

 

ああ、ああ〜〜。

聞こえないったら聞こえない〜〜。

俺は何にも悪くない!

俺を野放しにして気絶したクロノ少年が悪い!!

 

「……………消すか?」

 

え?

あ、あるぇ〜?

わりと……本気ですか?

許してくださいクロノ様!!もう、余計な事は言わないからァァァァ!!


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