GBF-L外伝 Limitless Sword(無限の剣)   作:杉村 祐介

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GBF-L #ERR01「折れたSword」

 負けた。この俺、桜井健司(サクライケンジ)は、先日の敗北をまだ引きずっていた。

 一対一の真剣勝負ではなかったにせよ、通常のバトル形式ではなかったにせよ。俺はあの日、黒い機体に完膚なきまでに負けた。手を抜いたわけでもなく、調子が悪かったわけでもない。常に全力、全身全霊をかけて戦った。それなのに、負けた。俺の相棒"無限の剣"はズダズダに引き裂かれ、四肢をつなぐ3mmジョイントがボキボキに折れて、もはやバトルができないどころか、アクションベースに立てて飾ることすらできないほどに破壊しつくされていた。

 正直言って俺の工作技術はそこまで高くないし、上手い奴からしたら「パチ組に近いガンプラが壊れた程度でうろたえるな、新しいガンプラを買って作りなおせばいい」と思うかも知れないが、下手なりに俺はあいつが大好きだった。大好きな物が破壊されて、悲しくならない奴なんてどうかしてる。

 そんな憂鬱を抱えながら俺は、今日はさらに憂鬱なイベント「夏休みの登校日」だった。神様は俺にどれだけ苦悩を与えたら気が済むっていうんだ。

 

 

 

「なにため息ついてんの?」

 

 机に突っ伏して柄にもなく黄昏れていたもんだから、近づいてきた人の気配に全然気づかなかったわけで。突然声をかけられて、寝たフリをしていた身体がビクンと跳ね上がる。

 声のした方向に、見慣れた姿があった。ハルだ。

 

「なんだよ、気の抜けた顔して」

「……別にぃ」

 

 クラスメイトの青井遥(アオイハルカ)、いつもハルって呼んでいるが、家が隣で小学校からの付き合いがある"女子"だ。女子のくせにスポーツはなんでもできるし、二人の兄の影響らしいけど自分のことを「オレ」って言うし、どっちかっていうと背が高くてかっこいいし……チビでどんくさい俺にとっちゃ、ちょっと羨ましかったりする。

 まぁハルとはいろんなことを気兼ねなく話す間柄ではあったけど、ガンプラのことは話さないと決めてる。ガンダムってのを知らないわけではないけれど、前に話をした時「子供の玩具だろ」って笑われたのは今でも忘れちゃいない。それからというもの、こいつの前では絶対にガンプラとバトルの話はしないって心に決めてる。

 

「なんだ、俺には話せないってのかよー」

 

 ハルはわざとらしく、ふてくされる素振りを見せたけど、いつものことだと俺は気にも留めず目をそらした。そんなことよりも、今は相棒のことで頭が一杯で──

 

「まさか"ケンジくん"の大好きなYoutuberちゃんが夢にでも出てきたのかなぁ〜?」

 

 ハルが耳元でそんなことを囁くもんだから、頭の中で気にかけていた相棒が一気に飛ばされて、Youtuberの「桃井アイ」ちゃんのことが割り込んでくる。

 

「なっ、バカ言うなよ、そんなんじゃねぇし!」

 

 いや俺はガンプラバトル実況者のYoutuber「桃井アイ」ちゃんのこととか考えてなかったし、あのチャンネルを追っかけてるのだって、桃井ちゃん目的じゃなくてバトルがめっちゃかっこいいからだし、編集も上手くて、あの日のあの試合に勝てていたら、もしかしたら俺も動画に出れるかもってちょっと期待してたとかそんなんじゃねーし!

 

「図星?」

「うっせ! 桃井ちゃんはお前みたいにぶっきらぼうじゃねえし、女の子らしくて可愛いんだよ! ハルもチョットはそういうとこを、直さないとダメだと」

「へぇ、それで?」

 

 しまった。ハルに対して男とか女とかそういう話はタブーだった。こういう流れになると必ずあいつのげんこつが飛んできて──。

 つい口走ってしまった数秒前の自分を恨みながら、振り下ろされた握り手を甘んじて受け入れる。頭頂部が痛い。たんこぶできてないだろうか。

 

 今日は中学の登校日、午前中で授業は終わり。もっとも授業らしい授業なんてものはなく、終わった宿題を先行提出できたり、わかんないとこ先生に質問できる自習時間があったり、ちょっとした連絡があったくらい。なんで大事な夏休みをぶつ切りにするようなことやんのか俺には全くわからない。ああ、今日も休みな小学生たちが羨ましいぜ。

 

「それはそうと、がんぷら部の部長?だっけ、今日、渡り廊下で見かけたよ」

「え?」

 

 この学校は2棟の建物に分かれていて、1学年と3学年が所属する第一棟と、2学年が所属する第二棟。それぞれ渡り廊下で繋がれているけれど、2学年の生徒がこっちに来るのはほとんどない。あるのは音楽室と理科室くらいなもんで。あとは理科室の横にある"模型部"の部室くらい。

 曲がってた背中がシャキンと伸びて、寝ぼけてた頭がフル回転する。

 

「それホントか!?」

「えっ、たぶん、そうだけど、さ」

 

 模型部。部長の長谷川先輩は俺の一番近くて一番憧れる人だった。作るガンプラの技術も、ガンプラバトルの技術も俺より遥かに上を行く。あの人みたいに強くなりたくて、俺も部活に入ってガンプラの改造を続けていた、バトルもやっていた。けど6月くらいから、部長はめっきり顔を出さなくなって──

 

「ちょっと行ってくる」

「あっ、おい待てよケンジ!」

 

 机の横に引っさげていたかばんを掴んで、ハルを押しのけて走りだす。先輩が久々に部活に顔を出すなんて日に、たかだか1試合負けた程度で落ち込んでたのか俺は。悩んでる場合じゃねぇ、すぐにでもあの人に会いたい!

 

「今日が登校日で良かったぜ、神様に感謝しなきゃな!」

 

 

 

── Gundam Build Fitghers Limitteless Sword ──

 〜 外伝 無限の剣 〜

 

 

 

 

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