軍曹と転生ダイバーの戦場   作:月治

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※軍曹及びチーム3人に捏造苗字を付けています





#5 一夜越えて

スーパー銭湯とコンビニエンスストアが並んでいる。国道沿いのそのエリアは“侵略”がまだ進んでいないようだった。広い駐車場に所狭しと乗用車、キャンプカー、たまにEDF車輌やパトカーなどが停まっていた。空いたスペースに私たちを乗せた軍用車両もちょうど収まった。

小休止を挟んで集合してすぐ、隊員さんの1人が私に尋ねる。

 

「さっきは聞き損ねたけど、民間人、お前そもそも家は?名前は?」

 

全員が互いの顔をハッとした表情で眺め合い、そりゃそうだ!と笑いが湧き上がる。

 

「先に言わずのもナンだから・・・俺は青柳(あおやぎ)

「おう!オレ様は木田(きだ)

君鳥(きみどり)。そんで軍曹が」

赤城(あかぎ)だ」

 

4×2の視線が注がれる。少し迷って、素直に答えてみることにした。

 

「・・・私は、分かりません」

 

さっきの笑い声より大きな大きな驚愕の叫び声が、決して広くはない車両内に目いっぱい炸裂し、反響した。

 

「そりゃそうだよな。いきなり目の前で人が化け物に食い殺される戦いなんざ、軍人のオレたちだって経験ねぇってもんだ。ショックにもならあ」

「民間人の割に落ち着いてると思ってたけど、まさか記憶喪失だったとは・・・」

 

“木田さん”と“君鳥さん”が口々に言うけれど、そもそも私はその前から・・・言いかけて止めた。怪物が現れる前の問題は、きっと私だけの問題だ。その上成り行きの説明もできないとなれば尚更だった。

でも、私が死んでしまった・・・あの街の風景の正体は?やっぱり化け物と関係があるのだろうか、もしかすると私だけの問題ではないの?考え込んで思わず俯くけれど、会話は止まない。

 

「サイフに身分証くらい入ってるだろ?見たか?」

 

“青柳さん”に言われてはたと気付く。ポケットをいくつか探り、薄型のサイフをようやく見つけて中を見る。飛行のライセンスと思しきカードに、名前と居住地が記載されていた。

 

「百瀬勇・・・モモセ・ユウ、西雛羽ヶ里6丁目・・・」

 

全員でしげしげと1枚のカードを眺める。それ以外は特にめぼしい情報を得られなかった。

 

「まあ良いだろう。西雛羽ヶ里の被害状況の確認と、カウンセリングの予約ならば今からでもできる。あとは・・・228のデータにアクセスできたら、プロフィール位は拾えるか?青柳」

「やってみます」

 

赤城軍曹がモバイル端末を立ち上げながらまとめてくれた。

 

「お前はもう休め、百瀬。さっき見てきたが、入浴施設は営業しているそうだ。女性と子供は休憩室で宿泊できると聞いた。俺たちは車内泊するから、朝になったら・・・」

「えー!オレも床で寝たかったっすよー!」

「甘えんな君鳥ー!オレは不眠症なんだぞ!眠れるだけ有難いと思いやがれ!」

「軍人がこんな非常事態に民間人を押しのけて休んでどうするんだ」

 

冗談です!分かってます!木田さん青柳さんに責められてタジタジになる君鳥さんを見た軍曹は、聞こえるか聞こえないかの声でふ、と笑った。

 

「そういうことだ。こんな状況だが、風呂に入ってゆっくり眠れ」

「そうします。みなさん、今日はありがとうございました」

 

明日も頑張ろう、と、それぞれから返ってくる。

今日が終わること。明日を迎えられること。なんて不思議で、なんて心地よいことだろう。辛くても、怖くても。

 

 

 

 

眠りにつくとき、また違う場所から始まったらどうしよう、一瞬だけ考えた。その一瞬を通過すると、襲ってきた眠気に全て攫われて、気が付くと朝になっていた。

避難してきた人々でぎゅうぎゅう詰めの休憩室。昨日と同じ。自分は決して“カイブツが人を殺したショックで記憶喪失”するような繊細さの持ち主ではないな、なんて考えて思わず笑ってしまった。

 

洗顔し、昨夜コンビニで買っておいたファンデーションを顔に伸ばしてゆく。汚れを落とした肌にクリームが馴染み、素顔を隠す。青ざめた頬に艶が現れる。ピンク色を乗せてみると、元気があるように見えてくる。

 

「・・・よし」

 

飛行用のヘルメットを被って、朝日の眩しい駐車場へと踏み出した。

 

 

 

 

 




閲覧にお気に入りに感想にしおりに評価に、、いつもありがとうございます。励みになります。
妄想激しい回となりました。ゲームクレジット準拠に補足すると、兵士Aが青柳さん、Bが木田さん、Cが君鳥さんです。由来は全員個人的なイメージカラーです。レンジャーだけにカラーレンジャーです (?!)
まったりペースですが宜しくお願いします。
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