軍曹と転生ダイバーの戦場   作:月治

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#7 飛行士夢現

「おおーい!オレを置いていくなよ!」

木田さんがざくざくと雪、砂利、そして怪物とテレポーションシップの残骸を踏みつけて走ってくる。冷たい風にあおられて、炎が収束してゆく。軍曹と本部が宇宙船の破壊について通信をしている。

「お前はホントにしょっちゅうオーバーヒートするんだな」

君鳥さんが笑い、青柳さんにねぎらわれ、通信を終えた軍曹が「よくやった」と力強く頷いた。そしてチームは二隻目のシップを目指す。

怪物の体液は雪と共に地面に吸い込まれる。ぐちゃぐちゃの大地を軍靴で踏みしめ、煤と雪にまみれた兵士たちは前進した。悪天候をものともせずに侵略生物たちは任務をこなす。私はレイピアにプラズマアーク刃をリロードする。ピピピピピピ・・・いつもと違う電子音。雪降る街が真っ白い風景に変化していく。一瞬で世界が切り替わる。私はゼロレンジ・プラズマアーク銃を操作する手つきに両手を突き上げて横たわっていた。EDF関東支部、臨時で割り当てられた女性宿直室の一角、そのベッドの上に。

「・・・寝坊した?」

 

ベース228同様、EDF駐屯地としての役割を放棄せざるを得なかった基地はいくつもあった。それらに所属していた隊員たちは、機能し、かつ都内で一番広い関東支部を拠点として任務に当たっていた。そして私のような家を失った隊員やその家族は、当直室や仮眠室、または近所の社宅を住まいとして与えられていた。青柳さんは奥さん・お子さんと社宅に住んでいるし、木田さん君鳥さんは男二人の同室だと嘆いていた。お互いのいびきやら歯ぎしりやらがうるさいと。実家が遠いため家族はまだ、こちらに呼べていないと。赤城軍曹は・・・よく分からなかった。家族は居ないと聞いた。支部の個室で寝泊まりしていると教えてくれた。木田さんたち曰く、自分一人が宿舎の部屋を埋めるより必要としている家族に割り当てたいようだとか、部下と同室すると気を遣わせると考えているのかもとか、単に職場での寝泊まりを好むワーカホリックなのだとか、冗談か本当か分からない説明しか聞けなかった。

支部を家としている女性隊員は少なく、シフトによってはこの一帯は無人となる。と、今朝のように自力での起床に失敗するとこうして取り残されることになる。私は自分の肩まで届く黒髪に無理やりブラシをねじ込んで梳いた。切ってしまおうかな。BBクリームとアイブロウを叩き込み、ブラウンのアイシャドウを二重瞼に小指で素早くのせて、リップ&チークカラーを後で塗ろうとポケットに突っ込んでから廊下を駆けた。フライトユニットを部屋で装備できないことが恨めしい。

 

「おはようございます!」

夢の中で初陣を再現したこともあり疲れがしっかり取れていない気がする。早朝始業のシフトではなくてよかった。通勤時間0分でよかった。午前十時の集合場所に、ウイングダイバーチームが揃っていた。研修を一緒に受けた同期生も何人かおり、不安そうな笑顔をいくつか挨拶として受け取った。

臨時の通信を受けた私たちのミーティングは中断され、出発が早まった。市民の避難が完了していない市街地に怪物が突如現れたという放送は、高い緊急度をもって鳴り渡る。場所は雛羽ヶ里中央の住宅街。奇しくも、壊滅したという私の居住地域の近くだった。

 

ピンク色のフライトユニットを身に着けたチームに加わる。私のユニットもちょうど似たような色だったので、仲間に入れてもらったかのような心強さを覚えた。

同じようなデザインのマンションが何軒か立ち並ぶこの場所に、見覚えがあるかないかと問うてみても答えは出なかった。怪物たちが跋扈している現状のせいで記憶をうまく辿れないだけかもしれないけれど。早速α型の群れに突っ込み、掃討していく。住民の避難誘導は、もうひとつのウイングダイバーチーム【ピジョン】が担当するとのことだった。ピンク色チーム【コマドリ】の隊長さんはチームメイトや私たち新人を鼓舞しながら、躊躇することなく怪物にパルスマシンガンを撃ち込む。

α型の力強い突進にも、β型の糸が腿に絡みつく不快感にも、もはや慣れてしまった。マンションを軽々とよじ登るα型を飛行して追い掛けて粉々にする。β型の群れをプラズマアーク刃一斉掃射で狩りつくす。住民の悲鳴が段々遠くなる。避難完了の通信はまだ来ていないけれど、そろそろだと思われた、そんなタイミングで無線機から通信前駆の雑音が聞こえた。総司令官の声だった。

『総司令官より全兵士へ――マザーシップの撃沈こそ我々の最終目標――――10隻のマザーシップを撃沈しなければ―・・・』

巨大な宇宙船。見たことがある者にとっては気が遠くなるような宣言で、通信を聞くことと反芻することに完全に気を取られてしまう。地面を割る轟音への反応が遅れる。地中から這い上がってきた怪物のたくさんの無表情が、私の姿をターゲットとして見据えていた。「新入り!」コマドリ隊の隊長が叫んだ。瞬間、真っ白な影が眼前に現れ、M5レイピアの射出音が鳴り響き、赤い異形はバラバラに砕け散った。白いユニットのウイングダイバーはヒットアンドアウェイで私の脅威を取り除き「大丈夫?」と微笑んだ。

それが、私と志呂山鳩子(しろやまはとこ)さんとの出会いだった。

 

ペースを取り戻した私はその後順調に作戦をこなし、ピンク色の一団に褒められ、コマドリ隊へ正式に入らないかとスカウトされながら帰路についた。ピジョン隊の隊長―みんなからハトコさんと呼ばれていた―は再びにっこりと笑って、私の傍に来てくれた。外したアイガードからアーモンド形の瞳が現れ、私をじっと見つめる。

 

「モモセちゃん、私のこと覚えている?」

 

 

 




閲覧、しおり、評価、お気に入り、ありがとうございます。
前話でテレポシップからドローンが出て来るとか誤表記しちゃったので修正しました。勘が鈍っているなと思って久々にプレイしたら睡眠時間が消し飛び、スターダストジサツをかましまくり、軍曹のかっこよさを再認識して溜息をつきました。
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