__正午、昨日のオフの日からようやく頭痛が収まった門番、おかげで居眠りはせずに済んだが軽く飲みすぎたせいでの頭痛はキツイものである
今日も特に異常はない、そう思いのんびりしておこう、そう思った時だった、メイド長が門番の元へ来た
「珍しいですね、起きているなんて」
「あ、メイド長…どうかされましたか?」
「えぇ、私と貴女に依頼があるってお嬢様からお聞きしたの、悪いけど一緒に来てもらいます」
「はい、分かりました」
昨日の夜とは口調が違う、仕事中は言葉遣いにも気を付けているからである、それよりも門番はやはり気になるようである、粗相をした覚えは無いし何か深刻な問題でも起きたのだろうか、内心不安になりつつもメイド長の後について行き紅魔館の主、レミリア・スカーレットが居られる玉座の前の扉に着く、メイド長が軽くノックをし、中から小さく「どうぞ」と聞こえるとメイド長は「失礼します」と挨拶をしながら扉を開け中に、門番もメイド長の後に入り扉を閉める、赤いカーペットの先に椅子に座り二人を見ている黒い翼を持つ見た目が幼き女性、彼女がレミリア・スカーレットである、2人は主の方を向くと90度にお辞儀をし、その後主の近くに寄る
「いきなり呼び出してすまないな、門番」
玉座に座ったまま門番の方を向き主らしき喋り方をする
「いえ、それよりも…お話とは…?」
「咲夜から聞いているとは思うが2人には仕事をしてもらう」
「…まだ私も仕事内容は存じませんが」
「私から伝えた方がわかりやすいだろうと思ったからな」
「そんなに深刻な…?」
「いや、そこまで深刻ではないが…ただ…少し変わった仕事なんだ」
主も少し言葉を濁す感じに話す
「その仕事と言うのが、2人にある指定の場所へ向かって見張りをして欲しいという依頼なんだ」
一瞬理解が遅れたが、ただの見張りの依頼である、しかし確かにおかしい、見張りと言ってもなぜ自身達なのか、それにただ見張るだけならそこら辺の人間でも連れていけばいいじゃないか、そんな疑問が頭をよぎる
「私も最初は断ろうとは思ったんだがそれなりの謝礼もあるようだ、最近は金銭的にもあまり余裕が無いからな、面倒だとは思うが頼まれて欲しい」
「お任せ下さい、すぐにでも?」
「構わない、頼んだ」
「行きましょう、美鈴」
「は、はい!それでは行ってまいります!」
確かに昨日も飲み代が少し浮いたとはいえ少し使いすぎていた部分もあった、反省しつつ金稼ぎのために行くことを決めて主に深くお辞儀をして部屋を出るともう一度扉の前で頭を下げ、特に支度は必要は無いなと思いながら二人ともそのまま指定された場所まで向かっていく__
__30分後、人里から少しだけ離れた人気があまりない場所、そこへポツリと一軒家がある、そして依頼人らしき1人の少しヒゲが濃い目の男が出てくる
「おお、これはこれは紅魔館のメイド長に門番さん!こんな汚いところまでわざわざ御足労頂いて申し訳ない!」
見た目とは違い礼儀正しそうにヘコヘコ頭を下げながら話をする
「いえ…それより見張りとは…?」
「はい、これから私は少し遠出をして使いに出ますのでそれまでの間ここでの見張りをお願いしたくてですね」
「どうして私たちに?」
美鈴が疑問に思ったことを聞きだす
「最近は物騒でしょう?そこら辺のチンピラに頼んだんじゃ信用出来ません、なのでお宅らのような腕も立ち信用出来る方に頼んでるんです」
「…そんなに何か大切なものが…?」
「いえ、中に私の息子が寝ておりましてね、もう25にもなるのに働きもせず挙句に病気になりやがるもんですから仕方なく薬を買いに行くんですわ、でも私の方も少し借金がありましてなぁ、もし来られたら敵いません、それで用心棒も兼ねて依頼したわけですわ」
「メイド長、聞く限り悪い方ではなさそうですし報酬もあるので受けませんか?」
「そもそも断る理由もないわ、お嬢様直々からだから」
門番と話したあとヒゲが濃い目の男を見て
「分かりました、用心棒及び見張りはお受け致します」
「おお!本当ですか!ありがとうございます!あ、忘れとりました、私"湯田"と申します!では1時間程度で帰ってきますんでよろしくお願いします!」
承認されるとすぐさま駆け出して買い出しに向かってしまい、二人ともこれくらいの簡単な仕事ならいいだろう、そう思いながら2人共見張りをする
__数分後、本当に何も無い、チンピラどころか動物すら来ない、メイド長は門番の退屈さを少しだけ理解した
「美鈴、見張り頼んだわ」
「え?まさかサボるんですか?」
「いや、この家の息子が気になってね、仕事もしないで親に迷惑ばかりかけて、少しばかり説教してやろうと思ってね」
「あはは…まぁ病人ですからきつく言い過ぎないように…」
苦笑いしつつ門番は分かりましたと伝えて見張りを続ける
一方メイド長は家の中に入る、しかし入った瞬間血なまぐさい臭いがした、病気とは聞いたが風邪とは聞いてない、血でも吐いたのだろうか、そう思いつつ恐る恐る息子がいるであろう目の前の居間に向かう、そしてゆっくりと見るメイド長の目に入ったのは
口から血を吐き、腹部から大量に血を流して、近くに血塗れのナイフが転がって、血で真っ赤に染った布団、目の前には殺された息子らしき人物がいた
「………!?」
またも理解に遅れた、何故目の前に死体が、いつの間に殺されたのか、声を出そうにも出せなかった、それよりも門番にも報せるべきだ、そう思い門番に軽く慌てつつ伝えに行く
メイド長の話を聞き2人で現場に戻る、そして調査を開始する
「…本当に死んでますね、でも…」
息子らしき人物を見るとその日に殺されたのだろう、血がまだ乾いていない、死体に触れずメイド長は腹部を見てお腹を深く刺されてそのまま出血多量で死んだのだろうと分析する、素人目でも分かるがおびただしい量の出血である
「美鈴、迷いの竹林の医者の所まで行って、とにかくこのままじゃどうしようもないわ」
「は、はい!でもメイド長は?」
「犯人がまだ近くにいるかもしれないわ、私が見ておくから、はやく行ってちょうだい」
「分かりました!くれぐれもお気をつけて!」
門番は一軒家から走って迷いの竹林まで向かっていく、今から連れてきたところで間に合わないがせめて何かしらの処置はできるだろう、そう思いながらメイド長は凶器となったナイフを拾い眺める、ナイフは刺したばかりなのか血が滴っている、そもそもなぜこの人物は殺されたのか、借金のカタに殺すなんて話はほとんど聞かない、そもそも殺す理由が無いはずだ、そう考えていると…
「な、な、何してんだおめぇ!!」
男性の声が聞こえ振り返る、先程買い出しに向かったはずの湯田である
「湯田さん…?何故…?」
「さ、財布を忘れたから戻ったんだ…!お前…よくも俺の息子を…!」
「私…!?待ってください!いきなり犯人扱いですか!?」
「しらばっくれるんじゃねぇよ!お前が殺したんだろ!」
軽く震えながらメイド長の右手を指差す、彼女の手には血が滴るナイフが握られていた
「こ、これは私じゃ…!」
「う、うるせぇ!ひ、人殺しだぁ!!紅魔のメイドはただの殺人鬼だぁ!!!助けてくれぇ!!」
湯田は怯えながら大声を出して一目散に人里に逃げていく、10分もすれば村人達が大勢来るだろう、ナイフをその場に捨てつつこのままどう言い訳しても絶対に信用して貰えない、むしろその場で殺されるかもしれない、犯人も原因も分からないままとにかくメイド長は逃げ出した
午後13時30分
十六夜 咲夜は殺人鬼として知れ渡った
人物紹介
十六夜 咲夜
かつて「ヴァンパイアハンター」として活動していた紅魔館にメイドとして暮らす銀髪の女性
博麗の巫女の代わりに異変を解決をしてきた事もあった
しかし謎の人間が幻想郷に侵入してきてから彼女は紅魔館を去ることに…
それは彼女の生死を巡る引き金になった…