Lato:Altro
2001年 3月末。
いつものリストランテで食事をしていると、ブチャラティが入ってきた。
ただの人探しにしては、随分と時間が掛かっていたので、チームの面々は怪訝な顔をした。
「随分遅かったなブチャラティ。何かあったのか?」
「あぁ、ルカをやった奴は見つからなかったが、その代わりに見込みのある奴を見つけてな。勧誘していたんだ」
「おっ、てことは俺の後輩ってわけか。良いねぇ。弟分が先輩だからよぉ。ちょっとはのんびり出来そうだぜ」
「そんな事言って…ミスタ。受かるかどうかすら分からないんですよ?」
「受かるさ。なにせブチャラティだぜ?間違いねぇ」
新人という話題に花が咲く。
結成して5年目だが、ブチャラティチームはパッショーネの中でも話題になっている。
メンバーの全員がスタンド使い。
これだけでも組織の中ではそこそこ話題になる。
が、彼らの中でも最も異色なのは、言うまでもなくエドなのだ。
「信頼をしてくれるのは有り難いが、フーゴの言うとおり、受かるかどうかは本人次第だ」
「でもブチャラティがそう言うって事は、確信があるってことだよなぁ?」
「…あぁ、ナランチャの言うとおりだ。ほぼ間違いなく、スタンド使いとして俺のチームに来ることになる」
「なるほど。千歳と同じ理由…ということですね?」
フーゴの言葉に、ブチャラティは頷く。
この5年間で、エドは自分の日本の名前をチームに預けるほどに、深く信頼していた。
「全く同じというわけではないがな。ともかく、明日から来るのは間違いない。信用しろとは言わないが、愛想良くはしろ。いいな?」
翌日、ブチャラティは件の新人を迎えに行き、他のメンバーは、先にリストランテで待つことにした。因みに、エドは一応中学生なので、少し顔を出したあと、合流することになっている。
そんな二人を待っているメンバーは、当然暇なので
「……なぁーフーゴ。やっぱり今日は止めにしない?外天気いいしさぁ…なんか今日は乗り気じゃあないんだよなぁ」
ナランチャが、自分から言い出したのに、勉強を放り出そうとしたり
「あのねナランチャ。君は立派だ。自分の方から、千歳より歳上なのに勉強が出来てないのは恥ずかしい。と僕に相談してきたじゃあないですか。中々言えることじゃない。君にならできる!」
それをフーゴが軌道修正したり
「おい!なんの真似だ!こりゃあッ!!」
「何って…イチゴケーキですよ?デザートが食べたけりゃ選べば…」
「イチゴケーキだっつうのは見りゃ分かる!!チョコケーキでもなけりゃチーズケーキでも無いからなッ!そうじゃあねぇッ!!ケーキが4つ有るんだ!この俺に死ね!つーのかッ!?」
等とミスタが4と不幸について熱心に語ったりして、時間を潰していた。
「てめぇら!騒がしいぞッ!」
ナランチャが盛大に問題を間違え、それにキレたフーゴと揉み合いになりかけた時、ブチャラティが金髪の少年とともに、リストランテにやってきた。
金髪碧眼の彼は、胸元をハートマークになる様に大きく広げ、両胸の乳首に当たる所には、掌ほどのてんとう虫のブローチがつけられていた。
「昨日話した新人を連れてきた。ん?どうやらエドはまだみたいだな」
「そろそろ12だしな。色々あるんだろ。卒業に向けてとか」
「かもな。ジョルノ。挨拶しろ」
「ジョルノ・ジョバァーナです。よろしくお願いします」
ブチャラティに促され、少年はジョルノと名乗った。
ここにエドがいたなら、愛想よく返事を返し、表面上は和やかな雰囲気で、場が温まったことだろう。
しかし、今この場にエドはいない。
「ごめんなぁ〜フーゴ。俺一生懸命頑張るからさ。また勉強教えてくれ」
「僕の方こそ。許してくださいナランチャ」
メンバーは誰一人返事を返す事なく、まるでもう終わったと言わんばかりに、話を始めた。
「?おいお前ら。昨日も言っただろ。愛想よくしろ」
訝しむブチャラティの目を盗み、アバッキオはとんでもない行動を取っていた。
Lato:Mista
お、おいおいマジかよ。
何やってんだアバッキオ!
そりゃー新人に、ちょいとしたイタズラしたらおもしれーとは思うがよ、ティーポットに小便って!つ~かよく出るなそんな量。
早くしねーとヤバいぞ。千歳はそういうの一番嫌うからな。
「良いとも。あぁそうしよう。ジョルノ君…だっけ?立ち話もなんだ。お茶でも飲んで話でもしようや」
わーやりやがった!すげー堂々と差し出しやがった!
ナランチャとか、笑い堪えてるのかどーか怪しい顔してんじゃあねーか!
うぉ!フーゴとかもう早々と僕は何も見てませんし、知りませんよ?って顔でしれっとコーヒー飲んでやがる!
…………俺も真似しよ。横目でどうするのか位はみるが。
「いただきます……ウッ!?」
やっぱり気づくよなふつー。
「どうした?お前は俺がわざわざ注いでやったそれを、いただきます。って言ったんだ。 いただきますって言ったからには、飲んでもらおうか。それとも…ヌルいから飲むのは嫌かい?」
「アバッキオ。俺にもくれないか?」
「悪いなブチャラティ。別のを頼んでくれ」
「?」
そりゃ何も知らないブチャラティからしたら訳分かんねーよな。
あとが怖いから俺は何も言わないけど。
「お前ら何やって…」
「ボンジョルノ!皆さん揃ってますか?」
あ、来ちゃった。
Lato:Giorno
これは所謂新人いびりと言うやつだろう。
ギャングの世界だし、そういう事はあると思っていたが、これはなかなか強烈だ。
前歯の一本を、体質の98%が水分で出来ているクラゲに変えて、その場を凌ごうと考えたとき、ギャングが屯しているこの場所に!中学生が現れた!
どういう事だ?!しかもあの様子を見るに、かなり親しいぞ?!
まさかブチャラティ…あなたと言う人は、僕が思っているような良い人じゃあ無かったというのか!?
「来たかエド。俺もついさっき来たばかりだ」
「えぇ、ブチャラティ達が入っていくのが見えたので、慌てて走って来たんですよ。おかげで喉が乾いちゃって…あ!アバッキオ、ちょうど良かった。私にも注いでください」
マズイぞ…この子はアバッキオの持っているティーポットの中身が、アバッキオの少便であることを知らない!
きっとこの子にとって、アバッキオ達は気のいい兄貴分かなにかで、僕にコーヒーか何かを振る舞っていると勘違いしているんだ!
僕は良い!もとより覚悟してここに居る!だが彼はきっと違うだろう!
アバッキオ達の名誉を守るついでに!この場を乗り切ってみせる!
ゴールド・エクスペリエンスで前歯の一本だけでなく4本、クラゲに変える。そしてそのクラゲを瞬時に通常の歯に戻す。出来るだろうか?いや、やるしかない!
ゴールド・エクスペリエンス!!
「ッ!!!!」
「ーーーーッ!!??」
「嘘だろおいッ!!?」
「な、何だ?どうしたジョルノ!?何故ティーポットから直接飲んでいるんだ!?」
の、飲みきった!少々変なやつと思われたかもしれないが飲みきったぞ!
だがこのままでは、僕のゴールド・エクスペリエンスの能力がバレてしまう!
生き物を体の一部にしてしまうと痛みを伴う。
歯を麻酔無しで抜いた場合、大人でも大声で泣いてしまう程の激痛だと聞くが、生える時は更に痛いだろう!たが!悠長にしている暇はないッ!
歯を食いしばれ!ジョルノ・ジョバァーナ!!
ぐうううううぅぅぅぅーーッ!!!
め、めちゃくちゃ痛い!?意識が飛びそうだった!
思わずティーポットを叩きつけてしまったが壊れていないだろうか?
だ、だが…その甲斐はあった!歯はしっかりと再生している!
乗り切った!
「すいません。ちょっと良い格好したくて、張り切ってしまいました。なにせこんなにも美しい子の前なものでつい…」
「お、おぅ…そのなんだ。程々にな」
「あ、あぁ…まぁ、うん。俺も止めてやらなくてごめんな…」
「普段はこんな事はしないんだ…その…すまない」
「ジョルノ…そんな事をしなくても、俺はお前を認めているからな?」
なぜ僕はギャグが滑った可哀想なやつみたいな扱いを受けなくっちゃあいけないんだ……。