Lato:Altro
ジョルノが新人イビリを何とか切り抜けて間もなく、ブチャラティはリストランテのウェイターに呼ばれ、電話に出ていた。
そして、戻るなり直ぐに出かけると言いチームの面々を引き連れ、ヨットを借りに港へと訪れた。
「ヨットクルージングで喜んだのにレンタルか…」
「不満なのか?えぇ?ナランチャ。だったら金貯めて自分で買うこったな」
「べ、別にそんなこと言ってないだろ!?ただ、たまにはあんなのに乗りたいなぁって…」
ナランチャは一つの、クルーザーを指差した。
レンタルのヨットクルーザーと違い、これぞクルーザーだ!と言わんばかりのそれは、ナランチャでなくとも心が惹かれる。
それを見て各々の反応は
「確かになぁ…羨ましいぜ!くそぅ!」
純粋に同調するミスタ。
「まぁ、自分のが欲しいと思わないこともないけど…」
本当は欲しい。というナランチャの気持ちに同意しつつも、ナランチャの収入の使い方を考え、ため息が出るフーゴ。
「そうですね。ああ言うのって買って終わりじゃないですからね。維持費とか燃料費とか…買ってからも、お金は掛かるらしいですし」
フーゴのため息に、なんとなく察しがついたが、それをそのまま言うのはどうかと思い、少し遠回しにナランチャに警告を出すジョルノ。
「ほぉ〜…ナランチャ。お前中々お目が高いじゃねぇか」
何かに気づき、ニヤニヤと口の端を上げるアバッキオ。
「はっ?何が?」
「ありゃあフェレッティのクルージングボートだ。言ってみりゃ高級クルーザーだな。フェレッティ社の販売体系上、価格は公になってねぇが、3000万リラはくだらねえだろうよ」
「い゛い゛ッ!?」
アバッキオから知らされたまさかの価格に、ナランチャはもちろんの事、他の面々も驚いた。
だが一番驚いたのはブチャラティだ。
「お、おい!今の話は本当か!?エド!?」
「そんなバカな!私が聞いたのは1万5千ですよ?!」
「えっ!?」
そのやり取りを聞いたメンバーの驚きは、更にそれを超えた。
因みにイウスは嘘は言っていない。
イウスが払ったのは間違いなく1万5千だが、それはユーロである。
当時のレートは、1ユーロが2000イタリアリラだったのだ。
あまり高額な数字を言うと、王として育てようとしている千歳はともかく、ブチャラティを始めとしたメンバーが、尻込みして使わないだろうと考え、耳馴染みの浅いユーロで金額を伝えた。と言うのが真相だった。
誤算だったのは、ブチャラティがイウスの行動を深読みし、将来的にエドに返そうと、一度も使わなかった事だろう。
その後、折角だからクルージングボートで行こうと言う話になったが、ブチャラティが、使うつもりがなかったので、鍵を持ってきていないことが分かり、結局レンタルする事になった。
そして現在、一行はナポリ湾を航行している。
「しっかしすげーな!イウスってさぁ、頭は良いしあんな高級品ポンッ!とブチャラティにあげちゃうし。なんかブチャラティに恩でもあんのかな?」
「そりゃああるだろうさ。あるだろうけどよぉ…」
「どうしたんですか?ミスタ」
興奮するナランチャとは対象的に、何処か納得いかない顔をしているミスタに、ジョルノは興味本位で尋ねてみた。
「ん?あぁ、実を言うとな、エドとの付き合いはブチャラティより俺の方が長いんだよ。エドはチームの中じゃフーゴと並んで最古参だ」
チームにとっては当たり前の事でも、新入りであるジョルノが知らないのは、当然だと思い、ミスタはエトがチーム最古参である事を明かす。
ジョルノは当然少し驚いたが、薄々そうではないか?と思っていたので、そこまで動揺はなかった。
「逆に俺はお前より一年早い。つまりチームの中じゃ、ルーキーも良いところって訳なんだが、まぁそんな事はいい。俺はあいつがあの年になるまで、表で世話してやってた。色々あったが、あぁしていると感慨深いぜ…」
遠い目をしているミスタの視線の先には、ブチャラティと何かしらの話をしているエドの姿があった。
ジョルノが、ほんの少しその姿を見たあと、ミスタに目を向ける。
その顔は、まるで子を見守る父親か、兄の様であり、ミスタにとってエドは、もはや家族といっても差し支えない程の、掛替えのない存在なのだ。とジョルノは感じた。
(やはり…このチームは良い人の集まりだ。本当に悪い連中なら、こんな表情を引き出せない)
「つまりよぉ、あいつの事を支えてきたのは、ブチャラティだけじゃあないんだよ。俺だって手探りで、色々頑張って来たわけだよ。なのによぉ!あの胡散臭いイソギンチャクやろー!ブチャラティにはあんな立派なクルージングボートを、プレゼントしてるっつーのに俺にはなんにも無しってか!?」
正確には、クルージングボートはチームに贈られたものではあるが、使う為にはブチャラティから鍵を預からなければいけないので、実質的にはブチャラティの物だと、ミスタは考えていた。
「ちっくしょー…あのヤローの事だ。ブチャラティは善意だが君は義務だろう?とか思ってんじゃあねーだろうな?いや!寧ろそう思ってるに違いない。なにせあいつは出会った時からそうだったしな!今度あったら俺にもクルージングボート寄越せって言ってみるか!」
そんな事を言っているミスタを見て、ジョルノはこう言うふうに言いたい事をハッキリというから、向こうは黙って待っているんじゃないのか?と思ったのだった。