源氏冒険譚 〜始まりの風〜   作:犬原もとき

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一人称視点は書きやすいけど細かい描写をあまりさせたくないジレンマ_(:3」∠)_


episodio:Ⅱ 少年とブチャラティ

ミスタと子どもがあって、早くも1年が過ぎた。

子どもには戸籍がなかったので、どうしたものかと頭を抱えたが、イウスは超文明の住人ということも有り、あっさりと違和感なく自分たちの戸籍を作り上げた。

その際せっかくなので、イタリア人とのハーフにしてはどうかという話になった。

「どーせならよぉ。チトセもかっこいい名前にしようぜ。見た目が可愛いからよぉ。せめて名前は男らしくカッチョいいのによぉ」

「カッコいいという物がよくわからないが、本人次第だろうな」

いくつかの候補の中から、日本人でも比較的発音しやすいエドをファーストネームにし、あとは適当なセカンドネームとファミリーネームを置いた。

その結果。ネアポリスに二人の人間が住むことになった。

胡散臭く何を生業としているのかわからない、人を小馬鹿にしたような話し方をしている青年。イウス・アクス・ヴォーナと、どう見ても女の子と間違えられような容姿と、特定の人間しか信用しない閉ざされた心を持った少年。源千歳ことエド・コンスタンチァ・ミナモトである。

 

ミスタとエドは7つ程離れており、当然ながら二人が合うのは、休日を除けば朝と夕方以外殆どない。

ついこの間まで、追われる生活をしていたエドが、周りに馴染めず、ゴロツキやチンピラの様な生活をするのも、無理からぬ事であった。

エドにとって、これは別に不思議な事ではなかった。

弱肉強食の時代の教育を受けて来たエドからすれば、自分が安心する為の縄張りの確保は至極当然の思考だ。と思ったからである。

小さなエドが、縄張りを拡大することに対して、当然我慢ならないのは、昔からそこを縄張りとしている、ガキ大将たちである。

彼らは子供なりに考え、直接的、或いは間接的に、エドを追い詰めようとするも、追い詰めれば追い詰めるほどに、エドの凶暴ぶりが増してしまい、一年も経つ頃には、同年代やちょっと年上程度では、エドを止めることはできない有様になっていた。

 

しかし、出過ぎた杭は打たれると言うのが、世の常だった。

イタリアンギャング パッショーネ。

彼らの目に止まり、エドの火遊びは終わりを告げた。

それは、なんの前触れもなかった。

いつもの様に悪ガキ共とつるんでいると、おかっぱ頭の男がやってきた。

そこらの大人など鼻にもかけないエドは、この男を追い出そうと近づいた。

「訪ねたいことがある」

エドは足を止めた。

別に面識があるわけではないが、道や人を訪ねているのなら、特に無碍に扱う必要もないと感じたからだ。

「聞こう」

「この辺りにエド・コンスタンチァ・ミナモトと言う少年がいると聞いて来たんだが…知らないか?」

「何故?」

「警告をしに来た。俺はパッショーネのブローノ・ブチャラティ。今まではお目溢しされていたようだが、俺がこの辺りを取り仕切るからには、お前らの様な子どもに、こんな事馬鹿なマネはさせない。痛い目に遭う前に真っ当な道を歩め」

エドはこいつもまた、綺麗事を並べ立てるだけの、話す価値も無い男だと判断しだ。

平和ボケした間抜けだと。

「そうか。言いたいことはそれだけか?」

いうが早いか、エドは一気に踏み込んだ。

予備動作のまったくない加速は、ブチャラティも目をむいた。

懐に踏み込み、最早受けるも止めるも叶わない距離で、腰から吊り下げた愛刀、薄緑・陽炎を一気に引き抜いた。

無論この程度の男を斬り殺すなどとは、考えていない。

寸止めしてやれば実力差に気づき、2度とナメた口は効けなくなる。

何時もどおりだ。そうエドは思っていた。

だが眼の前の男は違うという事を、エドは、いや千歳はこの後、思い知らされるのだった。

 

Side:Citose

刀が当たる瞬間、ブチャラティという男の胴が切り離された。

「……っ!」

「速い…この速さは躊躇いのない速さだ。正直驚いたよ。この歳で随分手慣れてやがる」

ふざけるな!驚いたのはこっちだ!

何だ今のは!?

今も何事も無かったかのように、再び胴体をくっつけ、私の前に立っているし。

何だコイツ…今までの連中とは明らかに違う。

「噂には聞いていたがエド。確かにかなり腕が立つようだな。ポルポが組織に引き入れて来い。というのも頷ける」

言い終わると、ブチャラティは私を睨み付ける。

雰囲気が変わった。

ここからが本番という訳か。

「だからこそ!お前はここで止める!これ以上こちら側へ越させないために!!」

「抜かせ!!鉄火場も知らん腑抜けが!!」

「知らないのはお前の方だ!ステッィキィ・フィンガーズ!!」

何事か叫んだ瞬間、ブチャラティの前から、筋肉質でヘルメットを被った全体的に青い男が現れ、こちらに突っ込んできた。

「貴様!?一体どこに!?くっ!」

「何!?見えているのか!?」

殴りかかってきたソレをなんとか躱し、距離を取る。

何だコイツ…本当になんなんだいったい…。

ブチャラティを見ると、驚いた顔をしている。

なるほど。

今までは、この姿が見えない何者かの協力のお陰で、何とかなってたという事か。

先程の胴体を切り離した回避も、手品か何かだと思えば分かりやすい。

防ぐ手はある。

「お前ら!この青いのは私が相手をする。お前らはもう一人のおかっぱをやれ!」

「なにいってんだ!青いのってどれだ!」

「寝ぼけてるのか!ヤツの前にたっているだろう!カフェの入口の看板メニューみたいに!」

「あんたこそ寝ぼけてんじゃねーのか!?俺達の目にはそんなもん見えねーよ!」

「ちっ!もういい!役立たず共が!!」

眼の前にいるだろうが!

やはり他人など当てにならない!

ここは私一人でここにいる全員やるしかない!

信じられるのは…ミスタとイウスだけだ!

「ずえええぇぇぇぇい!!!」

叫びながら思いっきり眼の前の青い奴に斬りかかる。

恐らくは防がれる。だが防げばその瞬間は無防備!

思いっきり体当りして体制を崩せばこちらに分が傾く!

さぁ受け止めろ!

「……俺のスティッキー・フィンガーズが見えている事には驚いた…そして、残念なことに、お前を組織に入れざるを得なくなってしまった」

それがどうした!

そしてもう受け止めることはできん!

避けれるものなら避けてみろ!

「安心しろ。俺がお前を守る…必ずだ!!」

「!?」

その言葉は…!

「アリィ!!!」

気を取られている隙に、ブチャラティの鋭い拳が鳩尾に深く刺さり、私の意識はそこで落ちた。

 

Side:Bucciarati

「思ったよりも強い奴だ」

それは嫌味ではなく本心からだ。

10にもならない子どもが、あそこ迄動けるとは想定もしてなかった。

不発には終わったが、彼我の実力差を見極め、人海戦術で俺を抑え込もうとした手腕も、実に手慣れたように思えた。

ただの子どもと侮っていた。

だがそれよりも驚いたのは、俺のスタンド、スティッキーフィンガーズを視認していたという事だ。

スタンドはスタンド使いにしか見ることができない。

ポルポはこの事を知っているのだろうか?

……いや、恐らく知らないはずだ。

俺が受けた指令は、縄張りでウロチョロしているガキ共に、大人の怖さをわからせてやれ。だったからな。

あわよくば組織に入れてこいというのも、この歳でこの人数を纏められる能力を買っただけだろう。

ここで俺がこいつを見逃したとしても、他の連中を使ってパッショーネに入れようとするに違いない。

こいつは恐らく信頼というものに飢えている。

先程、俺がコイツに対する決意を口にした時、明らかに動揺した。

そしてもし、麻薬を扱うゲスな野郎にそれを利用されたなら…。

そんな事を防ぐ為にも、ここでコイツには組織に入れさせ、俺の下で保護する必要がある。

組織の調べでは、両親は既に亡く、父親の友人だと言う男の元で暮らしているらしいが…。

なんにせよ。コイツは連れて行くか。

エドを担ぎ上げ、遠巻きに見ている連中の方を向く。

「見てのとおりだ。お前たちのリーダーは俺にやられた。よって俺の言う事には従ってもらう。これからは真面目に学校へ行って、家族とも仲良く暮らせ。もう二度とこんなバカな真似するんじゃないぞ?いいな!」

一喝とも言うべきだろうか。

俺の言葉がどれほど届くのかは分からんが、言わないよりは遥かにマシだ。

反応がない連中から踵を返し、この場を離れるとしよう。

 

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