Lato:Altro
食事を終えた二人は、食後の珈琲を飲んでいた。
エドはまだエスプレッソが飲めないのだが、背伸びをして頼んでしまい、若干後悔していた。
「さて、改めて自己紹介をしよう。俺の名前はブローノ・ブチャラティ。イタリアンギャング パッショーネの構成員だ。今はポルポという男の下で働いている」
「エド・コンスタンチァ・ミナモトです。先程は見事なお手並みでした。まだまだ私も未熟者である事を思い出しました」
「そんなに畏まらなくても構わない。それよりもっと大事な話があるからな」
「それはもしや先程のスタンド…というものに関わることですか?」
エドの疑問形に見せかけた確認を、ブチャラティは頷いて返す。
「そうだ。結論から言うと、エドには組織に入らなければ、お前もその周りも大変危険になる。その理由から説明させてもらおう」
そう言うと、ブチャラティは静かにスティッキーフィンガーズを、側に出現させる。
先程のこともあり、一瞬身体が動きかけたエドではあったが、今度は攻撃する意思が無いのは明白なので、姿勢を正した。
「…やはり良い反応をしている。本当に6歳の子どもなのか、疑ってしまいそうになる」
「恐縮です」
「さて、本来ならこんな所に、こんな人物が突然現れたのなら、大騒ぎになる。だが周りを見てほしい。誰か騒いでいるやつはいるか?」
そう言われ、エドは辺りを見回すが、ブチャラティのスタンドが現れたというのに、日が昇れば落ちる事の様に誰もその事に対して、気に止めている様子はなかった。
「誰も気づいてませんね。と言う事は…」
「そうだ。スタンドは本来、スタンド使いにしか見ることができない。だがお前ははっきりと、俺のスティッキーフィンガーズを確認できている。この事がもし俺達のボスにバレてしまったなら…」
「招かれるか…殺される…と?」
ブチャラティのセリフをエドは引き継ぎ、ブチャラティはそれに対して無言で頷いた。
ただスタンドが見える。それだけでまた追われなければいけないのか。
次第にエドの体は、再び恐怖を思い返し、震え始めた。
しかし、それはすぐに治まった。
ブチャラティがそっと手を重ね、握ってくれたからだ。
「エド」
「……」
「言ったはずだ。俺が守る。そしてその為に、俺はお前にこうして話したんだ」
エドはブチャラティを見た。
その瞳は真っ直ぐ自分を見ていた。
ミスタと違い、誰が見ても分かるほどの、情熱と気高さを兼ね備えた、言うなれば正義の瞳と言っていいだろう。
その瞳を見ていると、エドは、春一番に吹かれたような、強くも心地のいい気持ちになり、勇気が湧いてきた。
「落ち着いたようだな。さて、守るとはいったが、事はそんなに難しくはない。要はお前が組織の脅威にならなければいいんだ。その簡単な方法が、組織に入るということだ」
Lato:Chitose
私は考えをまとめさせて欲しいと一度断り、ブチャラティと別れた後、イウスと相談する事にした。
こんな事はミスタには相談できない。
「と言うわけなんです。私は受ける他無いと思うのですが、イウスはどう思いますか?」
「どうも何も私は自分の身は自分で守れる。あとは君次第だ」
「言うと思いましたよ。建前上は保護者なんですから、もうちょっと真面目に考えてくださいよ」
「そうはいうがね、そういった所で君は意見を曲げる気はないのだろう?君が心配しているのは私ではなく、グイード・ミスタだ。彼の安全を考えるなら、当然答えは二つに一つだ」
まぁ、そうですよね。
イウスならそう答えてくると思ってましたし、私も他に無いと思ってます。
なんだかんだ言って私は、このイタリアという国が好きになりましたし、ネアポリスは故郷も同然です。
次元移動とやらをすれば解決するのでしょうが、死ぬまでこのイタリアから離れたくないです。
組織のボスとやらが何者なのかは、組織にいる人間すら知らない。
そんな奴を相手取ろうだなんて、余程普段から不満を抱えてる奴くらいなものでしょう。
さて、じゃあ明日は刑務所で待ち合わせしてますし、さっさと寝ましょうか。
「あぁ、そうだ。もう一つ手がある」
「はい?」
もう寝ようと腰を上げるのと同時に、イウスが待ったをかける。
何なんですかもう。
6歳の僕はもう眠いんですけど。
だけど、この人を小馬鹿にしたような顔をしている時は、だいたい良からぬ事を考えているときだ。
ストリートの悪ガキ共を纏め上げれば、ストレス発散になる。とか吹き込んだ時みたいに。
「なに、そう難しいことではないさ。敵が巨大なら、自らも巨大になればいい。そう、組織のトップになるとか」
ほら、碌でもない。もう騙されませんよ。
「そもそも、君には人の上に立つ王の気質がある。まだ幼い故に自身の王の気質に気づかず、力技に出たがね」
「そーですか。それは残念でした」
「考えてもみたまえ。なぜ力で屈された悪ガキ共が、反抗の一つも起こさず、今日まで着いてきたと思う?」
「何言ってるんですか。あなたが裏から手を回したのでしょう?」
そりゃいくら私でも分かりますよ。
歯向かうよりも大きなメリットがあるなら、その方が良いでしょう。
そして私はそんな事をした覚えがない。
となれば焚き付けた張本人であるイウスの他にいないでしょう。
バカにしないでください。
「ふふふ……それは違うなぁ。我が王。彼らは自分の意志で、君に忠誠を誓っていたのだよ」
「……なんですかその我が王って」
「少し未来をね。まぁ、それはいいじゃないか。王にも色々ある。捻じ伏せる者。導く者。守られる者…どれか一つで王となる者もいれば、いくつかの要素をもって王となる者もいる」
椅子から離れ、私の周りをゆっくりと歩きながら、イウスは話しだした。
眠いんですけど。
「君は守られ捻じ伏せる王だ。敵となるものには一切の慈悲もなく、味方は君の危うさを補う者を選び抜く。君は危うい所がある。だが同時にそれは魅力でもある。そして君はそれを感覚的に使いこなすだろう。まぁ、今はまだそうではないようだがね」
そうですか。凄いんですね私は。
それはそれとして眠い。
「そうだとも。だからこそ私は君の事を王と呼ぶ。今は小さくまだ身近に来たものを留まらせる事しかできないが、やがて君という灯は、世界中のあらゆる存在を照らすだろう。その為には学ばなければいけない。その為には躓かなければいけない。これを試練だと言うものもいるが私は違う。必要なプロセスだ。君は王になる。なるべきだ。なぜならば……」
もうダメ。限界…。
「王になればもう誰からも追われない」
Lato:Yith
「寝たか。まぁ無理もない」
元より源千歳の就寝時間に合わせ、この話をしたのだから。
しかしスタンドか。本人が持つ精神エネルギーの具現化。と聞いたと言っていたな。
古くより彼らが魔術や魔法と分類していた、極稀に起こる非物理的干渉を行う為の、先祖返りと呼ぶべき現象だろう。
魔法も魔術も同類のものだが、彼らは何故か別の物と捉えたがる傾向がある。
元々源千歳には両親ともにそういう代物と直接的に縁がある。
母親である源義経はミ=ゴと、父親である粟田口藍は、ウボ=サスラから愛されてたり、ティンダロスの猟犬を飼いならしてたり。
あれで多少なりとも正気を保っているのだから、粟田口藍は人間の個体の中でも突出した精神の持ち主だろう。
まぁ、ウボ=サスラから愛されているという時点で、人間の言葉で言えば不運と呼ぶ他無いだろうが。
これらの要素から、源千歳が魔法魔術の著しい能力を有していても、別に驚くことではない。
寧ろ高確率で予想できる事だ。
だが今はまだ不完全だ。
私の方で手を加えてもいいが、それでは折角の楽しみが、予想のできるつまらない物になってしまう。
何かないものか…。
……………あぁ、そうだ。
これを使おう。