Lato:Altro
ブラックサバスの口から放たれた矢は、千歳の魂を貫いた。
血は吹き出さなかった。
代わりに、神々しくも禍々しい光が吹き出し、拳の形を作り上げ、ブラックサバスを殴り飛ばした。
恐怖のあまりに気絶した千歳は、その場に崩れ落ちたが、光はまだ消えず、むしろその勢いを増しているかのように見える。
やがて光は人の形になった。
引き締まった肢体は、男女関係なく見惚れるような色気を醸し出し、背中からは天使の羽と悪魔の羽が計12対。フルフェイスヘルメットの様な頭部には、美しい金色の髪と歪な黒い角が、左右別々に生えている。
身体全体は白銀に光っているが、人間で言えば心臓に当たる部分には、巨大なブラックパールの様な球体が、見る物を深淵に誘わんとしているかのように、不気味に蠢いている。
『選ばれるべき魂…試練は成った!お前はスタンド使いと成ったのだ!!』
『そうか。だが我のマスターを怯えさせた罪は重い』
ブラックサバスと対する半天半魔のスタンドは、ゆっくりと両腕で円を描く。
切り開く勇気の右手は大きく外側を!
天賦の才の左手は小さく内側を!
回された両腕を追うように、なにもない所からカードが現れる。
外側には22枚の大きくなカードが!
内側には56枚の小さなカードが!
『我が名はロードアルカナ!森羅万象、この世の全てを操る
ロードアルカナが両手を勢いよく合わせると、同じくカードがそれぞれ1つの束になり、そこから一枚のカードが引き抜かれる。
『
ロードアルカナは引き抜いたスペードの10を、ブラックサバスに向かって投げる。
カードは吸い込まれるようにブラックサバスに取り込まれた。
次の瞬間!
「う、うおおおおおおぉぉぉぉぉ!!??」
独房にいたポルポは、謎の激痛に襲われ飛び起きた。
これはロードアルカナの効果によるものだが、ブラックサバスと感覚を共有していないポルポは、夢見が酷く悪かっただけだろうと、勘違いした。
『ぐおおおおぉぉぉぉ!!?、』
『貴様と本体は、本来感覚の共有などはしていない。だが。このロードアルカナには、そのような謂れに関係無く、その事象を引き起こすことができる!正しく世界を意のままに操るスタンド!源千歳という時間、次元!未来と過去を生身で行き来した存在だからこそ!生まれることの出来たスタンドよ!』
ロードアルカナは声を張り上げ、仁王立ちして、ブラックサバスが消えていくのを見送った。
その姿は、一切の慈悲なく敵を滅ぼす悪魔のようにも見えた。
ブラックサバスが消えたことを確認すると、ロードアルカナはまだ倒れている自分の主に、そっと近づいた。
『源千歳。我が主よ…残念だが、君が俺を使いこなすには、君はまだ若すぎる。俺の力は一部を残し、今一度君の中で眠ることにしよう』
そう言って、ロードアルカナは千歳の左手を握ると、そこには78枚のカードの束が置かれていた。
『これは俺の力の原初だ。先ずはこれを使いこなしてくれ。どんな事柄だろうと、必ずや君を望む結果へと導いてくれる。辿り着くべき場所が一つでも、その道程は星の数ほどある。結果の途中にある一部を、この世の全てを思わないでくれ。この力はそれを学ぶ為にある』
跪き、千歳を優しく抱きかかえているその姿は、全てを赦し包み込む、天使のように見える。
そんなロードアルカナの姿が、ゆっくりと薄れていく。
光が千歳の中へと戻っていく。
『君は正しく選ばれた人間だ。こんな形ではあるが、こうして君と触れ合えた事を、俺は嬉しく思う……今度会うときは、君が起きていると、より嬉しいがな。今暫くの別れだ。君に世界の導きを!』
その言葉を最後に、ロードアルカナは完全に千歳の中で眠りについたのだった。
いつか万全の状態で、自らの主と対面する日を待つ為に。