Lato:Altro
目が覚めたエドは、時間ギリギリながらも、何とか火を消さずに、ポルポの監房にたどり着いた。
その際、全くと言っていいほど邪魔も入らず、また普通なら絶対に消えているはずの火も、消えていなかったのは、ロードアルカナの力によるものだ。
「おめでとうエド君!君はどうやらスタンド使いとして選ばれたようだね」
「えぇ!?なぜそれを!?」
「ハハハ!単にカマをかけてみたのだよ。どうやらその様子だと再点火したようだね。驚いただろう?あれはブラックサバス。私のスタンドで、スタンド使いの素質がある者のスタンドを、覚醒させることができる。そのまま火を見守り続けられるなら、それはそれで構わないし、再点火してスタンド使いに成れればより良い。どちらに転んでも組織にとっては有用と言う訳だな。ブッフゥ〜」
それならそうと早く言って欲しかった。等と思いながらも、エドは、無事に組織のメンバーになることができた。
「おめでとうエド。どうやらスタンド使いになれたようだな」
刑務所の外に出ると、ブチャラティが出迎えてくれた。
「お祝いに近くのカフェテリアに行こう。朝ごはんもまだって顔をしてるしな」
「お願いします。もうお腹が空いて大変です」
「そういえば学校はどうしてる?」
「行ってないです。大体はイウスから習ってますから」
「やぁ、我が王。どうやら目覚めたようだね」
「イウス。朝の男は貴方の差し金ですね?」
「勿論。暇そうにしてたのでね。少し小遣いを握らせたら、快く引き受けてくれたよ」
その日の夜。尋ねられたイウスは、あっさりと白状した。
イウスからすれば別に隠す事でもないし、そもそも隠す気もなかったので、どうでもいい事だった。
エドも単に確認したかっただけなので、それ以上特に言うこともなく、普段どおりに食事を終えた。
「それはそうと我が王。君に渡したいものがある」
そう言うと、エドの返事も待つことなく、テーブルの上にあるものを二つ置いた。
それは、所謂巾着袋と呼ばれる物と当時まだ高価な代物であった、携帯電話だった。
携帯電話の方は、秘密にしておいた理由は分かる。単純に高価だからであろう。
巾着袋はエド、いや千歳にも馴染み深いものではあるが、なぜこのタイミングで出してくるのかが、分からなかった。
「お祝いだよ我が王。携帯電話は私から。この巾着袋は君の父親と母親の預かりものだ」
「父上と母上の?」
「君が大人になったらと言う約束でね。どんな形であれ働き出したのだから、君はもう大人だ。故に君に渡す」
千歳はもう一度置かれたものを…巾着袋を見、恐る恐る触れる。
懐かしい日本の香りが、気高く強かった母と、厳しくも優しかった父の顔を呼び起こした。
巾着袋をぎゅっと握りしめ、溢れ出る涙を止めること無く流した。
「その巾着袋は私と君の父親の合作でね。その中からは毎日1キログラムの金のインゴットが5本取り出せる。お金に困らないように、という配慮だそうだ」
「いやその発想はおかしい」
そしてその涙はすぐに止まった。
「私もやりすぎではないかと言ったんだがね」
「当たり前ですよ」
衝撃の日から翌日。
その日からエドのいつもの格好に、巾着袋が加わった。
腰から下げたそれは、一見すると無用心に見えるが、つけられたパッショーネのバッジが、こそ泥達への明確な警告となっていた。
そしてエドは、携帯電話を持った事をブチャラティに報告する為、いつものリストランテに入っていく。
「おはようございます。ブチャラティ」
「あぁ、おはよう。エド。ん?そのポーチは?昨日まではなかったと思うが…」
「父上と母上の形見です。ギャングとは言え働き出したのだから、お祝いにとイウスから」
「……そうか。大事にしないとな」
「はい」
食事を終え、暫く話し込んでいると、不意にブチャラティが、神妙な顔になる。
「エド。俺はお前に、組織に入ってくれといい、お前は見事にそれに応えてくれた。だから改めてここに約束しようと思う。お前のことは俺が守る。お前が成人するまで、キッチリとな」
「……」
「親代わりという訳ではないが俺も…」
「ブチャラティ」
「?」
「気負いすぎですよ。私には名義上とはいえ保護者がいますし、私生活では兄貴分もいます。貴方は私の上に立つ人間として、どっしり構えてて下さい」
ブチャラティは驚いていた。
経った3日で、不安定だった精神が、ここ迄シッカリしている。
男子三日会わざれば刮目して見よ。という言葉が日本にはある。
ブラックサバスによる、擬似的な死を乗り越えた千歳は、正にこの状態であった。
まだ死にたくないという気持ちが、彼の殻を破ったのだ。
「そうだな。いや、すまない。ところで気を悪くしないで欲しいんだが、エドのスタンドは…」
「すみませんブチャラティ。遅れました」
その時、リストランテにもう一人の訪問者が現れた。
Lato:Fugo
僕は昨日、イタリアンギャング パッショーネに入った。
僕の凶暴的な内面すらも、受け入れてやると言った、ブチャラティの言葉に賭けてみようと思ったからだ。
そしてもう一つ。
ある事情から、この年でパッショーネに入らざるを得なくなったという少年の為に。
店に入る前にチラッと確認したが…。
恐ろしい目だ。
視界の端に入ってきて、すぐ出ていったボールを見るような、ほんの僅かな除き見を彼は見逃さなかった。
僕の視線を確実に捉え、射殺す様な目で僕を見た。
それは今もだ!
リストランテに来たのに、動物園の猛獣の檻の中に来たような錯覚を感じてしまう!
「来たか。エド。紹介しよう。彼はパンナコッタ・フーゴ。昨日お前と同じ様に、ポルポの試験を受けて合格し、スタンド使いになった。フーゴ。彼がお前に話した例の少年。エドコ・ンスタンツァ・ミナモトだ。二人共仲良くな。これからはチームだ」
「エド・コンスタンツァ・ミナモトです。以後よしなに」
「パ、パンナコッタ・フーゴだ。よろしく」
う、美しい。
はっきり言って、今まで会ったどの人よりも綺麗だ。
もし彼が女性だったなら恋に落ちていたかも知れない!
「立ち話もなんだ。フーゴ、お前も座るといい。昼飯はどうした?まだなら今頼もう」
「あ、えぇ。大丈夫です。家で食べてきました」
僕が座るのと同時に、エスプレッソが運ばれてくる。
このリストランテ特製ブレンドコーヒーだ。
フルーティな香りとが鼻を楽しませてくれる。
砂糖をいれ、何時ものように一口飲む。
深煎りされたコーヒーの苦味と、砂糖の甘さが混ざり合い、一日の始まりを思い返し、身と心が引き締まる。
ん?なぜエドは僕を見て餌を食べてる最中のロバみたいに、口を開けているんだ?
「・・・そういえばエド。なぜコーヒーを飲むときに砂糖を入れないんだ?苦いだろう」
「え?・・・砂糖入れて良いんですか?」
「砂糖入れるために出されるんだ。今度からはちゃんと入れて飲め。味が違うぞ」
この子は今までどんな食生活を強いられていたんだ・・・!?