なぜ彼はここにいるのか…?
あの日の事件、あれが自分にとって良いものだったかはわからない…あの事件以来自分は薄暗い工場で何に使うかもわからない部品をひたすら組み立てる日々を送っている。
「はぁ、こんなことして何になるんだ、何作ってるかは知らないけど、俺だったらこんなの一瞬で作れるのに…」
すると、俺を見張っていた監視官が鋭い声で話しかけてくる。全く、こんな俺をずっと見張ってるなんて随分ご立派なものだ…
「おい、何くっちゃべっているんだ!まぁ、いい。休憩の時間だ!」
ずっと我慢してたが、好奇心に負けてつい口を開く。
「なぁ、一体これは何を作っているんだ?俺に指揮を取らせてくれ、どんな複雑な構造をした機会も3日以内に終わらせる」
「だめだ、作っているものが何かは言えんが、今後国を動かしていく重要なものになる。国が本当に安全と認めた奴にしか指揮をとるのは許されん!しかも、ここの作業はお前にしかできないのだ!」
続けざまに監視官が話す。
「ここの作業は単純作業を刻々とさせられるうえ、設計も複雑すぎる。ほかにできる人がいないんだ。お前の腕前は俺たちも十分に知っている。ここはお前しかできないんだ」
こんなこと言われたのはあの日以来だ…ギリギリまできた涙をこらえ監視官を見る。
すると、監視官が言いにくそうな口調で話しかける。
「なぁ、教えてくれないか?今まで何故悪いことをしてきたのかと、お前が改心した理由を」
あまり思い出したくなかった。ただ、雰囲気というものは怖いものだ。自然と口が動き出す。
「あの日、俺は研究所にいた。まぁ、そこで寝泊まりしてたから実質家みたいなものだ。そこで俺は懲りずに彼を倒すためのロボットを作っていたんだ。すると突然見たことのない、何かに襲われた。その時俺は今までの自分に対する天罰だと思ったよ」
こんな下らない話、呆れられると思った。
だが実際は違った。
監視官は真剣な顔で話を聞いてくれていた。
「俺だって生まれた瞬間から悪かったわけではなかった。俺はロボットを作るのがこの上なく好きだった。その日も俺はただロボットを作っていた…すると部品が足りてないことに気づいたんだ。ただずっと家にこもってロボット作りしてた俺なんかに部品をくれそうな人なんて検討もつかなかった。だから俺は…盗んだんだ。自分が作ったロボットで」
溢れ出る涙を必死にこらえながら話を続ける。
「最初は罪悪感で吐きそうになったよ。ただそれがロボット作りへの好奇心に勝ることはなかった…いつか誰かが止めてくれるだろう、こんな自分を引っ叩いてくれるだろう…こんな子供な考えが自分を悪の道へとさらに動かして行ったんだ。ただ町のみんなは怖がって逃げるばかり…止めてくれる人なんて一人もいなかった」
すでに休憩時間は終わっていたのはわかっていた。にも関わらず真剣に話を聞いてくれる監視官に、さらに涙が出そうになる。
「そんな時、ついに現れたんだ。こんな俺を救おうとしてくれる彼が。彼は空を飛べる上、顔がアンパンの変な奴だった。ただものすごく強かった。そこで俺は初めて敗北というものを知った。全力を出したのに負けた。だけど楽しかった。楽しすぎた。初めてだったんだ、自分の持つ最大の力を出したのは。そこで改心できてれば良かったのに、馬鹿な俺はどうすれば彼を倒せるかという考えが頭から離れなかった…彼の弱点を見つけた時はすごく嬉しかったよ…でも彼はゾンビのように復活したんだ。嬉しかった。彼を倒すにはどうすればいいか、このロボットはもっとこうした方が良いのではないか…こう考えてる時間がこの上なく楽しかった。そして、彼と戦うために意味もなく住人を傷つけ、建物を壊した。そして彼が来る。負ける。考える。そしてまた町を壊す、気づいたらこの最悪なループから抜け出せなくなっていた。そしてこのループが自分にとって当たり前になっていった。自分の中にあった良心さえもいつのまにか忘れてしまっていた。そしてついに起こったんだ…あの事件が」
思い出しただけで言葉が詰まる。同時に今までやってきた自分の悪に吐き気を催す。
「俺は手も足も出なかった」
1ヶ月前
「大丈夫か、しっかりしろ!」
「私のことはいい…あなた達だけでも…生きて…」
「そんなことできるか!」
ひ弱な体で彼女をおぶる。
もともと重かった足取りがさらに重くなる。
「大丈夫だお前ら、この先には俺様が作ったジェット機のがある。それで脱出しよう」
朦朧とする意識の中決死の思いでたどり着く。
「馬鹿な…そんな…こと…」
目の前にあったのは原型が予想できないほど壊れきったジェット機だった。
「あぁ…あぁぁぁ…きっとこれは天罰なんだ。意味のない暴力ばかりしてきた俺様に対してのテンパっなんだ…」
頭が真っ白になる。
何もかもが朦朧とし、意識が遠のいていく…
「…きてください!起きてください!まだ諦めちゃダメです!あなたは確かに悪いことしかしてきませんでした。ですがあなたのお陰で救われた人もいるってことを忘れないで下さい!あなたは私にとって憧れの的です。あなたにそんな無様な死に方してほしくないんです!」
誰かにここまで言われたのは初めてだった。
必死に涙をこらえ立ち上がる。
「確か俺様の部屋にテレポート出来る機械がある……あった、これだ!これでお前だけでも逃げろ!なぁに、俺様もこんなとこ早く脱出してやるよ。しかも死にかけの彼女も運んでやらなきゃ…行けないから」
「ダメです!これはあなたが使ってください」
「ダメだ!言うことが聞けないのか?これはお前が使え!」
その瞬間体に痺れがが走る。
「悪く思わないでください」
彼が手に待っていたのは麻酔銃だった。
そして素早い手つきで装置俺につけていく。
「いつまでも元気でいてください。心配しないでください。すぐあなたに追いつきます」
口が動く。同時に堪えていた涙をも留めなく流れていく。
「やだ、行きたくない!もう一人にはなりたくないんだ!ドキンちゃんっ!ホラーマンーーーーーーーっ!」
長い間眠ってたことがわかるぐらい気だるく感じる。
目を開けるとそこにだれかいることがわかった。
「大丈夫かい?」
それがいつも勝つことができなかった彼だとすぐにわかった。そして彼の親切な心に涙をが止まらなかった。
「俺はひどいことをした。なのに何故手を差し伸べる」
キョトンとした表情で彼は言う。
「困ってる人を助けるのに善悪なんて関係ないよ。何かあったのかい?」
俺はその日にあったこと、あなたを倒すためだけに、町を襲ったことなどを全て話した。
そして最後に弱々しい声で言った。
「俺様も今からでもみんなを助けられるあなたみたいな人になれるかな…」
「 」
「…ありがとう…ありがとう…ありがとう…」
「………と言うわけなんだ。どうだい、呆れただろ?」
びくびくしながら監視官の顔を見る。しかし、以外な答えに呆気に取られる。
真剣な顔、しかし彼らの頬には何滴か涙をがあった。
「何を言っているんだい、確かにきみのやってきたことは悪いことだが、それでも君はこうして良い方向へと進んでいるではないか」
「ありがとう…ございます…」
すると監視官が熱の入った口調で話しかける。
「あと何年かすればお前もここから出ることができる。悪いことを償うにはその分良いことをすれば良い。ここから出たら是非みんなの役に立ってくれ!」
○年後
「ここからが本番だ!みんなの役に立てるよう気合い入れていくぞ、そうじゃないとあいつらに合わせる顔がないしな…とその前にまずは彼に会って礼を言わなければ」
俺は絶対に忘れない、あの日彼が言ってくれた言葉を…
「俺様も今からでもみんなを助けられるあなたみたいな人になれるかな…」
「良い人になるのに遅いも早いも関係ない、しかも世界にはあなたを必要としてくれる人は必ずいる。だからそう言う人達のためになってあげて!そして困ったらいつでも僕に相談して。力になるよ!」
俺の廃れた人生を変えてくれた、俺の目指すべき人。
ありがとう…アンパンマン。