女性指揮官と戦術人形達のかしましおぺれーしょん【完結】   作:笹の船

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今回は戦術人形出ません(タイトル詐欺)
指揮官と休日を満喫するカリーナのお話になります。


たまの外出だもの

「あれ、カリーナじゃない。何してるの」

 

 ショップの在庫を確認している私を呼ぶ声に振り返ってみれば、そこには私服姿の指揮官さまがいらっしゃいました。

 黒いタンクトップにカーゴパンツという、ラフな格好でありながら、けれどずぼらな格好とは思わせない程度には引き締まった体付きに、女の私でも一瞬見とれそうになります。

 一つ残念なことといえば、その綺麗な体にいくつもの傷跡があることでしょうか。

 

「指揮官さま、おはようございます」

 

 勿論そんなことは口に出しません。このご時世、いろんな過去を持った人がいます。藪をつついて変なものを出してしまわないように、下手に詮索はしないのが吉となのです。

 

「おはよう。で、アナタ今日休みじゃなかった?」

 

 指揮官さまの言葉に思わず目をそらします。このところは仕事も落ち着いてきたので、こうして私と指揮官さまの休みが被ったところで、基地の運営に影響は出なくなりました。

 そうは言っても今までずっと忙しく働いていたわけですから、突然お休みになったって体は勝手に動いてしまうモノ。特に

私が担当しているショップの在庫状況なんかは毎日チェックしないと落ち着かないのです。

 

「いやぁ……まあ、その。日々のルーチンですから」

「あー……ごめんね。もうちょっとアナタに休みをあげられたら良かったんだけど」

 

 私の言葉に、色々と察してくれた様子の指揮官さまが謝罪の言葉を口にしました。

 

「いえ! こうしてお休みくれるだけでもありがたいです。というか、謝るくらいなら何か買ってくださいよ!」

「えぇ~……」

 

 あ、露骨に嫌そうな顔をした。失礼な!

 そんな態度をとる指揮官さまに、抗議の意味も込めて頬を膨らませてみる。

 

「わかったわかった。それじゃあこの後一緒に買い物行こうよ。ご飯くらいならご馳走するから」

 

 それでいいでしょ、と苦笑いを浮かべる指揮官さまに、けれど私はあえて意地悪をしてみます。

 

「私としてはショップでお買い物の方が嬉しいんですわよ?」

「アナタのセールストークに付き合うと財布が軽くなるの……この間も45にお説教食らったのよ」

 

 とびきり酸っぱい食べ物でも口に入れた様な表情をする指揮官さまを見て、思わず吹き出してしまいました。相変わらずUMP45さんには頭が上がらないみたいですね。

 

「アハハッ! 冗談ですよ! それじゃあ、今日はご馳走になっちゃおうかな」

「あんまり高いのは止めてね」

 

 釘を刺す指揮官さまの目線が痛い。うーん、私そんなにがめついかな。でも仕方が無いと思うのです。何しろショップの売り上げが私の給料に直結しているのですから。そりゃあがめつくもなるというものです。

 それはそうと、折角のお出かけです。指揮官さまが誘ってくれたわけですし、楽しまないとですね。

 

 

 

 それからしばらくして、私達は基地から一番近い街にやってきていました。

 一番近い、といっても車で片道二時間はかかる距離ですが、鉄血の襲撃があっても住民の避難を行えるようにする為ですから仕方ありません。

 その代わり、このあたりで最も栄えているこの街には様々なものがあります。衣類、食材、雑貨、娯楽などなど。

 実際、非番の日にはこの街まで出張ってお買い物をする戦術人形の方々もいるそうです。

 人間の雇用を奪うということで、一部の人からは目の敵にされている戦術人形ですが、少なくともこの街の人々にそういう態度をとる人は少ないようです。

 これも指揮官さまの日々の努力の賜物だそうで、初めの頃は色々トラブルがあったとか……

 まあとにかく、今は私達も気兼ねなくこの街で羽を伸ばせるということです。

 

「カリーナ……アナタといると本っっ当に財布に良くないわ」

「うふふ、何のことでございましょう」

 

 自分でもわかるくらいご機嫌な笑顔を浮かべている私とは対照的に、指揮官さまは自分の財布の中身を見て沈んだ表情をしていました。

 別に大したことをしたわけではありません。ただちょっと日々の苦労をねぎらってほしい、と『お願い』しただけですから。

 

「はぁ……とりあえず休憩しましょ。アナタに付き合わされると、お財布は軽くなるけど、お腹はどんどん重くなるわね」

 

 そう言ってお腹をさする指揮官さま。まあ、この街で評判と噂のスイーツショップで目ぼしいメニューを片っ端から食べればそうなってもおかしくありません。頼んだのは私なんですが。

 ダイエットしなきゃ、とぼやきながら指揮官さまが近くのベンチに腰を下ろします。私もその隣に腰を下ろしました。

 

「うっぷ、食べ過ぎた……カリーナ、よくあんなに食べれるわね」

「あはは。甘いものは別腹っていうじゃないですか。指揮官さまも甘いものはお好きだと聞いていますが?」

「私はあなたほど若くないのよ。残念なことにね」

 

 若干苦しそうに顔をしかめながら、指揮官さまは肩をすくめます。

 

「ていうか、アナタ街に来るたびにあんなに食べてるの? 店員さんがまたか、って顔してたんだけど……」

 

 指揮官さまの追求するような視線から逃れるように、私は空を見上げました。

 

「いやー、今日はいい天気ですねー」

「誤魔化すならもっとうまくやる努力をしなさいよ……」

 

 余りにも露骨な逃げに、指揮官さまの呆れた声が聞こえます。

 

「というか、あんだけ食べてなんでアナタ太らないの。……全部胸に行ってるのかしら」

「指揮官さま、それはセクハラですよ」

 

 唐突なセクハラ発言に、思わず苦笑いを隠せませんでした。

 

「……あの、指揮官さま。あまり私の胸を見ないでもらえます?」

「あー。うん。……大きいわよねえ。羨ましいなあ」

 

 私の胸をまじまじと見ながらそんなことを呟く指揮官さまに、思わず顔が熱くなるのを感じました。

 

「あの、恥ずかしいです。っていうか、指揮官さまだって十分あるじゃないですか! 形だってすごい綺麗だし」

 

 確かに指揮官さまの胸は大きいとは言えないかもしれませんが、小さいわけでもありません。

 それに、以前更衣室で着替えているところを見たことがありますが、形が凄い綺麗です。なんというか、大きければ魅力的というわけではないってことを思い知らされました。

 

「まあ、見せるような相手もそんなにいないから大きくたって意味ないんだけどね」

 

 どこか負け惜しみにも聞こえる捨て台詞を吐いて、指揮官さまは唇を尖らせました。お仕事してる時は頼りになる人ですが、こういう時はちょっと子供っぽいですね。

 そんなことを考えていると、小さな子供がお母さんと思しき女性の手を引っ張って、何かをねだっている声が耳に入りました。

 声のした方向を見れば、お母さんの服を引っ張っている子供と、それをなだめるお母さんの姿がありました。

 こういうのを見ると、つかの間の平和を感じられます。基地にいるときは、いつもどこか気を張っていることが多いですからね。

 

「そういえば、指揮官さまはお子さんが欲しいとか思ったことはないんですか」

 

 ふと口をついて出た言葉。言った後で、失言だったかと冷や汗が流れます。

 恐る恐る指揮官さまの表情をうかがってみると、指揮官さまは穏やかな表情で私が見ていたであろう親子の方へと視線を向けていました。

 

「そうだなぁ。……考えなかった、と言えばウソにはなるかな」

「考えなかった? ……じゃあ、今は?」

 

 ダメだと思いつつ、含みのある言い方に思わず聞き返してしました。直後、聞くべきではなかったとすごい後悔をすることになるのですが。

 

「ああそっか。カリーナは知らないんだよね。私、子供が作れない体なのよ」

 

 まるで今ダイエットしているの、とでもいうかのような軽い口調で告げられた言葉に、一瞬思考が止まります。

 

「え……それって、どういう……」

「そのままの意味だよ。昔、無茶をやらかしたツケでね」

 

 そろそろ行こうか、と立ち上がる指揮官さまはいつもと変りない様子でした。それがかえって罪悪感をあおります。

 

「ああそうだ。このこと、あんまり言わないでね。聞いて面白い話でもないからさ」

 

 苦笑いをしながら、人差し指を立てて唇にあてる指揮官さんにただ頷くことしかできません。同時に、聞かないでくれと言外に言われているような気もしました。

 

「さあ、お土産買ってから帰ろう。じゃないとまたごねる子達が出るからね」

 

 何がいいかな、と楽しそうに歩き出す指揮官さまですが、その後ろ姿がほんの少しだけ寂しそうに見えました。

 彼女の過去に何があったのか、私は知りません。いつか、教えてもらえる日は来るのでしょうか。

 今日は色々ご馳走してもらったし、ちょっとまずいことを聞いてしまいました。今度、指揮官さまにはサービスしてあげないとですね。

 そんなことを思いながら、私達は基地への帰り道を歩き出しました。

 

 

 

 その日の夜、カフェでUMP45さんにお金を使い過ぎだと、お説教をされていたようですが私は知りません。知りませんったら。

 




さらっと重い話をぶち込んでいくスタイル。

ほのぼのモノを書きたいと思いつつ、どうしても思考がシリアス系の話に向かう癖があるようです。
上手くまとまらないので現状没ネタになってますが、女性指揮官ことシーラが指揮官になってから、UMP45と誓約するまでのシリアスなお話をいつか書きたいとは思ってます。

このシリーズを始めて半月位になりますが、ちょっとずつお気に入り数とかが増えてて嬉しいです。ありがとうございます。
とにかく話数を増やして評価とか感想とか稼げたらいいなとか思ってます(下心丸出し)
これからもよろしくお願いします。
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