女性指揮官と戦術人形達のかしましおぺれーしょん【完結】   作:笹の船

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共同捜査依頼

 

 昼食もそこそこに司令室に戻ると、タイミング良く外部からの通信を知らせるコール音が鳴り始めた。相手は……ああ、45達だ。

 

「こちらパーチ」

『こちらNEMO1。お届け物の配送準備が出来たわよ』

 

 聞き馴れた声から少し遅れて、司令室のモニターに通信相手の姿が映る。

 そこには頭に包帯を巻いた45の姿があった。後ろにいる9や416、G11もどこかしら怪我しているみたいだった。

 

「……何があったの」

『ごめん。尻尾を掴むので精一杯だった……いや、もしかしたらトカゲのしっぽの可能性すらあるけど』

「何でもいいわ。とにかく、収穫があるなら十分よ。一度基地に戻りなさい。修復した後でゆっくりと報告を聞かせてもらうから」

 

 そうは言うものの、内心は穏やかではなかった。

 404小隊はウチの第1部隊と比べたって見劣りしない程の練度があるし、私が色々教えたこともある。

 例えグリフィンが相手でも、正面からの戦闘でもするのでない限りは作戦の遂行が出来るほどの練度があると思っているし、事実今までこの手の作戦でしくじったことがない。

 そんなこの子達が、軽くない損傷を受けている。

 

「迎えに行くわ。あとで座標を送って」

『パーチ、待って。迎えはいらない。自力で帰る』

「何を言って……」

『向こうにも電子戦特化、あるいはそれに類する戦力がいる』

「ッ!」

 

 それが意味することはつまり、下手な通信や座標送信はこちらの拠点や素性を相手に教えるということ。今45達との通信に使っているこの回線は勿論暗号化された特殊回線だけど、それだってもしかしたら傍受されていてもおかしくない。

 そして、そんな性能を持った人形や装備はグリフィンにはなかったはずだ。

 

「……大収穫ね。分かった。NEMO1からNEMO4。命令よ」

 

 私の言葉に全員の視線が鋭くなる。良かった、眼は死んでいない。気力があるなら、希望は繋げる。

 

「必ず。生きて帰りなさい」

『了解。NEMO1、アウト』

 

 45達が頷き、通信が切られる。

 今どき電子戦の出来る装備、あるいは人形なんて需要がほとんどない。もしそんな酔狂なものを運用するとして、かつE.L.I.Dが絡むとなれば自ずと可能性は絞られてくるものだ。

 

「クソ……まさか正規軍が絡んでるっていうの……?」

 

 考えたくない最悪の可能性だ。それこそ、私達をハメた奴らの残党が絡んでいてもおかしくない。

 

 錬金術、あるいは魔法。そんな空想の世界にしかなかったようなものと同じことが出来るようになるかもしれないのが崩壊液だ。

 思わず奥歯を噛み締める。崩壊液技術が未来の可能性であることは否定できない。それでも、その為に誰かを実験に使ったりするのは絶対に間違っている。

 少なくとも、私はごめんだ。その実験が、殺しの為のものだとするならばなおさら。

 

「クソ……」

 

 たまらず毒づく。私達をハメた奴に復讐を誓って指揮官として働く傍ら、奴らの情報を掴んだ時のことが頭によぎった。

 やっとこさ掴んだ実験施設に乗り込んだ時、私を待っていたのはかつて私が家族と呼んだあいつらだったモノだ。

 死してなお、ヒトとしての尊厳をも弄ばれた彼らを見た時のどす黒い感情は、きっとこの先も一生忘れることはないと思う。

 そんなもの、もう二度と経験したくない。

 だから、アイツらがE.L.I.Dの研究のために誰かを使うって言うなら絶対に止めなきゃならない。絶対にだ。

 そんな思考の海に沈んでいきつつある私の耳に、突然耳障りなコール音が飛び込んできた。

 一体誰かと思いながら無造作に通信を繋げる。

 

「はい?」

『私だ、コリンズ指揮官』

「ヘリアントス。……仕事の話かしら」

『その通りだ。貴官にはR05地区のシンプソン指揮官と一緒に調査をしてもらう』

「調査って、何の?」

 

 私の問いに、ヘリアンの表情が険しいものになった。手元に書類があるようで、それに目を落としながらかなり苦々しい表情になっている。

 

『実は、R05地区の市外でE.L.I.Dと思われる症状を発症した市民が発生した』

「……何ですって」

 

 随分とタイミングのいい話だ。きな臭いな……

 

『幸いパンデミックは起きていない。が、それも時間の問題の可能性がある。故に、貴官らには共同で早急に原因を調査してもらいたい』

「了解よ。モイラ……シンプソン指揮官にはこの話伝わってる?」

『ああ。彼女には既に調査を始めてもらっている。……だがどうも芳しくないようでな』

「……ただ街にE.L.I.Dが紛れてきた、なんてことじゃなさそうね」

『ああ。R05地区に限った話じゃないが、怪しい宗教団体が崩壊液を集めているという噂も聞く。何か……良くないことが起こりそうな気がしているんだ』

「同感ね。私も準備ができ次第すぐ人形達を向かわせるわ」

『ああ、頼む』

 

 ヘリアンが頷いたのを見て通信を切る。

 ……さて、どう見るべきかな。奴らが私をかく乱するための作戦だろうか。まあ、私に限らずグリフィン自体の目をそらすという意味もあるかもしれないけど……

 目的が何であれ、これを放っておくわけにはいかない。

 

「こちら司令室。これから作戦を発令します。今から呼ぶ隊員は司令室に集まって」

 

 とにかく、まずは調査を始めないと。そう思いながら、私は基地内放送で調査に送る子達を集めることにした。

 

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