女性指揮官と戦術人形達のかしましおぺれーしょん【完結】 作:笹の船
太陽が空から姿を消してから数時間後。
R05地区の市街地から少し離れた場所にあった廃墟……だった場所にジェリコ達を乗せた車両が近づいていく。
その廃墟だったモールが、崩壊液を取り扱っていると思われるカルト教団のアジトだ。
そこで崩壊液を取り扱っている証拠を押さえる為に、一気に乗り込み廃墟を制圧する。
制圧が完了した後は教団の幹部、あるいは現場リーダーとも言える人物を確保。その後さらに詳しく一帯の調査をするという流れだ。
『指揮官、ポイントAに到達しました。これより徒歩で目的地に接近、その後TAC-50のドローンで偵察を始めます』
「了解。皆ブリーフィングの内容は覚えているわね? モイラ達の部隊が反対方向からアプローチしてる。彼女達が突入後、戦闘が予想されるわ。戦闘が始まったらアナタ達はモール内部に侵入。奴らが崩壊液を使っていた証拠を探して」
『了解』
私の操作するドローン越しにジェリコが頷き、そして隣にいるTAC-50へ目配せをした。
TAC-50も無言でうなずき返し、ドローンの楓月を飛ばす。
それを見た私はモイラへ合図を出すために口を開きかけた時。
――ザッ……
「……?」
『コリンズ指揮官! こちらの部隊は配置につきました。……コリンズ指揮官?』
「ごめん、ちょっとまって」
……何だ、今のノイズは。気のせいか? 通信状況が悪いんだろうか。
なんだか嫌な予感がして、司令室のコンソールを操作して盗聴探知プログラムを走らせる。
結果は白。特に盗聴されていたりするわけではなかったようだ。
気を張りすぎだろうか。でも、こういう時に注意をしないに越したことはない。
とはいえ、取れる対策はあまりない。そもそもこの回線はグリフィンが作戦時に使うための暗号化された軍用回線だ。ちょっとやそっとの技術で盗聴できるものじゃない。
……気にしすぎるだけ時間の無駄かもしれない。
「ごめん、こっちも配置についたわ。今TAC-50のドローンで偵察をしてる」
『了解です。指示があるまで待機します』
モイラがそう答えた時、TAC-50が私を呼んだ。
『指揮官。こちらTAC-50』
「こちらHQ。どうぞ」
『モール外部の偵察が完了しました。教団メンバーが各所で見回りを行っているようです』
「了解。第4部隊、データリンクは済ませたわね?」
『同期済みです。そちらにもリンクさせます』
司令室のモニターにドローンの偵察情報が映し出される。暗視モードに切り替えてボンヤリと人影らしいものが見える箇所に、分かりやすいピンが立てられる。
入口に2人、屋上に4人、裏口に2人か。
……思ったより少ないな。この敷地の広さなら、もっといてもいいと思うんだけど。
「確認したわ。向こうにリンクする。全員すぐに動けるように待機。ジェリコ、ウェルロッド。今回は夜目が効くアナタ達が頼りになるわ」
『了解です。指揮官、一つよろしいでしょうか』
「何かしら」
モイラに偵察データの同期を行っているところに、ウェルロッドが声を上げてきた。
『TACがリンクした偵察データですが、歩哨の数が少ないです。入口、裏口はともかく屋上に配置された数が4人ではとても全体をカバーできません。……罠、あるいは歩哨に頼らない監視方法があると思われます』
「同感ね。でもそれならなおのこと引けないわ。グリフィン相手にそんな真似ができるほどの奴らがいるなら、必ず裏がある。ここで逃がせば、もっと厄介なことになるかもしれないわ」
とはいえ、油断はできない。罠にしろ装備が充実にしているにしろ、下手に動けば返り討ちになるのはこっちだ。
「R05、聞いてたわね? 細心の注意を払って行動して。こちらは準備出来てるわ」
『了解です。第1部隊、準備は出来てる?』
『私はもう少しゆっくりしていきたいところですねえ』
この声はカルカノライフルの妹か。性格を考えるなら今のは言葉通りの意味ではなく肯定を意味するんだろう。
『了解よ。第1部隊、突入開始! ナガン、MP5。先行して。9A-91、ガリル、シノは後方から二人の援護を』
モイラの言葉に合わせてR05の人形達が動き出す。
「第4部隊、聞いてたわね。TAC-50はドローンで偵察続行。状況が動き次第データを更新して。他のメンバーはまだ待機。戦闘が開始されたら裏口から屋内へ侵入よ」
『了解!』
さあ、こっちも仕事を始めよう。