女性指揮官と戦術人形達のかしましおぺれーしょん【完結】   作:笹の船

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闇にうごめく

『敵、R05側の部隊に攻撃を開始!』

「第4部隊、行動開始。建物内へ侵入を開始して」

 

 始まった。ドローンの見える範囲ではこちらに気づいている敵はない。

 第4部隊の皆が周囲を警戒しながら敷地内に入り、建物の裏口の近くまで来る。

 裏口にいた信者はどうやら正面で陽動してくれているモイラ達の部隊の方へ応援に行ったようだった。

 屋上の4人もこちら側に来ているような様子はない。

 ウェルロッドが先行し、他のメンバーに周囲が安全であることをハンドサインで知らせる。

 フュンフ、TAC-50、ジェリコ、スコーピオンの順でウェルロッドの元へと続いた。

 裏口の前に全員が集まったことを確認したウェルロッドが全員にアイコンタクトを送り、それぞれが頷き返す。

 それを受けたウェルロッドはゆっくりと裏口の扉を開けた。

 特に鍵もかかっていなければ、ブービートラップも仕掛けられていなかった。

 音を立てないように静かに扉を開け、第4部隊の皆が中に入っていく。それについていくようにドローンを屋内に滑り込ませた。

 外では激しい戦闘音が鳴り響いているけれど、屋内は静かなものだった。

 新興宗教のシンボルらしき落書きが近くの壁などにいくつか書かれている通路を皆が進んでいく。

 正直に言って、不気味なくらい静かだった。

 外で戦闘を行っているというのに、不釣り合いなほど屋内が静まり返っている。

 非戦闘員が全て外の部隊に釣られたんだろうか。でも、教祖ないし幹部クラスの護衛は必要なはずだ。戦力がゼロとは考えにくい。

 それに、警告なしの夜間の襲撃だ。やっておいて言うのもアレだが、もっと混乱による騒ぎが起きていてもおかしくないのに。

 やがて、第4部隊が事務室らしき部屋を見つけた。

 周囲の安全を確認して、ウェルロッドとジェリコが中に突入する。

 中は無人だった。けれど、比較的最近まで使われていたであろうラップトップが机の上に置いてあった。

 

『指揮官。このラップトップ、最近まで使われていたみたいです』

「中身確認できそう?」

『お待ちください』

 

 ウェルロッドがラップトップを起動する。その間にジェリコが部屋の中の棚を物色し始めた。

 

『……ダメですね。パスワードが設定されています。無理やりという手もありますが、この場でやるのはちょっとおススメ出来ないですね』

『ウェルロッド、多分これですね』

 

 事務室の机からジェリコが一枚の紙きれを渡す。

 何文字かのローマ字と数字が不規則に書かれたものだった。

 

『助かりますジェリコ。それを試してみましょう』

 

 ウェルロッドがタイピングする音が小さく響く。

 

『……行けました』

『パスワードの管理がなっていませんね。それに、机の引き出しの裏にこれがありました』

 

 そう言ってジェリコがドローンにも見えるように見せたのは小さなカギだった。形状的に部屋のカギというよりは南京錠やそれらの類だろう。

 

「引き出しの裏とはまた古い手ね。スパイ映画でも見たのかしら」

『だとしたら裏口から入られることを想定してブービートラップの一つでも仕掛けておくべきでした。どうやら観た人間はスパイ映画余り楽しめなかったみたいですね』

『ふふ、ジェリコがそんな冗談を言うなんて珍しいですね』

 

 私とジェリコのやり取りを聞きながらラップトップを操作していたウェルロッドがクスクスと笑う。それを受けて、ジェリコはほんの少し気まずそうに視線をそらした。

 

『これは……指揮官。このラップトップ、パンドラの箱かもしれません』

「ウェルロッド?」

 

 何か重大な何かを見つけたのか、ウェルロッドが険しい顔をしていた。

 

『ざっとメールとチャットシステムでのやり取りを確認しましたが、その中に正規軍の軍人と思われる人間とのものがありました』

「……ウェルロッド、ラップトップのデータを丸ごとコピーできる?」

『試してみますが、データ破損をしないようにすると少し時間がかかるかもしれません』

「分かった。モイラ、聞こえる?」

『はい。こっちはおおむね問題なく制圧できていますが、そちらで何か問題が?』

「証拠になりそうなものを見つけたの。ただ、データをダウンロードするのに時間がかか……」

 

 そこまで言いかけたところで、部屋の外に待機させていたスコーピオンが声を上げた。

 

『止まれ! ……止まれってば!』

 

 やや焦りの感じられる声、次いで銃声。

 

「スコーピオン! 状況報告!」

『し、指揮官! コイツら、人間じゃない!』

 

 急いで部屋の外へとドローンを向かわせる。

 外に出ると、数人の信者と思わしき人影がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。

 いや、信者だったモノ……だろうか。

 

「全員戦闘態勢! フュンフ、スコーピオンは足止め! TAC-50は奴らをブチ抜きなさい! ウェルロッドがデータ抽出するまではここを守って!」

 

 ドローンに映っていたのは、見間違えるはずもないE.L.I.D達の姿だった。

 

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