女性指揮官と戦術人形達のかしましおぺれーしょん【完結】 作:笹の船
最近三人称ばっかりだったからちょっと大変だった。
★恋ってどんなかんじ?
正規軍半壊による治安維持やらそのアフターケアもある程度の目途が立ち、私達とシーラは久しぶりにR06前線基地に帰ってくることが出来た。
要するに、仕事が一段落したから休暇を取っていいぞとあのクルーガーからお達しが出たわけだ。
私ことUMP45――今はナタリアという名前がある――も、久しぶりの休暇と言うことでそれなり以上に浮ついた気分になっていたことは否定しない。
基地に帰ってすぐセシリアやフュンフ達からお出迎えを受けて慎ましやかなパーティもして、その後はまあ……色々お楽しみをした。
……のはいいんだけど、ご無沙汰だったからとお互い加減を忘れてしまってシーラが完全にダウンしたまま起きれなくなってしまったのは反省しないといけない。私は人形だから寝るだけである程度リセット出来たけど、生身のシーラはそんなことできるわけでもないし。
そんなわけで、愛しのハニーがベッドから起きれないしそもそも泥のように眠ってて起きてこず、時間を持て余した私は特に何をするわけでもなくシーラの私室にある椅子に座って携帯端末を弄っていた。
時折聞こえるシーラの寝息に頬が緩むのを感じながら端末を弄っていると、突然着信が来た。画面に表示されたのは、P基地にいるユノちゃんのところのUMP45だ。
電話に出る前に一瞬外に出た方が良いかと悩みもしたけれど、シーラは一度ぐっすり眠ったらなかなか起きない。それに今日は当分起きてこないだろうから問題ないだろうと思い直して電話に出た。
「はい、もしもし?」
『あ、久しぶり隊長さん。元気にしてた?』
「久しぶりね。そっちも元気にしてる?」
『おかげさまでね。9も元気よ』
「それは良かった。それで? 今日はどうしたの?」
私がそう問いかけると、電話口の向こうでUMP45が何かを言おうとして、でも迷って口に出せないと言った様なもごもごした音が聞こえてきた。何か聞きにくい話題らしい。
『その……実はちょっと聞きたいことがあって』
「なぁに? 私に答えられる範囲のことなら答えるわよ」
曲がりなりにも相手は私の影武者として作られた存在だ。並大抵のことでは動じないことはオリジナルである私にもわかる。
そんな彼女がこんななのだから、きっと相当に聞きにくい話題なのだろう。……例えば、まあ夜の過ごし方、とか……。
自分で自分の想像にちょっと恥ずかしくなっていると、意を決したように向こうのUMP45が口を開いた。
『ねえ、恋をするって……どんな感じ?』
話を聞いてみれば、どうやらP基地のG11にリベロールが惚れているという周知の事実に向こうの9がUMP45に恋をしたことがあるのかとからかって来たのが事の発端らしい。
確かに、仕事以外では寝るしか能のないようなG11にすらそんな浮ついた話があるのに自分にはないとなったら焦るというかなんかなんとも言えない気分になるのも仕方ないのかもしれない。
「なるほどねー。ふふ、そっちも楽しそうじゃない」
『茶化さないでよ……こっちは真面目に聞いてるんだから』
「あはは。ごめんごめん。で、恋をするってどういう感じか、だっけ?」
『9には刺激が強すぎるって言われたけど……まあ、聞くならアナタが一番かなって』
確かに、恋を知らない彼女に私達の経験を話すのは色々と刺激が強いかもしれない。最初は私もシーラもお互いのこと大っ嫌いだったし、何だったらファーストコンタクトはほとんど殺し合いに近い状態だった。
さて、どこから話したものかな……。とりあえず当たり障りのないところからにしようか。
「まあ、最初は私もシーラもお互いのこと嫌いだったのよ。それこそ、隙があれば殺してやろうかってくらいにね」
『え……意外。あんまりそんな風には見えないけど……』
「色々あってね。それに、こうなるまでは結構時間かかったのよ?」
『ふぅん……で、色々あって惚れてからはどんな感じだった?』
どうやら早く肝心なところを聞きたいらしく、そこに至るまでの私達のエピソードには興味がないらしい。UMP45は早く話せとせっついてきた。
「んー……まあ、一言で言うならモヤモヤする、かな」
『えぇ……』
電話越しにUMP45のげんなりとした声が聞こえる。まあ甘酸っぱい、とかそういう答えを期待してたんだろうからそんな声を出してしまうのも分からなくはない。
『なんか、思ってたのと違う』
「ふふ、ごめんね。でもホントよ。恋をして、シーラと一緒になれるまではずっとモヤモヤしてたもの」
『そうなんだ……なんだか、ちょっと恋はしなくてもいいような気がしてきた』
「まあまあ、そう言わないの。それに、恋はするものじゃないのよ?」
『……?』
確かに、恋をしてそれが実るまでの間は中々苦しいっていうのは確かだ。
でも、正直な話好きでそんな風になったわけじゃない。
「ありきたりな言い回しになっちゃうけど、恋っていうのはね落ちるものなのよ。気が付いたらしちゃってるものなの」
そう。私だって、きっとシーラだってお互いに好きになろうと決めて好きになったわけじゃないんだ。
嫌いだから一泡吹かせてやろうと思って、隙をうかがってはちょっかいかけて……そんなことをしてる内にいつのまにか恋をしてたんだから。
『なんか、下手な策略とかよりも不意を打たれそうで怖いわね……』
「アハハ、確かに。予測もへったくれもあったもんじゃないし、戦術人形としてのデータも役には立たないしね」
『うぅ……なんかそこまで言われると怖いなあ』
弱気な発言をするUMP45に、けれど私は笑顔を浮かべてエールを送る。
「大丈夫、きっと何とかなるわよ。なんたってアナタは私なんだもの。そうでしょ?」
『うっ……同じUMP45のはずなのになんだかそっちの方が大人の余裕みたいのをかもしだしててムカつく』
「その意気ね。私にいつまでも余裕ぶられるのが嫌なら、アナタもいい人を見つけてごらんなさい」
『簡単に言うけどね……大体、どうやってそんな相手を探せばいいのよ』
「あら、P基地には先輩がいっぱいいるでしょう? あの人たちに聞けばいいじゃない」
『絶対に一部の人形達にとって極上のネタ扱いされそうだし、気が進まないわ……ていうか、だからアナタに聞いてるのよ』
そうは言われても、私だって恋人探しをしてシーラに出会ったわけじゃないのだ。
陳腐な言い方をすれば運命に導かれての出会いだったし、これから恋をする子の相手をどう探したらいいかなんて私にだってわからない。
どうしたものかと考えていると、私の背後でモゾモゾとシーツがこすれるような音が聞こえてきた。
「んんぅ~……なたりー? だれとしゃべってるの?」
「おはよ、シーラ。よく眠れた?」
「……腰とか、あっちこっち痛いぃ……」
『……さくやはおたのしみでしたね?』
「う、うるさいわね。良いでしょどんな風に過ごそうと」
UMP45の茶化しに若干顔が熱くなるのを感じながら早口で反論する。
そんな私のことなどお構いなしに、シーラはベッドの中から腕だけを出して甘えた声を響かせてきた。
「なーたーりーあー……おこしてー」
『……ブラックコーヒー、飲もうかしら』
「勝手にしなさいよ。もう切るけど、いい?」
『ええ。まあ貴重な意見も聞けたし、今日のところはもういいかな。私もコーヒー飲みたいし』
「そう。じゃあね。……あ、そおだ」
『……?』
電話を切ろうとした向こうのUMP45が首を傾げた景色を幻視しながら、私は唇を吊り上げて最後に爆弾を落とすことにする。
「私も早くコーヒー飲めるようになりたいから、ささやかながらアナタの恋路を応援しようと思うわ。具体的には今日のことをソッチの諜報部に報告しようかなって」
『は!? 待ってそんなことされたら大変なことに――』
向こうが言葉を言いきる前に、私は電話を切って端末を机の上に放り出す。
そしてベッドに向かってシーラの手を取った。……あったかいなあ。落ち着く。
「おはよう、ナタリア」
仕事をしている時の凛とした表情ではない、ふにゃりとふやけたシーラの笑顔がそこにある。この表情を見るのも、なんだか久しぶりな気がした。
折角の休暇なんだし、こんな顔をするシーラをたくさん見たいな。
でも、まずはシーラと一緒に今日を始めよう。
そうして、私はシーラの目を見て頬が緩むのを感じながら、朝の挨拶をした。
「うん。おはようシーラ」
P基地のUMP45のキャラがあってるかは自信ないけど、イチャラブシーラさんとナタリアがかけてちょっと満足した。
何か問題あれば指摘オナシャス焔薙さん。