女性指揮官と戦術人形達のかしましおぺれーしょん【完結】   作:笹の船

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シリアス風味第二弾。
スコーピオンが無茶した話です。視点はスプリングフィールドになります。
何話か続く予定。


サソリの暴走

 作戦から帰投し、修復を終えて司令室に戻った私達を待っていたのは、平手打ちの音だった。

 指揮官がスコーピオンの頬を叩いたのだ。

 

「……何故私の指示を無視したの」

 

 指揮官は相当怒っているようで、普段のどこかふわりとした口調ではなく、別人のような固い口調に変化していた。

 叩かれたスコーピオンも、指揮官の豹変ぶりにただただ俯くばかり。その肩は怯えか、それとも悔しさからだろうか。分からないけれど小さく震えていた。

 スコーピオンが質問に答える様子がないことに痺れを切らしたのか、指揮官はため息を付くと普段は見せない、相手を射殺すかのような視線でもって私を睨む。

 思わず、体が強張るのが分かった。

 

「スプリングフィールド。今回の作戦、部隊長はアナタだったはず。何故、このバカの暴走を止められなかったの。このひよっこは元々突撃志向の強い性格だから、それを抑えるために練度が高く、的確な判断も下せるアナタを部隊長に据えたはずなんだけど?」

「申し訳ありません。……私の力不足です」

 

 自分の不甲斐なさ、指揮官の期待を裏切ってしまったことへの罪悪感。それらがない交ぜになって自然と頭を下げた。

 けれど、指揮官から返って来たのは厳しい言葉だった。

 

「違う。私が聞きたいのは謝罪じゃない。何故、スコーピオンの勝手な行動を止められなかったのか、と聞いているの」

「それは……」

 

 答えに詰まる。スコーピオンが指示を無視した理由が分からなかったからだ。

 作戦中、鉄血兵の殲滅を目前にするとスコーピオンは突然、無茶な突撃を行った。

 その時の指揮官からの指示は『無茶な進軍はせず、確実に敵を仕留めろ』だった。

 ブリーフィング、そしてそれまでの作戦行動ではスコーピオンは私と指揮官の指示をちゃんと聞いていて、独断専行をする素振りは全く見せなかった。

 だから、突然のことに反応が遅れた。慌てて制止をしたけれど既に彼女は駆け出した後。

 結果、残っていた鉄血兵の中にいたスナイパーにスコーピオンが狙撃された。

 直ぐにカウンタースナイプをしたから、大事には至らなかった。けれど、スコーピオンの一人しかいないダミーは全損、本体も肩を撃ち抜かれ中破。中破した彼女をフォローしようと、イングラムがスモークグレネードを投擲し、そのままスコーピオンを連れ戻す途中で鉄血の反撃を受け小破した。

 連れ戻される直前、スコーピオンが投げた焼夷手榴弾が残っていた鉄血兵の耐久を削っていたから、そのまま一気に攻め落とすことは出来た。

 結果から見れば、スコーピオンの突撃により迅速な殲滅が出来たことになる。

 彼女の突撃が鉄血兵の注意を引き、私とG36、FALが奴らを殲滅……連携としても悪くはない形だっただろう。

 ただ一点、それが独断で飛び出したスコーピオンのフォローで無ければ、だが。

 

「スプリングフィールド。今回の件は、このバカは勿論だけど、それを止められなかったアナタにも責任がある」

 

 指揮官の言葉は最もだ。いざと言う時に隊員の手綱を握れない部隊長は、隊長の意味がない。

 いざと言う時こそ隊員に的確な指示を出し、勝手な行動をさせない、されないように部隊をコントロールできてこそ『部隊』という一つのまとまりとして動く意味があるのだから。

 けれど、そんな指揮官に噛みついた人形がいた。スコーピオンだ。

 

「ちょ、指揮官! 何でスプリングフィールドを責めるのさ! 今回は……その、私が勝手なことをしたんだよ!? 罰を受けるなら私一人で……」

「へえ、ひよっこのくせに言うじゃない。口先だけは一人前ね」

「なっ……ひよっこって言うな!」

 

 明らかな指揮官の侮蔑の言葉に、スコーピオンの顔が怒りで歪む。ふるふると肩を震わせ、今にも飛び掛かりそうだ。

 これ以上スコーピオンに余計なことをさせるわけにはいかない。というか、指揮官もあまり煽らないでください……

 

「スコーピオン。指揮官の言うことは正しいんですよ。あの時、私はアナタの勝手な行動を止められなかった。結果としてアナタには負わなくていい傷を負わせてしまいました。部隊長として、アナタの勝手な行動を止められなかった私に落ち度があります」

「スプリングフィールド! 違うの、スプリングフィールドは悪くないんだよ!」

 いやいやと、駄々をこねる子供のようにスコーピオンは首を左右に振っていた。

 

「ハァ……話が進まない。第四部隊、全員始末書。期限は明日一杯。スコーピオンは営倉で一晩頭を冷やしなさい」

 

 指揮官の言葉に、部隊員達は皆、仕方が無いといった表情をした。

 一方、スコーピオンは驚いた表情をしている。そしてそれは、すぐに怒りの表情へと取って代わった。

 

「なっ……なんで皆まで巻き込むのさ! 指揮官、なんで!?」

「営倉で頭冷やして考えなさい、このバカ。部隊で動くことの意味もね」

 

 もはや取り付く島もない。なおも噛みついてくるスコーピオンに対し、指揮官は彼女に対してまともに相手をする素振りすら見せていなかった。

 これ以上は時間の無駄だろう。指揮官の言う通り、スコーピオンには一度頭を冷やしてもらう必要がありそうだ。

 

「スコーピオン。行きますよ。確かに、アナタは少し頭を冷やすべきです」

 

 私の言葉に、スコーピオンの怒った顔がこちらへと向けられる。けれど、すぐにそれは消え去って、申し訳なさそうにしょんぼりとした表情に変わった。

 

「分かったよ……」

 

 スコーピオンが肩を落とす。他の部隊員達も心なしか気まずそうに視線を落としていた。

 

「スプリングフィールド。スコーピオンを営倉にぶち込んだら来なさい。他のメンバーはこのままここに残って」

「了解いたしました」

 

 指揮官の言葉に、再びスコーピオンの表情が憎々しげに歪んだ。

 けれど、彼女が何かを言う前に私は彼女の肩に手を置く。

 スコーピオンはそれを受けて再びしょんぼりとした表情に戻り、指揮官に背を向ける。

 

「それでは指揮官、一度失礼します」

 

 指揮官に頭を下げ、私達は司令室を後にした。

 

「ごめんね、皆……」

 

 司令室を出る直前、スコーピオンが震える声でそう呟いた。皆がどんな反応を示すか確認する前に、司令室の扉が閉まる。

 

「行きましょう、スコーピオン」

「うん……」

 

 スコーピオンの手を引いて、歩き出す。彼女は特に抵抗する様子はなかった。

 後でゆっくり話を聞いてあげよう。営倉への道を歩きながら、私はひそかにそう決意した

 




軽めに人物紹介を(設定集に後程細かく追記予定)

シーラ指揮官:命令違反したスコーピオンにマジおこ

スプリングフィールド:カフェのマスターでもある。今回は第四部隊の隊長を務めた。練度は基地内でも上位に位置する。

スコーピオン:比較的最近入ってきた人形。元々突撃志向が強かったが、命令違反するほどではなかった。

FAL、G36:中堅のアサルトライフル。後の話で活躍させたい

イングラム:中堅のチョイ下。後の話で(ry



それはそれとして、佐賀茂様の『戦術人形と指揮官と』に我が基地のシーラ指揮官(スイートキャンディ名義。……名義?)が登場しました。
コラボありがとうございます! この場でお礼を申し上げます。

当作品のお気に入りの数も順調に増えています。お気に入り数が1増えるだけで大変励みになっています。
UAもちょっとずつ増えていっているみたいなので、これからも頑張って書き続けていきたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
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