女性指揮官と戦術人形達のかしましおぺれーしょん【完結】   作:笹の船

20 / 118
スコーピオン暴走事件第二話です。
今回は指揮官の視点。


サソリの異変について

 肩を落としたスコーピオンがスプリングフィールドに連れられて司令室を後にするのを見送った後、私は気持ちを切り替えるべく小さく息を吐いた。

 あのバカに言いたいことはまだたくさんあるし、無謀な突撃をしたことに対して、私のハラワタはいまだ煮えくり返っている。

 けれどそれは今は置いておくべきだ。大体、この怒りは半分以上が私情でもある。今ここで残った第四部隊のメンバーに八つ当たりして良いモノではない。

 残った第四部隊のメンバーはFAL、イングラム、G36の三人だ。

 

「さて、それじゃあ早速アナタ達には色々と聞かせてもらいましょうか」

「指揮官、お言葉ですがスプリングフィールドが戻るのは待たないのですか?」

 

 私の言葉に小さく挙手をしてそう問いかけてきたのはG36だ。

 彼女達もバカではない。ここに残るように命じられた理由が、スコーピオンの暴走に関することだということくらいは想像がつくはずだ。

 だからこそ、スプリングが戻ってくるのを待って全員の認識のすり合わせをしやすくした方が良いのではないか。そう考えているのだろう。

 けれど、今は彼女を待つ必要はない。いや、出来ればスプリングがいてくれるに越したことはないのだが。

 

「どうせしばらく戻ってこないわ。だから先に始めるの」

 

 私の言葉にG36は不思議そうに首をかしげた。確かに、職務に真面目なスプリングが寄り道をするというのは中々に想像しずらいだろう。

 けれど、彼女はそれ以上に仲間思いで、面倒見がいい。特に、落ち込んでいる仲間を見て放っておけるようなタイプではない。

 着任してそれなりの時間を過ごしてきたFALは、すぐにその意味を理解したらしい。着任期間でいえばG36も同じくらいだけれど、このあたりはスプリングとのコミュニケーションの取り方の差だろうか。FALはスプリングとプライベートでも仲が良いし。

 イングラムは……まあ、彼女は一人を好むからその辺はまだ知らないようだ。スプリングの行動が解せないといった表情をしている。

 

「きっとスプリングはスコーピオンの話を聞いてから来ると思う。だから結構時間かかるんじゃないかしら」

 

 ピンと来てなさそうなG36とイングラムにそう言うと、彼女達も納得したような表情を浮かべた。

 

「それじゃあ指揮官、スプリングフィールドは置いといて、先に始めましょう」

 

 FALが進行をうながしてくれる。それに頷き、私は彼女達を見据えた。

 さっきよりは目つきは悪くないはずだ。多分。

 

「まあなんで残ってもらったかは言うまでもないと思うけど……スコーピオンの暴走についてよ」

 

 第四部隊の面々は、やはりそうかといった表情をしていた。

 あのスプリングフィールドが、スコーピオンの暴走を止められなかった。基地でも上位の実力者である彼女は、洞察力にも優れている。スコーピオンの様子がおかしければ、彼女が気づかないはずはない。

 とはいえ、彼女にも見落としがないわけではないのだ。実際、彼女は今回スコーピオンの異変に気付かず、暴走を許してしまったのだから。

 だから、同じ部隊で行動していたメンバー達にも話を聞く必要がある。

 

「何でもいい。ブリーフィング時から暴走の直前までで、何か違和感とか感じなかった?」

 

 私の言葉に、全員が考え込む素振りをする。

 

「私からは特には。ブリーフィングから作戦行動中、スコーピオンは変に駄々をこねるでもなく、スプリングや指揮官の指示にはしっかり従っているように思えました」

 

 G36は思い当たらないというように首を左右に振った。まあ、スコーピオンが私達の指示通り動いていたというのは通信機越しで確認している。

 

「確かに…………いや、待って。スコーピオン、確かに指示はちゃんと聞いてくれていたけど、逆に素直すぎるくらいじゃなかった? そもそも、いつもみたいに騒がなかったというか」

「言われてみれば、今日は随分とあのイノシシ娘は大人しかったですね。おかげで集中しやすかったですが」

 

 FALの気づきに対し、イングラムが同意を示す。

 なるほど、従順すぎるか。確かに、突撃志向が強く、お調子者なスコーピオンが黙って指示に従っているというのは、普段の彼女の姿と比べると違和感がある。

 

「しかしFAL、それは単にスコーピオンが作戦行動中とそれ以外とでケジメをつけるようになっただけでは?」

 

 G36の反論だ。確かに、彼女の言った通りケジメをつけていただけかもしれない。というより、本来はそれが出来て当然ではある。

 けれど、それに対してFALは肩をすくめた。

 

「いいえ。G36、あのスコーピオンよ? ある意味ムード―メーカーのお手本みたいなあの子が、突然あんな大人しくなると思う? それも戦闘中ですら、よ」

「それは……」

 

 ふむ、戦闘中は特に高揚しがちなスコーピオンが……。

 これはFALの言うことの方が説得力がありそうだ。

 勿論、大人しく隊長の指示に従うということが悪いわけではないし、そうあった方が良いことは確かではある。

 けれど、突然普段の立ち振る舞いと乖離した行動をとっていたというのは何か引っかかる。

 日ごろの立ち振る舞いと作戦中の立ち振る舞いを意図的に変えるという人形は確かにいるが、少なくともスコーピオンはそんなに器用な子ではない。

 やはり何かがあったのだろう。話を聞く限り、今回の作戦が開始される前に何かがあったと見ていい。

 

「何か悩み事でもあったとみるべき、か。……スコーピオンがあんな無茶をするような悩み事に、何か心当たりは?」

 

 私の問いに、けれど答えられる子はいなかった。誰もが首を左右に振る。

 手詰まりか、と奥歯を噛み締めた時、イングラムがあ、と声を上げた。

 

「そういえば、この間スコーピオンが夜中に訓練所に入ろうとしているのを見ました。その時は私を見て、何でもないと慌ててどこかへ行ってしまいましたが……」

「夜中に? ……確かに、うちの基地に登録された人形は24時間出入り自由だけど……」

 

 そんなイングラムの言葉にG36が何かを思い出したようにポンと手を叩いた。

 

「指揮官さま、そういえば最近耳に挟んだのですが、訓練所で後片付けが適当すぎる人形がいるらしいという噂を聞きました」

「ああ、そんな噂あったわね。そういえば、それでちょっとした騒ぎになった時、スコーピオンが珍しく率先して片づけ手伝ってたような……」

 

 G36の言葉に記憶を刺激されたのか、FALも思い出したことを語ってくれた。

 なるほど、いい感じに情報が集まってきた。これは十中八九スコーピオンが犯人だろう。

 シューティングレンジやキルハウスのある訓練所への出入りの履歴は基地のサーバーに保存される。彼女の入退室履歴を調べれば、その辺の裏取りも容易いはずだ。

 しかし訓練所に、か。お調子者なスコーピオンだが、だからと言って彼女は不真面目だというわけではない。

 とはいえ、普段の態度が態度だ。自分が努力しているのを表に出していくようなタイプではないのは想像に難くない。

 そうは言っても、わざわざ夜中に訓練所に出入りしようとするほど努力するところを見られるのが嫌いなタイプでもなさそうだが……

 ともかく、少しずつ見えて来たな。どの線で攻めていけばいいかは分かったかもしれない。

 スコーピオンは着任して比較的日が浅い。着任間もない人形が、休みの時間を使ってでも訓練所に出入りする……か。

 幸運にも私は、そんなことをしていた人形を少なくとも一人は知っている。もしも彼女と同じタイプの理由であれば、何を調べるべきかは目途は立つ。

 

「OK。皆、ありがとう。なんとなく見えてきた」

「それは良かったです。その調子で始末書も免除に……」

「イングラム、それとこれとは別よ。今回の件について、アナタ達なりでいい。原因と対策についてまとめておいて。ここにいる全員が、部隊長を務める機会はあるだろうし、そうでなくても今回みたいなことは防ぐべきだからね」

 

 私の言葉に、イングラムはあからさまにガッカリしたように肩を落としながら了解、と返してきた。まあ、面倒なのはわかるけどね。

 

「皆、今のところはこれで大丈夫。今日はゆっくり休んで頂戴。スプリングとスコーピオンには私が後で個別に話を聞くから」

 

 解散指示を出し、第四部隊の面々を下がらせる。

 さてと、まずは訓練所の利用履歴からかな。

 どのくらい時間がかかるか予想がつかないけれど、出来る限り早めに調べることは調べてしまいたい。放っておいていい問題ではないからね。

 本当はスコーピオンに直接話を聞いた方が早いのかもしれないけれど、それは今スプリングがやってくれていると思う。

 それに、今私が行っても彼女は素直に話してくれないだろう。

 私自身、今彼女と直接話して冷静でいられるかは怪しい。ちょっとした拍子でブチギレそうで怖いのだ。下手をしたらまた手を上げてしまうかもしれない。

 であれば、今私がやるべきはデータを集め、そこからスコーピオンがあんな無茶をしたであろう理由を推理することだ。答えはなんとなく想像はついているけれど。

 ともかく、データを基にした推理であれば、彼女もそう無碍には出来まい。そこを突破口に、彼女の本音と真意を聞き出そう。

 

 ポニーテールにしていた髪を一旦下ろして、改めて髪をまとめ直し再びポニーテールにする。

 

「よし……やるか」

 

 一言気合を入れて、私は司令室のコンソールを操作し始めた。




こう、大まかな流れっていうのは頭にあるんですがいざ形にしようとするとうまくいかないというか、『これでいいのかな、大丈夫かな』ってなることは多いです。
後今更なんですが作者はミリタリー系の知識が限りなくゼロに近いです。
乗りと勢いだけで書いてるところあります。余りにもおかしいってならないようにはしてますが……
とにかく致命的な矛盾とか起こさないように気を付けていきます。

P.S わーちゃんお出迎えしてから建造運がしょっぱい……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。