女性指揮官と戦術人形達のかしましおぺれーしょん【完結】   作:笹の船

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シリアス風味第二弾最終話です。
視点はスコーピオン。


そしてサソリは、前を向いて歩き出す

 体が揺らされたことをセンサーが感知した……気がする。

 

「……コーピオン」

 

 うぅん。もうちょっと寝かせてよ、とシステムが通常モードになろうとしたのを拒否して、スリープモードを継続させる。

 

「起き……とイタ……するぞー」

 

 寝かせてってば。誰さ、私を呼んでるのは。

 んん? なんか右のほっぺたがくすぐったい。なんだろう、これは。

 あ、左のほっぺたにくすぐったいのが移った。うーん、何かが線を引くように移動している……?

 仕方ない。起きるとしますか。

 

「んぁ……?」

「あ、やっと起きたわね」

「んー?」

 

 むくりと体を起こして、声のする方向を見る。

 まず目に入ったのは赤いジャケット。グリフィンの制服だ。

 次に目に入ったのは暗い営倉に溶け込むような真っ黒な艶のある髪。肩より少し長いくらいのそれが重力に従ってだらりと垂れ下がってきたのを、目の前の人物は滑らかな動作でかき上げて耳にかける。

 

「……し、指揮官!?」

「おはようスコーピオン。良く寝れた?」

 

 指揮官だった。いつもは髪をポニーテールにしていて、下ろしているところなんてあんまり見ないから最初は誰か分からなかった。

 営倉に入れられていたのに、気持ちよく眠っていていたところを見られた、ということに焦りを感じる。

 そんな焦りが顔に出ていたのか、指揮官はクスクスと笑って私の頭に手を置く。

 ていうかこの人、いつの間にか牢の内側に入ってきてるじゃん。

 

「別に寝てたからって怒らないわよ」

 

 笑う指揮官に、力んでいた肩の力が抜ける。よかった。これ以上の懲罰の上乗せはさすがにちょっと嫌だ。

 そうじゃなくて。

 

「し、指揮官。なんでここにいるの? もう朝?」

「今ちょうど日付が変わるところよ。朝まではまだ時間があるわね。で、私がここにいる理由は、昼間のアナタの勝手な行動についてお話をしに来たの」

 

 指揮官の言葉に、私は自分の顔が強張るのを感じた。きっと、指揮官は今でもすごく怒っているんだろう。

 そうでなければ、こんな夜中にわざわざ私を起こしてまで話をしに来るわけがない。

 

「し、指揮官……その、ごめんなさい」

 

 反射的に出た声は震えていた。デブリーフィングの時の鬼のような形相の指揮官を思い出す。

 怖くて指揮官の顔が見れない。ただ俯いて、膝の上にのせていた拳に力が入っているのが見えた。

 

「それは、何に対しての『ごめんなさい』なの?」

「そ、それは……指示を無視したことと、勝手な行動をして部隊を危険にさらすようなことをしたことに対して……」

 

 そうだ。私は部隊を危険にさらしてしまったんだ。ごめんなさい、なんて言葉一つじゃ到底許されない。

 それでも、今の私には謝ることしか出来ない。罰が下されるなら、それも甘んじて受けるべきだとも思う。……出来れば少しは優しくしてほしいんだけど。

 けれど、指揮官から返ってきた言葉は予想外のものだった。

 

「それについてはもういいの。スプリングから聞いた。あの子にも怒られたんでしょう」

「う、うん……」

 

 そうか、スプリングフィールドはあの後、指揮官のところに行って私と話したことを報告したのか。

 じゃあ、許してもらえたのかな。

 そう思って顔を上げると、そこには怒ったように唇をへの字にした指揮官の顔があった。

 

「指揮官? えっと……」

 

 まだ怒られるのか。そう思ったら、また怖くなって思わず俯いてしまう。

 その次に起こった出来事に、私は一瞬混乱した。

 指揮官が私を抱きしめたのだ。結構力が入っていて、少し痛い。

 

「し、指揮官?」

 

 どうしてこんなことをするのか分からなくて、指揮官に声をかける。

 返って来たのは、抱きしめる力が一層強くなるという行動だけだった。正直、痛い。

 

「指揮官ッ……ちょっと痛いよ……」

「このバカッ……心配したんだから」

 

 ようやく聞けた指揮官の声は、少しだけ震えていた。

 そこで初めて、指揮官が何に対して怒った顔をしていたのかを理解する。

 この人は、私が指示を無視したことを怒ってるんじゃないんだ。いや、それについてももちろん怒ってはいると思うけど、多分一番はそこじゃない。

 私が、大ケガをするような無茶をしたことに対して怒ってくれているんだ。

 おかしな話だ。私達は戦争の道具なのに。道具、それも戦いの道具が壊れる、壊されるなんてのは当たり前だ。

 たとえ私達がいかに人を真似て、人にそっくりな動き方をしていてもその本質は変わらない。

 使って使って、最後には使い潰される。それが私達戦術人形だ。

 それでもこの人は、私が壊されることを良しとしない。

 

「指揮官……私は、戦術人形だよ」

「分かってる」

 

 これから聞くことは、指揮官をすっごい怒らせるに違いない。

 それでも、私は聞きたかった。これから私がする問いに、彼女はなんて答えるのか。

 

「データバックアップはとってあるでしょ?」

「勿論」

「じゃあ、私が戦場で壊されても、すぐに復元できるじゃん」

 

 私を抱きしめる力が強まった。苦しいけど、我慢する。

 

「アナタの言う通りよ。確かに、アナタがあの時『死んでも』義体さえ用意すれば、『戦術人形のスコーピオン』はすぐに復元できる」

 

 指揮官の声は、予想に反してとても弱々しいものだった。

 

「でも、それは新しい『戦術人形のスコーピオン』であって、私の知ってるスコーピオンじゃないの。データのバックアップと言っても、記憶までは引き継げない。アナタがこの基地で今まで積み上げた『経験』は引き継がれない。引継ぎできるのはアナタがここにいたという『情報』だけよ」

 

 言いたいことは分かる。もしも私が全損して、新しい義体にバックアップデータを適用しても、そこにいるのは私じゃない。いや、『戦術人形スコーピオン』であることには変わりないのだし、この基地でやってきたことも勿論情報としてログに上書きされる。

 だから私の記憶も持っている。全損前の私と、何ら変わりない(スコーピオン)がそこにはいるはずなんだ。

 それでも、指揮官は違うと言う。サーバーに遺された(スコーピオン)の記憶を、まっさらな記憶領域に上書きされて生まれ出たスコーピオン(わたし)は、似ているだけの別人なのだと。

 

「確かに新しいスコーピオンは、アナタの記憶も持ってる。でもそれは、植え付けられただけのもの。その子が自分で得た記憶じゃない。『アナタ』を知ってる、アナタによく似た別人よ。いくら似てても、どれだけアナタを知ってても。アナタじゃないの。いい? スコーピオン、今私が抱きしめてるアナタはこの世にたった一人だけなの。替えなんていない。私は『戦術人形のスコーピオン』じゃなくて、今ここにいるアナタを部下として、家族としてこの基地に迎え入れているの。だから……」

「…………」

 

 指揮官が私を解放して、背中に回していた手を私の肩に置いた。

 指揮官の目が私を真っすぐと見つめる。その目にはうっすらと涙が浮かんでいる……ように見えた。

 

「約束して。もうあんな無茶はしないって。ちゃんと帰ってくるって」

「……分かった。もう、しないよ」

 

 おかしな指揮官だと思う。まるで私のことを人のように扱っているみたいだ。でも、嫌じゃない。

 胸の中が温かくなったような気がする。

 今なら、言える気がする。どうして、私があんなにも焦っていたのか。

 

「ねえ、指揮官。私さ、焦ってたんだ」

「そうみたいね。……フュンフでしょ?」

 

 指揮官の言葉に思わず目を見開いて彼女を見た。得意げに笑ってる。

 

「知ってたの?」

「アナタが夜中、訓練所を使ってるって聞いて調べてね。使い始めた時期が、フュンフが実戦で急激に戦果を出し始めた時期と被ってたから」

 

 そう。私はMP5の成長を目の当たりにして焦りを覚えた。

 彼女とはほとんど同期のようなものだ。けれど、ほんの少しの差で私の方が着任が早かった。

 そして、着任から最近になるまでは私の方が実戦での戦果は良かった。

 それが当たり前だと思っていた。だって私の方が先輩なんだから。経験だって、ちょっとだろうが何だろうが私の方が上だ。

 それに、敵だろうと味方だろうと誰にも負けたくないっていう気持ちが私にはあった。

 異変に気付いたのは少し前だ。たまたま、食堂へ行く道でデブリーフィングを終えたばかりのMP5に出くわした。

 えらく機嫌がいいから、ちょっと気になったんだ。

 そうしたら「スプリングフィールドさんに強くなりましたねって褒められたんです」って満面の笑みでいうじゃないか。

 気になったから、ちょっとアイツが出撃した作戦報告書を読んでみた。結果、確かにMP5の戦績が良くなっていたことが分かった。

 

「だから、負けたくないって思って私も訓練所に通い詰めたんだ」

「でも、どうして深夜に?」

 

 指揮官の問いに、私は口をつぐむ。わざわざ深夜に言っていた理由は、今となっては情けなく、とても人に話せるようなものじゃないから。

 でも、話さなきゃダメだと思った。指揮官には全部言わないと、って。

 それに彼女なら、受け止めてくれるとも思えたから。

 

「私さ……休みの日も訓練所に行くMP5のこと、心の中でちょっとバカにしてたんだ。休めるときに休まないで、闇雲に訓練したって意味ないじゃんって」

 

 指揮官は何も言わない。けれど、私を見つめるその目には失望だとか、バカにするような態度は浮かんでは来なかった。だから私は話し続けた。

 

「やるときはやる。休む時は休む。それが出来てこそ、一人前だって思ってたんだ。私は、自分はそれが出来てるからアイツよりは優秀だって思ってた。……とんだ思い違いだったけどね」

 

 実際、いつも頑張って訓練してたMP5が一気に成長し始めた。何があったのかは分からないけれど、とにかく成長し始めた。

 追い抜かれる、と思った。

 このままじゃダメだと思った。

 

「でも、何をしたらいいか分からなかったんだ。かといって、バカ正直にMP5にどんな訓練してるのかって聞くのは、心の中でとは言ってもバカにしてた手前、聞けなかった」

 

 射撃の腕で差をつけたってたかが知れてると思った。それ以外の場所で差をつけないと、MP5に負けてしまう。そんな風にボンヤリと感じていた。

 そこで思いついたのが過去の作戦報告書を読んで、それを参考に戦術を組み立てるというものだった。

 

「それで、作戦報告書を読み漁って自分にも出来そうな戦術を真似てみようと思ったのね」

 

 指揮官の言葉にゆっくりと頷く。

 

「バカね。相談すればよかったのに。フュンフ以外にも私だっているし、スプリングフィールドだっていたでしょう」

「うん……そうだよね」

 

 指揮官の言う通りだ。どうしてあの時、そんなことも思いつかなかったんだろう。

 

「それに正直、真似る戦術も間違ってた。アナタに一〇〇式の戦術は合わないわよ」

「え……結構上手くいったと思ったのに」

 

 ちょっとショックだった。あれは今でも大成功だと思っているんだけど。

 

「スコーピオン。一〇〇式の固有スキル知ってる?」

「え? ……知らない」

 

 私の問いに、指揮官はあちゃーとこめかみに手を当てた。

 スキル……私でいえば焼夷手榴弾を扱えることがそれにあたる。手榴弾を始めとした爆発物系の武装は、人形が勝手に使えるようにすると危険とかいう理由で、私のようなスキル持ちにしか基本使えない。

 ともかく、そのスキルが一体何だというのだろう。

 

「詰めが甘いわね。一〇〇式はね『桜逆像』ってスキルがあるのよ。これね、発動してる間は多少のダメージを無効化できる障壁が張れるの」

「じゃあ、一〇〇式があんな被弾覚悟の突撃をしていたのは……」

「スキルがあってこそよ。ついでに言えば、被弾し続けて障壁が壊れた時、一〇〇式は一時的にスペックが上がるの。主に義体の運動性能と、視覚センサーの感度がね」

「つまり、障壁を張って被弾しながら前進して、障壁が壊れたら回避に専念すれば被弾が避けられる……?」

 

 私の答えに、指揮官は満足そうに正解と笑った。

 

「同じ戦術がとれるとすれば、それこそ似たようなスキルを持つフュンフやトンプソンくらいね。防御系のスキルがないアナタには、リスクが高すぎる。それは今回のことで分かったでしょう?」

 

 確かに、毎回ダミーを潰して自分も損傷する覚悟であれをやるのは難しいかもしれない。

 やるとしても、最後の手段として取っておくべき戦術だ。普段から運用するべきものじゃない。

 

「……やっぱダメダメだなあ。私」

 

 結局、一人でやろうとして失敗ばかりだった。何も得られるものはなかった。成長なんて、出来ていないのかもしれない。

 そう思ったら、なんだか涙が出ていた。悔しかったし、情けなかった。

 その時、指揮官が私の涙をそっと拭ってくれた。

 思わず指揮官の方を見る。彼女は優しく微笑んでくれていた。

 

「スコーピオン。アナタ、気づいてないかもしれないけど、今回の失敗でアナタは私に可能性を見せてくれたのよ」

「え?」

 

 思わずキョトンとしてしまった。そんな私に、指揮官はなおも続ける。

 

「アナタは過去の作戦報告書から、自分が出来そうな戦術を探し出した。今回は参考にする戦術を間違えていたけど、それでもアナタはその戦術を正しく運用したのよ。分かる? アナタには、自分の持っている戦術を使うために必要な要素が何なのか、ちゃんと把握する能力がある」

 

 指揮官の言葉が胸にしみる。もしかして、私今褒められてる?

 

「スプリングから聞いたわよ。自分だけじゃなく、他の部隊員の能力と敵戦力を鑑みて、行けると確信したから突撃したんだってね? 確かにアレは無茶な突撃だった。でも、それでもアナタが死なずに帰ってこれたのは、アナタが敵の戦力と味方の能力を正しく把握していたからよ」

 

 間違いない。私は今、評価されている。指揮官に、お前は出来たと言われている。

 それがたまらなく嬉しい。独りでの訓練は無駄じゃなかったんだと思えてくる。

 さっきからずっと涙は止まらないけど、流す涙の意味はもう違うような気がした。

 

「自分に何ができるのか、仲間は何ができるのか。敵の戦力に対してどんな戦術が有効なのか。これをちゃんと考えて、運用する。スコーピオン。それが出来たアナタには、部隊長の素質があるってことよ。アナタはそれだけの可能性を、私に見せてくれたの。気づいてる? アナタ、今最高に『私の役に立ってくれてる』のよ」

 

 私の努力は無駄じゃなかった。それどころかちゃんと報われた。指揮官に『役に立っている』と言ってもらえた。

 褒められたことへの喜び、それまで抱えてきた不安、焦り、努力が無駄じゃなかったことへの安心。

 それらがない交ぜになって、一気にこみ上げてくる。

 堪えることなんて、できるわけがなかった。

 

「う……うぁああぁああああじぎがんー!」

「まったく、このじゃじゃ馬娘め。ほら、おいで」

 

 大声で泣きだした私を抱きしめながら、指揮官は私の頭をワシャワシャ撫でてくれた。

 私が泣き止むまで、ずっと。

 

 私がようやく泣き止んだ頃、指揮官の制服は私の涙と鼻水でビショビショだった。

 ごめんなさいと謝れば、洗えばいいよと苦笑いで返された。……私が洗濯しておいてあげようかな。

 

「落ち着いた?」

「うん……ありがと、指揮官」

「私も言いたいことは言ったし、アナタから聞きたいことも聞けた。今日はもう十分でしょう。そろそろ部屋に戻って寝るね。流石に眠たいしさ」

 

 そう言えば今は夜中だったっけ。……泣き声皆に聞かれてないといいな。

 でも、すっきりした。これで自分のベッドで寝れれば文句はないんだけど。

 

「ダメよスコーピオン。そんな目で見たって朝になるまではここにいて貰うからね」

「ちぇー。……了解、指揮官」

 

 まあ、今晩くらいはダンボールで寝るのも悪くないか。

 

 

 

 朝になった。そろそろ出してもらえるかなーなんて考えていたら、スプリングフィールドがカギをもって営倉へとやってきた。

 

「スコーピオン、お疲れ様で……ふふっ」

「え、ちょっと何さ。いきなり人の顔見て笑うなんて」

 

 部屋に入って私の顔を見るなり、スプリングフィールドが笑ったことにモヤっとして頬を膨らませてみたけど、スプリングフィールドはニコニコするばかりで答えず、営倉の鍵を開けた。

 なんだかモヤモヤした気分のまま、営倉を出る。

 

「ひとまず指揮官のところへ行きましょう。今後のことについても、そこで」

「ん、りょーかい」

 

 営倉の前でスプリングフィールドと別れ、指揮官が待つであろう司令室へ向かう途中、MP5が反対側からやってくるのが見えた

 MP5は私を見ると、彼女もスプリングフィールドと同じように小さく噴き出す。

 

「なんだよー」

「いえ! その、可愛らしいなって」

「可愛らしい?」

「なんでもありませーん。あ、指揮官さまが司令室で待ってるって言ってました」

「そっか。ありがとMP5」

「聞きましたよ、無茶したそうですね」

 

 MP5の言葉に、思わず顔をしかめる。指揮官め、変なこと喋ってないよね?

 

「あんまり無茶しないでくださいね。私としても、追いかける先輩がいなくなるのは嫌ですから。じゃ、また後で!」

「え……」

 

 そう言ってすれ違っていくMP5に、私はぽかんとしてしまった。もしかしたら、アイツが成長したのは戦闘力とかそれだけじゃないのかもしれない。

 

「こりゃホントにうかうかしてられないかなあ」

 

 頭をガシガシと書きながら、そんな風に独り言ちる。自然と笑みが浮かんだ。

 そして気が付いた。昨日までみたいに追いつめられた気分にはならないことに。

 

 

 司令室につくと、いつものように指揮官が椅子に座って私を待っていた。

 ……なんか、すっごいニコニコしてるんだけど。気味悪いな……

 

「おはようじゃじゃ馬スコーピオ……ブフッ!?」

「ちょっと! 副官なんなのさ!?」

 

 副官を務めるUMP45が私を見て盛大に噴き出した。もう流石にこれはおかしいと思って、指揮官を問い詰めることにする。

 

「指揮官! さっきから私、会う人みんなに笑われるんだけど!?」

 

 私の詰問に、けれど指揮官はニコニコしたまま答えない。

 

「スコーピオン。はい」

「ん? ……ああああああ!? 何これ!?」

 

 肩を震わせて笑いながらUMP45が手鏡を差し出してきたから、何かと思ってみてみれば、そこにはほっぺたに猫のヒゲみたいな線が描かれた私の顔が映っていた。

 そこで思い出す。昨日、私が起きる前に何かほっぺたをなぞるような感触がしたことを。

 

「指揮官でしょ、これ!」

「せいかーい♪ だって起きないんだもの」

「じゃあ何!? あんな真面目な話してたのに、私はずっとこんな間抜け面さらしてたってこと!?」

「可愛かったわよ?」

「しーきーかーんー?」

 

 なんて仕打ちをしてくれたんだこの人は。ちょっと痛い目見てもらった方がいいんじゃないかな。

 その後、結局のらりくらりと私の口撃はかわされて、始末書書いてねと笑顔でとどめを刺された。いつか絶対やり返す!

 けれど、気分はここ最近で一番良かった。なんだか気持ちよさすら感じるくらいだ。

 きっと、昨日まで抱いていた不安とかいろんなものが無くなったからだろう。

 きっとこれからも失敗するかもしれないけど、あの指揮官の下だったら頑張れる。そんな気がした。

 頼れる後輩もいることだし、今日からまた頑張りますかね。

 まずは、始末書を書かないと。

 そんな晴れ晴れとした気分で司令室を後にしようとすると、UMP45から呼び止められた。

 

「で、スコーピオン。アンタいつになったらその猫ヒゲ消すの? 私はそのままでもいいけど。面白そうだしね」

「あ、それ油性だから消すの頑張ってね」

「指揮官サイテー!」

 

 昨日の私の感動を返せ!

 

 結局、すぐには消せなかったからその日はマスクをして過ごした。

 指揮官に今度とびっきりのイタズラをしてやろうと、心に誓った。

 




ということでシリアス風味第二弾、スコーピオン暴走事件はこれでおしまいです。
長かった……4話で締めようと思ってたんですが長引きました。

そろそろかしましおぺれーしょんも始まってから一か月くらい経つんですが、その頃に比べると感想やらUAやらがたくさんもらえるようになりました。
なので、単話完結のほのぼのと比べるとやっぱりちょっとプレッシャーを感じたりはしたんですが、それでもこうして書き上げることができたのはやっぱり感想とかをくれる読者の皆さんのおかげです。

今回の話でスコピッピとかが少しでも魅力的に思ってもらえたら幸いです。

これからもどうぞよろしくお願いします。
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