女性指揮官と戦術人形達のかしましおぺれーしょん【完結】 作:笹の船
色々お互いの世界観で食い違うところなんかは出てきてしまうので、まあそのあたりはパラレルってことで一つ。
多分3話は使う。
「クソ……あのヒゲゴリラめ……」
45の可愛らしい本音を聞いてから二日後、私はグリフィン本部へやってきていた。
結局休みはとれなかったのだ。本部で行われる会議なので、余程のことがない限りは出席しろと言われてしまった。全く、なにが悲しくてあんなヒゲゴリラを始めとした辛気臭いツラした奴らのいる所に行かにゃならんのか。
「指揮官、顔に出てますよ」
「おっと、いけない。ありがと、UMP45」
休みなのに45についてきてもらったのは申し訳ないと思っている。本人は私と一緒にいられるならと素敵で可愛らしい殺し文句を言ってくれたけど、それと休みを潰していいかは別問題だ。今度振り替え休日用意しておかないと。
ちなみにお互いに少し硬めのやり取りをするのは本部だからだ。流石にこういう場所に来てまで普段通りのやり取りをするわけにもいかない。
TPOをわきまえた立ち振る舞いは、案外自衛のためにも必要なのだ。ただでさえ年若い女性というだけで、私はあちこちから目の敵にされやすいのだから。
実際、本部に入ってから私と同じような赤いグリフィン制服に身を包んだ男共と何度もすれ違っている。歳を食った指揮官は蝶事件の時にほとんど死んだらしく、今は若い男が多い。
で、そんな奴らの大半から送られてくるのがスケベな下心が透けて見える視線か、あるいは女のくせに生意気だと言わんばかりの視線だ。
そんな奴らの前で、わざわざ弱みをさらけ出すような真似をする必要はない。
なんてことを考えていたら、進行方向にいかにもガラの悪そうな指揮官が二人ほど、誰かを問い詰めているような場面に出くわした。
「よう、S09地区の指揮官さま? 最近随分とご活躍のようじゃねえか。一体どんなズルをすれば、アンタみたいなガキンチョがあんなに戦果を上げられるんだ?」
「はは! コイツ、案外鉄血とつながってんじゃねえのか。裏から情報を回してもらって、自作自演をしてるとかな!」
「えっと、あの……すみません」
やれやれ、聞いてるこっちが恥ずかしくなる場面に遭遇しちゃったな。男の嫉妬は醜いというけれど、相手は若い小柄な女の子じゃないか。アレがクルーガーだったとして、アイツらは果たして同じ態度でいられるものかね。
S09といえば最前線もいいところだ。いつ鉄血に攻め込まれるか分からないそんな場所で、イチイチ自作自演で戦果を偽るなんてことを考えることなんて出来るわけないだろうに。
隣の45に視線を送ってみれば、彼女は小さく肩をすくめただけだった。好きにしろ、と言いたいらしい。流石、良く分かってる。
そんなわけで、私は低俗なオス猿共を追い払うことにした。
「ちょっとアンタ達、小柄な女の子囲って何やってんの」
「あ? 何だテメェ」
おーおー、いっちょ前に睨んできてまあ。……コイツら新米かな。カッコはついてるけど覇気がない。人の威圧の仕方ってもんを知らないと見える。全く怖くない。
「R06地区の指揮官、シーラ=コリンズ。そういうアナタ達は新入りかしら?」
オス猿Aの目を真っすぐと見据える。目はほんの少しだけ細めて、体は気を付けの姿勢程ではないにしろキッチリとしておく。どっしり構えた方がナメられないからね。
ただ、右手だけは腰のホルスターの近くにホールドしておいた。いつでも銃を抜ける様にだ。抜きたくはないけど、場合によっては抜くことも辞さない。
「シーラ=コリンズ? 知らねえな。アンタこそ新入りじゃねえのか?」
オス猿Aはなおも強気な態度を崩さない。いいじゃない。変に委縮するよりそれくらいイキが良い方が潰し甲斐があって好きよ、私。
が、どうやらオス猿Bはそうでもなかったらしい。
「おい、バカ! そいつ鉄血ハイエンド相手にカチコミかけて生き残った凄腕だぞ!」
カチコミ……いやまあそうなんだけど。他に言い方あるでしょう。
それはともかく、オス猿Bの言葉はオス猿Aをビビらせるのにはちょうど良かったらしい。
さっきまでの勢いはどこへやら。頬を引くつかせ始め、腰も若干引けてしまった。
「お、おお……そりゃ大先輩だったわけだ。すんませんね。で、このチビとは知り合いなんです?」
「どっちでもいいでしょ、そんなこと。大の大人が二人がかりで女の子を囲んでるのを見たから、同じ指揮官として恥ずかしかっただけ」
私の言葉にオス猿Aが露骨に顔を歪める。自覚はあったのね。ヘタレめ。
結局、その後ありきたりな捨て台詞みたいなものを吐いて二匹はどこかへ行った。捨て台詞の内容? レベルが低すぎて記憶にとどめる価値もない。
ともかく、奴らが私の視界から消えたのを確認した後、囲まれていた女性指揮官の方へと目を向ける。
若いな……セミロングの白い髪に……いや、これは地毛の色じゃない。色素が抜け落ちた白だ。身長は150行くかどうかってところかな。幼さを残す顔立ちから十代なのは間違いない。
何より目を引くのはその目だ。何の感情も映していない目だ。この年頃の子がするような目じゃないわよ……。
とにかく声をかけよう。なんか壊れたパソコンみたいにフリーズしてるし、この子。
「ねえ、大丈夫?」
「あ……はい。ありがとうございます」
ん、ほんのちょっぴり目に色が戻った。でも誤差範囲だな。でも、とりあえず最低限の受け答えは出来そうだ。
「さっきもチラッと言ったけど、R06地区で指揮官をやってるシーラ=コリンズよ。……アナタは?」
「あ……えと、S09地区のユノ……です」
「すごいのね、若いのにあんな場所で指揮官を務めあげられるなんて」
見た目から見ても、私よりは五つ以上年下のはずだ。下手したら十歳くらいは離れているのかもしれない。
それでも最前線を維持できているあたり、相当優秀なのだろう。下手したら私よりも指揮官としての腕前は高いかもしれない。
にもかかわらず、目の前の『ユノ』と名乗った少女は謙虚そのものだった。
「私はそんな大したことは……ナガンやPPK、それに皆が頑張ってるんです」
「そっか。頼もしい仲間に巡り合えたみたいね」
人間不信の子かな。人形の名前を口にした時だけ、目に感情が戻った。少なくとも、彼女にとって信頼できる存在はちゃんといるみたいってことが分かっただけ安心かな。
……あら、この子誓約済みじゃん。左手薬指に私がしているのと同じ指輪がある。若いのにやるわね。……後でヘリアンのこと弄るタネにしてやろう。
「指揮官、こちらにいたんですね」
「あ、PPK! ごめんね、ちょっといろいろあって」
やっぱり思った通りだ。ユノ指揮官の部下と思しきPPKが来た瞬間、彼女の表情に感情が戻った。結構キツめの人間不信なのかな。
ん、このPPK、薬指に指輪をしてる。てっきりナガンリボルバーと誓約しているものだと思ったけど、こっちだったのか。
「……こちらの方は?」
おおっと、いらぬ誤解をされているかな? PPKから殺気を飛ばされた。ユノ指揮官にソレを悟らせないようにしているあたり、手慣れているな。
なるほど、これは最前線を維持できるわけだ。うちの人形達もそこらの基地には負けない練度を誇っていると思ってたけど、ここまでの子はそうはいない。
とにかく、誤解を解かないとね。と、思ったら私の後ろにいる45を見てその殺気を引っ込めた。なんだ、もしかして知り合い?
「そちらは、404小隊のUMP45さんでしょうか?」
「そうよ。ご無沙汰ね、PPK、ユノちゃん」
「あ、45。久しぶりだね」
ええー……知り合いなの。言ってよ。
軽くキャラ紹介(お相手方のキャラ情報、間違ってたらすみません)
ユノ:S09地区の指揮官。未成年。
セミロングほどの長さの白い髪の小柄な少女。その見た目とは裏腹に指揮官としての腕前はグリフィン内部でもトップクラス。
色々事情があって対人コミュニケーションは非常に苦手。
シーラ:我らが女性指揮官。20代半ば。404小隊のUMP45と誓約するときの作戦で、生身で鉄血司令部へ潜入、物理障壁を張った鉄血ハイエンドに苦戦するR06地区の戦術人形達を助けた。それは尾ひれの付いた噂としてグリフィン内で広がっている。
PPK:ユノ指揮官の誓約相手。電脳のランクは決して高くないが、極まった練度がそれを補って余りある凄腕。
UMP45:404小隊の小隊長を務める戦術人形。R06地区を現在の活動拠点としている。シーラの誓約相手。
コラボについて快諾してくださった焔薙さん、ありがとうございます!
『それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!』は平和な司令部の日常を楽しめる素敵な作品なので、読者の方にも是非読んでいただきたいですね! 読め!(豹変