女性指揮官と戦術人形達のかしましおぺれーしょん【完結】   作:笹の船

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SPAS着任記念ということで。
おっきいですよね、彼女。


演技派新人にご用心

「こちらSPAS-12! 指揮官の堅牢な盾となりましょう!」

 

 元気な声が司令室に響き渡った。

 今日新たに配属されたショットガンタイプの戦術人形である。

 

「指揮官のシーラ=コリンズよ。こっちは副官のUMP45。よろしくね」

「はい! よろしくお願いします!」

 

 うん。元気のいい子だ。ショットガンタイプはウチにはまだそんなに数もそろってないし、私も早めにこの子の特色を覚えないとな。

 そんなことを考えていたら、きゅるると可愛らしい音が聞こえてきた。

 音がした方を見れば、そこには顔を赤らめてお腹を押さえるSPASの姿が。

 そう言えば、もうお昼時だったっけ。

 

「ちょうどいいし、ご飯食べましょうか」

「あはは……お気遣い感謝します」

 

 そんなこんなで私、45、SPASで食堂にやってきたのだが……

 

「美味しい! ここの基地のハンバーガー、美味しいですねえ!」

「嘘でしょ……ハンバーガー何個目よ」

 

 茫然とした45が呟いた言葉に、私も頬を引きつらせることしか出来ない。

 ハンバーガーの包み紙が、私達の目の前で山を作っていた。ぱっと見でも10個分の包み紙はある。

 

「あー、こんなに食べたら太っちゃうんだけど、やめられないよー」

「……シーラ、コイツこの後訓練所でシバいた方がいいと思うの」

「45……SPASのどこ見て言ってるの?」

 

 私達女の子にとって太るのは確かに死活問題なんだけど、45の視線がどこに釘付けになっているかを見ると、ただの嫉妬だと分かってしまう。

 ええ、ええ。そりゃあもうこの子は豊かなお山を二つぶら下げておりますとも。正直なところ、かなり大きいと思っていたスプリングやカリーナがかすむレベルだ。

 で、こういう子が太っちゃうというと嘆きの平原と呼ばれるタイプのプロポーションの子は皆思うのだ。その無駄な脂肪は絶対に胸に――

 拳が飛んできた。隣に座る45からの裏拳だ。今は食堂の椅子に座っているから回避手段はほぼ一つ。

 思い切り体を後ろに倒す。床と体を平行にしたところで、腹筋に力を入れて体が倒れるのを止めた。同時に、私の頭があったところを45の拳が通り過ぎていったのが見えた。

 危ないなあ。もう少し優しくしてくれてもいいだろうに。

 さらに腹筋に力を込めて体を起こす。ちょうどその時、SPASが手に持っていたバーガーを食べ終わるところだった。

 

「むぐむぐ……あー、美味しかった! 指揮官、私こんなおいしいものが食べられるなら取っても頑張れそうです!」

「まあ、気に入ってくれたのなら良かったよ」

 

 満足そうに笑みを浮かべて両手でガッツポーズをするSPASに、苦笑いを返すしかなかった。

 まあ、食べるのが好きなこと以外は真面目そうだし、何とかなるでしょう。

 

 

 

「しきかーん! 今日のお菓子はこれで最後って約束するから、早くそのお菓子を返してー!」

「だーめ。食べ過ぎよSPAS」

 

 甘かった。まさか常にお菓子を食べるようなタイプだったとは。おかげで基地内のお菓子がどんどん減っているという話だし、あっちこっちべたべたしたSPASの指紋がついて仕方がないという苦情も何件か寄せられている。

 そんなわけで、司令室に訓練に関する相談をしに来たと言うSPASからお菓子を取り上げて説教をしている最中だ。いくら45の許可を取って司令室に来ているとはいえ、お菓子を食べていいわけじゃない。

 

「あと、SPAS! お菓子を食べたら指を拭きなさい! 訓練所を使う子達から苦情来てるわよ! アナタが使った道具、べたべたしてるって!」

「わわ、すみません!」

「ていうか、太るの嫌なんじゃないの!?」

「副官の訓練が厳しいんですよぉー。お菓子食べないとお腹すいちゃって……」

 

 45……まさかと思うけど意地悪してるんじゃないでしょうね……?

 そんなことが一瞬よぎったけれど、いくら45でもそんなことはしないはずだ。そのあたりのことに私情を挟まずに行動するのは、彼女の方が上手なのだから。

 ともかく、あんまり食べてばかりなのもよろしくない。

 

「SPAS、アナタ今日からお菓子は一日三個までね。最近食べ過ぎよ、アナタ」

「そんなぁ! 指揮官、そこを何とか!」

「ダメよ」

 

 お願いします、と頭を必死に下げるSPASの懇願を突っぱねる。ここは強気でダメだと言っておかないと、後々この子が甘えることを覚えてしまう。厳しく行くところは厳しくしないと。

 

「じゃあ、訓練してる時に指揮官の惚気話を思わずして顔赤くなった副官の話をしますから!」

「だからダメ……なんですって?」

 

 今、聞き捨てならない言葉が聞こえた気がする。45が、私の惚気話をしてた?

 

「ちょ、それ詳しく」

 

 思わず情報に声が上ずってしまう。すると、SPASは意地の悪い笑みを浮かべた。

 

「じゃあ、そのお菓子と交換でどうでしょう?」

「ぐ……やっぱりそうくるか」

 

 45のしたという惚気話の内容はすごく気になる。あの子が他の子にどんなことを語っているか、私は知らないのだ。

 だがここで誘惑に屈するわけにはいかない。屈してしまったらそれこそSPASの思うつぼなのだから。

 

「結構可愛かったですよ? その後こってり絞られましたけどね」

 

 たはは、と笑うSPASの様子はあまり嘘をついているようには見えない。

 しかし、その辺の恥ずかしい姿を見られると一気に苛烈な性格になる45に絞られたとあったら、お菓子くらいは……。

 いやダメだ。どうあろうと苦情まで来ている以上、これ以上彼女にお菓子をパクつかせるわけにはいかない。

 

「……むぅ。ダメかー。指揮官、手ごわいですね。私の演技で誤魔化せなかったの、二人目ですよ」

「演技……って、じゃあ45の話は」

「ごめんなさい、嘘つきました。でも、本当っぽかったでしょ?」

 

 あ、危なかった。アレが演技だったなんて……結構騙される寸前だった。まさかあそこまでの演技力だったとは。本当にあたかもそんなことがあったんじゃないかって思われた。

 

「あーあ。ここの指揮官は手ごわいですねー。もっと演技の練習必要かも」

「私達相手に嘘はつかないでよ。あんまり変なことすると、背中から撃たれることになるんだから」

「うわ、それは怖いですね……でも大丈夫です。そこまで私もバカじゃないですから」

 

 お菓子を食べることに関してはバカだと思うんだけど、そこに突っ込むのは野暮だろうか。

 なんてことを考えると、私達の方へと走ってくる足音が一つ。

 

「指揮官! SPAS来て……ああ、ここにいたのね」

「ゲッ……副官」

 

 45だった。……随分焦っていたようだけど、もしかしてこの子。

 

「……SPASの演技に騙されたのね?」

「うぐっ……」

 

 おおっと、飛び切り苦いコーヒーでも飲んだみたいなしかめ面したわね。

 

「SPAS……なんて言ったの?」

「え? あー……指揮官が副官の好きなところを色々教えてくれたって嘘を……」

 

 ほう? ほうほうほう。ふーん?

 

「何よ」

「なんでもなーい。SPAS、今回は45を出し抜いたことに免じてこのお菓子はあげる」

「え!? やったぁ!」

「ただし!」

 

 少し大きめの声を張り上げたことで、SPASの動きが止まる。

 

「次はないわよ。お菓子やハンバーガーじゃなくて、鉛玉が飛んでくることを覚悟しておいてね。撃つのは私じゃないだろうけど」

「りょ、了解です……」

 

 誰に撃たれるのかを想像したのか、SPASの頬を汗が伝って落ちていった。うんうん。分かってるようだから大丈夫かな。

 

「じゃ、45。今からたっぷり聞かせてあげましょうか。アナタの可愛いところ」

「え!? なんでいきなり?」

「聞きたいんでしょ?」

 

 新人にまんまと出し抜かれるなんて、ちょっと気が緩んでるみたいだしね。45には気を引き締め直してもらわないと。

 その為にも、不安なことや気になったことはきっちりと確認して、認識のすり合わせを行わないとね?

 

「し、指揮官? あの、まだ今日のお仕事が……」

「SPAS、もう行ってもいいわよ」

「は、はい!」

 

 私の言葉にSPASが綺麗な敬礼をして退室する。彼女が出て行った後、内側からドアにロックを掛けた。

 

「し、指揮官……?」

 

 珍しく45が慌てて、しかもうろたえた表情をしている

 んふふ……これはちょっと楽しくなってきた。

 さーて、どんなところから褒めていってあげようかなー。

 

「あ、あの……シーラ? ま、待って! 落ち着いてってば!」

 

 

 

「指揮官、45姉どうしたの? 宿舎に戻ってきてからずっと枕に顔をうずめてうごかないんだけど」

「んー? んふふ……知りたい?」

「あっ、なんとなく察したから大丈夫。……ほどほどしてよ? おへそ曲げた45姉をなだめるの、結構大変なんだから」

 

 ごめんよ9。今度パフェでも奢ってあげよう。

 いやあ、しかし良いモノを見れた。途中から恥ずかしさのあまり両手で煽った上に、涙目にまでなってた45はとても……とても嗜虐心をそそられる可愛さだった……。

 まあ、へそを曲げてるって話だし、後でスプリングから甘いものを融通してもらおう。おいしいコーヒーを二人分持って謝りに行けば、少しは機嫌も直るだろうし。

 今度はどんな話をしようかな、なんて考えながら私は残りの仕事にとりかかった。

 その翌日、まさか自分が同じような目に合わされるなんて、この時の私には想像すらできなかった。

 




ショーがどうとか、台本がどうとか言ってるので彼女はプライベートか副業で演者さんをやってると思うのです。
だったらそれを逆手にとってお菓子をせしめる悪知恵くらいは働かせそうだなって。

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